□:August 3:シーズン到来発発整備のナゾ
□:July 6:AT互換機輪廻転生のナゾ
□:June 29:ベル研究所の落日のナゾ
□:June 22:今日トク メカトロ編出来!
□:June 19:サボタージュCPUのナゾ
□:June 5:写○んですで作るおもちゃのナゾ
□:May 18:FOMA弁当箱の電池寿命のナゾ
パソコン界にも1GHz超マシンが定着しつつある。インテルはP3ユーザーを扇動してP4に更新させるのに躍起だが、一般ユーザーはともかく、メーカー自身もコーポレイトユーザーもP4への更新に慎重である。大手メーカーも一般ユーザー向けにはP4マシンが出回っているが、サーバー機器は依然としてP3世代のままだ。
その理由の一つは電力消費だろう。最近はマルチCPUのマシンよりは、薄型もしくはブレードサーバーのような小型サーバーを積み重ねるのが流行である。これだとロードに応じてサーバーを追加したり組み換えがやりやすく、コスト的にも有利である。
負荷の面からも複数のサーバーを立ち上げた方が有利である。マルチCPUのサーバーと言えども、GUIベースのOS、例えばWin2kではタスクスイッチの頻度が高く、キャッシュ効率が低下する。複数のCPUが共有するメモリー帯域も有限なので、タスクスイッチの頻度が高くなると効率が劇的に低下する。
この手の用途には700MHz前後のP3もしくはセレロンが用いられることが多い。消費電力が20W程度なので1Uの筐体にも納まるし、CPU、チップセットとも枯れていて大きなトラブルは出ない。この用途に消費電力が70Wを超えるP4が向かないのは自明の理である。通常技術が進化すると、マシンも電力消費も小さくなるのが普通だが、なぜかこの業界は地球に優しくない拡大路線まっしぐらである。
その傾向を見据えて、今回無印Pentium133MHzのサーバーに手を入れることにした。長らく働いてきたサーバーも133MHz+2.4GBのHDDでは、いかに風水変造や極限sysalignチューンを施しても限界がある。このマシンは観音カメラ(ACERのOEM)のATフォームファクターのマシンで、ACERにしてはケースの品質が良い。ミニタワーながら5インチX3、3.5インチx4(内2個はシャドウ)x4のベイがある。チップセットも430HXということで、相性の問題も無かった。
さてマザーボードを更新するにしてもATフォームファクターの物は少ない。たまたま目に付いたのがTOMATOブランドのSiS630Eベースのマザーである。WebmasterはSiS5596や5598のマザーを使った経験があるが、どちらもビデオ機能がオンボードでクライアントマシンとしての印象は悪くなかった。
CPUは充分枯れているはずの900MHzのセレロンを選択した。驚いたのはヒートシンクとファンが巨大なことである。枯れたCPUがなぜ先代、先先代よりデカくて電気を喰うのか釈然としない。一方、チップセットは順当に進化したようで、ビデオはもちろんのこと、サウンド、LAN等はすべてオンボードと集積度は高く、ベビーATなのにマザー上は閑散としている。
写真はマザーが納まったところである。I/Oのケーブルがビジーであるが、3つのPCIは勿論、かなり空間がある。SiS630Eチップセットと言っても実質はチップ1個に過ぎないので、CPUファンが不釣り合いに大きく見える。注意を要するのはマニュアルに誤植が多いことで、USBやマウスの配線はテスターで電圧を当たってピン番号を確認することをお勧めする。初心者にはとてもお勧めできない製品である。
OSはWebmasterの常用マシンとしては初めてWinXPを入れてみた。さすがに巨大OSの名に恥じぬリソース喰いで、Win2kより5割は余計にメモリーを喰っている。定番の風水変造を施しても、何となく速度が乗らない。意を決してWinXPを消してWin98+Win2kのダブルブートに戻したが、こちらはCPUの周波数が実感できるレスポンスである。1GHz超のオーバークロックが効くことは確認したが、消費電力を考えて定格で使っている。
巷ではWinXPにはP4が適しているという宣伝を目にするが、これは
で指摘したように全く逆だと思われる。P4の紙の上でのメモリー帯域が高いのは事実だが、M$に近いこちらにもあるように、WinXP+P4は同等のP3+Win2kより確実に遅い。
これは、肥大化してタスクスイッチが多く発生するWinXPでは、パイプラインを深くクロック周波数を高くしてパフォーマンスを稼いでいるP4は頻繁にストールする。1GHz超のCPUにとって大した負荷で無いハズの日本語フォントの展開やエリアライジング、日本語変換処理等が非同期で発生し、大きくパフォーマンスを損なっている。さっそく残りわずかのWin2k在庫品を追加注文したWebmasterであった。
というわけで、不必要に巨大で重いOSとアプリケーション、大きすぎるHDD、そして電気をガブ飲みするわりにタスクスイッチに弱いCPUと、メーカーはみんなグルじゃなかろうかと思えるのである。マスコミともども、ユーザーに不必要な更新を迫らないと利潤が上がらないようなビジネススタイルはそろそろ結晶化を迎える頃である。
Webmasterがベル研を訪れたのは1987年頃である。まるで遠足に行く子供のように、訪問が待ち遠しかった。何日か前から”ベル研、ベル研"と独り言のように言ってはにんまりしていた。
ベル研究所という言葉は米国にとって長い間誇りを意味した。
車は延々と続く美しい庭園、噴水のある池を巡りながら玄関についた。威厳に満ちた建物のエントランスには輝かしい発明品やawardsの類が展示されていて、圧倒されながら入場の許可を待つのである。なかでもひときわ目立つ展示は、当時大流行の高温超電導物質の温度レコードの更新であった。それは輝かしい名誉になるハズであった。
訪問の目的は、脳機能との研究者のディスカッションであった。もう一つは、当時ベル研が世界のトップを争っていた高温超電導物質がSQUID(超電導量子干渉素子)に使えるかどうかの情報収集であった。当時は脳機能の研究者が多く在籍していた。それは神経細胞の細胞内外の情報処理機構が新しいコンピューターや素子のヒントになるのでは無いか、という理由による。
ところが、ディスカッション後の茶飲み話の内容は淋しいもので、中止になったプロジェクトの話ばかりであった。彼はあちらの大学へ、あの人はあの企業へ移った、、、、という話である。1984年にベル電話会社が独占禁止法のためベビーベルに分割され、電気通信に直接関係しない研究プロジェクトのいくつかが中止になり、多くの研究者がベル研を去ったのである。
研究所の中も案内して貰った。もう書いて良いと思うのだが、CPUの開発部門があってCLASSIFIEDのシリコンダイの写真が壁に貼ってあった。ただしホストの友人によれば、開発のスピードが遅く、いつも他の会社に出し抜かれてオクラ入りになることが多いと言う。
開発が遅れる理由の一つは所内のビューロクラシーによるものだと言う。ベル研のアナウンスメントは世界中に大きな影響を与えるため、発表の前にボードから厳しい評価を受ける。プロジェクトの評価方法は年々緻密さ、複雑さが増していて、外部では世界最高の研究評価プログラムとして有名である反面、内部ではオーバーヘッドに感じられるとも言う。
さらに会社分割の影響で資金面の制約が厳しくなってきたと言う。そうなると研究者がベル研に止まる理由は無い。ベル研に居たという経歴で、いくらでも条件の良い職場が見つかるから、迷い無く良い条件の職場に移動するのが米国のシステムである。
そのためか、最近は画期的な業績は今ひとつだと言う。さらに驚くべき事に、エントランスに飾ってある高温超電導のレコードに関しては懐疑的とする雰囲気が随所で感じられた。事実、飾られていた酸化物系高温超電導のレコードの話がどこに消えてしまったのか、今のアーカイブには見あたらないし、主導していたグループも今はいない。Webmasterは行きと違って帰りは無言であった。
ベル研は、通信技術はその後も着々と成果を挙げていて、ルーセントになってからもDSLモデム、CDMAや光通信の分野では依然としてトップクラスである。さらに最近では新しい考え方として多くのベンチャー企業を立ち上げ、資金と時間を効率化する試みを続けている。しかし以前のような別格の輝きは無い。
ホームページによれば、最近の主要なプロジェクトは、光スイッチ、光通信の限界、有機超電導物質、DNAモーター、携帯電話の通信途絶を防ぐ機器、縦型トランジスター、GPS、声でダイヤルを指示できる電話などだそうである。有機超電導物質を除くと何となく小ぶりな感じである。前述したノーベル賞もすべて80年代初頭までの研究に対する受賞であった。
そして、次なるノーベル賞獲得の希望の星は有機超電導物質の開発、中でもFETの原理を用いて有機物質に超電導状態を発生できるとする研究らしい。しかし、この研究成果には懐疑的な研究者も多く、現在外部の委員を加えた調査委員会が作られている。
何となく超電導の業界には常温核融合の業界と同様に怪しげな雰囲気が漂う。WebmasterもSQUID(英語でイカのこと)を手がけているだけでイカ様と揶揄され迷惑したことがある。未確認、未再現情報が飛び交う様相は兜町にもひけを取らない。あのAg-Pb-C-O化合物が、そしてカーボンナノチューブが室温でも超電導を示したという報告はどうなったのだろう。
輝かしい業績を持つベル研は、世界中の研究所のあり方に大きな影響を与えた。ベル研を模した政府や企業の研究所は世界中に存在し、それらもベル研が80年代に経験したのと同じ厳しい生存競争を経験しつつある。そして、ベル研の歴史から学ぶ教訓も数多いように思うのである。
ついに”今日の必ずトクする一言 メカニクス・エレクトロニクス編”の初版本が送られてきた。今回の出版までこぎつけたのも、やはり皆様のサポートあってのことである。改めて感謝したい。
内容は機械編(カメラ、時計)、音響編(オーディオ)、家電編(ビデオ、エアコン等)、電子編(電池等)、その他編?(天気予報等)からなっている。今回は写真や図を作り直した物も多い。主に2000年までの内容が中心となっている。
自分で読んでいても281ページのコンテンツは非常にヘビーである。前回はパソコンに関する記述が中心であったが、今回は対象が複雑となっている。自分で読みながら、内容についてまた調べ物をしたり、しばし考え込んだりで、ー通り読むだけでまる2日間かかってしまった。いったん自分の手を放れて本となっていると、それは勝手に一人歩きして、まるで生命をもっているかのようである。
今となっては古い記載もあるが、その内容は単なる昔話としては終わっていないと思う。この本がどういうジャンルに分類されるのか、またどんな人に読んでいただけるのか。いずれにせよ、例を見ない形式に仕上がっていて、出版社も果たしてこれが売れるのか、売れないのか判断しかねている。そのため初版本は4000部ということで、やはり全国の書店には出回らない予定である。
というわけで、誠に申し訳ないが、確実な入手のためにはやはり通販を利用していただければ幸いである。この本によって、皆様の貴重な時空間リソースが1ppmでも、10ppmでも節約できればと祈っている。
May the force be with you!!
インテルはPentium4(Willamette)のコアのセレロンを発売するそうである。L2キャッシュが256KBから128KBに減らされているが、インテルがP4とセレロンのコアを物理的に作り分けているのかどうかは解らない。
国内大手メーカーも小型デスクトップ(ブック型)のP4マシンをラインアップさせてはいるが、布陣の中心はDuronもしくはP3コアのセレロンクラスである。その理由は実物を見れば解るが、P4マシンの筐体は猛烈な発熱のため通風口だらけである。ワンワンとファンが唸って電力を消費するマシンが日本の家庭やオフィスに適合するのかは疑問である。
例えば、某評論家が更新を勧める2.4GHzのP4マシンは1.2GHzクラスのDuronマシンより最大50Wもの電気を余計に消費する。もし日本の数百万のクライアント級パソコンが更新されたら、電力とオフィスの冷房などの環境負荷は無視できない規模になる。もちろんそれに伴う生産性の向上はほとんどゼロである。さらに、
で触れたように、WinXPではWin2kより日本語フォント周りの処理が重く、またP4はP3より日本語フォント処理が遅い。それはP4がパイプラインを深くしてクロックでパフォーマンスを稼ぐ設計だからである。日本語フォントや漢字変換のようなタスクが頻繁にスイッチされる一般的なWindowsの使われかたでは、パイプラインが頻繁にストールしてしまう。アットマークによれば、日本語版M$オフィスのWinXP上のP4の性能はWin2k上のP3比べて芳しくない。
日本語処理は計算負荷だけではなくて、、メモリーバスのトラフィックも増加させる。P4では紙の上のメモリー転送速度は向上しているが、DRAMのセルの性能が格段に向上したわけでは無い。メモリーコントローラーが連続したアドレスの読み込みで複数の読み込み命令を投機的に発行した場合にのみ速度が向上するのであって、頻繁なタスクスイッチのためにとびとびのアドレスを参照するWindowsの使われ方では能率が低下するし、L2キャッシュの効きも悪くなる。
にも関わらず、昨今のインテルやM$のビジネスモデルを見ると、商売のためには地球リソースの払底など意に介さず世界中の炭酸ガスの増加させることに邁進しているようである。それは米国の京都議定書への対応をみてもわかる通りであり、あれほど有力であった米国の環境保護勢力はどこに行ったのかと不思議になる。もちろん複雑になったWinXPの習熟のための人の時空間リソースの無駄も無視できない。
このように地球リソースをガブ飲みする米国のビジネスモデルが世界中の開発途上国に蔓延したら、地球のリソースなど風前の灯火である。ハードもソフトも輸入品という情けない状態で米国のIT植民地と化している我が国のIT業界だが、得意の省電力技術やリソースの節約を売り物にすることは出来ないのだろうか。これからはリソースを節約するためにわざわざオカネを払う時代なのではなかろうか。
と言うわけで、今回は彼らの商売のやり方を考えるためにi486SXのコア(中期)を調べてみた。(写真)当初i486SXは商売の都合でi486DXの浮動小数点計算ユニット(FPU)をわざと無効にしたCPUであると言われていた。その後雑誌などはi486SXは最初からFPUを持たない専用設計になったと書いていたが、webmasterは信じていなかった。
図の上側の均一な部分はL1キャッシュ(SRAM)であり、問題のFPUは左下の部分である。この付近の田圃は他の部分より相対的に小さく見えるのはFPUがi386の頃からあまり進歩していないからである。そしてその付近のボンディングパットの多くは未配線のままである。
今まで複数のi486DXのコアを観察したが、マスクがシュリンクされていることを除くと、顕微鏡で見た限りはコア自体はSXと同じもののように見えたが、ボンディングワイヤーはフル装備であった。FPUに不具合があるダイがi486SXに回された可能性もあるが、FPUの面積が小さいことを考えると、それでは十分な数が確保出来ないだろう。
もちろん、Webmasterは中近東の市場のようなインテルの商売を指弾することは本意では無い。実際にはハイエンドのCPUにプレミアムを払うユーザーのお陰で、普及版CPUの値段を思い切って下げることができるし、そこに他社のCPUがシェアをとれる余地が残ることになるからである。いずれにせよ、未完成なハイエンドのCPUを喜んで買ってくれるユーザーはもっとも上客なのである。
さて、486DX以降のCPUで一番大きな不動産はL1キャッシュであり、そこに作り損ないが発生する可能性も高い。歩止まりを改善するために同じキャッシュの田圃を2つ作っておけば、片方の田圃が不良でももう片方を使えば製品としては合格である。もし田圃が2つとも合格なら、両方使うことも考えられる。来るべきP4とP4コアのセレロンには、そのような関係があるのかも知れない。
なお、CPUに関してはおもしろい話がいろいろあるのだが、次をWebmasterが15年前に訪れた時に、常温超伝導物質の発見に沸きつつも落日の兆しが随所に見られた米国ベル研究所の話にするか、迷っているところである。黄昏のベル研究所での印象はその後の通信業界や携帯電話業界の行方を占う上で大きく影響したからである。
いつ更新できるかはわからないが、どちらのトピックがお好みかについて、掲示板でお聞かせ願えれば幸いである。
もはや誰の目にも銀塩カメラの運命は風前の灯火である。先日観光地で写真を撮っていたら、二人からシャッターを押してくれと頼まれたが、どちらも観音カメラの同じ型のデジカメであった。どうやらデジカメの売れ筋は特定の機種に集中するようである。
普及期に入ったデジカメの商売も厳しいらしく、シェア上位メーカーでもデジカメ部門は赤字であるという。すでに実用に十分な100万画素の製品はコモディティー(日用品)となっており、さしたる利潤は望めないだろう。
かといって高級デジカメでは売れ筋の選択はさらに厳しい。Webmasterも先日500万画素超のデジカメ(Dimage7)を”使い物にならないから”と譲り受けた。使ってみても毎回ピントをハズしてくれるデジカメにはあきれるしかない。一度デキの悪い製品を出荷したら二度と客は戻ってこないだろう。
デジカメの普及を見ると、今後は露出とかピントとかの概念が無くなってしまうかも知れない。既にシャッター速度とか絞りとか言う言葉自体が殆ど死語になりつつある。今はコドモにもおもちゃのデジカメが浸透しつつある。
さて、デジタル時代には画像をどうやって管理していくのだろう。将来は結婚したら、あるいは赤ん坊が生まれたらサーバー会社か生命保険会社とでも契約して画像を蓄積してもらうのだろうか。しかし会社の寿命は一般に人の寿命よりはるかに短い。
それなら各家庭に画像サーバーを立ち上げるのだろうか。その場合、画像はどんなメディアに記録するのだろうか。サーバーはもちろん、メディアの寿命も人の寿命に比べるとあまりにも短かい。あるいはサファイア板にレーザーでホログラムでも焼き付けるのだろうか。。。
その場合、画像フォーマットはどうなるのだろうか。JPEGではせいぜい圧縮率は1/10である。ひょっとして携帯電話のcodecのように、人の顔から特徴を抽出して圧縮記録されるのだろうか。その場合、赤ん坊の顔から数式で予想される成人の顔のフレームに適当なシミそばかすやホクロがテクスチャーとして張り込まれるのだろうか。
それでは偽物になってしまうのでは無いか。しかし携帯電話の音が抽出した特徴からの作り物と気付いている人がどのくらいいるだろうか。誰だって、ホクロの位置と形を正確におぼえている訳でもないし。。。その前に、かなり煮詰まっている文明が続いているかどうかも怪しい。
銀塩カメラが時代遅れの蓄音機のように見える時代もすぐそこまで来ているが、たとえ銀塩が滅んでもレンズを中心とした光学系はしばらくは生き残るだろう。しかし、レーダーからお椀が無くなったように、レンズもフェーズドアレイ受光素子によって駆逐されてしまう可能性もある。。。少なくともデジカメメーカーがそこまでのパースペクティブをもっているとはとても思えないが。
というわけで、今回は滅び行く銀塩を念頭におきつつ、使い捨てカメラでおもちゃを作ってみることにした。使い捨てカメラをバラするのは使い捨てカメラの性能のナゾ(諸元を探る編)以来である。使い捨てカメラが、厳しいデジタル時代を生き居残れる保証は無いが、少なくとも教育的な価値は残るだろう。
今回のサンプルは”写○んですエース”だ。まず撮影済のフイルムからとりはずす。これは紙の外装を取り去って、底にある2つのフタのうち大きい方を開けるとパトローネごと出てくる。この手のカメラは撮影中のトラブルを考えて、撮影済のコマからパトローネに収まるようになっている。アルカリ電池も簡単にとりはずせる。
前カバーは両側のツメ4個で止まっている。カメラに限らず電化製品でも多用されているツメは、爪楊枝を挟んで再度はまらないようにするのがコツである。ストロボ基板が見えてくるが、感電に注意して欲しい。電解コンをドライバーでショートすると、ものすごい火花と音がして放電する。
裏カバーもツメで止まっているが、フイルム供給側の底フタ、フイルムランナー下部、パトローネの側壁の三カ所が接着されているので、前カバーをはずさないとはずれない。Webmasterの場合はフイルムランナー下部がちぎれてしまった。
この構造から考えると、もはや裏カバーとカメラボディーはそのまま再使用できない。フイルム再装填業者への対策だろうか。パトローネの巻き上げ部分もセレーションになっていて、普通のフイルムが使えないようになっている。一方、フイルムのチャージ機構、シャッター、ファインダーは一体として簡単にはずれ、リサイクルしやすくなっている。
レンズは2枚構成で有効径は3.5ミリ、焦点距離は約30ミリで、Fナンバーは約8(=30/3.5)と、前回のサンプルより少し明るい。シャッターは個体差のせいか約1/110と少し遅めだった。フイルムの孔と噛み合う歯車を回すとシャッターがチャージされる。シャッター押すと噛み合わせがはずれて戻るレバーがシャッターのレバーに絡んでシャッターが開く。絡みが深いとスローになる。
カメラの仕様はホームページにもあるが、今回のサンプルは仕様より露出はオーバー気味である。焦点も仕様の4−6メートルより少し近い。
露光条件はEV13に相当し、ASA100のフイルムでは日中の屋外での撮影に良い設定だが、ASA400の感度(実際にはさらに高いハズ)では3段近いオーバーになる。炎天下では日陰でとったほうが良いだろう。
同様にストロボの能力も計算してみよう。仕様では撮影範囲が3mなので、ガイドナンバーは3x8x√(100/400)=12である。室内ではかなりのアンダーになるので、原則的にストロボを焚いた方が良いようだ。
さておもちゃの製作である。図のように裏カバーを切り抜くが、この際フイルムの孔と噛み合う歯車の部分も切り抜いておく。そして焦点面にピントグラスがわりの艶消しのプラスティック板(書類はさみなど)を張り付ける。またシャッターのレンズを塞ぐ部分を切り落とす。
これで明るい戸外を映したものが図である。そもそもカメラの語源はカメラオブスキュラで、風景を紙に写し取るための大きな箱であった。シャッターを上手に切り落とすとストロボ機能も生かしたまま光るおもちゃにすることができるだろう。
もっともストロボ機能を生かしておくとコドモが分解して感電するかも知れない。これには、”感電してはたいへんだ”とする考え方と、”感電は経験から学ぶものだ”とする考え方の両方がある。このあたりは、あなたの哲学で決めて欲しい。
さて、コドモに与えて反応を見てみよう。ファインダーもさかさまに覗くとガリレオ式の望遠鏡になることも教えて置く必要があるだろう。通常は小一時間は喜んで遊んでくれるハズである。もし全く興味を示さずテレビゲームに戻るようであれば、今度は親の教育哲学が問われることになる。
もちろん、このトピックで出てくるコドモとは特定の年齢層を意味していない。
いろいろな方から
●携帯電話システムメルトダウンのナゾ(非同期FOMA編)
●成立しないFOMA高速通信のナゾ(簡単な算数編)
の通りに進捗していますね、と手紙をいただく。Webmasterは現在の技術水準からの予想を書いたに過ぎない。またみかかグループがW-CDMAでイニシアティブをとるために多額の財産を国外でロスしたことも衆知となった。
ニュースリリースによると、みかかのコドモはFOMAルーターを発売した。これは弁当箱サイズの端末で、ルーターと携帯電話の両方の機能を持つという。
ルーターはベストエフォートでの双方向384kbpsを実現し、4つの10BASE-TとUSBに接続したパソコンに通信環境を提供する。それ自身が青歯式によるコードレス受話器も持っていて、連続通話時間は120分、連続待ち受け時間30時間と書かれている。仕様上の通話時間は通常のFOMA端末より30%程度長い。
とすると、ルーターも120分動くかと期待されるが違うようである。この通話時間は本体ではなくて青歯式コードレスハンドセットのものである。本体には充電式電池(\8300)が用意されているが、モバイルルーターとしての使用時間は書かれていない。
下り/上がりが384kbps/64kbpsの電子カード端末P2401の消費電力は最大2500mW、待受時で1000mWであった。シャノンの定理からすると上がり384kbpsを実現するには約6倍のS/N、36倍の送信電力を要するが、実際には数倍の出力しか手当されていないだろう。
というのは電池寿命が厳しいからである。本体の厚みから判断すると電池容量は10AH(3.7V)以下と推測されるが、ポート類が消費する待受電力も考えるとルーターとしての実用通信時間は30分以下と思われる。もちろんルーターが一台作動するとそれは帯域のノイズフロアを持ち上げるので、基地局の端末収容能力も低下するだろう。
どうやら実用には電源アダプターが必要のようだ。そのせいか、想定用途は”お得意様へのプロジェクト常駐時の通信環境構築”や”建売住宅展示販売場と本社サーバーの高速接続”とある。モバイルというよりは”半固定業務”が想定されている。
しかしFOMAのパケット単価を考えると、前者の用途は広告業界のようなマージンの多い業務で無いとペイしないだろうし、2GHzの電波状況がビル内で安定するかも疑問である。後者の用途では市街地であればつなぎ放題のPHS(128kbps/68kbps)の方が普及しているし、郡部であればそもそもFOMAのエリア外かも知れない。
もちろん電話回線が利用できればモデムの方が現実的だ。Webmasterも出先でモデム付無線LANを設営した経験がある。低速ではあるが安価なので、長く接続してもたいした料金にはならない。ADSLが可能であればルーター+無線LANの方が遙かに高速である。無線LANなら設営が簡単だし移動運用も可能である。
というわけで、FOMAルーターの用途は現実性、速度、コストのどれをとってみても限られているとしか思えない。片方でリストラしながらもう片方で開発経費を費やしたこの製品がペイするのか、余計な心配をしているwebmasterである。
(追加)当初の設計仕様では電池でも動作の予定で専用の充電式電池が設定されたが、電力消費があまりにも大きく実用性が無いためAC電源を接続しないと動作しない仕様に改められている。実用性の問題から、この製品は発売後まもなく廃番となっている。