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●風水別館 Annex version 2018

エンジンオイル粘度と燃費、そしてスラッジの関係のナゾ(0W-20でブローバイが増える疑問氷解編)
サイドバルブ式発電機EG550蘇生のナゾ(コンデンサーパンク編)
変造ケロシン発電機EF900Kのナゾ

ガソリン発電機の驚くべき低い効率と抜本的対策のナゾ(ケロシン発電機化は可能か?編)
ジャンクな中華製インバーター発電機SF-900復活と中華品質のナゾ(日本製と比較編)
インバーター発電機EU9iのPATpend.山本式燃料コックオフ運転ポジション新設変造のナゾ
ジャンクなインバーター発電機EU9i復活と次なる飛翔のナゾ(EF900isと比較編)
ジャンクなインバーター発電機EF900isの弱点のナゾ(絶望からの復活編)

ジャンクな4スト発電機EF9Hは再度陽光を浴びるか、のナゾ
ハイオクガソリンは本当に燃焼室をきれいにするのか、のナゾ
ジャンクな2スト発電機ET-600の排気煙の香り(もしくは、ヤマハの発電機の独立した燃料コックのナゾ編)
V125リアタイヤサイズアップ作戦のナゾ
棹立ちバイクMT-09の過激臭のナゾ

ホンダらしからぬホンダCBR1000R試乗のナゾ(デザインは見掛け倒しか?編)
山本式エアコン用流体素子バージョン2018(PAT PEND.)のナゾ
特別企画普及型D級ICアンプで山本式電流帰還!!(実践編)
テスラはあなたの車庫に収まるか(暴力的加速編)
特別企画普及型D級ICアンプで山本式電流帰還!!(理論編)
AdobeFlashは死んだのか?(スマホでflashをどう扱うか?編)

ガスファンヒーター故障のナゾ(フィルターを掃除しましょう)
サーモ付き風呂シャワー水栓水漏れ2018のナゾ
いき○りステーキの収益性のナゾ
ドリップバッグでアロマの高いコーヒーの作り方のナゾ(失敗編)
新春特別企画 Webmasterの邪馬台国考のナゾ(その2 卑弥呼の墓はどこか祇園山古墳編)


エンジンオイル粘度と燃費、そしてスラッジの関係のナゾ(0W-20でブローバイが増える疑問氷解編)

Webmaseterは以前からプリウスに標準の0w-20ではなく10W-30を入れている。理由は、メカニカイルノイズとブローバイそしてメンテコストの減少と燃費のトータルバランスを意識しているからである。

以前より、飛行機の発展には3つの壁があると言われてた。第一の壁は音速の壁で、第二の壁は空気との摩擦による熱の壁である。機体の過熱を防ぐためにはチタンや耐熱鋼で作る必要があるからだ。

そして、第三の壁は”金(カネ)の壁”であるという。

性能第一の軍用機でも、コストには絶えず議会の監視がある。民用機なら、機材代と燃料費が問題になる。それ以前に、機体の開発費がかかりすぎればメーカーは倒産してしまう。

同じように、エンジンオイルの第一の壁は潤滑性能、第二の壁はスラッジ(燃料室の汚染)の壁、そして、第三の壁はオイル交換間隔の壁といえるだろう。

メーカーはエンジンの耐久性はともかく、社会から燃費が良く廃棄物としてオイルを減らすことが要求されている。しかし、ユーザーの関心は、燃費だけでなく、メンテ費用や車両の寿命などのトータルコストである。

Webmasterはかつてメルセデス190Eに乗っていた。悩みは始動時のラッシュアジャスター騒音とアイドリング不安定であった。指定は10W-40だったがWebmasterは深く考えずに10W-30を入れていた

エンジン始動時にバルブはカチャカチャ言うし、エアクリーナーやインテーク系がブローバイが汚れ、アイドルコンペンセイターの経路が汚れてアイドリングが不安定になり、たびたびインテーク系の掃除を余儀なくされた。

ある日指定が10W-40であることに気付き、オイルを10W-40にすると全ての問題が解決した。アウトバーンを走行するメルセデスのエンジンは熱膨張を見込んでクリアランスが大きく粘度の高いオイルを要求していたのである。そのため190Eのような平凡な車でもバルブはナトリウム封入だったりするのだ。

最近webmasterの主張を裏付ける論文を発見した。モード燃費走行時のオイル粘度と燃費およびブローバイの関係をシャシダイを使って検討した論文だ。

それは、オイルによるエンジンの影響について 熊田康弘、高原祟直である。(リンク切れの場合は、こちらに置いています

著作権があるので原本を当たってほしいが、材料は日産マーチ(DBA-AK12 2009.05-2010.07)でシャシダイ上で三種のオイル0W-20、10W-30、15W-50をそれぞれオイルゲージの上下限の中間、上限、上限オーバーと油面を変えて10・15モード燃費およびブローバイ量を測定している。

まず燃費については、オイルゲージ中間と上限は僅差だが上限オーバーでは燃費が下がるという結果がでている。しかもその差は0W-20で大きく、15W-50で小さい。

燃費そのものは0W-20は10w-30より燃費が約3%、15W-50より約6.8%燃費が良いという。特にモード燃費ではコールドスタートやではウォーミングアップ時に差が出るようだ。(図は熊田他 オイルによるエンジンの影響について より)

次は問題のブローバイ量だが衝撃的な結果である。50km走行でブローバイ中のオイル量は、0W-20でオイルゲージ上限オーバーでは10%、上限で7.5%、中間で5%増えるという。一方、10W-30では油面の差はそれより小さく50kmで約2.5%の増加であるという。15W-50では油面による差があり中間では50kmで約1.5%の増加であるという。

油面中央で比べると、0W-20では10W-30の約3倍、そして15W-50の約5倍もブローバイ中のオイル量が増えるというのは衝撃的ではある。

また短距離では0W-20のブローバイの増加率はさらに大きい。これは0W-20で町中で短距離の走行を繰り返すとどんどんブローバイが溜まっていくということである。そのような条件ではインテーク系が温まっていないので、ブローバイは粘度が高く、スラッジがどんどん増えることになる。(図は熊田他 オイルによるエンジンの影響について より)

ブローバイはスロットルボディ、インテーク、アイドルコンペンセーター、流量センサー(熱線もしくは圧力)だけでなく、バルブの背面やステム、燃焼室や点火プラグにもスラッジとして蓄積していく。

サンプルの日産マーチBDA-AK12は一つ前の型の最終モデルで2009年からの発売である。エンジンCR12DEは直4の電子制御スロットル付きで指定オイルは0W-20であり、低粘度の省エネオイルに対応しているはずだ。

しかし以前からWebmasterが主張しているように、0W-20では吹き抜けが増えてブローバイにオイルが混入しインテークの汚染が増えることと、現代のエンジンはその問題を克服していないことも証明されたのである。0w-20は単にカタログの燃費データをよくみせるだけで、長期的なメンテコストや車両寿命の点では財布にも環境にもやさしくないのである。

実際にはブローバイは2系統あり、一つはPCVバルブを介してインテークのサージタンクへ、もう一つは直接スロットルボディー前に入る。今回の測定ではスロットルボディー前に入る配管のみにろ紙をつけて計測しており、PCV経由のものは計測していないので、ブローバイのオイル量は実際にはこの数字より多い。

ユーザーとしてはオイルの減少を見越してオイルレベルの上端付近まで入れたいところだが、上端を越えるのは燃費だけでなくブローバイの観点からも良くないようである。やはり頻繁にオイルレベルを確認しろ、ということなのだろう。

さて3%の燃費差はいくらになるだろう。一般的な走行距離として年1万キロ、ガソリン価格を155円、燃費を本論文の17km/Lを採用すると、ガソリン代は91176円となり、その3%は2735円である。

これを大きいと考えるか、小さいと考えるかはユーザーによると思うのだが、190Eでブローバイによるアイドルコントロールバルブ汚染に悩んだwebmasterはもちろんブローバイが数分の1に減りメカニカルノイズも小さく、エンジン寿命が延びる方を選択する。

この論文を見る限り、現代のエンジンの設計が0W-20オイルに対して適切なのか疑がわしく、リングやブローバイのセパレーター等の設計も十分でなく改良が必要のようだ。

さて、あなたは3%の燃費をとるか? あるいはメカニカルノイズやメンテコスト、そして車両寿命のどちらをとるであろうか?

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サイドバルブ式発電機EG550蘇生のナゾ(コンデンサーパンク編)

さてケロシン化変造を受けたOHVエンジンのef900であるが、純ケロシンでは高負荷時にノッキングが発生するのでガソリンを混ぜなければいけないことが難点である。対策としては、

1)ジェットを拡大して混合気をリッチに持っていく
2)ガスケットを細工してさらに圧縮比を落とす

の二つが考えられる。サイドバルブ式のケロシン仕様エンジンのRobinEY-kシリーズやホンダEBK550の諸元を見るとガソリン仕様より1割ほど出力が低下しているが、これはおそらく圧縮比の低下のせいだろう。

混合気をリッチにするジェットは入手済みだが、OHVヘッド嵩上げ用ガスケットを1-2mmのアルミ板から自作する作業は高齢化に伴って工作パフォーマンスが落ちたwebmasterとって億劫である。特に真丸のピストンの孔を切り抜くのにはコンパス状の特殊工具が必要だ。当然バルブクリアランスも調節しなければいけない。

通常のサイドバルブ式のエンジンなら圧縮比は6程度なので、それのジャンクを入手したほうが手っ取り早いと、最近怠け癖のついたWebmasterは考えた。おそらく圧縮比を落とす必要は無いと思うが、かりに嵩上げのガスケットが必要となってもサイドバルブ式なら真円のピストン孔を開ける必要がないし、バルブのクリアランス調節もいらないし少々雑に作っても良いだろう。

とか思いつつオークションを眺めていたらサイドバルブ式の新ダイワのEG550なる発電機を運よく極安価で落札することができた。この機種はEM550同様にネットでもかなり見かけることから、軽く移動が簡単な550W級発電機は官公庁自治体関係で災害対策に相当数売れたようである。

届いた発電機は外装に錆があるものの内部はあまり汚れて無く、長時間は使われていなかったようである。意外だったのは4スト550W定格としては重量18.5kgと軽く、2ストのET-600とほぼ同じことである。以前に我が家にあったEM550は軽量設計が得意のホンダ製にしては22.5kgもあったのだ。

外見や中身を見ると、スバルの発電機SG550に酷似している。ラベルを見るとフの字のスバルのOEMである。ただし燃料コックと一体の操作ダイヤルが横から前に移動しているダイワの大型発電機のデザインに似せたのであろう。なお操作ダイヤルを左にわずかに回すと燃料コックが先に閉じて、その後にエンジンが止まるように細かく設計されている。

現在の新ダイワのサイトには後継機EG551Cのマニュアルがある。EG551Cは内部はEG550と同じだが、操作ダイヤルなどがSG550と同じく横にある。おそらくダイワもわざわざ操作ダイヤルの位置を変える意味がないと判断したのであろう。なぜかEG551Cでは蓄電池充電用の12V端子が無い。その理由はこのDCは独立した巻き線ではなくAC100Vと配線を共有しているので両者で共通の接地が使えないという問題があるからではないか。

定格は550Wだが最大出力が650Wなのは、設計上のマージンが大きいということか。内部はアルミを多用し良質の材料で作られていて、特に発電機部分がコンパクトにできている。これは中島飛行機以来の伝統なのだろうか。デザインや趣味性はともかく(ヤボったい)富士重工の自動車は他社よりアルミ部品の割合が高く丁寧に作られていてヲタクなエンジニアに人気がある。

プラグをはずして見ると電極は殆ど消耗しておらず良い焼け具合だが、長年放置されたせいか錆色が混じっている。リコイルのロープはまったく消耗していないことから、この発電機も新品早々にキャブが詰まって放置されていたようである。とりあえず点火の火花が飛ぶことを確認してキャブの整備にあたった。

キャブはおなじみのミクニの製品だが、ノズルははずれない設計のようだ。メインジェット、パイロットジェットをサンポールにつけ、ノズル、アイドルポート、スローポートなどを完全に掃除した。タンク内には全く錆は無かった。なお燃料フィルターはコックとは別に配管の途中につけてあった。エンジンオイルはつい最近交換されたようでまだ飴色だった。

筐体は底板、左右の板、前後の板、上面のタンクと箱状のパネル構造になっていて、メンテは非常にやり易い。なおスバル版のサービスマニュアル(海外版R550,R600)が公開されているので、メンテは容易である(ローターの抵抗値に誤植がある(15Ω->15kΩ))。

1,2時間の整備でエンジンはあっけなく始動した。さっそく660Wの湯沸し器でコーヒーを入れたが、毎回蘇生された発電機で沸かしたコーヒーは非常に美味である。

ただし話は単純には終わらなかった

900Wの過負荷をかけたところ、2分ほどでブレーカーが落ちた。再度ブレーカーを押して解除して1分ほどすると発電が止まってしまった。個人的には最大650Wを歌う性能で簡単にコイルが焼けるはずがないと思ったのだが、

こういうときにはサービスマニュアルが役に立つ。各コイル巻き線の抵抗値を見るとほぼ正常なのでコイルの焼損ではない。とすれば、この時代の各社の発電機に多発する進相コンデンサーのバンクか?

見ると発電機付近のコンデンサー250V10μFが膨化していて容量を測るとゼロだった。コンデンサーの型番で検索すると多くのメーカーで多数の不良例が見つかることから、どうやら欠陥品のようである。

モーター進相用の指月電気製の製品に交換したところ発電機は息を吹き返した。900W程度の過負荷なら、ブレーカーを途中で一回リセットする程度でお湯が沸くこともわかった。(おすすめしない)。

特質すべきことは、動作音が静かなことだ。その秘密はエンジンやマフラーが二重に金属製パネルに囲まれており筐体内部にはスポンジが貼られていることだろう。マフラー容量も大きめで、排気音やファン騒音よりこもった機械騒音のほうが大きい。

内部構造は独自のもので、冷却ファンがエンジンと発電機の中間にあり、エンジン側から吸気した空気で発電機と二重構造のマフラーの間隙から冷却して排出される凝った構造である。仮想敵はホンダのEM550と思われるが、ヲタク度、最大出力、重量、騒音、メンテ性の全てでこちらの方が勝っていて、富士重工の品質に対するこだわりを感じる。

小型のポータブル発電機はホンダ製、ついでヤマハ製やスズキ製が支配してきたが、もう一つ富士重工製もプロ好みの高品質な製品を供給してきた。ただし、高品質で価格が高めのためか官公庁自治体以外ではホンダ製ほどは普及しなかったようである。

このスバル製造発電機は高品質なのでケロシン化には気が引けるが、近々試して報告したいと思っている。

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変造ケロシン発電機EF800Kのナゾ

さて、かなり以前の発電機ネタとしては、

始動不良な発電機とファンヒーターのナゾ2004-20-24
電力危機対策発発整備のナゾ2003-02-08

がある。ガソリン発電機では、常にキャブが詰まるリスクと戦わなければならない。これを予防するためにキャブからガソリンを抜くと、ニードルバルブより上流のガソリンがゆっくり降りてきて、そのガム分のためかなりの確率でフロートが固着しオーバーフローする。殆どはフロート室を軽く叩くと直るが、直らなければフロート室を開けてフロートを上下させる必要がある。このガソリン発電機維持ストレスのために、過去EB550を手放した経験がある。

季節恒例の始動不良発電機のジェット掃除のナゾ2007-11-17

では、所有していたEB550(EM550)と同じエンジンでケロシン(石油)使用のインド方面仕様のEBK550の話が出てくる。ケロシンを使うといってもディーゼルではなく低圧縮比で点火プラグを使う通常のエンジンである。

これは、起動時のみガソリンを使いその後はケロシンを使う設計である。国内では過去広くケロシン発動機が使われていた歴史があるが、豊かになってOHVやOHCに進化し高出力のため圧縮比が上がるうちに廃れたのである。

ケロシン発動機は通常サイドバルブ式である。シリンダーの横に上向きに吸気、排気バルブがあり、燃焼室はシリンダからバルブ上面を覆う扁平で広いもので、その境目寄りに点火プラグがある。扁平な燃焼室のため圧縮比が6程度と低く、一旦温まれば灯油はもちろんのこと、エンジンオイルでも廃油でも燃料として使える。

扁平な燃焼室は隅々にスラッジがたまり易いが、ヘッドにバルブのメカがないので2ストエンジンのように簡単にはずして清掃可能である。

ホンダと言えば真っ先のOHC化など先進のイメージが強いが、21世紀になって国内でもサイドバルブ式の発電機を販売していたし、現時点でもインド方面など低開発諸国ではサイドバルブの発電機をemkシリーズとして売っている。そして、これの中華製のコピー発電機が世界中に蔓延している。

これらにはメインの灯油タンクと別に小容量のガソリンタンクがあり、燃料コックのスタート位置ではガソリン、ラン位置では灯油が出るようになっている。また次回の始動のためにキャブのフロート室の灯油を排出してガソリンに入れ替えるためにドレンチューブに専用コックがついているものが多い。RobinのEY-Kシリーズではボタンを押すとフロート室下部からガソリンが入り、灯油をオーバーフローさせて排出する仕掛けが着いている。

さらにサイドバルブ式でないOHVの中型大型の灯油仕様EXKシリーズもいまだ販売されている。詳細は不明だが、おそらく厚めのガスケットで圧縮比をサイドバルブ並に落としていると思われる。これには、つまみを引っ張るとフロート室の灯油が排出される仕掛けがついている。

わが国でも富士重工がサイドバルブのケロシン対応のロビンEY-Kシリーズを平成19年まで製造していたし、これの中華製コピーも世界中に大量に販売されているのである。なお発電機は公道を走るわけではないので、ガソリンの代わりにケロシンをつかっても脱税行為にはならない。

ケロシン仕様のEY15-kをガソリン仕様のEY15と比べると、3600rpmの馬力が2.2/2.7とマイナス18.5%、2800rpmの最大トルクが0.62/0.682とマイナス9%、燃料消費率は380/280g/PSxHとプラス35%となっている。灯油の比重は0.8とガソリン0.75より重く、一方の熱量は36.5MJ/Lとガソリンの33.37MJ/Lより9%大きい。

とすれば、OHVのEF800でも変造すればケロシンが使えるのでは無いか?灯油でテストしたところ、無負荷では問題なく動作したものの、1200Wの過負荷ではコンコンガンガンと激しいノッキングに見舞われた。

そこで、EF800の圧縮比(推定8)を落とす工夫を加えてみた。

このような小排気量エンジンの圧縮比はプラグの細工で変えることが可能であり、過去このサイトでは圧縮比をあげる細工を何度か報告しているが、今回は圧縮比を下げる細工である。

まず第一段階として、碍子突出タイプのBPR6HSを通常タイプのBR6HSに交換することで、燃焼室は約0.1ccの増加である。写真でも容積の違いが理解できると思う。

次にアルミ座金2ミリ厚でプラグを2ミリ浮かすことで、プラグが16mm径で0.8x0.8xπx0.2=0.4ccを稼ぐことで計0.5ccのプラスだ。ただしネジ幅が12.7mmから10.7mmに減るので、熱伝導が良くつぶれ易いアルミ座金を使い締め付けトルクを厳重に管理する必要がある。ここでは内径16mmのオイルドレンのワッシャーを使った。

排気量84.4ccで圧縮比8とすれば燃焼室は10.55ccで、プラス0.5ccの11.05ccとすれば圧縮比は7.63まで下がる計算である。これ以上圧縮比を下げるにはヘッドガスケットを厚くしたり重ねる方法もあるが、バルブクリアランス等も調節する必要がある。

他に、フロート室のドレーンにはニップルが無いので適当なビニールチューブを接着した。、灯油使用の状態で停止した場合、フロート室の灯油を抜いてガソリンに入れ替える必要があり、このとき抜いた灯油を小容器で受けて石油タンクへリサイクルする。現在では特設タンク(ボートRC用)を増設し、ドレンボルトは頭にワッシャーをハンダつけして、指で簡単に開閉できるようにしてある。

燃料コックでガソリンと石油を切り替えるようにしたが、この燃料コックはoff位置でメインとリザーブが交通する仕様なので、停止時には別途メインのコックでオフにしないと勝手に混ざったりオーバーフローするので注意が必要である。これは老婆心と自分への備忘録のつもりで書いておく。

さっそく実験である。まずガソリンで起動し安定したら灯油に切り替えると、1−2分でフロート室の内容は灯油に入れ替わるが、無負荷の状態では発電機の振動も音もまったく変化しない

しかし、無謀なことに約41%もの過負荷である1200Wの湯沸しを繋ぐと、依然としてゴロゴロノッキング音が聞こえた。そこでガソリンを混ぜてノッキングが消える限界を調べると、ガソリン40%灯油60%でほぼノッキングは消失した。定格850wを少しオーバーした900w負荷では、ガソリン30%灯油70%でノッキングしなくなった。

1時間ほど負荷をかけてプラグを見たところ、予想したカーボンだらけではなく白色と焼け気味だった。ノッキングによるものと思われるので、対策としてはジェットを大きくしてリッチにもっていく必要があるだろう。これについては追って報告したい。

というわけで、EF900のOHVエンジンであっても圧縮率を下げればケロシン化が可能のようである。我が家ではEF900が25kgと重いために、軽いインバーター発電機やET600に比べて出番が少なく、自宅専用であるが、ケロシン化すれば低オペレーションコストとなりぐっと評価があがるだろう。

現時点では発電機に長く依存する生活は災害時以外には考えにくいが、灯油が使えればガソリンの備蓄も少なくて済み、キャブが詰まる確率も減って管理が簡単になる。いつ来るか解らない災害に対して石油で動く発電機があることは安心材料ではある。それにガソリンにかかる道路関連の税金払う必要が無いと考えるとビールが実にうまい

なお、気温が20度以上ならガソリンを使わずとも灯油で起動するし、それ以下の気温でも一度起動すれば、20-30分の停止後も灯油でも一発で起動する。現在はリコイルの負荷を減らす工夫をしるが、それについては次回報告したい。

というわけで、あなたの周囲に眠っている旧式のサイドバルブ式の発電機が最新型災害対応ケロシン発電機に生まれ変わるかも知れない。サバイバル製においては、廃物寸前の旧型発電機が、最新のインバーター発電機をコストと信頼性、災害対応性の点で凌駕するのである。

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ガソリン発電機の驚くべき低い効率と抜本的対策のナゾ(ケロシン発電機化は可能か?編)

発電機でいろいろ遊んでいるWebmasterであるが、ガソリンを補給するたびに思うことは、道路を走らない発電機の燃料に自動車を前提とした税金込み込みのガソリンを使うのは無駄では無いか?ということである。この手の発電機のOHVエンジンの圧縮比は8前後なので、粗製ガソリン(ナフサ)でも動くはずである。

そこでナフサが入手できるかと調べたが、基本的にはドラム缶単位でしか入手できず、コストも税金込みのガソリンと大差ない。なぜナフサが高いのかをしばらく考えたが、ナフサが安く簡単に入手できれば自動車に入れて脱税行為を行う業者が出てくるから、というのが理由であろう。もう一つは、一般ガソリンのような流通経路が無いということもあるだろう。

現状のガソリンには石油税がリッターあたり2.5円、ガソリン税本則暫定税率が28.7円、暫定税率が25.1円、諸費税が約11円の計約67円がかかっている。灯油価格は地域によって差があるが80円から100円程度であり、その差は税金ということである。この数字には輸入関税(原油は無料、ガソリンは1円)がかかっている場合もある。

さて現行の発電機はどれほどの効率なのだろうか?標準型の発電機EF900の定格は850Wである。従って一時間あたり、

850W x 3600sec = 3060000J/h = 3.06MJ/h

毎時0.6Lのガソリンを消費し、ガソリンの熱量を44MJ/kg、比重を0.75とすると、

0.6L/h x 0.75kg/L x 44MJ/kg = 19.8MJ/h

とするとEF900の効率は、

3.06 ÷ 19.8 = 0.154 = 15.45%

となる。1kwhあたりのコストは、

(1000wh/850wh) X 0.6L/h x 155円/L = 109.4円/kwh

電力料金は条件でかわるが25-30円/kwhなので、費用対効率は約4倍悪いということになる。

最新エコカーのガソリンエンジンの効率20-30%より低い最大の原因は、小排気量84.4ccで燃焼室の容積のわりに表面積が大きく熱効率が悪いことである。また強制空冷は夏季の最悪の環境で連続定格運転でも焼け付かない設計なので、通常は特にシリンダー下部がオーバークールとなり燃費が悪化する。

この手のエンジンの系統でもっとも効率が良いのはホンダ家庭用小型コージェネレーション(熱電併給)ユニット用エンジンGE160Vで、第二世代のMCHP1.0K1で、EF900より7%高い効率22.5%を実現しているという。その差の大半は多極発電機+インバーターと従来型のコンデンサー補償形発電機の差であろう。

EF900のエンジンの性能は入手できなかったが、排気量が近い同世代の汎用OHVエンジンROBIN-EH09-2D(86cc)の性能曲線をみると、3600rpmでの最大出力は約1.8kwである。(下図は外部リンク)

ブラシレスコンデンサー補償形発電機の効率は69-80%(ポータブルジェネレーター技術の変遷より)とブラシ式より若干低いので、中央値の74%を採用すると定格出力時のエンジン出力は、

0.85kw ÷ 0.74 = 1.15kw 

となる。この出力はEH09-2Dの推奨出力範囲の中央よりやや下にあり、スロットル開度は最大出力の約64%なので若干のポンプ損失が発生していることになる。従って、EGRあるいは吸気加温で体積を増してスロットルをさらに開ければ効率は上昇するかも知れない。

そこでスロットル開度を増やしポンプ損失を減らす目的で、マフラー周囲の温風をチューブでエアクリーナーの空気取り入れ口に導いてみた。

結果は失敗で、過負荷時のノッキングが増加した。体積水増しの温風で燃焼温度があがり、また空燃比が薄くなったことでノッキングが増加したのである。ノッキング領域では吸気温度に驚くほど非常に過敏で、自動車でEGRを水冷するようになった理由が理解できた。

推奨出力範囲の中央より下で使われる設定には十分な意味がある。それはユーザーは常に発電機を過負荷で使うからだ。

webmasterのEF900もティファール湯沸し1200Wをつないで沸くまで3分は持ちこたえる。実に定格の41%の過負荷で、この場合エンジン出力は1.62kw要することになるが、3600rpmの性能曲線を見ると、それは最大出力よりは低く推奨出力範囲の上限付近にある。

従ってエンジンは耐えるが発電機の巻き線が発熱するので、ブレーカーが適当な時点で介入することになる。以上の推定は過負荷を含め計算が一致するのでおそらく正しいのだろう。なお、この時のスロットル開度は最大出力時の約90%となる。

要するに、発電機の設定では最大50%近い過負荷でもかろうじて動作するように設計されているのだ。実際には1200W負荷で長時間の稼動は寿命を損なうことになるだろう。

要するに、EF900の効率をこれ以上改善する余地はあまり無いということである。それなら、最新のインバーター発電機の効率は良くなっているのか?

EU900i/EF900isの発電効率を計算すると、定格900W発電時のガソリン消費は0.66/0.58Lなので14.87%/16.92%となり、EF900の効率15.45%と大差ない。

これはEF900の排気量84.4ccに比べEU900i/EF900isの排気量が50ccと小さく排気量あたりの燃焼室表面積が大きいこと、また定格時の回転数が5000回転前後と高く、燃費が最も良い範囲をはずれることが関係しているのだろう。インバーター発電機の排気音は高回転のために数字以上に耳につく印象がある。

最近ホンダはEU16iを販売終了としEU18iを新発売した。排気量を98.5ccから121ccに拡大したというが、定格時の効率はそれぞれ16.48%/16.36%となり、排気量がEU9iより大きいことで熱ロスが低下しわずかに効率が向上している。しかし、通常型発電機EBR2300CXの効率16.95%、サイクロコンバーター発電機EB23の効率15.81%などとくらべると大差ないことがわかる。

さて、ホンダ発電機の中ではもっとも最古参で1985年発売以来33年間殆んど変わっていないEX4000シリーズの燃費を見るとと1985年版の効率が14.86%、現行のEXT4000の効率が15.83%とこれまた大差ない。さらにこれより前の1975年発売のEM5000の効率が14.23%である。

基本的にはガソリン発電機の効率はOHV化やCDI点火、多極発電機+インバーターなどをもってしても15-16%程度でここ50年ほどほとんど向上していないことがわかる。定格に近い負荷が常時かかる場合のコスパはメンテコストを含めて従来型発電機の方が圧倒的に良く、インバーター式のメリットは低負荷でエンジン回転を絞れることと排気量減少による軽量化にある。

ガソリンを使うかぎり、少なくとも定格時の効率はここ50年間改善していない。それなら費用対効果を上げるためには自動車関係諸税がかからない灯油を使えばいいのでは無いか?

仮にガソリンを155円、灯油を90円とすれば、ノッキング対策のために圧縮比を落として効率が低下したとしても、お財布から電力出力までの出費の効率は約15,45%から約21.8%に向上する。

そうすれば、1kwhあたりのコストは77.5円となり、費用対効は電力の3倍弱悪いところまで改善する。これならちょうど並のガソリン自動車のエンジンとほぼ同等の費用対効率となり納得がいくだろう。

燃料として石油(ケロシン)を使った問題となるのはノッキングである。オクタン値はノッキングしにくいほど高い。JISの定めるオクタン価はレギュラーで89以上ハイオクで96以上である。一方灯油や軽油ではセタン値が使われており、オクタン価とは逆に自己着火し易さを表す。オクタン価とセタン価は反比例するのだ。

公益社団法人石油学会豆知識によれば、セタン価60はオクタン価0に,セタン価0はオクタン価100に相当するという。灯油のセタン価は40前後なので、オクタン価に換算すると33程度と低いので、何らかのノッキング対策が必要となる。

というわけで、次回はEF900をケロシン発電機に変造した結果をお届けしたいと思う。乞うご期待である。

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ジャンクな中華製インバーター発電機SF-900復活と中華品質のナゾ(日本製と比較編)

今時は中国製はあまた存在しており、かのIphoneも中国製だし、手元のEF900にも中国製と書いてある。以前乗っていたスズキEN125も中国製だったが、これらは品質管理が良く、日本製の90%程度の品質はあったと思っている。

ネットで見ていると中国製の900W級インバーター発電機が売られている。これらは構造的にHondaのEU9iのコピー系(代表ブランドとしてはKIPOR)と、YAMAHAのEF900isのコピー系にわかれる。今回入手したジャンクはSF900と名乗っているとおりEF900isの劣化コピーである。

KIPORの製品はかなり流通していてWebmasterも実物を見たことがあるが、樹脂の成型もまずまずで品質管理は一応なされているようだ。コピー元のEU9iと同じくモナカ形筐体で重いタンク等を挟んで固定しているので、使ううちに筐体が変形して下が開いてくるかもしれない。一方のEF900isコピー系は相当数がかなりの低価格で売られている。

Webmasterが入手したEF900isコピー品は型番がSF900だが、SF1000F、EIG900D、YGSF1000、XGSF1000などとして売られている。点火の火花が飛ばないということで非常に安く入手することができた。個人的には単にオイル不足ではないかと思ったが、そんな単純ではなかった。

なお、900W級発電機は国外では1000W級の呼称で売られている。米国では110Vx9A=1000Wのものを電圧を調節して国内で100Vx9A=900Wとしているからだ。それと、国外ではなるべく数字を大きくしたほうが売れるようで、中国製では定格600wながら1000以上の呼称がついたものもある。

発電機は過負荷で常用されることが多い。手元のET600も900wで、またEF900も1200wで3分程度はブレーカーが落ちないほどブレーカーは鈍である。そもそもブレーカーの仕様がその程度の反応しか要求していないし、メーカーも多少の過負荷で使われるものとして設計している様子である。

さて、着いた固体を調べたところ、まず使用された形跡が全く無い。TORCHブランドの点火プラグも新品同様で排気パイプにススがない。キャブレターにはフロート室にかすかな汚れがあったが、ジェット類は新品同様であった。写真でわかるようにエアクリーナーも筐体内にも汚れが皆無で、この個体は工場出荷時は稼動していたが販売店に着いた時点では不動品となっていて長期放置されていたようである。

まずオイルを入れて見るが(クルーザーで使っていたディーゼル用CD30)、火花が飛ばない。いまどき中国製でも点火装置の不良はまれなので、オイルレベルセンサーかその配線の不良かもしれないと考え、分解して配線をチェックすることにした。

開けて見ると、配線の取り回しが非常に乱雑であり、コネクター類に無理がかかっている配線もある。オイルセンサーの配線は無様にでかい蓄電池充電用ダイオードブリッジ回路の下に押し込まれている。通常はキャラメル大のダイオードブリッジを使うが、不器用にディスクリートで組んであり、無用に大きな放熱板と太い電線が他の配線を圧迫していた。

配線のとりまわしを適宜に整理し、コネクターを着脱したところ火花が飛び始めた。

不動の原因は乱雑な配線によるコネクター接触不良が疑われるが、あるいはオイルセンサーのフロートが固着していたものがオイルで溶けて動作したのかもしれない。原因はともかく発電機は無事稼動し始めた。

個々の部品について観察結果を書いておきたい。

まずエンジンは国産に劣らないほど騒音や振動は低くスムーズに回っている。中華製の汎用エンジンは出荷数も多く部品の品質や組み付け精度も水準に達しているようである。エンジンオイルを交換したが金属粉などは無かったが、オイル補給孔の奥にネジを切ったバリが残っているなど、動作に関係ないところの仕上げはプアである。

次にキャブはEU9iのケーヒン製キャブのコピーのようだが、ケーヒンに似たマークでRUIXINGと記されている。成型は全般的には可のレベルだが、ノズルがはずれにくく、押し込むにも若干の力を要するなどわずかに精度は低い問題はチョークのつくりで、薄っぺらいアルミ板がチョークの樹脂製軸に挟まっているだけである。これで所定の動作はするのだろうが心もとない。

燃料ポンプ(中段写真の左側の円筒状のもの)はクランクケース内圧で駆動するタイプでアルミ製の汎用品がついており成型はよかった。これはEU9iやEF900isについているミクニ製のトラブルの多いポンプよりむしろ上等かも知れない。ポンプ配管はエンジンのヘッド部分から引かれており、ブローバイはクランクケース上部から引かれている。

EU9iもEF900isも燃料ポンプのトラブルは多いようである。ポンプへの配管がクランクケース上部から引かれていて、発電機が正立しない位置で使ったり倒れたりするとりオイルがポンプに流入する。この配管はポンプ内で弁を通じて大気開放されており、負圧が加わったときにポンプに流入したオイルはクランクケースに戻るようになっているが、流入したまま長時間放置されるとオイルが硬化してポンプ機能が不良となるのである。

配管をヘッド部位からとることでエンジンが少々傾いてもポンプへのオイル流入が起こりにくくなるよう一応の対策がなされているようである。この点はオリジナルより優れている。

クランクケース内圧駆動式のポンプのトラブルは多いようで、長期放置でのトラブルがキャブレターの詰まりだけでなく、燃料ポンプ系でも起こるのである。このためか、国産の最新モデル(EU16iやEF1600is)はポンプを使わずにタンクを発電機の上部に置いた重力式になっている。

配線類は電流が少ない信号線まで不必要に太い電線が使われていてくバルキーである。インバーターの部品は長期的な熱環境での不安があるが、当分のあいだなら過酷な環境でなければ動作はするだろう。部品類はシリコンで乱暴に包埋されている。

筐体の樹脂成型はまずまずで、チリもひどくずれていはいないが、エアクリーナーの樹脂成型が悪く、オイル含有でない粗い目のスポンジが隙間ありでゆるく詰まっているだけだった。これだと当初は微粉末は素通りだが、そのうちゴミで目詰りしてちょうど良くなるという考えか?埃っぽい環境で使うには最初にエレメントは交換すべきだろう。

一番成型がまずいのがインテークの樹脂部品で、ブローバイ配管のニップルの長さが足らず抜け易い。ブローバイの配管中央に重い金属性エルボーがぶらさがるので、配管を十分奥まで押し込み確実にクリップで止める必要がある。この個体ではチューブを曲げずになぜか不必要に大きく重い真鍮製エルボーが多用されている。

なお燃料ポンプとキャブの間に燃料フィルターが入っていた。WebmaterのEU9iとEF900isでは燃料ポンプの清掃後にポンプ内のゴミがキャブに流れてジェットが詰まったり、ニードルバルブに詰まりオーバーフローしたことを考えると、悪くない対策ではある。発電機に限らず、中華製エンジン機器では燃料コックのフィルターだけでなくキャブまでにもう一つ燃料フィルターを着けるのがお約束のようだが、それだけガソリンの品質に問題があるのだろう。

なお、写真のタイミングでは写っていないが、この発電機はなぜか定格900Wでも過負荷警告灯が点滅する。その回路やロジックは不明だが、インバーター回路に多数の半固定抵抗が多数あるところをみると、アナログ的に閾値を設定していてそれが出荷時に正しく設定されていないのかも知れない。

さらに、ネットで拾った説明書によれば、過負荷で警告ランプが点灯しても出力はカットされないという。つまり国産インバーター発電機と違って、過負荷をかけても警告だけで発電機を保護する回路は無く壊れる可能性がある。そのために早めに警告灯が着くようにしてあるのかも知れない。

Webmasterがこの発電機を常用するなら、やはりヒューズかブレーカーを入れないと危なくて使えないと思った。

基本的に、この発電機は電子回路やエンジンの技術面を十分理解していないもののコピーする能力はある人間が設計し、何も知らない人が組み立てているようである。ただし、不良が多発した部分には手探りで稚拙ながら対策がなされており、国産品より優れた部分も少数ながらある。全般的に、電線や部品には無用に過剰品質のものがある反面、樹脂成形は品質不良だったりする。

ようするに、技術的に熟練した技術者の設計や製造管理が不足しており、そこが一流ブランドが厳しく管理している中国製品との大きな違いであろう。

結論として、この発電機をどう考えるか?である。

代理店が整備を追加し、運がよければ数年の寿命はあるように思う

おそらく販売店に着いた時点でいくばくかの数は不良で動かず、その後も次々に脱落していく雰囲気である。市価は安いところで3万円台からなので、ある程度技術と経験のあるユーザーが過負荷に注意しつつ、たとえばタイヤウォーマーのような決まった負荷の用途であれば一応は使えるものの、壊れれば部品が入手できないので修理できう廃棄となるだろう。

monotaroでは、EU9iやEF900isは部品のほぼ全てが販売されていて、たとえリングとシリンダーが擦り切れても、またインバーターが壊れても、費用対効果は別として修理は可能である。一方、中国製は部品の供給が不明なので修理は難しい。手元に着たら若干の整備を加え、大きなトラブルが発生したら使い捨て、という使い方になるだろう。

Webmasterは整備のコストを乗せて早々に処分した。これを買った人はラッキーだが、世の中には出来損ないをつかんで早々に駄目になる個体を引いたユーザーもいるだろう。

最近は国産に近い品質の中国製品を目にすることが多くなったが、今回は久しぶりに中華のブラックホールを垣間見た雰囲気である。

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インバーター発電機EU9iのPATpend.山本式燃料コックオフ運転ポジション新設変造のナゾ

今回は、PATpend. 山本式燃料コックオフ運転ポジション新設法である

ご存知の通り、EU9iの運転スイッチは燃料コックと一体で、運転オンから運転オフ側に右に回すとすぐに運転が止まり、その後燃料コックが締まる設計になっている。運転オンからオフまでのスイッチ回転角は約90度だが、運転オンから運転停止までは20-30度程度と小さい。

これでは、運転終了時にガソリンがキャブのフロート室に溜まったままで、放置するとガソリンが蒸発変質しガム分でジェット類が詰まることになる。多くの発電機がキャブ詰まりのためワンシーズでその生命が終わり、その後死蔵されるという流れである。

これを解決するには、運転スイッチを運転オフ側に約70度回したポジションで運転したまま燃料コックのみが閉じる機能を新設し、さらに20度右に回しきると運転オフとなるようにすればよい。

EU9iの運転スイッチは基本的に燃料コックであり、ダイヤルの裏のカムがカム板を動かして運転スイッチを押して運転オフにする。正確には運転スイッチではなく、押されるとイグニッションコイルを強制接地して止める運転停止スイッチである。

新しいポジションを作るには、ダイヤルの裏のカムの形状を変えればよい。もちろん、白いカム板や運転オフスイッチバーを削って短くしても同様の効果があるが、ダイヤルのように簡単に脱着して動作を確認できない。またダイヤルへの細工なら、仮に失敗(あり得ないと思うがパーツ代は500円)しても、ダイヤルの購入だけで済む。万が一にもカムを切りすぎて停止しなったら、蓋をあけて運転停止スイッチを指で動かせばエンジンを止めることはできる。同じ方法はeu16iでも有効である。必要なのは良く切れるカッターと瞬間接着剤だけである。

細工の手順は?

まず、ダイヤル裏面の写真を穴があくほどよく眺めて欲しい。上の図はダイヤル裏面のカムの細工、下の図は運転スイッチの軸とカム板、運転ストップスイッチの位置関係を示している。カム形状の変更には少しずつ切り増して試すという手順のため多大なるリサーチを要した。

一言で言えば、下図のBポイントにカムの角がくればちょうど良い塩梅になる。

まずダイヤル中央のねじをゆるめてダイヤルをはずす。

左図は運転スイッチのダイヤルを裏から見たところだ。指標は左上を向いている。ダイヤルが左回転(表から見れば右回転)すると、カムが右側のカム板を押し、板が運転オフスイッチを押すことになる。

下の図は本体の該当部分で、右側にある燃料コック軸にはまるダイヤルのカムが白色のカム板を左に押し、それが左にある運転スイッチバーを押して運転オフとなる。

ダイヤルは柔らかい樹脂でできているので、切れの良いカッターだとバターのように簡単に切れる。まずAポイントを上からダイヤルの裏まで切る。次にダイヤル裏面に沿ってカムとの間をBポイントまで切る。白く塗られているところが切断された部位である。

次にBポイントのカムの裏側(内側)にカッターで浅い線を2,3本いれ、ラジオペンチで右図のように曲げる。余った部分は適宜カットする。目安としては、Bポイントは、燃料コック軸の四角□の対角線の延長上にあり、指標とはちょうど90度のポイントである。このままでもまったく問題無いが、念のために曲げたカム下部をダイヤル面と瞬間接着剤で固定すれば完全だろう。

と書いたが、実は単にAポイントからBポイントまでのカムをカットするだけでも問題なく動く。Bポイントでカム面を曲げたのは、Webmasterの美的感覚の所作に過ぎず、動作させるだけなら優雅なカム面は必要ない。いきなりBポイントでカムの切れ端が出現しても、カム板は問題なく動作し目的は達成される。

ただしカム板とスイッチの動作については発電機に個体差があるので、Bポイントの1-2mm前のところでカットし、動作を確認しながらちょうど70度になるように仕上げて欲しい。

早速発電機にセットしてみよう。ダイヤルを軽く燃料コック軸にはめ、左右に回してカムがすんなり収まるところでさらに押して、ねじで固定する。

運転オン状態からゆっくり右に70度回すと、運転オフスイッチのカム板を押し初めるために少し重くなるところが目的のポジションだ。この時点で燃料コックの軸は70度近く回っているので閉じている。実はEF900isも燃料コックは70度ほどしか回転していない。

この状態で2,3分運転すると、ガス欠で発電機が止まることを確認する。うまく行ったら、パネルにマジックで印●をつけておこう。

最後にダイヤルを右に止まるところまで回すと運転スイッチもオフとなる。運転からキャブの残余ガソリン対策までが連続した操作で可能な点が優れていると思う。

この<山本式コックオフ運転ポジション新設法の良い点は、この改造がなされた事を全く知らない人でも、まったく違和感無く通常の動作で使えることだ。

あなたのように繊細な人はごく自然な操作で燃料コックオフポジションまで操作できるだろう。少し回し過ぎてエンジンが止まりかけても少し戻せばエンジンは回り続ける。発電機がガス欠で止まった時には、フロート室の油面はメインジェットより下になっているから、少々放置してもメインジェットが詰まることは無い。なんとエレガントなことだろう。

老婆心コーナー

ファイトの足らない方は、カム変造がどうしても不足気味になるかもしれない。それでも、ダイヤルが急に重くなる天使のポジションでおそらく燃料コックはオフになっているだろう。もし5分たっても止まらないなら、もう少し切り足せばよい。

ファイトのあり過ぎる方は、カム変造がどうしても大き過ぎになるかも知れない。そうすると、ダイヤルを右に回しきっても発電機が止まらないかも知れない。その時は、運転停止スイッチバーと白色のカム板との間に何かを両面テープで張って間隔をつめればよい。止まらなくてもあわてる必要は無い。蓋をあけて、下にある黒いスイッチのポッチをちょんと押せばエンジンは止まるのだから。

石橋をたたいても渡らないタイプの人は、500円でダイヤルのスペアを確保されてからトライされたらどうだろうか?

いずれにせよ、写真を見てベストポジションのBでカムが曲がっていれば100%うまくいく。

しかし、20年近くEU9iを売っていてサービス部門は毎年のシーズン前には詰まったキャブの修理で忙殺されているハズだが、それでも改良しないホンダの頑固さは驚くべきである。

実は、ホンダは新発売のeu18iで同様の原理のポジションを初めて導入した

ところをみると、やはり相当苦情が来ているのだろう。カムの形をわずかに変えたダイヤルを作るだけでメカに手を付けずに実現できるのだが、改良しなかったのは、実に革新のホンダらしくない。

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ジャンクなインバーター発電機EU9i復活のナゾ(EF900isと比較編)

スマホ操作の誤りでうっかりジャンクなEU9iを落札

3台の発電機が復活したのでご機嫌であるが、やはり気になるのはホンダ製インバーター発電機EU9iである。これが発売されたのは1998年6月であり、小型軽量低騒音など小型発電機の概念を塗り替えた意欲作である。

その前に2ストインバーター発電機EX300が1987年に発売されている。それから10年間の半導体と電子制御技術の進歩で電子スロットル付きキャブと正弦波出力インバーター付き発電機が実現したのである。もちろん、ホンダは過去多極発電機兼モーターによるアイドルストップ付の原付などでちゃくちゃくと腕を磨いており、それはハイブリッドカーや家庭用ガス発電機などの基礎技術となった。

買うつもりもなくスマホでEU9iの出物を見ていたら、手が滑って変なボタンを押したようで、ジャンクなEU9iを落札してしまった。説明では圧縮あり始動しないジャンクとだけ書かれており、通常は詳細不明な物は落札対象としないのだが、落札したからには何とか動くようにしなければならない。

ジャンク落札価格はEF900isジャンクの実に3倍

落札した発電機は2005年製造と古いが、その時点で発売から7年たっており、致命的なトラブルは一通り解決された頃の代物であろう。落札価格が高いのは、基本的にEU9iが大人気だからであろう。

マニュアルはホンダのサイトからダウンロードでき、回路図をみたところ2002年8月発売のEF900isと殆んど同じであった。というか、EU900isはEU9iをパクッてヤマハ流の改良を施したものなのであろう。

外装傷多いが欠品なし、メンテの形跡も無し

届いた代物は外装には傷が多いものの部品などの欠品は無かった。色はグレーで官公庁もしくは関連業態向けのリース製品だったようだ。始動不良のためか荒くリコイルが引かれた傷跡が残っている。オイルはごく最近交換されたようでほとんど汚れていなかった。

まずメンテには殻を割らなければいけないが、ネジ類が非常に硬く締まっている。ハンドルのネジ2本はインパクトドライバーで、底の2本のねじは奥にありインパクトドライバーが届かないのでCRC5-56を吹いて一昼夜待ってプラスドライバーをスパナで回すことでやっと緩んだ。底のねじは白色の錆びがあることから、この個体はおそらく一度も殻割されたことが無いのだろう。

殻割してみると、この製品はパネルの左側(蓋やリコイルがある側)を下にして寝かして組まれる設計のようだ。内部部品の配置はEF900isとおおむね同じだが、インバーターやタンクは左右の殻で挟まれて固定されるので、殻をはぐとピノコ状態で散乱する。EF900isは底板に対して自立して点検や動作可能なのに比べ、EU9iを殻割するにはガソリンやオイルは抜いて行い、また殻割した状態では作動状況の点検は難しい

エンジン部分はなんとか自立できるが、燃料ポンプやコック、始動スイッチなどが操作パネルから見て左側の殻にネジ止めされていて、メンテしにくい。タンクやインバーターをゴムを介して支持する右側の殻のポッチ2個はタンクが重い時に荒い扱いをされて折れたのであろう。おそらくタンクの重量のために付近のパネルが歪んでいるなど、強度的にも無理な設計のようだ。EU9iのメンテ性はアップル製品並みに悪いが、ヤマハのEF900isのメンテ性は改良されている。

殻割すると、うっすらとホコリをかぶっているものの、エンジンカバーの板金に汚れや変色が全くないなど、やはり使用時間は短い個体であると推定される。後に始動後に起動ランプを確認したが、点滅していないのでこれが正しければ、使用時間は100時間未満ということになるが、本当だろうか?

まず燃料系、タンク、燃料ポンプへ

燃料タンクの配管を抜き燃料フィルターを点検したが、ゴミはなかった。タンクは灯油で洗ったがゴミは出てこなかった。 コックの通過は良好だが、問題はまたしても負圧式の燃料ポンプで、周辺には大量の油汚れがあり、そこから両側殻の下面に大量の油が蓄積していた。この油は燃料ポンプの大気開放の網から出てきたもののようである。燃料ポンプはMIKUNI製でEF900isとまったく同じ代物である。

この製品もEF900is同様に燃料タンクの蓋は密閉できる仕掛けがあることから、移動したり倒したりしてもガソリンは漏れない設計である。しかし、左側に倒したまま放置するとクランク室からオイルセパレーターを経て燃料ポンプの大気開放の窓からが筐体内に漏れるようである。一方ブローバイは倒しても漏れてこないところから、本来は燃料ポンプ駆動の負圧は倒してオイルが来ないOHVのヘッド付近からとり、燃料ポンプも倒してもオイル面より高い中央付近に置くべきだと思う。

この燃料ポンプも陽圧陰圧を加えても動作する気配がなく、吹くと大気開放の窓から粘度の高い油が出てくる。これもパーツクリーナでダイアフラム室を洗浄したところ陰圧陽圧でカチカチ音がするようになった。オイルが劣化して粘度が低下すると油煙が増えて燃料ポンプまでやってくる。本来は負圧の時に大気開放の窓から新気を吸って油煙をクランク室に戻す設計だが、油煙が大量になると戻しきれずに滞留して変質し時間がたつとダイヤフラムが作動しなくなる。

この発電機の始動不良の原因の一つは、負圧式燃料ポンプの負圧室への油の貯留による動作不良だろう。

次は吸気系、エアクリからキャブまで

エアクリーナーエレメントはウレタンの加水分解で崩壊寸前であったものの汚れは無かった。おそらくエレメントは生産時のもので、一度も交換されていない可能性大である。

次にキャブだが、ホンダが41%の株を持つ京浜製の発電機用キャブは構造が合理的でなく、フロート支持やニードルバルブの座面が一体式の樹脂で劣化しやすく、メインジェットがキャブを外さないと抜きにくいなど、設計と保守性はMIKUNIより劣るというのが一般的な評価である。さすがにベストセラーのEU9iのキャブは供給されると思うが、既にフロート室の樹脂部品の供給がないために使えなくなったホンダ製発電機があると言う。EF900isはホンダ子会社の京浜製ではなくMIKUNI製ャブである。

予想に反して、キャブはメイン系もスロー系も詰まりは無かったが、スロットルやチョークにはブローバイが大量に付着していた。一方、USBカメラでインテークを覗いてみると、バルブステムにはデポジットがなかったが、バルブフェイスには多めのデポジットがあった。バルブのステムとフェイスのデポジットの付き方がEU9iとEF900isとで違う原因は定かでないが、EF900isの方がエコノミーモードがより低回転で長時間運転が可能なことが原因の一つであろう。

プラグは超汚かったが、USBカメラで見た燃焼室はきれいだった

プラグはEF900isと同じCR4HSBで、非常に硬く締まっていて点検された形跡がない。

しかし碍子周囲の凹みはブローバイ由来と思われる黒く油っぽいデポジットで埋まっており、接地電極にデポジットのつららが下がっているなど、プラグの状態は最悪であった。一方、ピストン表面にはほとんどデポジットがなく使用時間は短いようだが、おそらくプラグ付近から落下したと思われる黒いデポジットが散乱していた。これは細いチューブで吸うことで除去した。リング等もプラグと同様にデポジットで固着している可能性があるので、ふやかすためにシリンダ内にオイルを多めに注入しておいた。

EF900isではピストンがきれいだがバルブステムにデポジットが大量についていた。プラグは欠品だったので状態はわからない。一方、EU9iはバルブステムとピストンはきれいであるものの、プラグは非常に汚かった。

従来の常時3600rpmで回る発電機ではあまり経験しない観察結果だが、ヤマハ製とホンダ製の両者に共通する面もある。、ピストンにはデポジットがなくバルブステムやプラグだけにデポジットがあるのは、一つはブローバイが多いこと、もう一つは定格時は高回転5000rpmだが、エコモードでは低負荷低回転の運転時間が長いというインバーター発電機の持つ二面性の現れではないか。

この発電機の始動不良の原因の一つは、プラグなどへの大量のデポジットの付着であろう。

あっさり始動、始動不良の原因は燃料ポンプと点火プラグのデポジット?

ガソリンを入れリコイルを引くと、大量の油煙とともに始動した。油煙はシリンダに注入したオイルのせいのようで、2,3分で消えた。ガソリンにはヒューエルワンを添加してエコモードオフである程度回転させ、プラグの汚染がどうなるか観察中である。オイルはおそらく10W-30と思われる新油が入っていたが、フラッシングと割り切って近々10w-40に交換予定である。

今回の売り主は修理再生はトライせずにオークションに出した様子である。そのため殻割した形跡もなく、プラグすら点検した形跡がない。その理由は、本田EU9iは人気商品でジャンクでも高く売れるために、あえて再生させなくても利が乗るからではないかと思う。

EU9iを良好な状態に保つ方法

これはEF900isの場合とまったく同じである。基本的にインバーター発電機はオイル劣化で粘度が低下するとブローバイの増加や燃料ポンプのトラブルが発生しやすく、またエコノミーモードでの軽負荷低回転のため、インテーク、バルブ、プラグなどにデポジットが蓄積しやすい。そのため、

1)オイル交換をマニュアル通り100時間毎に行う。
2)オイル指定は10W-30だが、粘度を維持してブローバイを減らすために良質な10W-40を使う。
3)数100時間毎にはキャブをはずしインテークからバルブのステムを観察し、汚染している場合は掃除する。

である。また時々はエコモードをオフとして、あえて高回転で運転しデポジットを燃やし切ることも大事だ。これは市街走行ばかりしている乗用車でエンジンにデポジットがたまり不具合が起こるのと同じことである。

最近の発電機にはオイル量センサーがあり、油面がさがると止まるようになっている。通常のユーザーは100時間毎にオイル交換することはなく、オイルが減って止まって初めて交換するか、あるいはオイルを足して使う可能性がある。そうするとオイルは劣化して粘度が低下するのでブローバイが増えてくる。

そもそも汎用OHVエンジンが設計されたときにはインバーターは存在しなかったので、常時定格で動作する前提で設計されている。通常はプラグやバルブは高温となるので定格運転では付着したスラッジは焼け切れるが、エコノミーモードでの低回転低負荷の長時間運転ではプラグやバルブ温度が上がらず、ブローバイの増加によるスラッジが沈着する、とWebmasterは考えるが、どうだろうか?

EU9iとEF900isのどちらを買えばいいのか?

いろいろな意見があるだろう。まずサイズは一見EU9iの方が小さく見えるが、それは角が取れたデザインによる錯覚で事実上ほぼ同じ、重量も13kg前後でほぼ同じである。ただし、EU9iは角が丸いので移動時に体への当たりが少しやさしい。

機械騒音はほぼ互角だ。EU9i内部にはスポンジは貼られていないものの、卵形の応力外皮樹脂製モノコックが振動を抑制し剛性を保つ、高度なホンダ的手抜き設計である。デザインもネジの露出を避けきれいに作っている一方、タンクやインバーターはゴムを介して左右の外殻に挟まれることで支持されている。殻割すると部品は支持を失い散らばるので立てたまま稼働できないなど、メンテ性は最悪である。またタンク満タンで放置すると変形して樹脂製筐体の下端が開いてくる。

EF900isは四角いため内部パーツの配置に余裕がある。多数スポンジが貼ってあるのは平板なパネルが振動しやすいからであろう。機能はパネルに集中されて解りやすいが、部品の取り付けネジが露出しているなど、ヤマハにしては無骨である。しかし、殻割しても内部パーツが底板の上にすべて自立しているので、稼働しながらメンテが可能である。

排気音は、EU9iは排気口を小さく絞ることで抑えられている。騒音のカタログ値は78db(1/4負荷)〜86dB、3/4負荷で83dB(LWA、ISO03744)だと言うが、メーカーの言う騒音価はあてにはならない。EF900isは排気管が太く低音でドスの効いた排気音がEU9iより少しうるさい印象で、カタログ値は48.5dB(1/4負荷)〜60.5dB、3/4負荷で86dB(LWA、ISO03744)で、数字はあてにはならないもののEU9iよりLWAで3dB高い。Webmasterの個体にはアレスターがついておらずうるさく感じたので、聴感上EU9iと同等になるまで排気管からステンレスタワシをつっこんである。

性能的には互角だが、エコモードではEF900isの方が低回転まで落ちて騒音が小さく運転時間も長い。そのかわり、低回転からの過負荷への反応はEU9iの方がす早く、短時間でも電圧低下すればリセットがかかる機器との相性には差がある。過負荷への許容度はEU9iの方が大きいようだ。

EU9iはタンクが2.1Lで運転時間は7.1h(1/4負荷)〜3.2hに対し、EF900isはタンクが2.5Lで11.9h(1/4負荷)〜4.1時間と50%以上長い。しかし、エコモードでの長時間運転ではオイルの劣化も進むしブローバイが増加してインテークや燃焼室にスラッジが付きやすいので、オイル管理が重要になる。

通常の900W発電機ではガソリン2.5Lで4時間運転なので、オイル交換は100時間毎とすれば満タン25回毎になる。一方、EU9iでは100時間毎は低負荷なら満タン14回毎、EF900isでは満タン9回毎となり、印象的にはより頻回のオイル交換が必要になる。

どちらも旧式のOHVで独立したオイルポンプが無く、コンロッド下端がオイルを跳ね上げてその油煙で潤滑する。回転数も、通常タイプが3600rpmなのに対し、インバータータイプは定格時5000rpm以上になるので、オイルの剪断と乳化が進み劣化も早くなる。オイル量はEU9iが250ml、EF900isが320mlと多く耐久性は若干有利だが、絶対値としては大差ないともいえる。

性能的には近接しているが、価格は人気のEU9iが高めで10万を切ることは稀である一方、OEMも多いEF900isは8万台のものも見かける。軽くて燃費が良いのがインバータータイプの美点だが、作りがちゃちでエンジン回転数が高く電子部品も多いことから、災害時の絶対的な耐久性では通常タイプの方が勝る。また、騒音も低負荷時は静かな反面、定格時には通常タイプと大差無いか、あるいはうるさくなる。インバーター式が万能というわけではなく、定常的に負荷が重い用途なら通常型の方が向いている。

で、お前はEU9iとEF900isのどっちがいいのか、と聞かれればEF900isを取りたい

理由は燃料コックが運転スイッチと独立していることで、運転停止前に燃料コックを閉じてガス欠停止させることで、キャブに残るガソリンを減らすことができる。たとえば電気ポットで湯を沸かすときには、最初に燃料コックを閉じると、適度に沸いたころにガス欠エンストでとまる塩梅である。

一方EU9iは燃料コックと運転スイッチが同一なので頻繁な運転には便利だが、残ったガソリンでキャブが詰まりやすい。それなのに、京浜製キャブのドレンはネジが下を向いていて操作しにくいなど、親切さが足らない設計である。ドレンは手で回せるように大きめのつまみをつけておくべきでは無いか?

結局のところ、長く使う上で一番大きな違いは燃料コックが独立しているかどうかであり、それによりキャブ詰まりへの耐性が異なる点である。EU9iのこの問題に対する解決方法は次のトピックで読者にプレゼントするので、こうご期待!

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ジャンクなインバーター発電機EF900isの弱点のナゾ(絶望からの復活編)

2台の発電機が復活したのに気を良くし、気づいた時にはインバーター式発電機のジャンクを落札していた。

写真では外観などはまずまずで点火プラグの蓋や裏蓋はあるが燃料キャップがない。ということは、燃料タンクにホコリがたまっているということである。リコイルの紐が見えないが切れているだけか?裏蓋を開けた写真では臓物は揃っているようだが、部品取り用のジャンクとの説明なので、なにか欠品があるかもしれない。これが治せるかどうかは、かなりのカケである。まあ治せなくても、現代のインバーター発電機がどうなっているかの勉強にはなる、と自分に言い聞かせての落札である。

物は企業か役所が大量に放出したものを業者が複数入手し、オークションで簡単なメンテで治った物は高く売り、治る見込みが低いものは安く出品したのであろう。インバーター式で問題となる電子部品は、日本製なので故障はしていないだろうという読みである。これは高価なので、これが故障している場合は修理は放棄すべきであろう。

思わぬ欠品リコイルスターター

裏のねじ4個、排気穴のねじ4個、取っ手のねじ3個、前のねじ1個をはずすと、筐体カバーの後ろ半分がとれる。観察すると部品はそろっているようだが、なぜかリコイルスターターが無く冷却ファンが露出している。それと点火プラグがない。

冷却ファンを回すとかなり重く回らないところがある。この時点で業者は、長い放置でピストンが固着もしくは焼き付きでリコイルが動かなくなったか紐が切れたのでリコイルスターターをはずし、手で冷却ファンを回したが重くて回らないので修理をあきらめたのだろう。

Webmasterも最初はピストンの固着か焼き付きと考えた。点火プラグをはずして長く放置するとピストンリングとシリンダーが錆びて固着することがある。しかしオイルセンサーがありインバーターが回転数を制御するので、焼き付きの可能性は低いと考えた。固着や焼き付きが高度な場合はシリンダーとピストンを交換が考えられるが、このエンジンではシリンダーとクランクケースが一体である。

とすると、手間および費用的にペイしないかも知れ無い。それなら完動な中古を購入するほうが安くつくのでは無いか?Webmasterのカケは失敗したのか?普通なら絶望的だが、何とか解決策はあるのか?

USBカメラで燃焼室を観察してみる

USBカメラでプラグ穴から観察するとシリンダ壁は錆びも無くきれいで、驚くべきことにピストンにはデポジットが殆んど無くアルミの地肌が露出しており型番などの数字が読める。ということは、焼き付きではなく使用実時間も短かい(おそらく数百時間以下)と推定される。エアクリのエレメントも劣化もなく殆ど汚れていないことからも、使用実時間が短いことは確実だ。透明な新しいオイルが入っていたが、売り主が交換したのだろう。

2回転に1回重い部分があるが?

フィンでクランクを回してみると、2回転に一回重い部分があることの気付いた。シリンダの固着や焼き付きなら毎回重いはずだが、2回転に一回重いということはバルブ駆動系に問題があるのだろう。

キャブをはずしてインテークをのぞくと、果たしてバルブステムにデポジットが大量に付着しており、これが邪魔をしてバルブ駆動が重くなっている。しかし、ピストン表面が新品のようにきれいなまま、バルブステムだけが汚れるのだろうか?

パーツクリーナーをかけながらインテークからバルブステムのデポジットをこそぎ落とした。そしてエンジンを真っ逆さまにして5分放置し、バルブ周りに油を回してみた。この発電機は燃料の蓋にエア遮断弁がついているから、逆さまにしても問題は無いはずだ。

そうすると明らかにクランクの回転が軽くなった。そこで点火プラグ穴から5mlほどオイルを入れて電動ドライバーでクランク軸を30秒間モータリング、30秒休止を数回繰り返すと、クランクには重い部分はなくなり軽く回るようになった。 回転させながらインテークやプラグホール、排気パイプの圧力を見たところ、エンジン自体は吸気圧縮爆発排気の工程は働いているようである。新油とパーツクリーナーの掃除で、バルブステムも次第にきれいになった。この発電機が故障した原因の一つは、吸気バルブステムの付着物によるバルブ固着であろう。

欠品のリコイルスターターは手に入るか?

問題は欠品のリコイルスターターだが、モノタロウで比較的安価で手に入った。リコイルスターターは消耗品であり、紐が切れた場合は紐だけ、紐の付け替えが面倒な客にはアッセイとして供給するように価格が安めに設定がされているのである。キャップも比較的安価であった。

クランクが回るようになったところでタンクを点検した。タンクの底に挿入されている燃料フィルターには汚れがついていたので掃除し、タンク内は灯油で洗った。燃料コックもタンク側から燃料ポンプ入口までと、燃料ポンプ出口からキャブまで空気で通じていることを確認した。キャブの前に燃料系を点検清掃したのは、川上から川下へという燃料の流れを意識することで、EF9Hでの失敗を繰り返さないためである。

キャブはET-600やEF9Hと同じ系統のミクニの小丸メインジェットのやつで、ステップモーターでスロットル開度を制御する以外は通常の発電機と同様である。メインジェット、ニードルジェット(正確にはニードルが無いのでノズルと呼ぶらしい)、パイロットジェット、アイドルポート、スローポート(バランスポートとも))、アイドルアジャストスクリューなどを点検清掃したが、詰まっていたのはメインジェットだけだった。

3日ほどでリコイルスターターが届き、組み込むことができた。この時点で運転スイッチを入れて紐を引っ張ると、点火プラグから火花が出ることを確認できた。ネットで入手できたサービスマニュアルによると、点火系統は、回転オーバーを防止するレブリミッターがあるものの、インバーター回路とは完全に分離しており、通常型の発電機と殆んど同じであった。運転スイッチもインバーターには接続されておらず、単に点火コイルを接地するだけである。

インバーターは発電するようになって初めて起動しスロットルを制御するようになる。スロットル制御が始まるまでにスロットルが開いていてオーバーレブすることを防ぐために、インバーターと完全に独立したレブリミッターが設けられている。吸気温や吸気圧センサー類は一切なく、スロットル開度が電子的に制御される以外は旧来のキャブ式発電機と同じである。

なぜか燃料ポンプが動作しない

燃料ポンプはクランクケースの気圧変動で動作するようになっている。しかし、タンクにガソリンを入れて20回ほどリコイルの紐をひっぱったが、一向にキャブのフロート室にガソリンがやってこない。キャブへの配管を吸うとガソリンがあがってくることから、燃料ポンプだけが動作していないようである。燃料ポンプアッセイもmonotaroで手に入るので注文して届くのを待つことにした。

サービスマニュアルを見ると、ポンプにつながる3本のチューブにクリップがついていることになっているが、1か所しかなかった。おそらく売り主は燃料ポンプをはずし動作を確認したが不良と判断したのだろう。これとクランクが重いことから、修理をあきらめて部品取りとして出品したものと想像される。

サービスマニュアルに燃料ポンプのチェック方法が!

サービスマニュアルを良く見ると、燃料ポンプのチェック法が書いてあった。それによると、

A部(クランクケースにつながる部分)を吸ったとき→通路(大気開放の網)が開く A部を吹いたとき→通路が閉じる

とある。クランクケースの圧力変動で燃料ポンプのダイヤフラムが往復動作し、弁があることでガソリンが移動するしかけなのだが、吸っても大気開放されず、吹いた時に大気開放の網から粘度が高い油分が出てくることに気付いた。

クランクケースから油煙が燃料ポンプまで届くが、吸うときだけ網を通じて大気を吸うことで、油煙がクランクケースに戻るセルフクリーニング機能を持たせてある。クランクケースの換気は、燃料ポンプから新気が吸われ、ブローバイ配管を通ってキャブに吸気されるので、内圧バルブを仕込む余地はあるようだ。

この個体では、クランクケースから来た油煙がポンプ駆動室に滞留して粘度があがり、ダイヤフラムが動作しなくなったようである。発電機が故障した第二の原因は、燃料ポンプの動作不良であろう。

そこでクランクケースにつながる穴からパーツクリーナーを注入し、陽圧陰圧を加える操作を繰り返すと、内部からカチカチ音がするようになった。そこで燃料ポンプをセットして数回リコイルを引くと、フロート室のドレーンからガソリンが流れてきた。ポンプ機能が回復したのである。monotaroで注文したポンプは無駄になったが、様子をみてネットで処分することにしよう。

発電機が故障した第二の原因は、燃料ポンプの動作不良であろう。

ついにエンジンが始動、だが油断ならない

キャブのドレーンを閉じてリコイルを数回引いたところ、ものすごい油煙を出して発電機が起動した。油分はモータリングの時に大量に入れたオイルが燃えているのだが、2,3分で油煙は消えた。

しかし何か下に漏れている。キャブのオーバーフローである。燃料ポンプ内のスラッジがフロートのニードル弁に詰まったのようだ。フロート室を開けてフロートを上下に動かすとスラッジは取れオーバーフローは治った。

起動すると緑の動作ランプが点灯し、負荷としてつけた白熱電灯も点灯し、エコノミーモードにすると回転数も落ちてアイドリングになった。ついに修理が終了したのである。

売り文句に反して定格フル発電時はうるさい

発電機の機械部分の騒音は二重のケースで抑えられているが、定格出力時の排気音はEF9Hと大差なく、ET-600より明らかにうるさい。ET-600やEF9Hと同様にステンレスタワシを紐状にして排気口から挿入したところ、高周波音が減り、低音が主となったが、それでも相当うるさい。ヤマハはバイクや車のマフラーの設計では一家言あるはずだが、それにしてはこの騒音は手落ちであろう。

インバーター発電機の故障の原因を推理する

今回明らかになったのは、

1)吸気バルブステムにデポジットが沈着してバルブが固着しクランク回転が重くなったこと。
2)燃料ポンプにクランクケースから油煙が貯留変質し、ダイヤフラムが動作不良となったこと

その理由としては、長らくオイル交換をしなかったためにオイルが劣化し粘度が低下した。あるいは古いガソリンを常用したのかも知れない。このためブローバイが増えそれがバルブステムに付着し熱で変質し固着した。また増えた油煙が燃料ポンプ内に貯留して動作不良になった

バルブステムの汚染には、従来の発電機には無かったいわゆるエコノミーモードによる長時間(1/4負荷で最大稼働時間11.9h)の低負荷運転が関係していると思う。アイドリングでは燃焼温度が低くバルブステムの汚染は焼け切れ無いが、燃焼室内は焼け切れてきれい、という相反した状態となった可能性がある。

その目でネットを検索すると、やはりインテークバルブの固着と燃焼室の汚染を自分で修理したというブログが見つかった。この発電機はオイルの劣化に敏感で、劣化し粘度が低下するとトラブルが出やすいようだ。

なお、このエンジンには独立したオイルポンプはなく、タイロッド下端の出っ張りが跳ね上げてできる油煙に頼っているので、オイルのせん断によって劣化が早いであろう。それと定格時には高回転となり、エコノミーモードでは運転時間が長くなるインバーター発電の特性がオイルの劣化に対して不備になのだろう。

とすると、トラブル予防のためには、

1)オイル交換をマニュアル通り100時間毎に行う。
2)オイル指定は10W-30だが、粘度を維持してブローバイを減らすために良質な10W-40を使う。
3)数100時間毎にはキャブをはずしインテークからバルブのステムを観察し、汚染している場合は掃除する。

ことが推奨される。

今回の修理は欠品のため若干の強いられた出費は、同時に購入したヤマハ発動機株の値上がりで回収できている。またヤマハのインバーター発電機の設計思想、インバーターの立ち上がりシークエンスなど、勉強になる点が多かった。修理を通じて故障の原因の推理など楽しめたし、死亡宣告された発電機を蘇らせたことがWebmasterの職業的満足をくすぐるのである。修理後に沸かしたコーヒーの味は別格であった。この記載が多くのユーザーの役に立てば、と思っている。

なお、ヤマハのEF900isのOEMはヤンマー、マキタ、デンヨー、シンダイワ、ハイコーキ、エスコ等多くあるので、それらにもこの記載が役に立つだろう。まあ、多くのOEM製品があるということは、部品も相当長く供給されるであろうから、オイル管理さえ留意すれば末永く発電機を維持することも可能であろう。

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ジャンクな4スト発電機EF9Hは再度陽光を浴びるか、のナゾ(エンジン内部の燃えカスは何?編)

快調な2スト発電機に気を良くしたのか、気付いたときにはジャンクな4スト発電機EF9H(EF900と同じ物)を落札していた。発電機は空き巣となったWebmsterの心を埋めてくれるおもちゃなのだろう。発電機いじりは車やバイクいじりの代償行為なのであろうが、登録も税金も保険も不要なので負担は軽く災害対策にもなるところがミソ?かも知れない。

点火装置が動作するかのカケ

点火の火花が飛ばないとのことで、送料と同じ程度の出費で落札できた。ライバルが現れなかったのは、点火系統が壊れていると修理に手間と金ががかかるだろう。

しかし、Webmasterには作戦があった。

最近の発電機にはオイルレベルセンサーがあり、オイルが不足すると止まるようになっている。多くのユーザーは発電機が動かなくなるまではメンテしないので、せめてオイル不足で致命的な焼き付きだけは回避したいという、メーカーの親心だろう。火花が飛ばないのはオイルが入っていないからではないか?

届いたEF9Hの外装は程度が良くなく、不動となった後に長らく倉庫に山積みされていたのだろう。オイル10w-40を入れてリコイルを引っ張ると火花が飛んだ。点火系は生きていたのだ。

束の間の起動が甘いメンテ見通しを招く

点火プラグを戻してチョークをかけて何気にリコイルをひっぱると、意外にも数秒間エンジンが動作するではないか。おそらく売り主がガソリンを入れてみたが、オイルが入っていなかったので始動しなかったのだろう。

フロート室を開けて詰まっていたメインジェットを掃除してガソリンを補給すると、ハンチングもなく動作するようになった。発電で電気ポットで湯を沸かしてコーヒーを入れて一服である。

手抜きメンテは二度手間になる

しかし、翌日運転すると数分で止まってしまった。再度フロート室を開けて見るとメインジェットがまた詰まっているではないか。フロート室に薄く付着した汚れが膜状に剥がれて詰まったようである。フロート室を入念に掃除し、メインジェット、ジェットニードル、スロージェット、スローポート、アイドルポート、アイドルアジャストなども徹底的に掃除した。やれやれである。

過去の成功体験があだとなる

ET-600を入手したときには、最初に燃料コックのフィルターカップを点検し、汚れがないことを確認していた。そのせいか、今回は燃料コックのフィルターの点検をしなかった。2、3日後に再度運転して湯を沸かしていると、また2分ほどで止まってしまった。再再度のキャブの詰まりかと思い点検したが詰まりはなかった。フロート室を戻し燃料コックを開けて、フロート室のドレンを緩めてもガソリンが出てこない。キャブまでガソリンが来ていないのだ。

そこで燃料コックのフィルターを点検すると黒いゴミが充満していた。これを取り除くと元気良く動作するようになったので、おいしいコーヒーを飲むことができた。

点検にはやはり順序がある

数日後にコーヒーを沸かしていると、またストップである。燃料コックのフィルターカップをはずしてみるがゴミはないが、コックを開いてもガソリンが出てこない。今度はコックのタンク側入口がゴミで詰まっていたのである。

タンクからコックをはずして息を吹き込むが詰まっている。竹串でほぐすとゴミがとれて開通した。組み直して、無事コーヒーを飲むことができた。

この発電機のタンクの蓋はどうやら別製品のものらしく、タンクが開けっ放しになっていた時期があったようだ。蓋のフィルターが汚れていなかったので油断したこともある。

やはり点検には順序があり、正しく川上から川下へとメンテすべきである。灯油でタンク内を洗い、燃料コックのフィルターを掃除しコックの通過を確認した後にキャブを清掃すべきである。「臭いにおいは元から絶たなきゃダメ」である。

この発電機もおそらく早々に不動となり長く放置されていた

エアクリーナーをあけてエレメントを見るとウレタンが経年劣化しているものの殆どゴミがなかった。指で表面をなぞってみても汚れが付かないほどである。

エレメントはおそらく交換されていない。オイルすらまともに交換しないユーザーがエアクリのエレメントを交換するだろうか?状況からは、使用後ガソリンを抜かなかったことでキャブが詰まり不動となり、その後長期放置されたと考える。この発電機に限らず、多くの発電機はキャブに残ったガソリンが腐ってジェットが詰まり、次のシーズンで始動不能が判明して放置されるのである。

燃料がなければ発電機は動かない

そのまた数日後、発電機で湯を沸かしていると、また途中で止まってしまった。残っていたゴミでキャブが詰まったと考えてキャブを再再再度分解清掃するがどこも詰まっていない。キャブを戻してリコイルを引くと始動するが1分ほどで再度止まった。燃料コックを操作すると始動するが数秒で止まる。それを数回繰り返すうちにまったく始動しなくなってしまった。

Webmasterは悩んだ。まだどこか見落としがあるのだろうか?

翌日に何気にタンクの蓋を開けてみると、ガソリンがカラであった。発電機が動作しないときには最初にガソリンをチェックすべきだが、度重なる下手なメンテの後始末で注意力が低下していたのである。

ET-600より重くて騒音が格段にうるさい

その後は快調だが、問題はET-600より格段にうるさいことである。対策として、エンジンのシュラウドと外装の間にガラス繊維マットを引き、プラグの穴の周囲をゴムで閉鎖したところ機械音は小さくなったが、排気音がうるさい。そこで、ステンレスタワシを長く紐状に伸ばしたものをマフラーの出口から挿入したところ、かなり改善したが、依然としてET600よりうるさい。

前回トピでも書いたが、メーカーの仕様でもEF9HはET600より騒音音圧が2、3dB高い。重量もET-600の18kgに対しFE9Hは25kgと重い。これに燃料が加わると女性はもちろんのこと、男性でも骨が折れる。ということで、当分はお出かけはET-600で、お留守番はEF9Hになりそうである。

USBカメラで燃焼室を見てみると

燃焼室のピストントップには黒い燃焼カスが付着していたが、中央付近はハゲていた。プラグはBPR6HSの突出型だが、プラグの座金の細工で圧縮比を上げる余地があるかどうか、ノギスのしっぽを挿入して燃焼室の高さを計測した時にハゲたようだが、意外にきれいな地が露出していた。反射鏡でヘッドを観察すると、燃焼室にも燃焼カスが付着していたものの、丸く見えるバルブにはあまり付着していなかった。おそらくバルブの熱容量はシリンダより小さいので焼け切られたのだろう。

燃焼カスが簡単にハゲたところを見ると、比較的短時間で蓄積したもののようである。おそらく、エンジンオイルが規定時間で交換されておらず、劣化したオイルの粘度が下がってブローバイが増加し、燃えカスが蓄積したと考えている。過去何度も本サイトで触れたように、現在の純正オイルの粘度は燃費のために機械の至適粘度より低く設定されているとWebmasterは考えている。

そのためブローバイが増えてインテーク系に様々なトラブルが増える。増えたトラブルによる費用は、おそらく低粘度オイルによる燃費改善より高くつくのでは無いか?

Webmasterは常に標準より1段階粘度の高いオイルを入れている。オイルの粘度低下によるブローバイの増加の悪影響は、3台目の発電機のメンテで明かされることとなる。

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ハイオクガソリンは本当に燃焼室をきれいにするのか、のナゾ(USBカメラで燃焼室を観察編)

WebmasterはV125とNC700sにはずっとハイオクを入れている。こいつらはおりこうで30km/Lを上回る燃費なので、少しでもエンジンをきれいに、またNCではより高いギアでもノッキングしないように、という親心である。

通常はコス〇石油で入れるが、メーカーよれば、ハイオクガソリン「スーパーマグナム」では燃費が最大2.8km/L良くなる(2500ccセダンの場合)という。サンプルが今や少数派の2500ccセダン(V6ハイオク仕様?)というチョイスがあざとい。サンプルがハイオク仕様でレギュラーを入れるとノックセンサーが作動し点火時期が遅角されればそういう数字が出るかもしれないが、レギュラー仕様では差はつかないだろう。

他のメリットとして、通常ガソリンの5倍の清浄力でエンジン内がきれいになるという宣伝文句がある。PEA(ポリエタノールアミン)というWAKOのヒューエルワンにも入っている物質が清浄力の元らしいが、宣伝を信じれば通常のガソリンにもハイオクの5分の1の清浄力はあるということか?

ヒューエルワンはガソリン30Lあたり一本(300ml、1%)入れるが、WAKOによればPEA濃度は1%がベストで、濃度が高すぎるとOリングなどのゴム製品に攻撃性があるらしい。ヒューエルワンは300mlで1700円程度なので、ガソリンに1%加えるとリッターあたり57円になる。

PEAの有効性が発見されたのはずいぶん古く、USAパテントUS2742349A(1952-02-25)Organic compounds containing nitrogenに N,N''-DI-SEC-BUTYL-P-PHENYLENEDIAMINEというPEAの一種の効果が書かれている。基本的にはPEAが高温で酸素を供給することで、デポジットを焼き切る原理らしい。なおWAKO'sサイトのSDSにはPEA濃度は企業秘密と書かれているが、USパテントには0.1-2%が適当と書かれている。

ということで、ヒューエルワンのPEA濃度はおそらく10%前後ではないか?

ところで燃焼室をきれいにする方法はPEAだけではない。古くから吸気に水噴射すると燃焼室が清浄となることが知られている。おそらく水分が燃焼で急に膨張するときにデポジットを破壊するからだろう。ガスケット不良で水が燃焼室に入ったエンジンを分解すると、燃焼室がぴかぴかなのはそのためである。

Webmasterが考案した水噴射によるフレームロッド清掃方法

暖房機器のアキレス腱、フレームロッドの風水クリーンアップ!のナゾ(ファンヒーター不良解決の決定版))

もこれの応用である。

さらに調べると、同様の効果を歌うヤマハ純正カーボンクリーナー100のSDSにはPEA濃度は70-80%で、ガソリン5Lに15ml(0.3%)入れろとある。とすれば、二者の比較からヒューエルワンのPEA実濃度はヤマハカーボンクリーナの30%程度という推測が成り立つ。

ハイオクガソリンにどの程度のPEAが含まれているか、複数の製品のSDSを見たがはっきりしない。

効果からの比較を試みると、WAKO'sの資料には、バルブのデポジットがガソリン交換1回(走行9時間)で66%減少し、2回(走行18時間)で93%減少するとある。

一方ハイオクガソリンではコスモスーパーマグナムはバルブ類の汚れを80%、エネオスヴィーゴは汚れを86%、出光スーパーゼアスは64%減らすとある。おそらく継続的に使った場合であろうが、ヒューエルワン2回の給油で汚れを93%減らすとの記載より控え目のようで、効果の比率から単純計算すれば、ハイオクガソリンのPEAの実濃度はヒューエルワンの数分の1ではないかという推測が成り立つ。

なお、揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品質確保法JIS規格(JIS K2202-2012)ではガソリンの強制規格として実在ガムは5mg/100ml以下、未洗実在ガムは20mg/100mlと定められている。実在ガム分とはガソリンを蒸発させた後に残る残留物(未洗実在ガム)を溶剤で洗浄した後に残る量だそうである。

PEA(CAS No.9046-10-0比重0.95)の沸点は232度Cなのでガムに該当し、これがが未洗実在ガムのリミットいっぱいだとすると20mg/100mlは0.021ml/100mlすなわち0.021容量%となり、ヒューエルワン(PE実濃度推定A0.1%)の2割程度ということになる。

もう一つ、コスモ石油の特許番号5702456の無鉛ガソリンでは

「本発明の無鉛ガソリンには、ポリエーテルアミン、ポリアルキルアミン、ポリイソブテンアミン、コハク酸イミド等の清浄剤を添加することができる。添加量は50-1000質量ppmが適当であり、好ましくは100-500質量ppmである。添加量が50質量ppm以上ならば吸気バルブデポジットの増加を防ぐことができ、1000質量ppm以下ならば燃焼室デポジットの増加を防ぐことができる。」

とある。100-1000質量ppmは133-1330容量ppmとなり0.0133-0.133容量%に相当する。一方JIS規格では未洗実在ガムは0.02%以下との縛りがあることから、ハイオクガソリンのPEA濃度はそれ以下のおそらく0.01容量%程度であろうとする推測が成り立つ。

コスト面から見ると、ヒューエルワン添加のコストがリッター57円なので、ハイオクがレギュラーよりリッター10円高いとすると、ハイオクのPEA濃度はヒューエルワン(PEA実濃度推定0.1%)の約6分の1であれば釣り合うことになる。WAKOがチャージするプレミアムを見込むと、ハイオクにおけるPEAの実濃度は0.01容量%あたりで大きな矛盾は無いことになる。

前振りが長いが、ここ数年間ハイオクのスーパマグナムを使ってきたV125の燃焼室がどうなったかをUSBカメラで観察してみよう。NCと違いV125はフルスロットルの時間が長いので効果が高いかも知れない。その前にまず点火プラグである。

WeebmasterはV125にハイオクしか入れてないので比較が難しいが、かなりきれいに焼けていると思う。注目ポイントは碍子や接地電極のデポジットも少ない点である。なおチューブはプラグ交換をしにくいV125でプラグを保持し手で回転させるための代物である。次はいよいよ燃焼室だ。

まっさらなピストンを期待された方には申し訳ないが、ピストン中央付近にはデポジットがあるものの、顆粒状の凸凹が少なく薄い印象である。そして、ピストンの周辺部は一周にわたってデポジットがなく灰色の地が出ている。写真は出していないが、ミラーで確認したバルブの表面も同様に灰色ながらデポジットは殆ど無かった。これがPEAの効果なのか。

通常のピストンのデポジットは黒く厚く、顆粒状の凸凹があるものだが、2万キロ走行のピストンとしては凹凸が少なく全般的に灰色である。ちなみに、このV125はエアクリ、マフラーは純正でオイルは半合成油10W-40、プラグと駆動系の部品交換から2000km走行したところで、圧縮率を0.12上げるためにプラグのワッシャーを0.3mmと薄いものに変えてある以外は特に改変はない。

1台のV125の結果から早急な結論はできないが、ピストンやバルブ、プラグの具合からはハイオクのPEAには若干の効果はあるようだ。PEAの濃度は、有意な効果があるもののOリングなどのゴム部品に問題ない程度に設定されているようである。

ヒューエルワンがガソリン1Lあたり57円(カストロールやAZはこれより安いが)であることを考えると、1Lあたり10円高いハイオクにそれを正当化できる程度の清浄作用はあるようだが、あるいはヒューエルワンが高すぎるのかもしれない。個人的にはWAKO'sの製品は全般的に高すぎる印象がある。

なお、PEA以外にもデポジットをとる有機溶媒は多く知られており、燃料に水やクーラント、添加物の多いATFなどにもその作用があることが知られている。決してPEAだけが偉いわけではないのだ。

さて、皆様はPEAについてどう考えられるであろうか?

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ジャンクな2スト発電機ET-600の排気煙の香り(もしくは、ヤマハの発電機の独立した燃料コックのナゾ編)

大停電ブラックアウトの予感

それは盆前の暑い日であった。エアコンにあまり頼らない生活をしているWebmasterも、台風のフェーン現象によって夜間にも30度を超える日には参っていた。

そこで、ふと停電したらどうなるか?と考えたのである。冷房はともかく扇風機も動かなくては健康を損なうのでは無いか?Webmasterに災害の予知能力があるわけではなく、たまたま酷暑で電力消費が過大となり、一つの発電所の不具合からブラックアウトになるのではないか、という不安がよぎったのである。

実際には異なった形ではあったが、北海道でブラックアウトが起きたときには、少し前の米国で次々に発生した社会インフレの障害を思い出した。

最近は鉄道や道路など経年による不具合が多い。団塊の世代の技術者が大量に引退しており、電力、ガス、水道、鉄道、道路、通信などの社会インフラで障害が多発することが危惧される

団塊の世代では経済も社会システムも拡充に拡充の連続だった。団塊の世代の技術者は、システムがそろそろ壊れる頃ではないか、過負荷になっているのではないか、ということに関して経験があり、それにより障害を予見できるようになり、また実際に障害が起きても早期に収束させれるようになった。

その世代が引退する時に、経験値の低い技術者に障害の体験をバトンタッチできずに終わっているのではないかと恐れている。最近では電気使用量や旅客数なども頭打ちであり、一方システムの信頼性も改善したので大きな障害がない時期が続いているが、バスタブ曲線が示すように、設備はいつか古くなり故障が増えてくる

というわけで、Webmasterは社会インフラの障害が今後増え続けると考えている。

幸い我が家には太陽光発電があるので、昼間は独立電源モードで数台の扇風機を回すパワーがあるが、夜は駄目である。プリウスからインバーターで家の中にAC100Vを引き込めば夜間も電気は使えるが、プリウスは無人で放置すると小一時間で自動的にシャットダウンされてしまう。

他には、鉛バッテリーからインバーターで扇風機をまわすことも考えられるが、例えば12V50AHのバッテリーだと数台の扇風機を1,2時間回したところでアウトになる。というわけで、やはり発発が必要、と考えたのである。

過去我が家にはホンダEM550なる発発があった。これはおしゃれな金属ケースのため騒音も小さくパワーもまずまずだったのだが、年に2,3回はキャブの掃除をする必要があった。おしゃれなケースが邪魔してキャブにアクセスしにくく、ドレンも面倒であった。たびたびのキャブ整備に疲れはてて、太陽光発電とプリウスがやってきたこともあって手放したのである。

それなら、発発を止める時にキャブのガスをドレンから抜けばいいじゃないか、とおっしゃるかも知れない。しかし次にガスを入れたときにニードルバルブが開いたまフロートがが固着して、オーバーフローした経験がある。2、3ヶ月毎に発発を試験運転しても、その後ガスをに抜いてもリスクはある。

送料より安いジャンクな2スト発電機ET600を落札!

そんなことを考えているうちにオークションでET-600なる発発のジャンクが出品されていた。発電するがハンチングするということで、送料より安い価格で落札されてWebmasterの元にやってきた。

ET-600は2ストであり、コンデンサー補償形としてはET-500に次ぐ歴史的な製品で、発売後20年以上を経てまだ低開発諸国ではET-1などという名称で売られている。また中華製劣化コピーも蔓延しており、国内のオークションでも出品されている。

個人的には2スト発発は混合ガソリンが必要の上に煙が出て臭く、燃費が悪くて実用性が低いと思っていたが、その認識は変わることになった落札した理由には、なつかしい2ストオイルの匂いを嗅ぎたいという変態的な思いもあったかも知れない。webmaserは過去3台の2ストバイクに乗ったが、どれも車体後半が油煙で汚い一方、車体は錆びずチェーンもあまり錆びないというメリット?があることも知っている。

ハンチングするジャンク発電機!

やってきた発発はタンクの縁が錆びているものの予想より状態は良かった。エアクリーナーエレメントが無かったが、おそらく経年変化で崩壊したものを売主が除去したようである。タンク内にも錆びは無く、灯油で洗って燃料コックのフィルターを清掃したが、まったく汚れていなかった。混合ガソリンで始動したが、なるほどハンチングがひどい。

ハンチングにはいくつか原因が考えられるが、川上から行けば、まず燃料系が詰まりかけている場合がある。今回はタンクや燃料コックに問題なくキャブへの燃料供給には問題無いようだ。

とすればスロー系(パイロット系)の問題だろう。EM550の経験から、スロー系が詰まる確率はメイン系の1/10くらいである。これはスロージェットがメインジェットより高いところにあり、腐ったガソリンに最後まで漬かっていないからだと思われる。

ただし、2ストでは混合ガソリンのため粘度が高いガム質が多いのでスロー系が詰まる可能性がある。まず、メインジェットとジェットニードルを点検したが問題なかった。次に、キャブのチョーク側て右側のパイロットエアジェットからキャブクリーナーを吹き込むとメインジェットやメインエアジェットからも噴出したので、パイロットジェットは詰まっていないようだ。

パイロットジェットをはずし、横の孔と底の小孔を点検したが詰まりはかった。なおパイロットジョットをはずすにはすぐ上のスローアジャストスクリュー(アイドルのスロットル開度を調節する)が邪魔なので、完全に締めこむか(マジックでネジに印をつけて何回で締めこまれるか数えておく)、それでも駄目ならはずす必要がある。なぜかミクニは長年この問題を改良していないので面倒である。

次にスロー系の空燃比を調節するアイドルアジャストスクリューを抜くと(抜く前に完全に締まるまでの回転数を数えたあとに抜く)先端にワッシャーとOリングがついている場合があるが、このキャブではスプリングのみであった。なお2000年頃から排気対策のために黒い樹脂製キャップがついてくるが、この製品には無かった。パイロットエアジェットからクリーナーを吹き込むと勢い良く出てきたので、ここも詰まっていない。

発電機はアイドルで使う想定が無いが、気になる向きは、スロットルをアイドリングまで閉じて、アイドルアジャストスクリューをアイドリングが一番高い回転数にあわせるのが定石だが、最近はHCが最小の位置で保護キャップをかぶせることになっている。

キャブをはずす場合は、その前にスロットルとチョークのリンケージの具合を写真にとっておくのが無難である。キャブとエンジンヘッドの間のガスケットは重要(キャブとクリーナーの間のガスケットはあまり重要で無い)ので、今回は古ハガキをで作った(名刺でも可、もちろん専用のガスケット紙がベター)。

キャブのエンジン側には、パイロットジェットの延長線上の少し高いところにアイドルポートがあり、アイドルアジャストスクリューの先端が開きを調節する。また、スロットルが閉じる付近に2−3個の小さな孔があるので、細い針金で掃除し、パイロットエアジェットからのクリーナーが勢いよく出ること確認する。今回は3個の孔が詰まり気味だったが、原因はおそらく混合ガソリンだろう。

ハンチングする理由だが、古典的な発発では60Hzなら3600rpmとなるように、メカニカルガバナーがスロットル開度を調節する。回転があがるとガバナーがスロットルを絞るが、スロー系が不調だと回転が下がりすぎ、あわててガバナーがスロットルを大きく開けるが、回転があがりすぎて絞ろうとするが、再度予想外に回転が下がるの再度大きくスロットルを開ける、という繰り返しになる。

もっとも、発発に負荷をつながないとごくわずかにハンチングするが、それは負荷がかかれば安定するので気にしないほうが良い。

USBカメラで燃焼室を観察!

完調となったところで、燃焼室の中をUSBカメラで観察した。

その前にプラグは若干くすぶり気味だ。シリンダーも全般的にくすんだ感じだが、ポートにデポジットは無いことから、やはりこの発電機も実使用時間は短いうちにキャブが詰まって不調となり長らく放置されたきたもののようだ。

突出型プラグで圧縮比アップとノッキングの耐性について

燃焼室に余裕があることを見て、プラグを標準のBR5ESから碍子部分が突出したBPR5ESに変えて見た。その目論見は、

1)圧縮比アップ。排気量63ccなので仮に圧縮比を9とすると燃焼室は7mlとなる。仮に碍子分が0.2ml突出すると圧縮比も2%ほどあがることになる。
2)メカニカルオクタン値が上がる。これについては後述する。
3)見かけ上の点火時期が早くなる。プラグが突出することで混合気全体への平均的距離が短くなるため。

プラグ突出でなぜメカニカルオクタン価が上がるのか?

点火されて混合気が燃え広がる速度(火炎伝播速度)は35m/s以下と音速(圧力が伝わる速度)の1/11以下で意外に遅い。一方、プラグ付近で点火され燃焼した混合気の圧力は音速の340m/sで広がる。このため、プラグからもっとも遠い部分には火炎より圧力波が先に伝わり、デポジットなどの火種があれば勝手に火が着く。これらが、いわゆるノッキングだ。

点火時期を早くするとプラグ付近からの圧力波が燃焼の波及よりさらに早く伝わるのでノッキングしやすい。回転数が低いと点火から上死点までの時間が長いので、圧力波が先に伝わり異常発火する時間の幅が増えてノッキングしやすくなる。

燃焼室の表面には温度の低いガスの断熱層があり表面が守られている。異常燃焼した部分ではその断熱層が破られて燃焼が直接金属に及ぶのでピストン表面がアバタになり、やがて穴が開いたり棚が落ちたりしてエンジンが壊れるのである。

ノッキングを減らすには、異常燃焼し難いように混合気や燃焼室の温度を下げるのが効果的で、ターボでは混合気をリッチにしてガソリン冷却したり、直噴して温度を下げる。時には高速を走行して燃焼室のデポジット焼ききって減らすことも重要である。

他には、火炎が燃焼室の隅まで早く伝わるように気流をかき混ぜるのが効果的である。インテークと燃焼室の形状を工夫してスワール(水平)とかタンブル(垂直)と呼ばれる渦を作るとか、ヘッドの断面を絞って上死点で気流を噴出するスキッシュエリアを設けるのがそれである。

さらにはプラグを2個使うと、それぞれのプラグからの混合気への平均距離が減り、圧力波と火炎伝播との時間差が減ってノッキングしにくくなる。燃焼室を半球状にすると、火炎伝播にムラがなくなりノッキングしにくくなる。

このようないろいろな工夫で、ノッキングしにくい=メカニカルオクタン価が高いエンジンができる。こういうことがカタログ等できちんと説明されていないので、ユーザーには解らずじまいなのである。

基本的に2ストの燃焼室は余計なプラグやバルブが無いので理想的な円錐形をしている。その頂点にあるプラグを突出させると、プラグ周辺に火種がひろがりやすく、またプラグから燃焼室の端のデポジットなどの異常燃焼の巣への見通しが良く火炎が伝わりやすくなりノッキングしにくくなる。

プラグからの混合気全体への平均距離も短くなるので火炎伝播時間が短くなり見かけの点火時期が早くなるが、火炎が隅まで届きやすくなる効果と相殺されてノッキングは増えない。さらにわずかに圧縮比があがることで、燃費も出力も良くなるというしかけである。

2スト発電機には圧縮比を高くできない理由がある

プラグ熱価が5であることから解るように、排気量63mlのエンジンにとって3600rpmは最高出力の半分の回転数であり、燃焼条件はさほど厳しくない。発電機は電力事情が不安定な低開発諸国で多用されるが、そのような地域では燃料の品質も良くないので圧縮比は低めに設定されている。また圧縮比を上げるとリコイルスターターが重くなる。従って、圧縮比をアップさせる大きなマージンが残っている。

余談ながら、ホンダの低開発諸国向け発電機には灯油を使うものがある。古いサイドバルブ式のエンジンで、ガソリンと灯油のタンクが別々にあり、まずガソリンで起動し、暖機後にコックを切り替えて灯油で発電する仕掛けである。ホンダが動作を保証しているので、カーボンなどの付着も問題とならないらしい。

なんと、世界に多く存在するET-600のコピー品にはケロシン仕様もあり、ガソリンとケロシンの2つのタンクを持っている。2ストオイルはケロシンにも混ぜるのである。

なお細かい細工で圧縮比を上げると、定格出力時にスロットルがわずかに絞り気味になり、過負荷でもエンジンは若干粘るようになるが、発電機が過熱する前にブレーカーが落ちるので、使える出力は最終的にはブレーカーが決めることになる。

2スト発電機は時代遅れか?

2スト発発の評価だが、ホンダは近代化発発の習作として2スト+インバーターのEX300なるモデルを発売し爆発的にヒットした。インバーターを使えばエンジンが3600rpmで回る必要が無く、負荷が軽いときには低回転で、負荷が重いときには高回転で回ればいい。

とすれば、小さめの2ストエンジンにバイクで使われる永久磁石を使った小型軽量な多極発電機と組み合わせることで、重量が軽く小さくなる、というわけである。現在のホンダのドル箱インバーター発電機シリーズの思想はこのあたりからきている。

ホンダは大型バイクで多極発電機を使っていて、これを小型スクーターでスターター兼用としてアイドルストップやハイブリットを実現したり、汎用エンジンやガスエンジン給湯発電機で使ったり、と使いまわしが上手である。

ところで、今回はドンキで安売りしていたカストロールの2ストオイルを使ったところ、期待とは異なる果実臭がして少し残念である。もう200円追加して古き良きCCISオイルにすべきであった。個人的には学生の頃から過去40年以上CCISオイルだけを使い続けてきてその匂いが染みついているので、次回はやはりCCISオイルにしようと思う。

2ストなので煙が大量に出るかと思いきや、煙は始動時のみで、オイルの匂いもあまりしない。排気の匂いはジャンクな4スト発電機ヤマハEf9H(EF900)といい勝負であった。

使い勝手として、ET-600は重量18kgと軽く女性や高齢者にも持てるが、FE900は25kgと重い。これにガソリンが加わるから、移動にはET-600に分がある。

2ストは毎回爆発で排気間隔が4ストより短く、一回あたりの排気量が小さいためマフラーの効率が良く、排気音が小さい。またバルブ駆動などのノイズも無いので、カタログ値でもET-600が56dB(a)/60dB(a)、ET-800が57dB(a)/61dB(a)に対し、EF900は61dB(A)/63dBと数字上も2-4dB(a)2スト発電機の方が静かである。音圧では4ストは倍うるさいのだ。

2ストは4ストより振動も少ない。排気煙も気にならないとすれば、重量、容積、騒音、振動などの点については4スト発発は2スト発発に完敗なのである。

2スト発電機の燃費はどうか?

ET-600には兄貴分のET-800があり、60Hzの定格800w時にガソリン2.5Lで3hr持つことから、1.04ml/Whと算出される。一方、4ストのEF900Hは定格850W時に2.7Lで4.5hr持つので0.7ml/Whとなり、4ストの方が3割ほど燃費が良い計算になる。

2スト発電機のオイル代はどうか?

ET-800では100hrあたりガソリン83L、2ストオイルが1/50として1.66L必要で、市価1Lあたり690円とすれば1150円になる。

一方4ストは100時間毎に430ml必要なので、ホンダG1(10w-30)が1Lあたり市価750円として322円に、G2(10w-40)なら1Lあたり市価950円として408円となる。混合ガソリンを作る手間と、4ストエンジンオイルを交換する手間をイーブンとすれば、2ストのオイル代は約倍かかるものの、4ストオイルには廃棄の手間があり、100hrに必要なガソリン代に比べればどちらもオイル代1/40以下なので、オイル代の差はほとんど無いともいえる。

ということで、4割重く、倍うるさいが3割燃費が良い4スト発発に対して、2スト発発の競争力は依然として残っているようで、それが低開発諸国でもいまだ売られ続けている理由であろう。また、ホンダは2ストが黄昏を迎えた時期に超軽量なインバーター式のEX300を発売した理由でもあろう。

ヤマハの発電機が運転スイッチと燃料コックが別体である理由は?

ヤマハの初発は最新のインバーターモデルEF900isやES1600isに至るまで運転スイッチと燃料コックは別体である。実際には燃料コックと運転スイッチとチョークが一体のEF900sが短期化存在したが、なぜかその後は燃料コックが別体に戻っている。

ヤマハの取説では、長期保管時には燃料タンク内をポンプで吸い取り、次に燃料コックを解放のまま運転させてガス欠で停止したあと、キャブのフロート室のドレーンを開けて排出しなさい、とある。

しかし、この記載はヤマハのポーズで額面どおり取ってはいけない

なぜかというと、運転スイッチをonのまま、燃料コックを閉じてがガス欠で停止させてから運転スイッチをオフにする運用が可能で、その場合フロート室のガソリン液面はメインジェットより下にしか残らないので、発生するガム質も少なくジェットも詰まりにくいからである。

1−3ヶ月間の放置なら、この運用で十分であり、毎回フロート室内のガソリンを空にする必要が無い。ヤマハの発発はキャブドレーンにチューブがついてないものが多いのもそのためだろう。

一方ホンダの発発はEM550やEX300のころから、運転スイッチと燃料コックが一体化したレバーになっている。これは短時間の繰り返し運用では便利ではあるが、停止後のキャブのフロート室に満杯のガソリンが残るので、これを抜かずに長時間放置するとワンシーズンでまず間違いなくジェットが詰まることになる。

もちろん、毎回フロート室のガソリンを抜いて小瓶に受け、タンクに戻せばベストなのだろうが、普通のユーザーはそんな面倒なことはしない。多くのユーザーは運転スイッチをオフにして止まった時点で、初発のことは次のシーズまで忘れて放置する。それが、キャブ不良の発発が多くオークションに出てくる理由である。

Webmaseterは過去4台オークションでジャンクな発発を入手した。外装がきれいなやつもあれば、ペンキだらけのものもあったが、どれも実使用時間は短い様子であった。ということは、外装の程度に関係なく軽作業に使われた発発は、ワンシーズンでキャブが詰まってエンジンがかからなくなり、そのまま放置されるのである。

殆どのユーザーは発発は動かなくなるまでは手入れをしない。オイルレベルが下がると強制的に停止する仕掛けがあるものの、そこでオイルを交換する保証は無く、単にオイルを足すだけかも知れない。あるいは、そもそもオイル交換が必要なことすら知らないかもしれない。

当然ながら、エアクリーナー等も動かなくなるまで清掃や交換されないので、それがきれいなままということは、短時間で発発の運命が終わってしまったのである。

おそらくヤマハは、ベテランのユーザーの多くは、燃料コックを閉じてガス欠で停止させることを知っている。だからこそ、わざわざ燃料コックを残している。しかし、そうしろとはマニュアルには書きずらい。しかし、毎年のシーズン前にキャブが腐った発発が大量にサービスに回って来るのをヤマハはいやなのかも知れない

個人的にはホンダの発発にも燃料コックをつけて欲しいと思っている。バイクの世界では新たなるHY戦争が静かに進行しており、発発の世界でも両者は同クラスのインバーター製品をぶつけ合い、OEM先を増やしながらグローバルなHY戦争を静かに進行中である。

今後ホンダの発発にも燃料コックが復活することはあり得ると思っている。

老婆心コーナー

1)ホンダの新型のEu18iの運転レバーに燃料オフ機能が新設された。これは運転スイッチの停止の前に燃料コックだけを閉じる機能をつけたものである。おそらく他機種にもマイナー時に増設されるだろう。運転レバーのリンクに細工したものだが、気付くのが遅すぎる。おそらくサービス部門にシーズン開始時期に大量のキャブ詰まりの修理がくるからだろう。

2)バイクでも、しばらく乗らないときには燃料コックを閉じてガス欠エンストでエンジンを止めたほうがキャブのトラブルは少ない。特に4連キャブでは、内側のキャブのフロート室のドレーンスクリューに手が届かない場合が多いので、この方法しかフロート室のガソリンを減らす方法が無い。ただし、燃料コックが負圧式でレバーがない場合は燃料チューブを抜くしかない。

3)燃料噴射式では燃料ポンプがエアを噛んで始動しなかったり損傷するなど無用なトラブルを招くから、ガス欠で止める方法は使うべきではない。

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V125リアタイヤサイズアップ作戦のナゾ

ズリズリ、、、、、、

あるとき市内をアドレスV125で遊弋していたWebmasterであるが、コーナリングでリアの挙動が怪しいことに気がついた。やはりリアのバルブから漏れているのか?

実は先月リアに空気を入れた際にL字型のバルブが何となく柔らかい感じがした。これはV100でも経験があるが、経年変化でリアのバルブのゴム部分が破損する前兆である。あわてて瞬間接着剤とゴム系接着剤で補強したがタイヤの山も3-4割なので交換の潮時であろう。

V100の時からストックしてあったタイヤD306(3.5-10)とホイールを出してきた。Webmasterは今後3.5-10のタイヤが無くなることを恐れてストックしておいたのである。タイヤの劣化は日光による架橋化とオゾンによる酸化、そしてパラフィン分の喪失で硬化したりヒビが入るのが原因らしいので、パラフィンを塗って暗所密閉状態で大事に保存してあったのである。 ストックは前後両輪分あったが、前輪は既に、

アドレスV125に見る老齢者用バイクのナゾ

で使用した。V125とV100のタイヤの標準サイズと幅および外径は(ダンロップD306の場合)、

		規格		幅mm	外径mm
前輪 90/90-10 93 420
後輪 100/90-10 101 434
V100
前/後輪 3.50-10 97 441 番外K378B 110/90-10 110 452

韋駄天V125の最大の弱点はタイヤの直径が小さいことだ。他にホイールベースが短い、後輪の片持ちサスの剛性が不足している等もあるが、タイヤ外径がV100より小さいことが問題だ。

前輪を90/90-10から3.5-10にすることで外径が6%大きくなり、速度計の過大だった指示はほぼ正確となった。なおWebmaterのV125は前期形で前輪で速度を計測しているが、V125S以降は電子式で後輪で速度を計測しているらしい。

巷では12インチ化キットも売られているが、キットのタイヤ110/60-12の外径は3.5-10とほぼ同じなので、高い金を出して12インチ化するよりは3.5-10に履きかえるほうがコスパが良いし、エア量が多いので乗り心地も良く悪路にも強い。他にV125に110/90-10を履かせた例もあるようだが、4%の外径増になるものの重量の点で不利になる。

ところでインチ表示のタイヤの扁平率は100%のはずだが、実際には幅、外径ともメーカーによりさまざまである。外径はダンロップが大き目で、ブリヂストンは小さ目である。たとえばブリヂストンHOOP-B01の3.5-10が幅92mm外径434mm、100/90-10が幅103mm外径433mmと、外径が殆ど同じなので交換する意味が無い。

V125の黒い鉄板ホイールはV100とまったく同じだが、見栄えがしょぼく塗装も薄くすぐ錆びる。ホンダリードの重厚なデザインのアルミホイールとは対極的である。

今回はペーパーとワイヤブラシーで錆びをとり、ホルツの錆びチェンジャーを水で倍に薄めて塗った。見栄えを少しでも良くするためにシルバーを厚めに塗ったので、しょぼさは約3dB低下したように思う。バルブも二度と千切れないように金属製にした。

前輪のサイズアップはわずか6%だが、高速度の安定性がかなり改善し、直進性も向上したことでV125の欠点をカバーしてくれた。

さて後輪はどうだろう。3.5-10に交換すると外径は1.6%大きくなるので、加速は鈍くなるものの燃費が改善し、高速の伸びがよくなるハズである。実際にはタイヤの磨耗があるので2,3%の差になる。

数日走行してみた感じでは、加速が鈍くなった気もするし、高速が伸びる気もする、という程度である。

ただし、シートが7mm、タイヤの磨耗分を含め約10mm高くなったのははっきり感じられる。バイクのシート高はわずかな変化でもわかるもので、身長に余裕のないライダーにとって数ミリの差は大問題である。

印象として、スクーターの背が伸びてわずかながらロードスポーツっぽくなったような気がする。エア量が増えてハーシュネスに対する乗り心地も改善した。また車体もわずかに大きくなったような錯覚もある。

やはりV125には前後とも3.5-10を履かせることはメリットが多くデメリットは無いと言える。

完成車では3.5-10の指定は少数派になったが、まだメーカー各社とも供給している。日本製が無くなってもアジアでは当分供給されるので、少なくとも供給については心配はいらないようだ。たとえ電動バイクの時代になっても、インチ表示のタイヤが無くならないかも知れない

老婆心ながら備忘録を兼ねてタイヤ交換の手順を書いて置く。まず交換前日に後ホイールの固定ナットと車軸の間、そしてマフラーのシリンダスタッドナットの根元に5-56を吹いておく。特に後輪ナット付近には繰り返し繰り返し吹いておく。

交換の当日はまずマフラーのハンガーの上下ボルトを緩めるが、上側のボルトだけ緩めた後に残して置く。シリンダースタッドのナットは長いアレンレンチが必要で、堅く締まっているので両メガネ等で延長すると外れやすい。純正マフラーは見かけがしょぼいが、内部でエキパイが長く後ろまで行って戻るなどの工夫で中低速トルクが厚く、オールラウンドではベストだという。これまでのお礼の意味でペーパーをかけて、耐熱塗料を塗っておこう。

後輪タイヤをはずすには、後ブレーキの遊び調節ねじを締め込み、左ブレーキレバーを紐で縛ってブレーキを効かせて置いて、長いメガネをかけて足で踏みおろして緩める。前日に5-56を吹いておけば割と簡単に緩むであろう。ナットが錆びていると250Nm程度の電動インパクトでは緩まないこともある。

ただし、ナットをはずしても、車軸のスプラインとホイールが固着してはずれにくいことが多い。ここでも、タイヤとスプラインの間に数回5-56を吹いておいて、コーヒーでも飲みに行く。この手のことはあせっても無駄である。なお先程締めたブレーキの遊び調節ナットは緩めておく。

30分ほど待ってタイヤを揺するが取れないことが多い。この場合はタイヤの向こう側を手前に引き、中央の車軸を木槌で軽くたたく。軽く、が大事で、力強くたたくと車軸のベアリングが痛むかも知れない。

車輪を回しては手前に引きながら車軸を軽く叩くと少しずつホイールが浮いてくるはずである。さあ、新しいタイヤをはめよう、と思うが、その前にブレーキの整備をして置こう。

ブレーキシューの残り厚みをチェックし、片方のシューを立ててはずす。シューの軸と、ブレーキカムにグリスを塗りシューを戻す。シューはばねを掛けて片側を立ててはめると簡単にはまる。ただし作業中にグリースをシューにつけないことが大事だ。

ホイールをはめる前に後軸とホイールのスプラインを清掃し薄くグリースをごく薄く塗っておこう。これには議論があろうが、次回交換のときに外れやすくするおまじないである。実際には、スプラインの隙間は走行のたびに熱膨張収縮を繰り返しグリースを押し出しては冷えるときにブレーキダストなどを吸うので、グリースの効果はおまじないにとどまる。

あとは再度ブレーキの遊び調節ナットを締めてブレーキレバーを紐で縛り、後軸のナットを締めこむ(120Nm)。トルクレンチもあるが、今回は両メガネのスパナで締めた。メガネレンチの長さは、その中央部を大人が握って締めたときに規定トルクになるようにできている。今回のメガネレンチは20cmのところを手で持つので60kgの人が体重をかけると120Nmになる。トルク管理は油分などの具合で締まり具合が変わるので万能ではない。

ちなみに乗用車のタイヤのナットもだいたい100Nmである。自動車についてくるホイールレンチは持つところまでが約25cmでなので、体重40kgの女性が体重をかければ設定トルクとなる。

点火プラグも一昔前のB型(φ=14mm)の締め付けトルクが25-30Nmである。とすればプラグレンチの中心から10cmのところを大の大人が25-30kgで締めることになる。最近のC型番(φ=10mm)は締め付けトルクが10〜12Nmである。C型番用のプラグレンチは中心から5cm付近をやはり25-30kgで締めるようにできている。通常は付属もしくは専用のプラグレンチを使う限り、ネジを舐めない程度のトルクで締まるようにできている。プアな車載の工具であってもその寸法にはすべて意味がある。

危険なのはボックスレンチで、柄の長さが一定なので素人は小さなナットを簡単にねじ切ってしまう。プラグにしてもドレンボルトにしても、ボックスレンチで緩めるとしても、締める時はトルクレンチを使うかメガネレンチを使うのが無難である。

最後はナットとホイールにペイントで合わせマークを引いておこう。教科書的には50キロ程度走ったあとに再度締めるとあるが、やっている人は少ないと思う。合わせマークをペイントしておくのが無難だ。

マフラーをヘッドに止めるスタッドのナットはアレンレンチが適当に捩れるのでオーバートルクでねじ切ることは無いようである。

このように、タイヤの交換は簡単ではあるものの、それなりに落とし穴があるものである。車軸を舐めたり、シリンダのスタッドを折る修理も高くつく。

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棹立ちバイクMT-09の過激臭のナゾ

某月某日、Webmasterは買い物のためにNCを転がしていたところ、全国チェーンのYの店舗の前を通りかかった。

よく見ると”MT-09試乗車あります”、と書いてある。

現在のMT-09は1つ目のマイナー前と異なり、両目で釣り目のワイド感を強調したデザインになっている。またリアフェンダーが外車のようにスイングアームから低いところに生えている。ヤマハは落ち着きを持たせたつもりのようだが、以前より増して車体全体から過激臭がただよう。

WebmaserはMT-09に試乗したことがなかった。風評では高出力116PSのわりに軽量のため、うっかり開けると棹立ちするとのことで、腕に自信が無いwebmasterは避けてきたが、コスパが良いこともあり興味はあった。今回のマイナーで過激臭は押さえられたとか聞いたような気がするので、試乗してみることにした。

またがって見るとこのバイクは小さく軽く感じる。それは重量がNCの211kgに比べ193kgしかないことや、NCが全長2190mmに対し2075mmと115mmも短いことがある。車体のメカが中心に凝縮したようなデザインのために、シートは若干高目だ。

さてまずはレインモードで走り出した。最初に気づいたのはサスのストロークが大きくオフロード車のように乗り心地がいいことだ。これはヤマハがこのバイクをスーパーモタードと設定しているからだろう。見かけによらず長距離のツーリングでも快適だろう。

エンジンの吹き上がりはカミソリのように鋭く、フライホイールも軽いような吹き上がりだ。クラッチミートのためにわずかに開けただけで勢い良く吹き上がる。排気音も扇情的で、4気筒の連続した排気音に似ているもののわずかに濁音が入る。バイクが”飛ばしてください、回してください”と言っているようである。

また、3気筒の偶力によるものなのか、NCなどより微振動があるが、それは回転を上げても等比級数的には強くならずむしろ心地良いくらいである。

ある技術者が、エンジンの気筒数は3の倍数が良いと書いていたことを思い出した。4気筒ではピストンが上死点下死点に揃った瞬間はクランクを回転する力が無いが、3気筒だとかならずどれかのピストンがクランクを回す力がある。慣性力については一次二次とも打ち消しあうので、偶力が引き起こす味噌擂り振動さえうまく抑えれば理想的なエンジンである、と言うのだ。

世界的に見ても4輪では1L-1.5Lのエンジンでは3気筒が増えている。4ストでの出力と熱効率など全ての条件がが揃うのは1気筒あたりの排気量が400-450ccあたりでスクエアよりわずかにストロークが長目だと言われてきた。

これより排気量が小さいと吸排気が速やかでピストンも軽いため高回転で馬力を稼げるが、排気量あたりの燃焼室の面積が大きく熱損失が大きく燃費が悪くなる。これより排気量が大きいとピストンが重くなり、吸排気にも時間がかかり高回転まで回らず、また燃焼にムラができてノッキングなどの異常燃焼を起こしやすくなる。多くのメーカーが1気筒あたり400-500ccを単位としたのモジュラー構造のエンジンを作っており、それぞれの排気量でも気筒単位の排気量が同じことで燃費や排気のマネジメントを共通化できると言う。

わが国の4輪では昔から三気筒エンジンが使われており、世界的には振動や燃費、排気対策などなどのマネジメントは最高レベルにあることは間違いない。そういえばヤマハの4サイクルマルチは3気筒で始まっており、3気筒に対しそれなりの思い入れがあるのだろう。

スロットルに対するレスポンスと車体の挙動はレインモードであっても十分に過激であるが、ノーマルモードに入れればさらに過激である。もちろん、スロットルバイワイヤーとトラクションコントロールのため、低速コーナリングで開けてもいきなり転倒はしにくいように躾けられてはいるものの、直進時の棹立ちによる自爆を防ぐ手段はスキルと自制心以外ないのである。

軽量コンパクトなため、どんな状態でもすばやく加速できる。試乗の途中で雨が降ってきたこともあって、試乗の間は、高性能と自制心のはざまに置かれて非常に気を使った。

MT-09は軽量コンパクトながら高出力でサスのストロークが大きくオンオフを問わない、など、あらゆる道路状況で発揮できる性能は間違いなく最高レベルであり、これに匹敵するバイクは国産では他に見当たらない。しかも高性能にして価格は安い。

十分なスキルがあれば、オンでもオフでもあらゆる条件で間違いなく格上のバイクを食うことが可能である。ヤマハの誇るベストセラーであり、ホンダがCB1000Rを持ち出す理由の一つになったと思う。MT-09には抗い難い魅力があるが、Webmasterはスキルと自制心に自信がないので、当面は遠くから見ているだけにしたい。

MT-09から降りてNCに乗って見ると、これはMT-09と180度逆のバイクである。NCは低速トルク重視で、長めのホイールベースとレッドゾーンが低いエンジンのため飛ばす気がなくなるほど実用に振ったバイクである。ただし、CB1000Rの試乗後にも感じたように、NCは現在の大型で最も実用的でリラックスして乗れるバイクであることは間違いない

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ホンダらしからぬホンダCBR1000R試乗のナゾ(デザインは見掛け倒しか?編)

某月某日、Webmasterは仕事で立ち寄るビル付近で時間をつぶしていて、妙に派手なバイクが目に入ってきた。

”ははーん、これが最近マイナーチェンジしたヤマハのMT-09かXSR900?しかしちょっと重そうなのでこれがMT-10なのか?”

しかしよく考えると、この店はウイング店なのでヤマハのバイクを売っているはずが無い。近寄ってよく見ると、基本的にはネイキッドだが、ヘッドライトは丸でクラシック、前サスは倒立でストロークは長め、エンジンはコンパクトにまとめられ、マフラーはやけに派手で、ナンバープレートはスイングアームから生えている。

基本はスーパーモタード+ストリートファイターと近頃流行のスタイルだが、ヘッドライトとタンクはレトロ風である。調べて見ると、新発売のCB1000Rなるバイクらしい。そういえばホンダには純粋にスーパーモタード+ストリートファイター系のバイクが無い。NCにはデザイン的にストリートファイター系の要素があるが、性能的には低速トルク重視でエンジン振動を残した乗り味はむしろアメリカンに近い。

ところで、最近までRが付いていながら凡庸なモデルを乱発してきたホンダにしては、高性能なのにRが一つしかないところを見ると、今後ホンダはRはそれらしいバイクに限って乱発しない方針に変わったようである。

個人的には第一仮想敵はMT-09もしくはXSR900だと思った。MT-09はスーパーモタード風だが、レトロ風にアレンジしたXSR900もあり、どちらもベストセラーである。ただしMT-09より重量感というか塊感があるので第二仮想敵はMT-10、そして第三仮想敵は外国製ストリートファイターなのだろう。

いずれにせよ、ベストセラーのMT-09クラスと迫力のMT-10からシェアを奪おうという雰囲気である。価格は税込100万のMT-09や104万のXSR900よりかなり高い163万で、MT-10の167万に近いが、わずかに安いのがミソか。

価格的にはMT-09におトク感がある。ちなみに、ホンダではCB1100が破格に安い122万、CB1300SFが145万、そして先鋭的なCBR1000RRが205万なので、163万とはかなり高目である。暇と金に余裕がある団塊世代リターンライダーを意識しているのでは無いか?

エンジンは145PS@10500rpm、10.6kgmf@8250rpm、重量212kgとかなりの高回転型である。MT-10は160ps@11500rpm、11.3kgfm@9000rpm、重量210kgと近いところにある。CB1000Rは少し前のCBR1000RRのデチューン版であり、一方MT-10はYZF-R1のデチューン版という訳で、どちらも値段が高目なのはエンジンの血筋のせいなのだろう。

MT-09は3気筒の900ccで、数字的には116PS@10,000rpm、8.9kgfm@8,500rpmと格下感があるものの193kgしかない。ライダー体重を75kgとすれば、トルク加重でCBR1000Rが1.9kg/kgfm、MT09が2.3kg/kgfmといいところにある。価格的にMT-09は、レトロ感たっぷりのCB1100と同様にバーゲンに思える。

机上でそんな計算をしていたのだが、あるとき市内をNCで遊弋していたWebmasterの前に、ナンバープレートが低い位置にあり派手なマフラーのバイクが見えた。後ろをついていくとウイング店に入って行った。店では試乗会をやっていたのである。

そこでWebmasterも試乗してみることにした。

近くで見ると、ディテールまで今までのホンダ車には希薄だったデザイン上の細かい配慮が見て取れる。ホンダ車はカブからCB1300まで量産パーツ使いまわし感があるが、これはヤマハのようにディテールまでデザイナーの手が入っています感がある。後輪サスは片持ちでチェーン側には飾りの円盤がついている。

NC以降のホンダ車には、量産車臭に加えコストダウン臭が加わっていたのとは違う。好調なヤマハに上から下までシェアを奪われてホンダも考えたのだろう。そういえばCB250RやCB125Rもホンダ車らしからぬ品質感があり、目下ホンダはMTシリーズに対抗する高品質感のラインを構築中のようである。

ただし、ディテールの洗練度という点ではやはりヤマハに一日の長がある。

長いデフレのトンネルを抜けて、景気が回復したのに合わせて穏やかなHY戦争が復活しているのである。正確に言えば、ホンダ対トヨタ+ヤマハ連合の2輪から4輪までを含めての全面戦争なのかもしれない。

インパネ周りも高品質感があるが、モードによって点灯する緑や青のランプは邪魔だ。バイクの世界では緑はニュートラル、青はハイビームを意味するから、試乗中何度もニュートラルやハイビームでは無いと気になった。

車体の取り回しは意外やコンパクトで軽い。車重はNCとほぼ同じなのに馬力が3倍、トルクが倍近くもある。

発進のためにクラッチをミートさせるとわずかに回転が下がった後に元の回転に戻った。スロットルバイワイヤーが働いていて、エンストしにくく、またクラッチ無しで変速可能なクイックシフターも装備されている。

クラッチもスリッパー式で操作が軽く、この点で後発だったホンダも急速に追いつく様子である。スロットルバイワイヤー、走行モード設定、トラクションコントロール、クイックシフト、スリッパークラッチなどと完全にMT-09と最新機能を揃えている。

個人的には発進前にクラッチをわずかにミートさせて回転が下がるのを確認する癖があるので、不自然にアイドリング回転数を保つ挙動は若干気になったがが、おそらく毎日乗れば慣れるのだろう。

低速で市内を転がしている間は、どのギアでもスナッチ無しに走ることで4気筒のリッターバイクであると実感させられる。ごく低速のパーシャルスロットルのレスポンスが鈍いのは、不快な加減速を緩和する電子制御が働いているからだが、その制御が切れる3速より上は性格が豹変しのけぞるような加速が長く続く

単に速いだけでなく、ディテールまでデザインが浸透しているので、スキルがあって欧州車のような品質感を求めるライダーには興味の沸くモデルではなかろうか。

というわけで、30分ほどの試乗を終えてNCに戻ると、なんて平和なバイクだとしみじみ感じる。ホンダのカブからCB1300までの使いまわし部品が多く量産車臭が満点ながら、穏やかな操縦性とレスポンスが我が家の茶の間に帰ってコタツに入ったかのような安心感がある。低速での散歩を好むWebmasterには、やはり庶民的で牧歌的なNCが似合っているのかも知れない。

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山本式エアコン用流体素子バージョン2018(PAT PEND.)のナゾ

以前、

 エアコン用流体素子(PAT PEND.)のナゾ

というのを紹介した。ビデオは

山本式エアコン用流体素子(PAT PEND. サイズ80kBytes)

である。

これは、エアコンの前に特殊流体素子を配置し、そのランダムな動きによってエアコンの冷気を撹拌し、部屋の空調の分布を改善するシカケである。

これについては、美人フィルターなどの開発で、特定の美人女優さんに特殊な趣味性を発揮されるなど、高度な画像処理の達人として知られる平林 純氏が、hirax.net::エアコンの風は心地よく吹くか?(2000.08.16)において、Michael Griebel氏らによる非圧縮性流体のNast2Dを駆使して効果を解析しておられる。

個人的には以下のように解釈している。風を遮る壁の裏では風は異なった固有の共鳴周波数を持っている。異なった周波数の波が干渉すると強めあったり弱めあったりして、壁の裏の風の分布が改善する、というのである。

本年は地球温暖化(Webmasterは100%信じるものではないが)のためか、各地で記録的な酷暑となっているが、一方空調のムラにより風邪を引いたり、喉を痛めたりするユーザーも多い。

そこで、山本式エアコン用流体素子バージョン2018をプレゼントしたいと思う。まずビデオである。

大きな画像はこちら、である。

老婆心ながら、今回は流体素子を保持するアプリケーター(針金ハンガーとも言う)の作成方法を解説する。前回はそれぞれのユーザーの自主的な研究を促すために、敢えてアプリケーターの作成方法や調節方法は書かなかったが、酷暑という緊急事態を受けて詳説することとした。

動画を見れば解ると思うが、

1)アプリケーター(針金ハンガーとも言う)を上下に伸ばして菱型にする。その上部は裏に?形状に曲げて、エアコン上面の空気取り入れ口にひっかける。最近のエアコンは高齢者が掃除しやすいようにグリルが無く上面に空気取り入れ口が開いていることが多い。ハンガーはエアコンと同じ色(白色)のほうが目立たないだろう。

2)菱型の部分をエアコン前面の形状にあうように曲げる。

3)ハンガーの?の部分を風の中心に一致するように前方に水平に曲げ、なだらかな凹状に形成し、そこに特殊流体素子(焼き損なったCD-RもしくはDVD-Rとも言う)を置く。円弧部分は水平方向に前後対称に緩やかに円弧を描くようにすると、より遊動範囲が大きくなる。風の中心と特殊流体素子の中心が一致するように配置すると、左右だけでなく歳差運動(さいさうんどう、味噌擂り運動)を起こし、上下にも風を分散する効果が出てくる。

4)下の凹の部分は風の向きに平行にすると特殊流体素子の左右の振れ幅が同一となる。一つのエアコンに2個以上設置することができる。アプリケーターの形状を工夫すれば天井埋め込み形でも使えるかも知れない。

5)流体素子の運動を娯楽として楽しみたい向きは、特殊流体素子にスポットライトを当てるといいだろう。部屋中に虹色の反射が遊動してポップである。数個使えば、部屋中にミラーボールのような効果が楽しめるかも知れない。CD-RやDVD-Rやブルーレイや、あるいは印刷された円盤を使えば、色とりどりでより楽しめるかも知れない。

コストもリスクもゼロである。まさか焼き損なったCD-Rが夜の主役に返り咲くとは、CD-Rも予想だにしなかったに違いない。ぜひお試しいただきたい。

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特別企画普及型D級ICアンプで山本式電流帰還!!(実践編)

さて山本式DClass電流帰還アンプの実践編(PAM8610)である。このアンプを実用で使うには若干の配慮が必要なので、それについても説明したい。

さて。先行実験では、D級アンプでもアナログ-PWM変調では問題になる位相差は発生しないことがわかった。これに電流帰還回路を加えるにはどうすればいいのだろうか?

先に種明かしをする意味で、下手クソな絵を見て欲しい。

ここではIC自体を一個のオペアンプ風に書いてある。実際にはトップのアンプのゲインはボリューム電圧で設定されるRi,Rfによって決定され、またPWM変調後のゲインは内部の電圧帰還によって5倍に設定されている。

トータルゲイン= Rf/Ri x 5

入力に5.6kオームが直列に入っているので実際のゲインは少し低く、ボリューム電圧2.5Vでのトータルゲインは25.9dB(20倍)くらいである。入力は+入力、ー入力とも内部は反転入力になっている。

ここでPAM8610のデータシートを参照いただきたい。現在PAM社はDIODES社の傘下にあるが、なぜか本家のデータシートはゲイン設定が落丁しているという杜撰さである。

TA社などにくらべPAM社のデータシートは記載がかなりいい加減で、多くのグラフ類にも眉に唾をつけて見てほうがいいかもしれない。出力の強力なパルスが回り込みやすいので、単に回路図に見える部品だけでなく、その配置やパターン設計、グランド設計など多くの落とし穴を丁寧に処理しないと、S/Nや歪率などはデータシートより一桁以上悪くなり得る。

データシートによれば、PWM段後は内部でアナログ的に電圧による負帰還がかかっているが、デジタル出力からアナログ段に帰還をかけるために内部にハイカットフィルターが仕込んであると思われる。

これを電流帰還に変造するとすれば、BTLの出力に負荷スピーカーの抵抗値をゲイン(ここでは20倍)で割った値の電流検出抵抗を直列に入れ、その抵抗のコールド側からは入力に正帰還を加えれば、最初からかかっている電圧帰還を無効化し電流帰還だけをかけることができることになる。もし入力と出力の位相が逆相なら、BTLのー出力側に入れればよい。

当初は基板の裏面で配線しやすいのでICの出力の抵抗からトップのボリュームの中点(A点)に正帰還をかけてみた。この方法だとボリュームの位置によって正帰還量が大きく変わるので、抵抗5.6kオームの後ろ(B点)に正帰還を加えるべきであろう。ボリューム位置による影響を完全に減らすには、電流検地用抵抗をー出力側に入れ、ー入力側に正帰還させるのがベターだろう。このようにBTLは正相、逆相の入出力があるので回路の構成には柔軟性がある。

この回路で可変抵抗値が500kオームあたりから電流帰還の効果を確認することができた。

しかしながら、今回はボリュームの位置によって正帰還の分圧も変化するので、安定性からは負帰還に相当するだけの正帰還をかけることは困難である。アンプ自体のゲインも電圧で設定されるため固定抵抗に比べると変動する可能性がある。

さらに内部にAD変換器など複雑な回路があり、僅かな位相の遅れもあるので大きな正帰還をかけることは危険である。過去の経験で、電圧帰還に電流帰還を数dB付加するだけで電流帰還の効果が得られることはわかっている。

そのために今回は1MΩの可変抵抗で至適な正帰還量を探る作戦をたてた。

可変抵抗を小さくしていくと次第に高域が上がり、最後には発振するが、そのポイントはボリュームの位置によって異なる。今回のプアな試作では可変抵抗値で500kマイナスあたりから電流帰還の効果が見えてくることを確認できた。実用するに、ボリューム位置の影響を避けるために−出力側から−入力側に正帰還をかけるほうがベターであろう。

視聴するとノイズっぽく歪もかなりある。考えて見れば、D級アンプの出力はパルス列であり、それをスピーカーにつなげが音はまともに聞こえるが、それはスピーカーが電流をメカニカルに音圧に変換する段階でハイカットされるからである。

トップに安定した帰還をかけるにはアナログ信号が必要で、それには出力段に最低限のハイカットフィルターが必要なようである。パルス列をそのままトップに戻せば、信号と混変調を起こしてノイズや歪が多くなるのは当然である。

しかし、もともと組み込み用の安物アンプに立派なインダクタを付けるのは本末転倒でもあるので、簡便なEMIフィルターのフェライトビーズを使うことにした。これにデータシートにあったように10Ω(金属皮膜2W)と1μFを直列にしたものをスピーカーと並列に入れることにより、聴感上のノイズと歪をほぼ根絶できた。

このEMIフィルターは30年以上前に秋葉原でバルク品購入して部品庫で眠っていたが、運命のめぐり合わせか遂に出番が巡ってきた幸せ者である。Webmasterが高校生の時に使っていた50MHzトランシーバーTR1100は送信段が発振して勝手に波がでるという欠陥?があった。メーカーは送信各段にある同調を分散することで対処したようだが、不具合が露呈したのかTR1100Bという手直し製品が登場した。

この時に電源に入れたフェライトビーズが効果的だったので、このバルクもいつか出番があるだろうと思って手当したが、まさか高周波機器でなくD級のオーディオアンプで出番が来るとは思っていなかった。あと高周波用のフェライト小物の在庫があるが、おそらく出番は永久に無いような気がする。このアンプは出力に最低フェライトビーズを入れないとデータシートの結果は得られない。つまりデーターシートはフェイクなのだ。

種々の対策でやっと使いものになった安物D級電流帰還アンプであるが、D級アンプの効率の良さと、電流帰還の改善は聴感上は感じられる。かなりの音量で聞いていてもICの小さな放熱器はまったく発熱しないのだ。

しかしHiFiとして使うには出力段のフィルターを始めとして種々のノイズ対策を加える必要があるが、それでも放熱器と電源および電流消費は通常のアンプの数分の1ですむ。放熱板と電源のコストは初期投資で済むが、消費電力はその装置の寿命の間消費されるわけで、その節約分を積分すればかなりの量になるという計算もあろう。

ということで、やはり時代はD級アンプなのである。電源アダプターがここ10年でシリーズ型からスイッチング型にとってかわられたように、今後はオーディオアンプもD級にとってかわられるのだろう。我が家でも最近はシリーズ型アダプターはCATV回線用電話モデム付属のものだけで、おそらく微細なノイズが受話器で聞き取れることに対する対策なのだろう。

メリットの大きなD級アンプであるが、他のアナログアンプ以上に設計や製作には低周波域から高周波域に至るまでのノイズ対策にかかわる設計製作のノウハウが必要になるのだ。またデータだけでなく聴覚的にアンプの素性を見抜く能力も必要とされるだろう。

今回は簡易的に電流帰還が可能であることを確認したに過ぎないが、実用には種々のノイズ対策が不可欠である。個人的にはこの安物アンプを改造するよりは、わずかに数百円加えて出力に最初からフィルターが入っていて出力も大きいユニットを購入されることをお勧めしたい。そして正帰還は控えめにして、電流帰還と電圧帰還のハイブリットとすることをお勧めする。

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テスラはあなたの車庫に収まるか(暴力的加速編)

あるとき、webmasterは横浜を遊弋中にきれいなおねえさんに補足された。顔を見るなり”テスラってご存じですか?ご興味はありますか?”

で、ショールームに連れ込まれ、個人情報を記録され、親切丁寧な説明を受け、いつ試乗されますか?と来た。Webmasterはテスラに興味が無いわけではないが、ぼーとして歩いていたWebmasterを、彼女はカモとして動物的な勘で捕捉したのだろう。

”テスラのどういう点に興味がありますか?”と彼女が聞くので、webmasterは”車よりイーロン・マスクに興味がある。”と答えた。イーロン・マスクはテスラの会長兼CEOだが、なんと12才で商業ゲームBlasterを開発し、その後Paypalを創業して億万長者になった男である。その答えが彼女の好奇心を刺激したのか、質問の嵐と試乗の強いお勧めに根負けして、午後に試乗という約束になった。

試乗車はモデルSの100Dで、これは大きめのバッテリー100kWHを搭載して航続距離が594 Kmだという。中間モデルながらご自慢は加速で、0-100km/hは4.3秒、最高速は250km/hだと言う。デザインはオペル-インシグニア風の平凡なもので、特徴もなく威圧的でもなく、良き小市民の車風である。

試乗の相棒は車好きそうな女性で、聞けば最近までは外車スポーツカーPのディーラーで試乗を担当していた、という。彼女が空いたところでフル加速してくれたが、助手席のWebmasterがビビッた様子がないことに怪訝な様子であった。

普段大型バイクに乗っていると言うと納得したようだったが、実はテスラはWebmasterのNCより1秒以上早そうである。内燃機関とは加速の出方が違い、ガスペダルを踏んだ瞬間にガツンと暴力的な加速が始まるのはテスラの先進的なイメージと若干の違和感がある。

自動運転のデモもしてくれたが、道路状況が劣悪煩雑な日本ではお勧めできない、と言う。白線が錯綜して一部消えかかっているような交差点では行き先を誤ることもあり、黄色いポール列は無視するのでぶつかると言う。自動運転でも複雑な交差点を通るときはしっかりステアリングを握る必要があるとのことである。

レクチャー後にさっそくハンドルを握ってみるが、垣間見た車体構造やドアヒンジやキャッチャーは普通の感じで、内装やカーペットも米国車よりトヨタ車に似てビジネスライクであり、豪華さはあまりない。

その理由は、テスラの工場はかつてトヨターGM合弁のNUMMIであることと、おそらく技術陣の幾ばくかをNUMMIから引き抜いたからでは無いか。右ステアリングが用意されているのもNUMMIの遺産かもしれない。

運転が容易かというと、195cmある車幅が気を使う。クラウンはレクサスと同じ車台だが幅を180cmに抑えているように、国内では車幅が180cmを超えたとたんに使い勝手が悪くなる。それ以前に、幅が車庫に収まるかが一番の問題ではなかろうか。

この車がフェラーリのように目立つデザインなら周囲の車が寄ってこないので問題ないが、凡庸なデザインなので、深く考えないドライバーが近寄ってきて危ないような気がする。個人的にはこういう車は危険色として目立つ赤か黄色に塗ってもらった方が周囲にとっても平和だと思う。

着座位置やステアリングを調節すると、床下に電池があるのに着座位置が低いのは意外であった。薄く並べられた電池と、それを側方衝突から守る骨格が195cmもの車幅になる理由のようである。

じわっととガスペダルを踏んで発進するとプリウスと同様な運転感覚でだが、ガバッと踏みこむと姿勢変化が少ないまま加速する様子はインプレッサなどのAWDに似ているが、内燃機関のやや間があって吹き上がるのと違い、テスラはいきなりドカンと加速する。個人的には、内燃燃機関のように吹け上がりに若干間をもたせたほうが扱い易いように思った。

インパネ中央に巨大なパネルがあり、表示や操作はAndroid風であるが、一つ違うのはgoogle風のナビが部分的ながら自動運転に対応していることだ。案内だけでなく実際に目的地まで連れて行って駐車までしてくれる機能を部分的に実装している。ただし、現状では複雑な日本の交通事情では危なくて使えない、とのことであった。

残念なことは、乗り心地が期待はずれだったことである。195cmの全幅と全輪ダブルウィッシュボーンの高度なサスのためかピッチングやロールは小さいが、路面の微細な凹凸に対する車体の挙動が芳しく無い。おそらくダンパーの初動が渋くその分、ブッシユがユラユラと動き続ける。ブッシュにはダンパーが働かかないので収まりが悪く、ヤンキーのシャコタン車のような振動が続く。

その理由は、2トン近い車重に見合う高いバネ定数と堅いダンパーが微小ストローク域で動きが渋く、ブッシュだけが動くのである。それに重量や最高速度に見合うタイヤと大きなブレーキディスクのために車輪が重いことも変なゆれを増幅しているようだ。

対策としては、ブッシュ硬度を上げるとともにスプリングを非線形としての定数を下げることで微小ストローク域の制動を良くして大きな動きはチェックするのが常道であろう。彼女によると、普段ポルシェに乗っている客がまったく同じことを言ったそうである。

最大の売りの加速性能は、数字上はGT-Rに及ばないものの、町中でいきなりガスペダルを踏みつければ、最初の100-200mは間違いなく圧倒できるのではないか。GT-Rはクラッチや変速機を守るために変速のエンゲージに暇がかかるからだ。

そのうちに、先行車に追いつくか信号停止にあたるので、GT-Rが巻き返すまえに勝負は終わるであろう。さらに0-100km/hが2秒台のP100Dであれば、町中ではブガッティ・ヴェイロンすら圧倒するであろう。

気の弱いパッセンジャーはチビりそうな加速性が売りながら、狭い日本では195cmの車幅のために実用性に欠け、またデザインが凡庸で押し出しにも欠けるので、製品としてのバランスに難がある。現状では驚異の加速性能以外は魅力が今ひとつ、というのがWebmasterの印象なのであった。

この車はやはり米国で使うのがベストであろう。車道も駐車場も広い米国であれば車幅は問題ならない。

そして、おとなし目のデザインながら、隣に並んだ派手でけたたましい排気音のエキゾティックカーを発進加速で一蹴し、エキゾティックカーのオーナーを深刻なうつ状態に陥れることを痛快と感じるドライバーにうってつけである。おとなしい外観と暴力的な加速という、ジキルとハイド的な車なのである

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特別企画普及型D級ICアンプで山本式電流帰還!!(理論編)

先日久しぶりにパーツ店に寄ったら、電流帰還式アンプなるものが売っていた。僭越ながら、電流帰還式アンプと言えば山本式というのが世間の認識だと思っていた。

調べると原理は山本式電流帰還アンプと同じだが、電流計測用抵抗がアンプとスピーカーのホット側に位置しており、この抵抗のホット側から初段OPアンプに負帰還、抵抗のコールド側から正帰還がかかっていた。この回路だとヘッドホンなどのように3線式で接地が共通のものに使えるメリットがある。

なおこのアイデアについては、すでに

□>続々々々オーディオのナゾ(電流帰還アンプの実践編その3とスピーカーユニットの値踏み法)

において、

4.BTL接続の場合は少しやっかいだ。この場合アンプ出力とスピーカーのホット側の間に抵抗を入れる。そして抵抗のホット側から初段に負帰還、コールド側から初段に正帰還を適当な分圧回路で戻す(PAT pend.)。初段で負帰還から正帰還を差し引いた電圧が真の帰還量となり電流帰還アンプを構成する。”

と書いていて、まったく新しくない。トピックにしなかったのは、OPアンプを付加して試作したところかなりノイジーとなり感度の高いヘッドホンを対象としたアンプとしてはボツにせざるをえなかった。個人的にはヘッドホンは振動板が小さく高い周波数まで分割振動せずに均一な出力があるので、電流帰還にする必要性は乏しいと思っている。

件のアンプもOPアンプとディスクリートTrで組まれているのはノイズ対策だろう。そのアンプの設計者とはコンタクトがあり、山本式電流帰還アンプと彼の電流帰還式アンプのそれぞれの独自性をお互いに確認していている。

しかしながら、ほぐした電線一本(あるいは抵抗一本)しか要さない山本式電流帰還アンプの回路はシンプルで究極的に美しい。まるで小川のせせらぎのように電子が淀みなく流れる設計なのである

巷ではD級アンプが猛威を振るっている。

通販では10W x 2(PAM8610)の完成基板がボリューム、端子類込みで400円で売っていた。組込用として出力のインダクタは省略されているが、それにしてもものすごいコスパだ。さらにPAM8403(3w x 2)で端子類が無いものはボリューム付で200円だという。ただしあまりに安価なのでハンダ付けや不良部品のハズレ品も多いという。中華料理店のFORTUNE COOKIEのようなものか。

D級アンプはパルスのON-OFF動作だけなので電力ロスが少なく、発熱も少ないので放熱板も極小でよい。さらにBTL構成とすれば出力コンデンサーも不要となる。注文してみると、しばらくして小さな包が届いたが、封を解いたら4cm角のかわいらしい基板がこぼれ出てきた。

さて、これを山本式電流帰還式アンプに変造し俗界から解脱させるることは可能だろうか?これはちょっとしたチャレンジでもあるし、BTLアンプではさらにチャレンジーかも知れない。しかし、数年間脳内妄想で回路を練った結果、ごく少数のパーツで実現できたのである。

まず電流帰還をかけるには、入出力の位相関係を明らかにする必要がある。現用中のTA2020のD級アンプはかなりの手間暇をかけて改造したので壊したくないので、安価なPAM8610を題材とすることにした。それにPAM8610は入力が差動なので改造しやすいと考えたが、実はトップが差動入力である必要はまったく無いのである。それどころか、BTLアンプではトップへの入力が出力と同相であろうが逆相であろうが構わないことがわかった。

実験ではいきなりICを壊さないように電源を9Vと低めとし、入力に正弦波1KHz200mVp-pを加え出力を観察してみた。

画像は40年前の岩通のシンクロss-5100である。棚から出して電源を入れたところ、左右の掃引幅が半分しか出なかった。1分程たってシンクロの後ろからジーと言う音ともに煙がモクモクと出てきた。やばい!、あわてて電源オフ!!

しかし、こいつがお釈迦なら液晶のオシロを買えるチャンス?かも

カバーを開けてみたが特に焼損した部分が見当たらない。掃除機で綿埃を吸って再度電源を入れた所、何事もなかったかのように通常の表示となった。おそらく湿気を帯びた綿埃によるショートが焼き切れて正常な高圧が出るようになったのだろう。これで液晶のオシロを買う口実が無くなってしまった。なぜかトリガーがかからない(スイッチの接触不良かケミコンの容量ヌケか?)ので掃引はフリーランで撮影した。

これで、岩通の登録商標的にはシンクロからオシロに成り下がったのだ(年寄りしか解らないと思うが)。

下が入力で200mv/divなので約300mVp-pというところ。上がBTLの+側の出力で2V/divなので約3Vp-pというところ。電圧ゲインは20倍位か。BTLではこれで4W以上出ている勘定である。どうやらPWM変換では問題になるほどの位相の遅れは無い模様である。

片チャン(R)は口径8cmのスピーカー、(L)は4オームの金属被膜2Wとした。L側の抵抗も触れないくらい熱くなっていて、このかわいい放熱板を乗せた小さなキャラメルICが6BM8pp x2 以上(年がバレる)の出力を発揮するのはちょっとした驚きである。

出力の波形は非常に妙だが、スピーカーからはちゃんと正弦波の音が出るのは不思議ではある。

これがD級アンプの出力なのだ。正弦波の上側では出力のパルスの幅が広くなり濃く見えている。このヘンテコな信号がインダクタを経由するか、あるいはスピーカーにつなぐと、パルス列が積分されて正弦波となるのだ。

ところでシンクロの波形が異常に汚い。それはオシロがボケたのではなく、パルスがバラックなセットアップの随所に乗っているからである。3Vp-pで250KHzのパルスx4個分の放射は強力で、インピーダンスマッチングして立派なアンテナをつなげば北海道まで飛ぶかも知れない。最高のコスパを誇る安物D級アンプであっても、実用に供するにはある程度のノイズ対策は必要で、そうしないと得体のしれない歪やノイズが載る。

老婆心ながらD級アンプの原理を説明しておきたい。

D級アンプはデジタルアンプとも言われるが、要するに電圧変化を一定の高さのパルスの幅(PWM pulse-width modulation )あるいは密度(PDM pulse-density modulation )に変換して増幅し、最後に積分(ハイカット)するものである。PDMはFM(Frequency Modulation)にも類似していて、FM波をパルス列に変換し積分して復調するパルスカウント検波には100年近い歴史がありけっして新しい考えではない。

パルスへの変換は入力をDAコンバーターに入れて演算させてもいいが、PWMなら適当な三角波と信号をコンパレーター(比較器)に入力することで、簡単にパルスの幅に変換できる。

数式にすると複雑だが下手な絵でも納得しやすいだろう。正弦波と三角波をコンパレーターに入力して、正弦波が三角波より大きい部分を赤く塗ってある。コンパレーターの出力は三角波より信号が大きい間はHighとなり、小さい間はlowとなることで、パルス列に変換される。三角波の周波数は入力より十分に高い必要があるが、変動しなければどんな周波数でも可である。

多くのICでは三角波の周波数はAM放送に重ならないように選ばれているが、その高調波はAM放送帯に入るのでビートを生じる時は微妙にずらせるようになっていることが多い。

さて、電流帰還変造の詳細は実践編で述べることにして、今回試作(バラックとも言う)した山本式D級電流帰還アンプの性能を示しておきたい。このちっぽけなバラックが超弩級高級アンプを凌駕する驚異の過渡特性を発揮するのである。入力はホワイトノイズである。

上段が通常の電圧帰還アンプを直径8cmのパソコン用スピーカーに接続した場合のスピーカー端子電圧の周波数特性だが、当然ながら20-18KHzの範囲でほぼフラットである。しかし1KHz方形波入力に対する出力電圧の波形は立ち上がりが遅く、ピークにリンギングとノイズが乗っていてブレが大きい。ようするに電圧帰還はスピーカーのようなたちが悪い負荷をまともに制御できていないのである。

電流帰還アンプの出力(後述するが安定性のために100%電流帰還ではない)の周波数特性では、スピーカーのfoである120Hzに10dB程度のピークがあり、foでのインピーダンス上昇にマッチして出力電圧が上昇している。foのピーク幅が狭く感じるかもしれないが、ホワイトノイズでのfo周辺のインピーダンス変化は周波数スイープの時より狭く見える。これはfoは駆動条件で変動し、周波数スイープに対してヒステリシスを持って変化するからだ。僅かにハイ上がりに見えるのは高域のインピーダンス上昇に対応するものだろう。

スピーカーのホット側の電圧波形は立ち上がりが早くピークも安定し、方形波入力に近い波形になっている。バラックなアンプから盛大にパルスが舞っている環境でも出力電圧は実にクリーンである。

これは電流帰還系は電圧帰還系よりインピーダンスが低く外乱ノイズに強いからだろう。また暴れん坊のスピーカーが帰還内に入り確実に制御されるからである。一方電圧帰還ではスピーカーに流れる電流に関してアンプはまったく制御能力を持たない。

電圧帰還ではスピーカーは勝手に振舞っていて、まるで凧のようである。多くのオーディオマニアは、HVやEVが当たり前に走っている時代に、依然として得体の知れないスピーカーを凧のごとく揚げて音質を云々しているようなものなのである。実に哀れでは無いか。

今回の変造ではアンプに内蔵されている電圧帰還に電流帰還を5dB程度追加しただけだが、確実に電流帰還の効果が現れている。特に、周波数特性の変化以上にクリーンな出力波形が印象的である。口径8cmのスピーカーでも、聴感的には高音がきらびやかで金管楽器が麗しく響き、青空がより高くなったような印象がある。

このように、山本式電流帰還はD級アンプでも鉄壁の性能を発揮するのである。

さて、次回はどうやって市販D級アンプを山本式電流帰還に変造したか、実際のアプローチや調整法を明らかにする。引き続き、いくつかのD級ICについてどのように変造するかのケーススタディーを示したいと考えている。乞うご期待!!。

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AdobeFlashは死んだのか?(スマホでflashをどう扱うか?編)

Webmasterのスマホも少しずつ更新されているが、最近格安で仕入れたのが巷で非常に評判の悪いDignoEである。DignoEを高級版のDignoSと比べるとCPU速度がEが1.2GHzでSが1.4GHzと差があるのはともかく、アウトカメラがEが800万画素の手振れ補正付き、Sが1300万画素の手振れ補正なし、と無理やり差別している(ひょっとして同じモジュールか?)。

問題はSの内部ストレージが16GBなのに比べEは8GBしかない点である。最近のAndroidは肥大化しているので、8GBだとOSと標準的なアプリ群に半分以上食われていて、空きは3GB強しかない。これだと大きなアプリがインストできないだけでなく、OSアップデートにはアプリを一部消さないとできないのは、初心者には致命的だろう。

また、6.0 Marshmallowでありながら、外部SDカードを内部ストレージ化する設定が何故か無効なのも問題である。パソコンからadbで細工して」内部ストレージ化はできるが、素人には荷が重い。しかし2018年1月25日のビルド104.3.2f50から内部ストレージ化が可能になっており、そのための16GBのSDカードがオマケで添付されていた。

しかしこのビルドに到達するには計4回のアップデートが必要で、それには大きなアプリをいくつか消さないとできない

内部ストレージ化していくつかのアプリを移動すれば最低限のメモリーは空くが、1GBを超える巨大ゲームをインストすると早晩不足となる。Android2.2の頃から爪に火を灯してメモリーを節約してきたユーザーには十分使えるが、巨大なゲームをしたい初心者には”使えないスマホ”ではある。

話がかわるが、Webmasterの元には多くのスマホユーザーがトラブルを抱えやってくる。その中で、PCで見ているサイトの機能(動画とか音とか)がスマホで動かないという苦情が多い。これには、chromなら設定を「PC版サイト」に、OperaであればUserAgentを「デスクトップ」とし、サイトに明示的にPC版サイトを表示させることである。

それでも動かない場合は、サイトがAdobeFlashを要求している可能性が高い。GoogleはAndroid4.Xのころからセキュリティに問題があるとしてFlashではなくHtml5を推奨しており、Youtubeでも変換を急いでいる。しかし、古い動画には依然としてFlashベースのものが残っており表示されないことがあるし、PC向けのサイトの大半はまだFlashを使っている。

AdobeのサイトにはAndroid用のFlashが見当たらない、ように見える。しかしAndroid用の代物は深い階層に隠されているので、インストすることは可能だ。Flashにはセキュリティーホールがあるので注意が必要だと言うが、既にHtml5にも多数のセキュリティーホールが見つかっているので、ユーザーが増えれば必ずHtml5のセキュリティーホールをついてくる輩が増えるものである。

手順である。

まずAdobe Flash Player ダウンロードへ行く。そこで「別のコンピューターのFlash Playerが必要な場合」をクリックする

次のページで、「ご使用のオペレーティングシステムまたはブラウザーが表示されない場合は、アーカイブされたFlash Playerのバージョンページを参照してください」をクリックする。

そうすると、Android4.0以降用のver.11.1.115.81もしくはandroid2.x,3.x用の11.1.111.73をダウンロードしてインストできる。スマホでUserAgent設定を「PC版サイト」もしくは「デスクトップ」としてもこのページにアクセスできない場合は、PCでダウンロードしてgoogleドライブ等で移動すればいいだろう。

ただし、ver11.1Xでは当然ながら3Dとかのそれ以降のバージョンの機能が無い。また、Flashを容認するかどうかはAndroidの実装とブラウザーの設計者のポリシーに依存するので、複数のブラウザーを試す必要があるだろう。

ということで、Webmaseterの基に困った顔をしてやってきたユーザーの幾ばくかはこの設定で救われた。ただしセキュリティーの不安もあるので、怪しいサイトには近づけないように、セキュリティーソフトを設定しておくのは必須であろう。

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ガスファンヒーター故障のナゾ(フィルターを掃除しましょう)

家人からガスファンヒーターが動かないとのクレームである。

それを聞いた時に、個人的には例のフレームロッドの問題かと思った。シリコン分が炎センサーの表面に石英(SiO2)として沈着し、導電不良から失火と判断されて停止するエラーはファンヒーターではおなじみである。このサイトでも過去、

始動不良な発電機とファンヒーターのナゾ
新春ファンヒーターお手入れのナゾ
修理が難航した石油ファンヒーターのナゾ・その2 (原因究明編)
修理が難航した石油ファンヒーターのナゾ
九九式石油ファンヒーターの傾向と対策
平成10年型石油ファンヒーターのナゾ(季節遅れ編)
石油ファンヒーター大研究その2(メカニズム編)
石油ファンヒーター大研究その1(費用編)

と、たびたび石油ファンヒーターの問題は取り上げている。しかし個人的に一番のお気に入りは

暖房機器のアキレス腱、フレームロッドの風水クリーンアップ!のナゾ(ファンヒーター不良解決の決定版))

である。以前はフレームロッドの清掃は分解して紙やすりで石英析出物を削り取るという作業であったが、毎回ファンヒーターを分解、清掃、組み立てするのは骨が折れる

骨子は、まずファンヒーターの前面パネルをはずし、バーナー表面にある覗き穴の雲母を折らないように注意深く外す。そこでファンヒーターを動作させ、フレームロッドが灼熱したところで停止させ、フレームロッドに注射器や霧吹きで水分をかける、という方法である。

これでフレームロッドやバーナー表面が急冷される時、石英析出物が金属の熱膨張率の差により粉砕され除去されるのである。ヒントとしては、昔から馬力不足対策として水メタノール噴射が使われているエンジンの燃焼室はピカピカになるという情報である。自動車のエンジンでもヘッドのガスケットが腐食して冷却水が入ったシリンダーだけがピカピカになるのも同じ原理だ。

通常のフレームロッド不良では、最初は着火するもののトロ火になると消火するという症状が出る。しかし今回の故障では始動してすぐに「フィルター清掃」ランプが点いて、電磁バルブが動作してガスが出る音も、点火装置のジーという音もしない。つまり、起動シークエンスで異常が見つかり先に行かない様子である。

メイクは2003年のパナ◯ニック製でであり、15年経過していので制御基板の電解コンの抜けなども考えるので、最初は廃棄も考えた。しかしひとつ引っかかる点があった。

というのは、この製品がやってきて初めての春に裏のフィルターを清掃した際に分解して内部も清掃したが、フィルターが付いているにもかかわらず金属製ラインフローファンにかなりの綿埃が付着していたことを思い出したからである。

これには理由がある。この製品のファンはバーナーの下流にあり、熱風を扱うために金属製である。しかし熱風には燃焼により水蒸気が含まれているので、消火後にファンに水蒸気が凝縮して水分となり綿埃を集めるのである。ひょっとして、これが絡んだ故障ではないか?

いずれにせよ、分解もせずに故障原因を明らかにしないままに廃棄するという行動はWebmasterの辞書には無い

分解してみると、この製品は石油ファンヒーターと設計ポリシーが異なり、むしろガスコンロに近い設計であることが解った。おそらくガス製品と石油製品とは事業部が異なるのだろう。

まず、フレームロッドが無い!! つまり燃焼を直に検知する仕掛けは無いのである。複雑な石油ファンヒーターのバーナーに比べガスファンヒーターのバーナーは単純な構造なので、点火装置が長く動いて一旦火がつけば、その後不完全燃焼はあり得ないという考えなのだろう。

その代わりガスコンロにある熱電対らしきものがある。熱電対は温度を感知するので、少々表面が汚染しようが簡単に動作不良にならないので、コンロから給湯器までガス機器では広く使われている。これを清掃したが大した汚れは無く、原因としては弱い。熱電対では部屋の酸素濃度が低下して消火に至らない程度の不完全燃焼は感知しない可能性はある。

良く見るとバーナーの上に何かある。おそらく温度ヒューズだろう。電脳制御ならノイズなどで制御が暴走することもあるしリレー電極が固着することもあるだろうが、そんな稀な状況で温度ヒューズは出火を防ぐ最後の砦であり、<b>これだけに過熱制御を頼るようなヘマな設計を◯ナソニックはしないはずだと思った。

例えば安物のティファールの電気ポット(とそのコピー品)でさえ過熱に対して二個のバイメタルと温度ヒューズの三段構えになっている。石油ファンヒーターでも磁石のキューリー点を利用し自動復帰する温度スイッチが付いている場合が多い。

というわけで、故障の原因は制御基板不良であろうと家族に死亡宣告し、蓋を閉じて廃棄の準備をした。

しかし一日たって、そのまさかの温度ヒューズ切れでは無いか?という疑念が湧いてきた。というのはファンを清掃したときにかなりの綿埃が溜まっていたことを思い出したからだ。綿埃により風量が低下しバーナーが過熱して、まさかの温度ヒューズが切れたのでは無い?温度ヒューズは過熱しなくても経年変化による腐食やショックでオープンとなる事はあり得る。

そこで温度ヒューズの導通を確かめると、切れていた。やはりファンの綿埃によるバーナー過熱が原因であろう。温度ヒューズは163度3Wとの印刷があるが、いかにも弱々しく、あるいは経年変化による不良かも知れない。近くのホームセンターに169度の温度ヒューズがあったので交換し、再度ファンヒーターは作動を始めたのである。

確かに綿埃を集め易い金属ファンには問題があるが、すでに15年を経過した製品なので欠陥とは言えない。しかし過熱に対する砦が温度ヒューズだけという設計はパナソ◯ックとしては意外であり、本来は温度スイッチか熱電対が温度ヒューズが飛ぶ前にエラー感知して停止し、異常が自動的に復帰する設計のほうが親切かも知れない。

しかしパ◯ソニックがそうしなかった理由も解るような気がする。まず、設計陣が慣れているであろうガスコンロの設計では過熱という現象が想定に無いので、万が一の場合は温度ヒューズだけで良いと考えた可能性がある。

仮に、過熱を復帰可能な温度センサーで検知し消火しても、しばらく冷却するとユーザーは再度使用してしまうだろう。それを繰り返すうちに不完全燃焼で一酸化炭素中毒のリスクもありえる。

とすれば、「バカよけ」として温度ヒューズが飛んでサービスを呼んで貰ったほうが安全、と考えた可能性もある。温度ヒューズの動作不良は稀だし、経年変化による故障モードとしてはオープンなので、どのみち完全に動作停止した方が安全という考え方も成り立つ。

このファンヒーターは薄くてコンパクトに設計されている。熱風吹き出しの位置は低いほど室内の温度分布に有利なので、ファンをバーナーの上流の上部に持ってきてバーナーを下部に置く設計も考えられるが、筐体上部に熱がこもった場合に樹脂製ファンなら溶けてしまうので、金属製ファンが必要になる。

わざわざコストのかかる金属製ファンを使うなら、バーナーの熱風をファンに当ててもいいだろう。そうすれば全てがコンパクトになる。

しかし作動テストでファンが金属製のため結露して綿埃を集める可能性が見つかったので、背面には身分不相応に立派なフィルターをつけた。これで、よほど使用条件が過酷でないかぎり大丈夫であろう。

それでもファンに綿埃が付いて風量低下した場合は、どうせ温度ヒューズが切れる。一度でも過熱したら二度と使えないようにするほうが安全なのだろう。

個人的には、車並に細い燃料制御が行われている石油ファンヒーターに比べると随所に安易な設計が見られるのは情けないが、それなりに理由があってこういう設計にしたのだと想像している。

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サーモ付き風呂シャワー水栓水漏れ2018のナゾ

Webmasterはご機嫌斜めである。

理由は、欠陥シャワー水栓にお付き合いさせられているからだ。今回またしてもシャワーとカランの切り替え栓が不良となり漏れれてきたのである。

過去のスレッドを見ると、

サーモ付き風呂シャワー水栓水漏れのナゾ
続サーモ付き風呂シャワー水栓水漏れのナゾ(部品交換編)

のように1998年に記載があった。当時おそらく関係者からと思われる人間から”記載を控えてくれないか?”、というメールが来た。”すぐにダメになるような水栓はメーカーの改良を促すために敢えて記載は変えない”、と答えた記憶がある。その関係者に、”記載に何か間違いがあるのか?”と返事したところ、”間違いは無い”との返事を貰っている。

さて、普通の水栓のパッキングはコマと呼ばれる部ついてる。コマは回転するハンドルの先にはまっているが独立した部品になっている。その理由はハンドルをひねったときにコマは回転せずに弁座とは擦れないようになっているのである。つまりコマがハンドルの回転を逃がすのだ。古くからある水コマも単純な構造に見えて実はノウハウの結晶なのだ。

Webmasterがこの家に越してきたのは1992年なので、わずか6年少々で水栓のパッキングは不良になった。ちなみに、となりある風呂に水を入れる水栓は通常は使っていないが(給湯器の自動お湯張りや追い炊きを使うから)、最近になってわずかに漏り出したのでパッキングを裏返して使っている。

水栓が急激に漏り出した理由は、コマが錆びてハンドルと一体となって回転するようになったからだ。そうするとパッキングが弁座と擦れて急速に劣化する。いずれにせよ、そのパッキングは24年持った。コマは錆びを落として少量の真空グレードのシリコングリースを塗って回転しないように対処した。

一方、この切り替え弁はその後は平均6年半毎に不良となり交換しており、何と今回が4個目である。原因は設計が悪いために先端のパッキングが回転して弁座と擦れ摩耗して漏れるのである。

1998年に交換した品はコマが回転しにくいように若干の改良はされていたが十分で無かったのである。巷には安いサーモ付きシャワー水栓は売っているのだが、いつメーカーが改良するか見定めるために、敢えて水栓自体は変えていないのである。

普通の水栓のパッキングはコマと呼ばれる部品がある。コマは回転するハンドルの先に独立してついているが、その理由はハンドルをひねったときにコマは回転せずに弁座とは擦れないようになっているのである。つまりコマがハンドルの回転を逃がすのである。古くからある水栓も単純に見えてノウハウの結晶なのだ。

多くの水栓のパッキングが早期に摩耗するとすれば、それはハンドルと一緒に回転しながら弁座に当たるからだ。このため、多くの水栓メーカーはパッキングが回転せずに弁座に当たるように、長年改良したのである。

見ると、この水洗も先端のパッキングを完全に回転しないように改良することは可能に見える。コマに凸部を作り、それがケージと噛み合い回転しないようにすればよいのだ。そうすれば日本中のユーザーは怠惰なメーカーのために無用な水漏れに悩むことは無かっただろう

今回は、出てきた支点の社員に苦情を言ってみた。

”わが家のこの水栓はほぼ6年半毎に交換して今回が4回目である。シャワー水洗は台所と違って一日中何度も捻るわけではないのに、たった6年で摩耗するのは設計に問題があるのでは無いか?"

従業員は答えた。

”水質や使い方もあるから。お宅のは福○市の水道ですか?"

”そうだ。こんなにしょっちゅう交換を要するなら、部品は業販価格で売るべきだ。6年毎にだめになって今回4個目だ。”

”それはだめだ。定価でしか売れない。”

というわけで、仕方なく定価で買ってきた。もちろん、ネットでは若干の値引きをして売っているがあえて従業員に苦情を伝えるためにわざわざ営業所に出向いたのである。

このメーカーが改良もせず済ませているので、次回は自分でコマに凸部を作ってパッキングが回転しないような細工も考えている。

本社に苦情が届いているかどうか解らないが、おそらく通常のユーザーは業者を呼んでパッキングを交換させるが、度々不良になるので諦めて他の製品に付け替えさせるだろう。業者を呼んで4回パッキングを交換させれば、新しいサーモシャワー水洗に交換するより高くつくからである。

いずれにせよ、個人的にはパッキングがダメになる製品はお勧めできない。確かに1998年の水栓にはコマが回転しにくいように改良の形跡があったのでメーカーは問題を認識しているのだが、その後改良を怠って放置しているのである。

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いき○りステーキの収益性のナゾ

Webmasterはグルメで無い。それは家訓でグルメ行為が禁じられているからだ。しかし友人には本物のグルメが多い。その一食に数万円をかけるような複数のグルメが、いき○りステーキにハマっていると言っていた。グルメに疎いwebmasterもこれは異常事態だと感じた。

なんでも、肉は値段からは信じられないほど柔らかく、それを3kg食してゴールドカードを貰えば、毎回黒烏龍茶がタダになるとか、いろいろな特典があるという。

Webmaseterも早速福岡天神の店舗を訪れた。行列が予想されたのでピークをはずし午後3時に行ったのだが、やはり数名の行列ができていた。15分程度待って入店できたが、最初に肉の量を決めるシステムは興味深かった。肉は値段を考えると柔らかくて食べやすい。

以来通うこと数回、数カ所の店をまわり、お正月までにゴールドカードを獲得することができた。課金は先払いと後払いの店があることから、フランチャイズによって考え方が異なるのだろう。

当初、このビジネスには追従者がすぐ現れるであろうと思った。すでに多くのモールに出店しているが、そのモールの主が自社で類似した店舗を出しているところもあるが数は多くない。

それだけでなく、既存の外食チェーンがフランチャイズとして加入していることが解った。自ら新たにチェーンを立ち上げるよりは、ロイヤルティーを払っても早期に参入してノウハウを吸収したほうがベターという考えなのだろうか

会社は驚くべきペースで成長しているようなので、いったいどのくらい儲かるのか考えてみることにした。

まず、い○なりステーキ本部はFC加入資料として、

開業資金(加入、立地調査、設計監理、保証金、内装工事、厨房工事、電磁調理器、ライスロボ、レジ、秤、開業費、教育研修費)
合計      4482万
ロイヤルティー 3%

売上高月  1800万   2400万     3000万(3パターン)
償却前利益 198万(11%) 324万(13.5%)  462万(15.4%)

だと言う。果たしてこの数字は妥当だろうか?webmasterが独自の取材によって裏をとってみよう。

まず店の規模だが、一番込み合う天神店は29席(椅子席8席)、小倉魚町店は38席(椅子席34席)筑紫野店は席数48席(椅子席36席)、光の森店は43席(椅子席33席)、マリノア店は58席(全席椅子席)であった。住宅地のモールにある店は大型で椅子席が多い。ただし席数があっても従業員の数のため全てが利用されていないようなので、ここでは1店を35席と想定した。

周囲が何を食しているかを観察したところ、日土祝は肉量り売りが多いことから平均客単価を2400円+TAXと想定した。平日の昼食は定量のワイルドステーキが多いことから平均客単位を1600円+TAXと想定した。

客の平均滞在時間は繁華街の立ち食い席が多い店では25分程度、椅子席の多い郊外店では35分程度であることからラフな推定として平均30分と想定した。

営業時間は通常は11時-23時間であるが、空いている時間もあるので、キャパが満たされる確率を土日祝日は営業時間の66%、平日は50%と推定した。このあたりの推定値には根拠が無いが、あくまでベースとしての推定である。

その前提で月商を推定すると、

(2400円x35席x2回/時x8hrx5日+1600円x35席x2回/時x6hrx25日)=2352万/月

ラフな推定ではあるが、FC本部の資料の月商2400万のケースに近いので、意外や妥当な推定なのだろう。

次に、他の外食チェーンの月商と償却前利益を比較してみる。各FC本部がモデル店舗として提供している数字を拾うと、

モ○バーガー  月商700万、営業利益12%(84万円)ロイヤリティ不明
ウェン○ィーズ 月商1000万、営業利益12%(125万円)ロイヤリティ売上の4%

FC本部の資料によると、○きなりステーキのロイヤルティーは3%であるという。外食産業では通常4%程度と言われているので、ロイヤルティーは低めである反面、月商や利益は3倍近いので、商売としてはかなり旨味があるようだ。

もちろん、立ち上げは当然ながら別途必要で、開業資金として場所にもよるが、モール内店舗の場合は2500万程度、ロードサイド店の場合は5000万前後はかかるであろう。

基本的に事業を立ち上げるとすれば、初期投資を何年で回収できるかが目安となる。アパート経営などの不動産などでは回収に10-15年を要するのが普通である。

業界の一般的な数字として、FCとして営業の全てを全て本部にお任せするとして、商売がうまくいった場合、出資者は開業資金を3−8年で回収できるモデルのようである。不動産に比べると回収は速いが、それは商売がうまくいかないリスクがあるからである。

一方、FC本部の利益としては、立ち上げ費用の一部の他に、毎月ロイヤリティーと店が仕入れる原材料からの利益もある。通常、原材料費は40%-45%であり、その10-15%とロイヤリティーと合わせてFC本部は月商の約10%の利益、というのが相場らしい。

ただし、とある外食産業アドバイザーは、いき○りステーキの材料費率は業界水準よりかなり高いと言っていた。実際、FC本部の資料によれば、材料費は55%に達するという。一方、調理器具や什器類の経費はそこいらのハンバーグ屋とあまり変わらないので、客単価が高いことから高い材料費の影響はかなり薄められているのだろう。

つまり、材料費が高くても、その10%がFC本部の利益とすれば、ロイヤルティーが3%と低くてもFC本部にはやはり10%程度の利益があると考えられる。

少なくとも、複数の既存の外食チェーンがいき○りステーキにFCとしてに加入しているところから、店の利益は通常の外食チェーンより厚いのであろう。やはり、高い客単価と回転がカギなのである。

以上の推定につぐ推定から、いき○りステーキの1店舗(中型店)の年商は3億弱、FC出資者の利潤はその13.5%で、開業資金の回収は3−4年、FC本部の収入は約10%ではないか、という根拠があやしい数字が出来上がった。

ただし、このまま順当に事業が拡大するかどうかは解らない。というのは、他の外食チェーンも指を加えて見ているわけではないからだ。

比較的高価格であっても、十分量の肉を出し、客が回転すれば適度な値段で利潤が出る。客も肉でお腹がいっぱいになれれば若干高くてもリピートしてくる。その際、店で座ってゆっくりでなくてもかまわない、という公式が明らかになったからである。

つまり、ステーキ安売り外食はブルーオーシャンでは無く、レッドオーシャンになったのだ。い○なりステーキの商売の要素を取り入れた同業他社がパイを奪い合うことになる

また、高級ステーキ店は今までA4A5等級のサシが入った黒毛和牛を高く提供してきた。しかし、サシ入りがベストであるとはWebmasterは思わないし、おそらく多くの人はそんな肉を欲していない。適当な品質の肉をうまく焼けば十分おいしく提供できる、ということも公知となったのである。とすれば、高級ステーキ店も目線を下に向けて質より量で攻めてくる可能性もある

というわけで、一つの都道府県に数店舗になった時点で商売の伸びは確実に鈍化するであろう。おそらく1−2年のスパンでそうなると思われる。

しかしながら、そうなったときにはより幅広い店でおいしい肉を安く、たくさん食えるようになっているので、消費者にとって悪い話では無いと思う

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ドリップバッグでアロマの高いコーヒーの作り方のナゾ(失敗編)

今回は、

   □ペーパードリップでアロマの高いコーヒーの作り方のナゾ

の続編である。皆様の中にはこうおっしゃるい方もおられるかも知れない。

「解った解った。ペーパーを十分湯通しすればいいだね。しかしオレはドリッパーをセットするのが面倒くさいので、普段はドリップバックを使っているんだが、その時はどうするんだ?

Webmasterもそのご意見は良く理解できる。巷にはドリップバッグがあふれているし、相当高級なコーヒー豆店でさえ自慢の豆をドリップバッグに詰めたものを売っている。

さて前回の結果は、十分に湯通ししないと、乾いたペーパーが油分と最初に出てくるおいしい部分を吸ってしまうということである。しかしドリップバッグだと、ペーパーだけ湯通しすることができないではないか?

しばし熟考して次のような実験を行ってみた。結果は後述するが、若干予想とは異なる結果になった。

まず湯音は92度とした。外気温が20度なのでコップもお湯で温めておいた。そして、左側にはお湯を満たしてバッグを開封せずにそのまま漬けて、右は通常のようにセットして淹れた。左側ではバッグのペーパー材が最初にお湯に触れるので、コーヒー豆の油分や抽出物がロスしにくいのではないか、というのが当初の目論見であった。

通常、コーヒーバッグの豆はレギュラーコーヒーの豆より品質が落ちる。そこで少しでも油分が多く出るように、我が家に存在するコーヒーバッグのなかで、「標高4500メートル以上のジャマイカブルーマウンテンエリアの中でも特に厳選されたつぶよりの豆だけをローストした」と称するものを使った。webmasterはメーカーの説明を100%鵜呑みにするほどナイーブでは無いが、安物のバッグよりは油分は多いようであった。

右側はおおむね1分で抽出が終わったが、左側は漬けたままなので薄いままである。少々揺らしても依然として薄いので4分間放置し、その後5回左右に揺すり5回上下させたところほぼ同じ濃度となったのでバッグを引き上げた。

さて照明にかざしてみて表面に浮いた油分に差があるだろうか?

油分を強調するために画像処理を施してあるが、「うーん、あんまり違わないなあ」

左は揺れ動かしたので模様がついているが、しばらく放置してもペーパー度立派の時のような大差は無い印象だった。匂いをかいでみても大差無い。あるいは予め商用のコーヒーの香料で香りがつけてあるのかも知れない。

原因としては、通常のドリッパー用のペーパーより豆の量あたりのペーパー材の面積が圧倒的に少ないことがある。そして少ない面積で透過させ粉で目詰りしにくいように透過性の高いペーパーが使われているのだろう。

ありていに言えば、今回の実験は失敗ということだ。

一つの収穫は、ティーバッグのような杜撰な淹れ方をしても、時間をかければそれなりにコーヒーは抽出できるという事だ。

我々はすぐ、サイホン、ネルドリップ、ペーパードリップ、フレンチプレスなさまざまな道具を駆使して然るべき儀式をもって淹れるが、コーヒー自体は豆の質、焙煎方法、そしてお湯の温度と抽出時間でかなりの部分が決まっていて、その他の要素は単なる儀式に過ぎないのかも知れない。

然るべき茶室で儀式に則って淹れた薄茶が、台所でポットの湯で淹れたものとどれほど違うのかはwebmasterは知らない。しかし儀式に凝るのは人類の人類たる所以であり、クリスマスも正月も七五三も冠婚葬祭すべてが儀式を行ってけじめをつける行為が一定の価値を持つのである

あーあー、高いコーヒーバッグを一つ無駄にしてしまったと思いながらすすってみると、左側のコーヒーは甘いのであった。あれ、と思って右側を飲むとやはりコーヒー特有の苦味がある。再度左側をすすると、やはり明らかに甘い

考えるに、やはり豆に触れるお湯の温度と抽出時間の積分値が関係するものと思われる。予め温めていたとは言え、カップの湯温はどんどん低くなり、またお湯はよりゆっくり粉の中に浸透して、結果的に低温で長い抽出となる。

一方、右のカップの豆には常に新しい92度のお湯が注ぎ足されるので、高い温度のために苦味が出てきて、それが豆の中を通る間に一部は吸収されるもののある程度出てきてしまう。もちろん、ある程度の苦味もコーヒーの重要な要素と言えないこともない。

今回のもう一つの収穫は、左のような杜撰な淹れ方でも、時間をかければ甘いコーヒーが出来るということだ。それは煎茶の玉露の淹れ方とも共通するものだろう。単に甘いコーヒーを飲みたいなら、そもそもドリップなんて儀式は不要なのかも知れない。試しに湯温を95度に上げると、若干の苦味が味わえるようになる。

缶コーヒーのメーカーでは、お湯に豆を直接投入して抽出し濾過する「ボイル」という手法で大量のコーヒーを作っている。下の動画を見て欲しい。

これでも湯温と抽出時間さえ注意すればそれなりに美味しいコーヒーができる。注ぎ方にいろいろな難しい条件が加わる神経質な円錐形の道具と紙を使うよりはよっぽど安定して抽出できるのだ。

コーヒーには若干の苦味や雑味が必要と考える方は、右のようにきちんと淹れるべきであるが、時間が無い場合はドブ漬けで放置してもそれなりに楽しめるということである

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Webmasterの邪馬台国考のナゾ(その2卑弥呼の墓はどこか祇園山古墳編)

以前、

   □Webmasterの邪馬台国考のナゾ

なるトピックを書いた。その骨子は邪馬台国は北九州(おそらく筑後平野)にあり、東遷し寒冷化という気候変動に苦しむ近畿の倭人国家を侵略し、その後急速に同化して大和朝廷が成立した、という説である。

別に東遷説は珍しいものではなく、小説や漫画では大半がこの説をとっているが、東遷の原因を寒冷化という気候変動に求めた点がユニークで新しいと思っている。

ただしwebmasterのなかでは、伊都国の平原遺跡から出土し「八咫の鏡」との関連が問題になる直径46cmの大型内行花文鏡及び大量の装飾品と邪馬台国の関係が整理できていなかった

平原遺跡は鏡40面と数千点に及ぶ装飾品(そのすべてが国宝指定)から解るように、太陽信仰を司る女王であった可能性が高い。しかも三国志魏志倭人伝にある卑弥呼は「卑彌呼 事鬼道 能惑衆」とあるようにシャーマンでもあった。

このことから膨大な副葬品が出土した平原遺跡が卑弥呼の墓であるとする研究者もいるが、平原遺跡は「卑彌呼以死 大作家 徑百餘歩 徇葬者奴婢百餘人 」の径が百歩(多くの説では約30m)の墓としては明らかに小さすぎる。

というわけで、某月某日、久留米近傍で卑弥呼の墓とする説がある祇園山古墳を訪問した。

古墳は九州道で久留米インターから熊本方面に向かう左カーブを描く坂の途中にある。古墳に行くには久留米インターを降りて車で数分の距離であり、高速道路からも一瞬古墳とその立て看板を見ることができる(下図)。祇園山古墳はなぜかwikiもなく有名とは言いかねる古墳だが、九州道が作られるときに各方面からの働きかけで破壊を免れた古墳である。

古墳は方墳で、その一片は約24m、対角線は33m、高さは6mで二重の石積みで囲まれたていて、その下部は円墳となっている(下図参照)、小高い丘の上にあるので巨大では無いもののかなり目立つ古墳である。また周辺から甕棺墓3基、石蓋土壙墓32基、箱式石棺7基、竪穴式石室13基、不明7基などが確認されており、魏志倭人伝の百余人の殉葬という記載とも一致する。

石棺が古墳の頂点に直接埋まっていて古墳時代の主流と様式が異なるなど、年代的にも邪馬台国の時期と一致する。北北東から南南西に向いた石棺には槨(石室)がなく、魏志倭人伝にある「其死有棺無槨封土作冢」と一致し、卑弥呼の墓として規模様式ともに矛盾が無い。周辺の甕棺墓から出土した画文帯神獣鏡片には諸説があるが石室から出土したものではなく、祇園山古墳が魏志倭人伝で描写された卑弥呼の墓と異なる材料は事実上無いのだ。

ただし、小賢しい議論は全て忘れて、まずご自分で一度古墳の頂点に立って周囲を見渡してみるべきだろう。立地を見ればこの古墳が卑弥呼の墓であってもおかしくないと解るであろう。

見ると、山が一番低い所が太宰府でその先は博多(奴国)がある。中央の一番高い所が背振山であり、その麓には吉野ヶ里遺跡が、その向こうには糸島がある。ここからは筑後平野を西は大牟田付近まで、東は朝倉付近まで見渡すことができ、そして石棺は広大な平野と平行して置かれている

写真(右上)では九州道から見える祇園山古墳を示している。国家事業である高速道路がこの古墳を避けるために曲げられていることが良くわかるだろう。関係者の努力によって旧道路公団にそれだけの配慮をさせるに足る何らかのパワーがこの古墳にある、ということだ。

次に地図を見て欲しい。三角形を繋げて蝶形をしたのが筑後平野である。弥生時代には海が内陸まであったので、南西側の三角形はこれより小さく、まさに左右対称な蝶形をしていただろう。

祇園山古墳は蝶形の付け根の高良山から北西に突出した丘の上にあり、筑後平野のほぼ全てを俯瞰することができる。この地図を見たら、この場所以外にこれほどの眺望をもった場所が無いということがわかる。その立地こそがこの古墳が卑弥呼の墓と考える一番の理由であり、一度ご自分の目で見れば納得が行くのではないか

もしあなたが王なら、墳墓は領地の中心で領地の全てが見える位置を選ぶのでは無いか?また自分の出身地をその眺望の中央に置くのではないか?

さすれば祇園山古墳は、立地からして真に筑後平野の覇者が祀られていたことは間違いないし、時代的には卑弥呼の墓である可能性が高い。石室は古墳の頂点にあり盗掘のために副葬品は失われているが、おそらく平原遺跡に劣らない豪華なものが副葬されていたであろう。

小説家松本清張は卑弥呼とは日向(ひむか)であるとする。伊都国に向かう峠は日向峠であり、卑弥呼は伊都国出身の可能性が高い。例の平原遺跡の石棺と2本の柱は日向峠の方向を向いていた。祇園山古墳周囲から出た1号甕棺は副葬品から卑弥呼に仕えていた巫女のものと考えられているが、その甕棺は伊都国様式である。

さらに、「復立卑彌呼宗女壹與」とある卑弥呼の後継者の壹與は「ゐ(い)と」と読む説がある。卑弥呼の宗女とあるので壹與も卑弥呼と同じ血筋で伊都国出身だったのだろう

少なくとも卑弥呼が魏に使いを送り、また壹與が晋に使いを送る間に邪馬台国の位置が変化したという記述は無いので、邪馬台国が東遷するとすれば壹與の治世の後半以降のであろう。その後は空白の150年が続くので日本にも中国にも記録が無いが、好太王碑文によれば4世紀末から5世紀にかけて日本は朝鮮半島で活発に活動していたことがわかっている。

以上のことから、Webmasterは祇園山古墳こそが卑弥呼の墓であると考える。それは魏志倭人伝の記述と矛盾する点が無く、古墳の頂点からは筑後平野全体を俯瞰でき、伊都国は眺望の中央の方角にある。祇園山古墳にも平原遺跡に匹敵する豪華な副葬品があったはずだが、古墳の頂点に石室が置かれたために盗掘にあった。

そして、伊都国の平原遺跡は壹與の墓と考える。おそらく壹與の治世の後期には邪馬台国は近畿に東遷したと考えるが、老齢となった壹與は北九州に留まり、最後は出身地の伊都国に葬られたとwebmasterは考える。そうすれば、伊都国の平原遺跡が祇園山古墳と同じ方墳なのも説明がつく。

そして墳墓は盗掘を避けたために、出土品すべてが国宝に指定されるほど豪華な副葬品があるにもかかわらず、小ぶりのものとしたのであろう。その作戦は見事成功し、20世紀になるまで5枚もの大型内行花文鏡をはじめとした部大な副葬品が盗掘されずに残ったのであろう。

そして、平原遺跡から出土したひときわ大きい大型内行花文鏡、剣、曲玉と同じ起源のものが三種の神器として近畿に遷り、天皇家に伝わったとすれば、すべてが矛盾無く説明できると考えるのだが、いかがであろうか。

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