□お月見スペシャル−9S系ムーブメント輪列のナゾ(グランドセイコー新ムーブ編)
□お月見スペシャル−物故自転車タイヤお手入れのナゾ
□お盆スペシャル−ほったらかし旧艇お手入れのナゾ
□お盆スペシャル−移動できない最新鋭携帯電話のナゾ
□お盆スペシャル−万能摩擦改善剤アンチスリップZのナゾ
Webmasterは多くの宿題を残したままである。機械式時計については”是非GSを取り上げてくれ”というメイルがいくつかあった。”そのうちに”ということで、そのままになっている。趣味の世界の話ではあるが、WebmasterにとってGSはごく一部を除くとファイブ以下の引力しか感じない。現行の9S系についてはまったく引力を感じないが、なぜだろうか。
本日、ホームページにGSの技術が発表され、ナゾだった9Sムーブメントの詳細が公開された。これを見ると、今までカタログにムーブメントの詳しい写真が載せられなかった理由もわかる。9Sはブライツ搭載の8L21と同じBASICなムーブメントである。
動画から解析した輪列を見て欲しい。このムーブメントの特徴は2番車が中心に無く、かわりに秒針を駆動する4番車が中心にあることで、ETAの近代ムーブメントに良く似ている。過去のS社の秒針が中央にあるムーブメントは
1.古典的な輪列。2番車が中心にあり、3番車の歯車が2番車と同軸の秒針のカナを駆動する。香車や天輪の配列やサイズは自由だが秒針カナ押さえのために2階建てになる。天輪と香車のなす確度は約180度。
2.Patek社->Fontainemelon社の輪列。中心の2番車と4番車が同軸。コンパクトにまとまるが2番車の受けのために二階建てになる。中心のまわりにガンギ車、3番車、香車が絡むので輪列の配列に制約があり、その最適解は一つしか無い。通常天輪と香車のなす確度は約120度になる。
のどちらかだった。それに対して、9Sは
に示したETA2824系、ETA2892系やデイジャスト3135系と類似しており、中心から離れた2番車が中心にあるドライブホイール(分車)を3番車のカナをはさんでドライブし、3番車でドライブされる4番車が分車と同軸の秒針を駆動する。中受けの無い1階建てのETA系ムーブメントは自動組立が可能で、一個20-30ドルで供給されている。9SはETA系と同様に量産を前提としたデザインである。
ETA系ではダイヤル側の地板が巧みにくりぬかれ、3番車のカナが地板のダイヤル面にある分車をドライブしている。9Sではデイジャスト3135系と同じように分車は独立した2番受けから片持ち軸で支持され地板中央の穴からダイヤル面に顔を出している。剛性の低い設計だが、時針の筒車をフィリップスネジで固定される日車押さえ板が支持するのでOKなのだろう。分車付近の地板はかなり薄くなるまで刻み込まれている。
輪列配置はコンパクトであり、ほぼ半周の間に殆どの輪列が納まっている。小さめのテンプでイナーシャよりはハイビートによって精度を稼ぐようだが、将来テンプ廻りにはエクストラな機構を組み込むスペースも残されている。余ったスペースは裏地板(ダイヤル面)に深く落とし込まれたキーレスワークやカレンダー輪列のスペースになっていて、全体の厚みを減らしている。
9Sには2番車と分車を支持する2番受けと3番受けがあるため、厳密には一部2階建てである。ただし、3番受けには耐久性に定評ある7S系と同じように丸孔車とマジックレバー式の自動巻き機構が組み込まれているので、全体としては自動巻ユニットを乗せたETA2824系よりわずかに薄く仕上がっている。
シースルーバックから見える3番受けの仕入れは念入りだが、オシドリ、カンヌキ、薄い板金製のバネ、日車押さえ、アンクル押さえ等の仕上げがファイブ(7S)クラスの仕上げである。石やナイロンブッシュも潤沢とは言えず、全体的に同価格帯のデイジャスト3135より魅力的で無い。
GSの真の仮想敵となる瑞西製時計は100万円クラスであろう。そのクラスになると天輪にはチラネジがつき、アンクルやオシドリ、カンヌキなどの見えない部分にも細かい仕上げが施されている。
最近の瑞西製高級時計はトゥールビヨンや凝ったカレンダーなどの魅力あるコンプリケーションを満載しているから、少々仕上げた量産ムーブは比較の対象にならない。高級とは何を意味するかはこちらを見て欲しい。仕上げに関してはヲリエントのグランプリ64の方が良好であり、64石のありがたみも大きい。
聞くところによると、某社ではトゥールビヨンの開発が終了しており、その断片は特許公開平9-54169(ツールビョン機構を備えた機械時計)として見ることができる。
図はその構造だが、イニシャルをあしらった大型ケージに通常の形状のアンクルを備えており、現在商品化されているトゥールビヨンが小型ケージと変形アンクルを持つのと対照的である。しかし、経営上の判断からお蔵入りとなったという。かつて独自のクラッチ機構を持つクロノグラフを量産していた某社にとっては、技術よりは経営センスの問題なのだろう。
今のところ某社の世界的な功績は間違いなく世界初の量産クォーツ時計である。というわけでWebmasterのコレクションにはGSは無いが、初代の量産クォーツモデルは含まれている。このモデルはGSと同等の仕上げであり、革新性とありがたみは現在のGSが霞むほどである。
携帯電話がGPSの時間精度を持つ現代では、高級腕時計には精度以上の非日常的なありがたみが期待されている。そんなわけで、80%レストアが完了したアンティーククオーツは、タングステンカーバイトの超硬時計に混じって時にwebmasterの腕に出現するのである。
Webmasterは厳しい家庭内ナショナリズムの勃興による脅威に直面している。すでに居室をひとつ失っただけでなく、今回は駐輪所スペースにおいても地政学的な譲歩を迫られている。このままではドミノ理論によって地滑り的に次々と他の権益まで失う可能性も無しとしない。
Webmasterの駐輪所における権益は、お散歩用のママチャリと遠出用のMTBの2台分であるが、前後に買い物カゴを備えて便利なママチャリに比べるとストイック仕様のMTBの出番が減っていた。そうこうするうちに、MTBのタイヤの極薄の側(スキンサイド)がボロボロになって走行できなくなっていたのである。
これではレゾンデートルを失ったMTBは廃棄もしくはリサイクルショップ行きである。いや、STXコンポのついたMTBといえども旧車では引き取りすら拒否されるだろう。ここはタイヤを交換してその有用性の示威行動にでるしか無い。
そこでタイヤ(26-1.95)の買い出しである。近所のDIYショップにはMAXXISブランド(とってもポップなサイト)の側までゴムを被った丈夫そうなタイヤが\1980であった。普及品としてはやや高い感じもするが、他にチョイスが無いので仕方がない。一瞬クロスバイクにしてしまおうかとも思ったがその手のタイヤの在庫は無かった。
タイヤ交換の準備をしていると、たまの休日には自転車より子供の面倒も見たらどうか、との命令である。そこで、一石二鳥というわけでも無いが手伝わせることにした。MTBの場合はタイヤが簡単にはずれるので、アース印のタイヤレバー(3本で\350)さえあれば大した仕事では無い。
まず、レースクイーンに新しいタイヤの包装をとってもらうことにした。なぜかタイヤの包装はグルグル巻きになっていて手間をとるのだが、”お姫様のビニール”とか言いながら喜んでほどいている。
次はチューブの空気を少し抜き(完全に抜かないほうが良い)、タイヤのビードをはずす。アース印のタイヤレバーを2カ所にかけて、残りの一つではずすとやりやすい。古いタイヤをはずそうとすると、チューブはタイヤの内部にはりついていた。これは、新車組み付け時のタイヤ粉が少なかったのだろう。
察しの良い方はおわかりと思うが、タイヤ粉の正体は滑石(タルク)である。そこで、アンチスリップS(シッカロール)の出動である。どうでも良いようなタイヤ粉だが結構重要で、これが無いとタイヤとチューブの滑りが悪くチューブがねじれたり不均一に膨らんだりして良くない。ゴムとタルクの関係は実に深いものがある。
タイヤが組み付いたら空気入れである。このチューブは米式なので車と同じニップルがついている。これは自動車用タイヤより高い空気圧を保つためでガソリンスタンドで空気を入れるのにも便利だが、専用の空気入れが必要である。
空気の入れ始めにはニップルを押し下げてチューブを確実にタイヤの中で膨らますことが大事だ。そうしないとリムとビードの間にチューブが挟まったまま膨らんでパンクしてしまう。ここでもタイヤ粉の働きは結構重要で、細かいところに落とし穴があるものだ。
さっそく試運転である。WebmasterのリジッドMTBには長距離踏破性というか腰痛防止のためにハンドルポストにダンパーが、またサドルにはバネがついたママチャリ用が装備されている。
なぜか前側のシフターが不調で最高速とならないが、老化した脚力にはちょうど良い。自転車も老化してくるとSTXもアリビオも関係無いわけで、メーカーによっては高級車にもアリビオを乗せている理由もわからないでは無い。
MTBでドームを見渡す海岸を走っていると、多くの人がダイエットのために走っている。スウェットウェアを着込んで歩いている人も多い。現代は体重を落とすために苦労する時代なのだ。
とすれば、高いと思ったタイヤ\1980也も、工賃込みと思えば良いのかも知れない。ここで言う工賃とは他人に払うコストでは無い。自分が修理を楽しむために払うコストなのであって、修理にかけるエネルギーと汗とがその果実なのである。
そうなのか、そうなんだ、と妙に納得しながら景色の良い海岸で飲んだ缶ビールはうまかった。しかしそれはそれで一時の自己満足と引き替えに散歩で落としたカロリーを帳消しにしてしまったのである。
Webmasterの抱える旧い機械類、たとえば旧車、旧二輪、旧自転車、旧無線機などなどの中でも一番の大物はこの旧艇である。艇歴は我が家の旧車を大きく上回る20年に達している。多忙のため、ほったらかしになっていた船の現状はかなりのものであった。
なかでも船底の状態は写真のようであり、特にスクリューはまるで前衛芸術のオブジェのようになっていた。最近は船底塗料の毒性問題から海産物に対する防御力が弱いものが使われているから、しばらく帆走しないとすぐこんなになってしまう。これが今回の修理の主な問題であった。
インボードのエンジンも痛んでいた。海水を循環させるポンプのインペラーが消耗し、また冷却水路のいくつかは詰まっていた。燃焼室はピストンの状態は良かったがバルブ類が腐食し、圧縮が落ちていた。
このエンジンは海水を取り込んで冷却し、最後は排気ガスとともに排出する構造なのだが、排気マフラーにも腐食があったので樹脂製のものに交換した。エンジンマウントも腐食しエンジンが浮いていた。海上環境での20年の月日は過酷ではあるが、船舶用のエンジンはもともと丈夫にできているらしく、オーバーホール費用は原付バイクと大差無かった。
船底やエンジンだけでなくキャビンも痛んでいた。腐食したキャビンの扉と、雨漏りを起こしていたアクリル窓を交換し、ティラーも交換した。やはり木製のものは、時々塗装を施さないとは朽ち果ててしまう。
というわけで、今回は大修理となったが、その費用は恐れていたほどにはならなかった。不思議なことに船の部品や修理代は自動車に比べると安価である。船体のFRPは丈夫なもので、ハーバーにも艇歴が30年を越える船があるが、手入れさえきちんとすれば問題無いようである。
もちろん、船のデザインはどんどん変化しているから、見ただけで船の年代は判る。新しい船は全般的に上下に扁平になり、キャビンは内装が簡素ながらマンションのワンルームのように隔壁が減って見通しが良くなっている。以前ほどキッチンには重点が無いようで、船の使われ方が変化しているのか、船内で料理する機会が減っているのだろう。
さて、大修理の後も、船を止めておくとどんどん船底に海産物が付着する。またエンジンを回さないと、また冷却経路が腐食したり塩が析出したりする。バッテリーも充電が必要だし、ビルジに水もたまる。やはり、一月に一度は船を出すのが望ましい。
というわけで、夏休みも終わりとなった今日、機走で船を連れ出してみた。今日はレースをやっているようで、多くの大型艇がスピンを展開してこちらに向かってくる。そう言えば、今年の夏は天候不順でなかなか船を出す機会がなかった。
旧い船でゆられていると、内燃機関はこの先どうなるのか気になってくる。将来的にはこの船のディーゼルエンジンも使用が規制されるようになるかも知れない。その場合は4サイクルのガソリンエンジンの船外機に変えることになるのだろうか。
いや、もっと規制が進むとガソリンエンジンも規制され、バッテリー駆動になるのだろうか。現に電動式の小型船外機も使われているようである。この船は出港入港時にごく短時間機走するだけだから、別に電動船外機になっても問題が無いが、海上を爆走しているパワーボートはどうなるのだろう。
その頃には強力な燃料電池が開発されているかもしれないが、電動式となるとあの爆音は聞かれなくなるだろう。静かなパワーボートというのもなんとなく想像つかないのだが、あるいは操縦席だけはボディソニックが標準としてついてくるのだろうか。リッター0.5キロの燃費も、水素ガス立米何キロという表現になるのだろうか。
自動車もどうなっているだろうか。客室以外の自動車の多くの部分はエンジンのためにある。もしこれが小さな燃料電池にとって変わられるとすると、自動車のエンジンルームはクラッシャブルゾーンだけになるから鼻が短くなるのだろう。ブレーキにしても電気ブレーキが主流となって、野蛮な摩擦ブレーキは駐車の時だけ使われるようになるのだろう。そうなると暴走族はどうやって爆音を立てるのだろうか。
その頃にも、やはり人はニューモデルが出るたびに車を買いかえるのだろうか。あるいは、車は画一化、そしてモジュール化が進み、共通フロアにいろいろなデザインや機能の箱を積むようになるのだろうか。あるいは痛んだモジュールだけを交換できるようになるのだろうか。そのころポルシェはどんなスポーツカーを作っているのだろうか。
考え出すと、妄想は次々に広がって収集がつかなくなる。船への逃避世界から現実世界に戻って新聞を読むと、トヨタのセルシオの宣伝が載っていた。最近の自動車は事故を予期して安全装置が準備状態になるらしい。それはそれで結構なことではあるが、webmasterがこの種の車に望むささやかな希望のベクトルとは少し違っていた。
できれば、webmasterは”排気量を4.3リットルから4リットルに縮小しましたが性能は同等で、炭酸ガス排出を低減し環境との適合性を改善しました”とか、”渋滞路使用の多い方にはハイブリット仕様も用意しました”、のような文言が欲しかったのである。拡大する欧米の大排気量競争とは智慧と技術力によって決別して欲しかったのである。それが日本の生きる道なのでは無いか。
そのささやかな希望はしかしかなえられず、もうしばらく自動車メーカーはどこもかしこも愚かしい拡大路線を歩み続けるようである。
IMT2000をとりあげたのはずいぶん昔のことである。それは仕様から考えられる問題点を予想したものであった。
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ところで、実際にはどうなのだろう。
街中を遊弋していたWebmasterは、最新鋭携帯端末の安売りを見つけた。縛り無しとのことなのでサンプルしてみた(5月製)。早速持ち帰った自宅での一回目の着信は不着呼であった。なるほど手強い。しばし3本アンテナピクトの立った端末と窓から見える鉄塔を見て呆然とした。
以来cdma-one端末と持ち歩き、交互に発呼をかけながら着呼の安定性を確かめてみた結果、少なくともwebmasterの移動範囲では問題が多いことが解った。エリア内での電波のつかみ具合は、
1)屋外では70-80%の着呼率(屋上では着呼率が下がる)
2)コンクリ建物内は圏外
3)時速60キロ以上の移動時には10%以下の着呼率(某市内昭和通り)
であった。
この端末ではアンテナピクトが3本立っていても着呼しないことが良くある。表示を司るインタフェースTEは移動端末機能を制御するMTFからの電波品質情報を表示するだけで当てにならない。位置登録や移動先登録更新を失敗しても、TEはMTFから一切知らされないから古いピクトが立ったままなのである。
正しいピクトが20秒遅れることもよくある。内部の機能分化が進んでいるので、マズいことがMTFで進行していても、ユーザーにはわからない。ピクトを信じるユーザーは非着呼に気付かないから他人への不義理が重なる。一方、cdma-one端末はエリア内では地下やエレベーターを除けばほぼ100%の着呼率であった。
もちろん、ユーザーによって移動範囲はさまざまなので、これでOKなのかどうかにはいろいろな考え方があろう。コンクリ建物内が圏外なのは良く知られているが、問題なのは3)である。10%以下と書いたが、実際には都市部では殆ど着呼しないと考えて良い。Webmasterは携帯電話の真価は移動中の確実な着呼にあると考えているから、点数は辛い。
さらに、不着呼のまま移動を続けると不着呼が続き、停止した後もしばらく着呼しないことがある。本来、端末は迷子になったらしつこく位置登録を試みるものだが、この端末は迷子のまま狸寝入りするようで、どうやら確実な着呼より電池寿命を重視するポリシーのようである。
どうして時速60キロ以上で着呼しないのか?
端末が移動すると基地局からの直接波と反射波が干渉する。いろいろな経路を経た電波(マルチパス)の距離差が電波の半波長の奇数倍のときに(λ/2、3λ/2、5λ/2...)電波は打ち消しあい、偶数倍のときに(λ、2λ、3λ...)強め合う。
移動中は一定の間隔で干渉が起こり(フェージング)、同期や復調を妨げる。その頻度は計算することができる。まずワーストケースを考えてみよう。
今、車は右側の基地局からL1の距離にある。また左の壁で反射して到達する電波の総距離をL2とする。
ここで車が左に(d)移動すると、2つの電波の距離差は移動距離の2倍になる。この距離差がλ/2、3λ/2、5λ/2...となるときに干渉の谷になるから、実際には車がλ/2動くごとにフェージングの谷がやってくる。
車は時速60キロでは毎秒16.6m移動する。周波数は2GHz、波長は15cmとなり、フェージングの谷の頻度は1666cm/7.5cm=222Hz、つまり4.5msec毎にフェージングの谷が来る。
実際には、あらゆる方向から来る反射電波を積分すると、真横からくるケースが多いだろう。この場合の距離差はワーストケースの半分(d)となり、フェージングの谷はおおむね9msec毎ということになる。
このフェージングと信号フレーム長との関連は興味深い。実際、時速60キロをこえると急に着呼しなくなるので、何らかの関係があると思われる。このシステムのフレーム長は10〜80msecと長いので、最短フレームでも1〜2発はフェージングの谷に遭遇することになる。
システムは非同期だから、フレーム同期を失うと次のフレームのタイミングも解らなくなる。もちろん強力な誤り訂正とRAKE受信機、毎秒1600回の電力制御や送信ダイバシティを備えてはいるが、マルチパスによる電波状況が激変すると追随できずにエラー率が上昇する。以上の推測は時速60キロ以上で不着呼になる観察とさほど矛盾しない気がする。
都心部では位置登録が不調のまま時速60キロで移動すると1分少々で次のエリアに入るから、端末はまた迷子になる。悪くすると自動車で走り出すと次に止まるまで不着呼が続くこともある。
さて、cdma-one端末のフレーム長は20msecとさらに長いでは無いか、という声がありそうだ。しかしcdma-one端末では走行中の新幹線デッキでも着呼するのは事実である。どうしてだろう。
理由として、cdma-one端末の波長がこのシステムより2.5倍長くフェージングの谷の頻度が1/2.5となるので、フレームにかかる可能性が低くなることが考えられる。システムも同期式なので、フレームを取りこぼしても、次のフレームのタイミングが既知だから取りこぼしにくい。もちろんRAKE受信機などのCDMA端末特有の機能も設計通りに働いているのだろう。
どうして見通しの良い屋上や広場で着呼しないのか?
これはなかなか面白い現象だ。PDCでは複数の基地局から見通しにある場所で時々観察されることだが、そもそもCDMA方式の端末では起こりにくいことになっている。この現象は商業誌日経トレンディーでも報告されている。一方、cdma-one端末ではこのような現象の経験は無い。
というのは、CDMA端末は複数の基地局の電波が混ざっていても各RAKE受信機の系統が基地局毎に独立して同期復調できるからである。だからこそ切れ目のないソフトハンドオーバーが可能なのである。そして、基地局同志の拡散符号が完全に直交し、より多くのRAKE受信機の系統を備えるこのシステムはcdma-one端末より有利なハズなのである。
ところが、この端末は屋上で凍りつくことがある。写真は基地局に近い屋上でバー1本のまま方向を変えても着呼しなくなった状態である。屋上から降りて2度目の着呼で回復した。
屋上だけでなく、見通しの良い都市部の広場や道幅の広い四つ角で凍りつくことがある。一度凍りつくと、場所を変えるか電源を入れなおさないと回復しない。今後都市部で基地局の密度が増えると不可解な現象は増える可能性がある。
着信しない端末の様子(Windows_mediaファイル、1.5MBytes)
まずcdma-oneから発呼をかけると、ポポポと鳴ってcdma-one網に繋がる。その後最新鋭携帯システム網から端末に着呼がかかる。しかし、ピクト表示にもかかわらず着信せず圏外アナウンスが聞こえる。電波の海にただようピクトがむなしい。
上記の2つが重なるとどうなるか?
上記の条件が重なることがある。たとえば都心部の高速は見通しの良い高架を走っている。
Webmasterの経験では、都市部の高速走行中はまず着呼しない。交通安全の立場からすると良いことかも知れない。目的地に着いて忘れた頃に、”着信がありました”との表示が届くから、ドライブモードが自動設定されると考えれば良いのだろう。
取り柄は無いのか?
公平に書くと、確かに取り柄はある。それは、電波の良いところで動画などのダウンロードをかけると100kbps程度の速度が出ることだろう。もちろん、200kbytesの動画をダウンロードすると500円の課金になるから、それなりのパッケージを契約しないと破産してしまう。
パケット網の接続は会話より不安定で移動にも弱い。これはシステムだけの問題ではないかもしれない。というのは、この端末ではキーボードを操作するとアンテナを手が覆ってしまう。脳に輻射する電波は少ないかも知れないが、不思議な設計である。
この端末はサイズこそ大きいが表示はcdma-one端末よりきれいだし、スクロールも早い。コストのかかった高機能な端末なのに、残念なことに着呼しないのである。これまでのメーカーの努力はたいへんなものであるが、非同期式CDMAとはかくも端末に重い負担を強いるものなのだろうか。
ユーザーへの老婆心
この端末の取り扱いには注意が要る。ポケットではアンテナがあるキーボード側を外側に向け、アゴを上に向けると良い。ズボンのポケットや胸ポケットもあまりよくない。ポケットにカギ束、財布、小銭、クレジットカードがあると圏外が増える。首からキーボード側を外側にしてぶらさげると良いようだ。
カバンに入れる場合はナイロン製の薄いものが良く、厚手の皮革や口金やチャックのついたものでは圏外が増える。カバン内に金属やPETボトルがあると調子が悪い。通話中はアゴ付近を持つと調子が悪くなるので、ヒンジ付近を持つようにする。
ビルの谷では道の真中を歩く必要がある。パートナーとの大事な待ち合わせでは、こちらから頻繁に発呼をかけるべきだ。当てにならないアンテナピクトを信じていると、高機能な端末よりも遥かに大切なものを失なう可能性がある。
ところで、この端末を含めN社とP社の現行端末の電卓には前回より激しいバグがある。たとえば、
1 ÷ 3 x 2 C 1.5 = 499999999.5
のように、訂正のCを押すと小数点が飛ぶ。
今年の夏の絶望的だった電力事情は冷夏によって回避され、一方ではエコロジーと電力削減マインドの普及にも役だった。独自にコジェネを手当する企業も増え、炭酸ガスのトータル排出量にも良い影響があったと思う。
世界一の強国である米国も電力網の一部の綻びが大停電に結びつくことを経験した。いかなるハイテク兵器を備えていても、弱点は意外なところに潜んでいる。以前から書いているように、現代文明が直面しているのは地球環境リソースの壁であり、これを機に米国がもう少しエコの方向に向かうことを期待したい。
とか言いながら、Webmasterは盆の間も風水工学の実践に務めている。具体的には、庭の草むしりやペンキ塗り、蟻退治からさまざまな器具の修理まで、エコロジーには盆も正月も無いのである。
現在の緊急課題は不調マッサージ機の修理である。そのインテリアデザインを大きく損なう機械は、しかし家族の絶大なる支持を得て、リビングの中央に鎮座しているが、最近キュルキュルとヘンな音がして肩たたきパワーが低下している。内部のベルトが滑っているのである。
この手のメカトロ機械の修理は安全第一でなければいけない。メインスイッチを切るだけでなくプラグを抜き、そのプラグを見えるところにおいておく。くれぐれもネクタイが巻き込まれないように服装にも注意する。
この機械の場合、さまざまな機構が3個のベルトで駆動されている。ベルトはリブ入りで接触面積を稼いでいる。ベルトは寿命と言えるほど痛んでいないが、スリップした部分がテカテカに光っていて、ますます滑りやすくなっている。
新品のベルトキットが手に入るまでは、万能摩擦改善剤アンチスリップZで凌ぐのがいいだろう。
ベルトをはずし、タルクを主成分とするアンチスリップZをまんべんなくまぶし、軽く拭き取ってうっすらと粉を吹いた状態にしてセットする。粉が多すぎるとかえって滑る場合があるが、しばらく回転させておくと余計なアンチスリップZが飛んで、本来の効果がでてくるはずである。あくまでも僅かな量を使うのが重要であり、軸受けにかからないように留意する。
本来のパワーを回復したマッサージマシンは実に快適である。マッサージしながら、摩擦という複雑な物性に思いを馳せることにする。ベルトを用いたメカトロはつねに滑りとの戦いだ。かといって、滑らないようにベルトを堅く締めるとベアリングが痛んでしまう。いったん滑り出すと摩擦は激減し、滑りによって発生する微振動が状況を悪くする。
昔から鉄道では動輪の滑りを止めるために砂を撒くシカケがある。最近のVVF制御の鉄道車両では、動輪の滑りをインバーターにフィードバックして粘着を稼ぐようになっているが、完全では無い。
500系新幹線では地震時に一定の距離内で停止するために、セラジェットと呼ばれる微粒子をブレーキに撒くシカケが用意されている。
面白いことに、微粒子は多すぎると滑りを助長するが、微量になると摩擦を改善する。摩擦と微粒子の大きさと量の関係は古くて新しい問題である。
もし鉄道のブレーキ性能を改善することができれば、停止距離で規定される最高速度が大幅にあがり、高価な整備新幹線のいくつかは不要になるとも言われている。あるいはリニアモーターが答えなのかも知れない。
さて、ご家庭にアンチスリップZが無い場合はどうするか。子供のいる家庭にはたいてい在庫していると思うのだが、職場には無かったりする。その場合は固形型炭酸カルシウム複合体であるアンチスリップCはどうだろうか。これも同様に粉にしてベルトに僅かに塗布する。
何、アンチスリップCも無い??その場合は、同じく炭酸カルシウムを主成分としたペースト状のアンチスリップHがいいかも知れない。これなら、旅先のホテルでも入手できるだろう。
ちなみに、アンチスリップZはシッカロール、アンチスリップCは黒板のチョーク、アンチスリップHは練りハミガキである。これらが全部無いという状況はちょっと考えられない。車のファンベルトの鳴きもこれらのアンチスリップ剤で止まるのだが、あくまで交換のベルトキット(松下電工テクノサービス扱 \1800)を手当するまでの応急処置と考えるべきだろう。