□Vendee Globe世界一周レースに見る最新外洋レース艇のナゾ
□セイコートゥールビヨンのナゾ
□ヤンマー1GMエンジンの水温警告ピー解決のナゾ(リローデッド編)
□レ○サスISのCMに出てくるバイクのナゾ
□冬休み記念プレゼント!MTバイクが好きになる山本式クラッチ保持装置YRRCSのナゾ(その2 種明かし編)
□MTバイクが好きになるYRRCS金物のナゾ(その1 ナゾナゾ編)
□アメリカズカップAC45Fの艤装のナゾ
□部屋の掃除で出てきたもの(その1 ラット皮質プルキンエ細胞登上線維活動96チャンネル記録)
□チャリの無理やり変速ゴリゴリは無くせるか?のナゾ(その2 山本式ケージカット実践編)
□チャリの無理やり変速ゴリゴリは無くせるか?のナゾ(その1 山本式ケージカット理論編)
□アフリカツインCRF1000L試乗のナゾ(DCTは乗りやすいか?編)
□二輪用ETC最安値のナゾ
□クラリスコンポのまま10速化のナゾ(その2実戦編)
□クラリスコンポのまま10速化のナゾ(その1理論編)
□空油冷CB1100エンジン造形のナゾその2(誕生の地を走る編)
□山本式ドロップハンドル補助コンバインドブレーキシステムのナゾ
□ロードバイクの重量と価格の関係のナゾその2(コンポと重量編)
□文鎮化PANDA端末の復活のナゾ その3(ネットワーク認識編)
□文鎮化PANDA端末の復活のナゾ その2(ドライバーの呪い編)
□文鎮化PANDA端末の復活のナゾ その1(ポケモンGOの呪い編)
□空油冷CB1100エンジン造形のナゾ
□ポケモンGOはゲーム業界を破壊するか?のナゾ
□ロードバイクの重量と価格の関係のナゾ(どのクラスがオトクか?編)
□低炭水化物ダイエットのナゾ
□マツダGベクタリングのナゾ(あなたの車の空気圧は間違っているかも編)
□イギリスはEUを離脱できるか?のナゾ
□大古テスター復活のナゾ・その3(太陽光発電モニター編)
□チェーンとスプロケの寿命を延ばす山本式チェーンカバーのナゾ
□ハーレー750と883試乗で感じるエンジン鼓動のナゾ
□熊本大震災の被害のナゾ
□著名エンジンオイルの成分は本当か?のナゾ
□コンタクトZ、コンタクトRによる接触不良解決チュートリアルのナゾ(USB、HDMI編)
□コンタクトZ、コンタクトRによる接触不良解決チュートリアルのナゾ(ヘッドホンプラグ編)
□ふるさと納税2015のチョイスのナゾ(選り取りみどり編)
□新型プリウス試乗のナゾ(売り文句は本当か?編)
□プリウスダイナミックダンパー変造のナゾ
□デジモノSIMは使い物になるか?のナゾ
□プリウスの冬しか鳴らない共鳴音退治のナゾ
現在、Vendee Globeが進行中である。これは全長60フィートのモノハル艇を使いソロで世界一周をする酔狂なレースだ。フランスが起源なので参加者にフランス人が多いのも特徴である。
現在のランキングはこちらで見ることができるが、現在トップはBANQUE POPULAIRE VIIIを駆るArmel LE CLEAC’Hで、それを422nmの差でHUGO BOSSを駆るAlex THOMSONが追っている。スキッパーの実績や船のパフォーマンスからみて、彼らが競っているのは下馬評通りである。
現在最も進化した外洋レース艇と言われているのがHUGO BOSSであり、それを駆るAlex Thompsonは多くのレコードを持ちナイスガイとして有名である。とにかく彼も船も実にカッコいいのである。
レース艇の位置は進路、速度などが常に衛星を介してサイトで見ることができるのが今日的で、スタートから41日目でトップのArmel LE CLEAC’Hが63%を消化しているので、単純計算では60日代後半で到着する可能性がある。
このVendee Globeが初めて開かれた1989-1990では109日を要し1992-1993は110日、1996-1997が105日、2000-2001が93日、2004-2005が87日、2008-2009が84日、2012-2013が78日とスピードアップし、2016-2017は60日代に突入する可能性もある。
その間の技術の進歩も著しく、船の形もセイルの形も変わっている。
1989-1990優勝のTitouan LamazouのEcureuil d'Aquitaine II を見ると、
この時点でセイルはすでにケブラー製になっているが、船形は船尾も細くなった紡錘形で舷側が高く船体に厚みがあり、コクピットが短く船尾が斜めに切り落とされているのがこの頃の船の特徴で、webmaseterが使っている船もそうである。プロポーションが優美で美しい船である。
キールは固定で舵も一本、セイルも基本的な前後三角のバミューダリグである。この船形はヒールしていないときに水の抵抗が小さいが、ヒールすると水線部分の形が乱れて抵抗が大きくなる。
写真ではスピンポールも見えるが、ソロでスピネーカーをあげたのだろうか。この時代の船はスピネーカーが前提なので船首にポールやパルピットが無いのも特徴的である。排水量は11トンで、材質はコンポジット(バルサ材をFRPでサンドイッチしたもの)と思われる。
これが1992-1993優勝の Alain GautierのBagages Superiorを見るとマストが2本のスクーナーとなっており、船尾は広がり船体は上下に薄く舵は左右2本となっていて、まるで大型ディンキーの様相である。船は大半がヒールした状態で走るので、紡錘形でなくても船体が円弧になっていれば幅広でも抵抗が小さい、という考え方である。しかしソロなのにセイルが多いスクーナーでスピンポールも使うとはスキッパーはよっぽどの鉄人だったのだろう。
次の1996-1997優勝の Christophe AuguinのGeodisはセイルはバミューダリグに戻っているが、船尾がさらに広がっていて、可動性キール(カンティングキール 25°)を装備している。これはキールを風上側に傾けて重量でヒールを抑制するものである。
このころからスピネーカーが廃れてスピンポールを艤装しないようになっている。これはランニングの風下180度でドラッグで走るより、クオーターリーの風下135度でジェネカーにリフトを発生させて走るほうが速いからである。そのかわりジェノアとスピネーカーの中間のジェネカーと呼ばれる巨大なジブを使うようになった。ジェネーカーを前方に張り出すために、古典的な船首のパルピットやポールが復活している。
さらに2000-2001 優勝のMichel DesjoyeauxのPRB2000では、カンティングキール(30°)に加えてダガーボードをマスト前に一枚装備している。ダガーボードは小さな船の真ん中にあるボードで船の横流れを防止するが、キールが傾いているとその働きが弱くなるので、別にダガーボードを備えたのである。キールと違ってダガーボードは不要な時に上げて抵抗を減らすことができる。
さらにメインセイルは船尾まで届くように巨大化している。マストはカーボンファイバー製で、船体は一部カーボンファイバーとアラミド繊維を使い排水量は9トンと軽量化されている。なおレージージャックというメインセイルをブームに格納する便利なカバーがこの頃から出現している。通常はプレジャーボートに装備される代物だが、強風下でセイルを縮小(リーフィング)するときに納まりが良いのが特徴だ。
そして2004-2005優勝のVincent RiouのPRBでは、左右のダガーボードが舷側ギリギリまで外側に移動し風下側をリフトする効果も狙っている。このころからマストがカーボンファイバー製になり形状も翼断面に進化している。劇的な技術の進歩で2000-2001では前回より実に12日も短縮した。
2008-2009優勝のMichel DesjoyeauxのFonciaはマストのステーのためのポールが左右に突出している。より大きなセイルを使うためにサイドステイの幅を広くすることによってマストの強度を上げるとともに、ジェネカーをより外側まで大きく展開するのにも使われる。
船尾は非常に幅広で船が三角形になっており、コクピットも船尾に開いていて大量の水を被ってもすぐに排水するようになっている。船はダガーボードや可動性キールのリフトで水面から浮いて走るようになり、もはや船尾はあまり水に浸かっていない。またヒールした状態で水に触れる部分が最小となり、その部分を最適化すると船は三角形になったのである。
セールの形も三角形から台形になっている。ダガーボードやサイドステーによってより大きなセイルの面積が確保できるようになったからだ。コクピットの屋根は観測窓を持った可動式で、ひっきりなしに波を被る南氷洋でコクピットを被い居住性を改善している。
2012-2013優勝のFrancois GabartのMacifは艤装面では大きな変化は無いが、船体と甲板の角が丸くなっている。通常は凌波性のために角ばっているが、ダガーボードと可変式キールの大きなリフトで船首が浮くので乾舷を低く凌波性を犠牲にして空力特性をとっている。このころから船の最高速度が60km/hを超えていて空気抵抗が問題になってきた。
そして2016-2017では、ついにダガーボードが船体から独立して左右の水中翼になった。水中翼が船から大きく離れているほうがモーメント的にヒールを抑制し船体をリフトさせる効果が強いからである。また水中翼がヒールを強く抑制して転覆を防ぐため、大きくヒールさせたままで安定して走るようになった。船体はフルカーボンファイバー製で排水量は7.5トンまで軽量化されている。
このように、目に見えてレース艇は長足の進歩と変化を経ている。
さて2016-2017で一番先進的な船体と艤装をもつHUGO BOSSでは、船体と甲板の間の角が
ざっくり切り落とされ船首も細くなっていて、凌波性を捨てて空気抵抗を優先している。また艦首が水没したときの回復も早くなる。左に見えているのは水中翼の先端で、船体から離れているのでヒールを抑制するモーメントが大きい。水中翼の突出量は可変である。
次に、可動性キールだが、
大きく風上側に傾いてヒールを抑制している。キールのカントの軸は後ろが低くなっていて風上側にカントした時にリフトを発生し船体が水上に浮いているのが解る。
VPLP社の説明図によると、可変キールのリフトはヒールを大きくするが、キール先端の重りが風上に向くこと、バラストタンクの水を風上側に移動すること、そして風下の水中翼がリフトを発生することでうち消すようになっているという。
少しピッチング気味であるが、風下側の船体は水面をハイドロプレーン艇のように滑っている状態で、キールの根本まで浮いている。
古典的にはオーバーヒールと見なされる状態であるが、現代では当たり前のヒールである。風下側の水中翼はV字型のためリフトは自己安定性(ヒールおよび深さをを一定に保つ性質)を持つため、これ以上ヒールしてブリーチングすることは無く、この姿勢のまま長い間30ノット近い速度で走るのである。もちろん、それにはオートパイロットやさまざまな姿勢制御機器の進歩も大きく寄与している。
速度的には水中翼を有するカタマラン艇に遅れをとっていたモノハル艇も水中翼で35ノットが出せるようになり速度差がかなり詰まってきている。荒天での凌波性はモノハル艇に分があるので、今後も外洋レース艇は様々な形の水中翼を装備して登場するだろう。いずれにせよ、水中翼を装備したカタマランもモノハル艇も、技術的には来るところまで来てしまったという雰囲気だ。
もちろん、ハイテク艇であってもそれを操縦するのはあくまでも人間だ。風や潮流を読み最適な答えをだすのはコンピュターでは無くベテランの強者の超人的な能力によってである。
今回のVendee Globeも成り行きはますます目を離せないところである。
ここのところ時計には興味が無かったWebmasterは、時計業界の状況については遠い所から時折眺めているだけだった。そして今年になってやっと、というべきか、今頃というか、セイコーよりトゥールビヨン「FUGAKU」が発売されたことに気付いた。価格は5000万円だと言う。
トゥールビヨンについては、過去
□難物トゥールビヨンの修理のナゾ
□怪しげなトゥールビヨンのナゾ
でも解析した。修理した現品(中華製)は譲っていただき現在手元に有る。
トゥールビヨン部の構造は、
概念図のように、これはフライングトゥールビヨンと呼ばれるもので、元はブランパン社の設計をプログレスウォッチ社がパクってそれを中国シーガル社が中華的コピーしたものだ。ケージの軸が片持ちで表面に邪魔なケージの支持が無い所がミソである。なお当初はケージ軸の支持はボールベアリングと推測していたが、分解した所は固定歯車の中心にある大口径のプレーンなサファイヤ板を上のケージと下のワッシャで挟み込む設計であることが解った。修理後のビデオである。
動画はrealplayerもしくはVLCメディアプレーヤーで再生できる。Webmasterのものは落下のショックでガンギ車が脱臼していたので整復調整した。固定歯車の大口径サファイアを上下で挟んで支持しているものの、基本的には片持ちで耐ショック性に不安が残る設計だ。なお、オリジナルのブランパン社の設計ではケージの2カ所から固定歯車に歯車で噛み合って支持を安定化させていたが(US特許)、パクられる内に簡略化されたようだ。
個人的にはフライングトゥールビヨンの修理は二度とやりたく無いと思った。組み上げたものの、しばらく放置するとたびたび止まってしまので何度もバラして洗浄、調整をやりなおす結果となった。
これを読んでいる方にトゥールビヨンの修理をする人はいないとは思うが、念のため書いておく。まず、サファイア板のベアリングには油分があってはいけない。次にガンギ車と固定歯車の遊び(アガキ)が一周イーブンになるようにしないと方向によって止まる。ケージには重さがあるので軸が傾いているとアガキがキツイところで止まるのである。軸の傾きの補正といってもネジを締め直したりチョンと押すだけなのだが、それで相当アガキが変わる。
これ以後時計修理のトピックが無かったのは、トゥールビヨンを何度も分解して懲りたからである。個人的にはショックに弱いトゥールビヨンを普通使いするのはお勧めできない。どうしても使いたいなら革バンドは落下の危険があるので、金属製か鎖が付いていて落下しないバンドをお勧めする。
さて問題は、今回の製品がWebmasterの期待とは違う方向に向かってしまったことだ。(写真はセイコーからのリンク)
1)トゥールビヨンが一番古いタイプ。
今回のものはケージ軸の両端に耐ショック性の軸受けを持つものの、基本的にはイングリッシュレバーを用いた古典的なもので、構造的にまったく目新しい点が無いところがセイコーらしく無い。ブレゲがこのタイプの特許をとったのは実に1801年で、200年以上も前なのだ。
セイコーはかつて新型トゥールビヨンを開発し特許(平9-54169)を取得していたが発売に至らなかった経緯があるからだ。それは、過去のトピックでも紹介したが、
アンクルは普通のタイプで、ガンギ車は歯車の内側から、またケージ外周をドライブするようになっていた。おそらく68系キャリバーとのマッチングのために、今回は200年前からある旧式のトゥールビヨンを乗せてきたのだろう。ケージ軸を両持ちにしたのは、耐ショック性を確保するためと、寂しいダイヤル面に飾りとなる大きめの支持梁を渡すためだろう。
2)技術レベルが世界水準から遅れている。
世界的にはトゥールビヨンは2軸や2個持つ物があるなど、複雑時計の技術のハードルが格段に上がっている。またスイスで発表された複雑時計のの中華性コピーがすぐに出回るなど、底辺の技術レベルも高くなっている。既に2種類のトゥールビヨンを持った中華製ムーブメントが売られている。さらに持続時間が37時間しか無いのは、元となるムーブメントのチョイスに問題がある。
今回のものはどちらかというと超複雑時計というよりは服飾時計の方向であり、それは旧式のトゥールビヨンだけでは商品性が弱いと見たからだろう。トゥールビヨンを始め各部の歯車等全ての仕上がりが、日本発の独立時計師 HAJIME ASAOKA氏の作品とは比べ物にならないほど劣っている。氏の作品は銀座和光で売っているから、セイコー社の技術者は実物を見ていると思うのだが。
3)デザインのバランスが悪い
宝飾と工芸の技術は優れたもので、これは間違いなく世界一のレベルにある。デザインセンスは和風というより中華風だが、これも良しとしよう。
最大の問題は外径と機械のバランスが悪いことだ。ケースに対してムーブメントが小さすぎるためにトゥールビヨンが小さく、また中央に寄ってしまっている。
ケース外径が43.1oに対しムーブメント径が25mmしかなく、デザインのかなりが額縁であり、いわゆる”額縁時計”という印象が拭えない。古いオリエントにはこういう感じの時計が多かった。
特にデザインでいかにもマズイのは、ダイヤルにムーブメントの外周に相当するワッカがあることだ。このワッカのためにムーブメントの小ささが見えてしまうし、ダイヤルのデザインが分断され窮屈になって伸び伸びとしていないのである。また針も短く細すぎてダイヤルに合っていない。
そこで、美術に心得が全く無いことを自認しているwebmasterがwindowsのペイントで余計なワッカを消してチョコチョコと5分間変造した結果がこうである。
品が無い周囲の宝石とか、トゥールビヨンの部分が小さすぎて内側にあること、ダイヤル面が深すぎて斜めから見たときのバランスが悪いことなどはどうやっても救えないが、少なくとも大型時計らしくのびのびとしてダイナミックなダイヤルデザインとなったと思う。素人の添削で急に見栄えが良くなるようではデザイナーのレベルが低いとしか言いようが無い。
しかし良く良く考えてみると、最初のデザインはWebmasterの変造例のような伸び伸びしたデザインだったのでは無いか?という疑いが出てくる。
自然かつダイナミックで伸び伸びとしたデザインにするとトゥールビヨンが小さく位置が悪いことが目立ってしまう。そこで左側に余計な地板の部分を露出させてバランスを取ろうとしたが、それでも左右のバランスが悪いので、整理するためにワッカをはめてみたらデザインがビジーでぐじゃぐじゃになったけど、バランスの悪さが目立たなくなったようなのでまあいいかで押し切ったのではないか?ある意味デザイナーの苦心の結果なのかも知れない。
さてバランスが良いデザインとはどういうものだろうか?
例えば世界の複雑時計の基準となるのはおそらくBREGUETであろう。例えば人気のあるClassique Tourbillon Messidor 5335BR (1800万円)
の外径が40mmと「FUGAKU」とほぼ同じだがムーブメントがギリギリまで大きい。特に宝石を並べたり彫金を施さなくてもムーブメントのパーツ自体が美しいので、デザインに地力というか迫力がある。デザイン力というよりは、機械をまともに造ったら良いデザインになりました、という感じである。なお手巻き持続時間は50時間と、「FUGAKU」の37時間よりかなり長い。BREGUETの公式ビデオを見てみよう。
これはダイヤル面の特大のトゥールビヨン支持を透明なサファイア板としてテンプだけが宙に浮いているように見えるところがミソである。トゥールビヨンの大きなケージは敢えて丸い飾りの下に隠してある。「FUGAKU」の厚みは8.8mmと外径41mmの時計としては薄い。しかしBREGUETも凝ったサファイヤ支持の特大トゥールビヨンを持ち持続時間50時間を達成していることを考えると9.65mmは決して厚くない。この手の高級複雑時計では薄いことは重要でなく、むしろ重量感があり厚めの方がアピールする。
持続時間も実用上は長いほうが良く、BREGUETが50時間持つことは有利である。持続時間37時間は結局は毎日巻く必要があるので実質的には1日分と同じだが、50時間だと丸二日持つので、実用上の持続時間は二倍あるとも言えるからだ。
これが1800万円なので「FUGAKU」の価格で3つ買えるし、もし事業が破産して売るとしても、資産価値はさほど毀損しせず高く売れると思う。しかし「FUGAKU」が非常時に5000万円で処分できるかは疑問だ。
個人的には、セイコーの頂点にしてトルクを要する5000万のトゥールビヨン時計に、1969年に始まるドレスウォッチ用の薄さ売りでトルクや持続力に余裕の無い小ぶりな68系ムーブメントを使う理由が解らない。古いムーブメントを引きずるよりは35mm級のムーブメントを新たに起こしてデザインを適正にするとともにBREGUET並の持続時間50時間を達成すべきであろう。
厳しい意見かも知れないが、かつてクォーツ時計で世界を席巻したセイコーとしては、頂点に立つ時計は装飾でなく技術で冠たるもので有って欲しいと期待するのは間違っているだろうか。
先日アメリカズカップの時に久しぶりに船を出したが、船体に蛎殻がついていいて速度が上がらない。そこでエンジンを吹かすと、あの懐かしいエンジンの水温警告ピーが聞こえてきた。エンジンの水温警告ピーについては、
□ヤンマー1GMエンジンの水温警告ピー解決のナゾ
に理論編があるので、目を通して欲しい。思えば最近はバイクや自転車に注意が向かっていて、船に対する愛情が足らなかった。こいつらは焼き餅焼きで、webmasterの気を引くためか故障をやらかすのである。
今回は2回目ということもあって、手順を整理し容器類などを準備し、マニュアル風に記載を進める。今年のトラブル解決もこれでおしまいとしたいところだ。
1)ポンプの清掃
エンジンの冷却路にたまった海水は徐々に蒸発し、濃い塩分が貯まっていく。従って海水が貯まりやすいところや下部ほど塩が付きやすい。
キングストン弁閉鎖を確認し、まず点検するのはポンプである。ネジをはずしてケースやインペラーの具合を観察する。今回はここには塩は付いてなかった。ポンプのガスケットに液体ガスケットを塗布して元に戻す。
2)ポンプ出口にあるゴムホースとT字分岐部の内腔の清掃
ゴム管およびエンジン内とサーモスタットへのバイパスに分岐するT字管の詰まりを確認する。T字管から長いプラスドライバーを通してエンジン内への交通を確認する。今回は詰まっていなかった。
次に確認するのは図に無いがエンジン左側面にある冷却水抜き(ドレン)の経路である。プラグをはずして長いプラスドライバーを入れてシリンダージャケットまでの交通を確認する。今回は詰まっていた。ドレンのチューブの先端は500mlのPET容器に入れておく。
3)サーモスタットの確認と清掃
ヘッドにあるサーモスタットは、シリンダーの水温が上がるまで冷却水をバイパスして排出する。サーモスタットの弁には小さな穴があいていて、少量の冷却水は通るようになっている。
サンポールに1時間付けた後熱湯につけて開弁を確認した。サーモスタットの詰まりは多いようで多くのユーザーがサーモスタットをはずしたままにしているようだ。温度の低い海水でオーバークールを防ぐ設計だが、福岡のような温暖地でははずしてもかまわないのかも知れない。
4)冷却路の清掃
いよいよ冷却炉の清掃だが、その前にサーモスタットをはずした穴から水を入れ、ドレンから排出を見る。一応は通じているが、せっかくだから掃除することにした。冷却路が詰まる理由は既出の図、
、
のように、ヘッドガスケットには冷却水の通る穴が二つしかなく、他のシリンダーの穴は通じていないからである。水量を制限してオーバークールにならないためと思われるがいかにも細く詰まりやすい。既出だが、エンジン断面図
で解るように、サーモスタットの穴が冷却水路で一番高いので、ここからサンポールを入れれば冷却炉すべてを掃除することができる。冷却系の配管を戻して中を観察すると、かなりの塩が貯まっている。
次にT字管から上行するチューブに詰め物(今回はビニール袋の切れ端)をする。また周囲にビニールおよび布で養生して サンポールを50%に割ったものを注入する。PETボトルにバイクの2ストオイル補給用の蛇腹を付けたものが役に立つ。注入はゆっくりとサーモスタット縁近くまで水位が来るまで行う。
泡が出て溢れるので、サンポールは心持ち少な目で留めるほうが良い。量は400ml弱である。ここで30分待つ。写真のように塩がみるみる溶けてくる。コーヒーでも入れて待つことが大事だ。
5)サンポールをエンジンから抜く
ドレンチューブからPETボトルに抜く。今回は濁りや変色が少なく、サーモスタット付近が一番塩が付いていたようである。
6)サーモスタットや配管類を元に戻す。
サーモスタットのガスケットは新品と交換するほうがベターである。配管類を戻した後、エンジン前面を十分な水で洗浄することが大事だ。
7)試運転
キングストン弁を空け、エンジンを始動し、30分ほど暖機運転をして内部を完全に洗浄する。暖機が不十分だとジャケットにサンポールが残り腐食の原因となる。気長に暖機する間はコーヒーでも飲みながら気長にやることが大事だ。最後に船尾からの冷却水が十分に排出されているか、濁りが無いか、などを見ておく。
船体の牡蠣類を竹竿で落とし、博多湾で試運転である。以前としてキールなどに蛎殻が残っているのか速度は10ノット出ないが、一応使える範囲まで回復した。気になるのは犠牲電極の亜鉛であるが、この程度では完全になくなることは無いものの、できれば3年毎に交換したいところだ。
webmaserの仕事は休日でも夜間でも電話で呼び出しがある。どうしても土日は体を休めるだけで精一杯で、なかなか船まで足が伸びない。一つには、船に乗るたびに不具合を発見するので、億劫になる面もある。
しかしエンジンの塩は、毎月1回エンジンを試運転すればかなり予防できる。バッテリー上がりの予防には太陽電池を付けてあるので、始動自体はセル一発である。今回からは面倒でも、ドレンから冷却水を抜くことにした。
webmasterも年を取り、土日や夜中に呼ばれることも減っているので、今後はもう少し船に愛情を注いでやりたいと思っている所である。
YRRCSをトライされている方の具合はどうだろうか。Webmasterにとっては町中が断然ラクである。
Webmasterの年齢層は車もバイクもMTから始まったので、ギアチェンジ自体はさほど面倒とは思わないが、町中での信号停止前後のクラッチ操作が煩わしいと思う。車でもバイクでも信号停止中にニュートラルに戻すか、あるいはローのままクラッチを切っておくかは考えるところである。
特にバイクは足の踏み換えが伴うので煩わしいが、やはり駆動力で姿勢をコントロールできるMTのメリットは捨てがたいものである。そんなMTの印象が一変するYRRCSにぜひトライしていただきたいと思っている。
さていつも見るニュースのサイトでレ○サスISのCMが割り込んできた。
個人的にISには全く興味が無いので何で今頃と思ったが、2Lターボが搭載されたらしい。しかし、万が一買うとしても同じ仕様で100万以上安いクラウンを買うであろうからどうでもいいのだが、それに出てくるバイクが問題である。
バイクは、サスのストロークがあるオフロードにオンロード系のタイヤを履かせたモタード系という部類で、中でも小さな異形ヘッドライトをつけフェンダーをはずしてスカスカにしたストリートファイター系と呼ばれる代物である。基本CMには国産車は出さないのが通例なので、外国製だろう。
バイクはバーンアウトしながら追跡を始める。左右幅が細いことから単気筒と思われるが、250ccとしてはバーンアウトが強力すぎる。マフラーが両側に2本出しだが、これはワンオフだろう。
実はwebmasterにはバーンアウトのシーンだけで車種が解った。それは後車軸のスイングアームへの固定部に特徴があるからだ。というか、webmasterが本来のアフリカツインはこうあるべきでは無いのか、と思っているバイクだからだ。このメーカーのバイクはwebmaster周辺でも乗っている人がいる。しかし、もうすこしナゾ解きを楽しんで欲しい。
かなり大口径の前ディスクは左側にあり、リアディスクも口径が大きいことから、やはりモタードとしてはかなりパワーがある車種なのだろう。ホイールはスポークが細いキャスト製である。ライダー操作に対して取り回しは非常に軽いことが伺い知れる。
次に猛然と追跡を始めるバイクのメーターが映し出される。メーターは色が変えられているが純正のままである。スピードメーターの針はゼロをさしていて液晶も表示されていないが、ハイビームの青色だけが点灯している。速度や回転数を見せないのは大人の事情か。
このようなCMでメーカー名が割れてしまう純正メーターを長々と流すのは異例である。通常は社外製かモックアップをつけるはずなのだが。どうやらCMの企画の上部層にこのバイクの素性が割れてもかまわないと考えている人間がいるようだ。
あるいは、レ○サスの金を使って車を撮るようなフリをして、実は好きなバイクを長々と撮す高等手段のようにも思える。あるいはレ○サス側もその意図が解っていて、ユーザー層を広げるために気付かない振りをしているのかも知れない。CMの内容もドライバーがISの性能をフルに引き出して小細工も弄するが追いつめられ、最後はクレーンで逃げた、とも解釈できる。
ところでライダーのヘルメットはシンプソン風だが、よく見るとフルフェイスでは無くゴグル+ハードフェイスマスクで、頭頂部にエアインテイクがある。クラシックなスタイルを重視するシンプソンにはこのようなインテイクは無い。
謎解きだが、このバイクはKTMのDUKE690である。007とかの映画ではオリジナルが解らないほど偽装するが、ダカールラリー常勝のメーカーへの敬意を表すためかヘッドライト、マフラー、フェンダーの偽装だけに留めている。つまりメーカーが割れてもかまわないという意思表示である。
なおヘルメットはshark社のRaw Helmetである。一見シンプソンに見えるが、これは基本ジェットタイプ+ゴグル+フェースマスクの形態である。安全性はジェット以上フルフェイス以下だが、風通しが良く飛び石に対する防御力もある。何より一体のゴグルとフェースマスクを持ち上げると自由にお茶が飲める点が便利なのだろう。
オンオフに強いモタードはある意味バイクの最終進化形とも思える。白バイの連中もモタード系は見て見ぬ振りをする。モタード系には腕が立つライダーが多く、パワー、すり抜け性、オフロード性能などが高いため、CB1300では逃げられる可能性があるからだろう。特にスリムなVFR系から幅が広いCB1300になってから、明らかに町中で原付二種やモタードを追わなくなっている。
一方、ほぼ全ての原付一種が守っていない、いや守ると危険な30km/h規制違反はどんどん検挙している。脱公務員の部屋・元白バイ乗りの親父の話によると、バイクを検挙すると車の検挙の2倍の勤務評定になるらしい。
さて、
のナゾは解けたであろうか?
(追加)
現在はさらに形状は進化して下の写真のような形状になっている。詳細は
□MTバイクが好きになる山本式クラッチ保持装置YRRCSのナゾ(その3 小型化ver3編)
NCを使って使用法のビデオを撮影しようとしたら雨が降ってきたので、アドレスV125のブレーキを使って説明したい。従って正確にはYRRBSである。ちなみに、YRRBSとは山本式ラクラクブレーキシステム、YRRCSとは山本式ラクラククラッチシステムの意味である。ブレーキにもクラッチにも、また自転車にも応用できるところがミソである。
その後、NCでのビデオがとれた。
現在はハンドルの根本側に移動させて、タイラップで位置を規制している。
調節方法の説明
アクセルの根本にYRRCSを設置する。軽く回って前の重い方が下にお辞儀するように、しかも勝手に抜けないように輪っかの部分の形と大きさを調節して欲しい。ハンドルの端に近い方が効果が大きいが、親指の位置や手の大きさにあわせて設置場所を決めて欲しい。今回NCのグリップのサイズに合わせたのでアドレスV125ではブカブカである。
大きめのタイラップ2本でYRBBSが移動しないように左右からゆるく挟んで規制しておくと良い。YRRBSが当たる部分には回転しやすいようにビニールテープを巻くか油(アライヘルメットのシリコンオイルを推薦)を塗っておくといい。
回転が渋く戻りが悪い時には、下にナットなどを接着しておくとよい。
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使用方法の説明(老婆心モード)
まず設置した状態が状態1である。
次にレバーを引いて、YRRBSの手前のポッチを下に下げると、向こうの方が上がってレバーを保持する。これが状態2だ。
で再度レバーを引くと、向こう側が落ちてレバーがリリースされ状態1に戻る。
正しい動作にはまずブレーキやクラッチの遊び調節も小さめに調節することが必要だ。レバーを引く量は前側のU字が狭いほど大きくなる。クラッチの保持やリリースはU字型がV字型に近いほどかかりやすくなるが外れやすくもなる。レバーやグリップは純正、社外品など形や太さが千差万別なので、ご自分で調節する必要がある。
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YRRCSが何のためにあるかの説明(さらにおせっかいモード)
バイクで気持ち良く走ってきて赤信号にひっかかる。止まる前に1速に減速するが、機構上バイクの変速機はニュートラルに直接入り難しい(1速から戻して入れるようにできている)。その後クラッチを握ったまま左足で着地する。次に後方を確認して右足を着地しなおし、左足でギアをニュートラルに入れてクラッチを離し、再度左足で着地して待つ。
青信号が近づくと、後方確認をして右足を着地し、クラッチを握って左足でギアを一速に入れ、再度左足で着地して待ち、青信号になればクラッチを戻して発進する。
このタコ踊りを信号の度にやることになる。これをみんな何の疑問も無くやっている。Webmasterも高校生のときから疑問無くやってきた。もちろんクラッチを引いたままで待っても良いが、クラッチが重いと左手の血行が悪くなりしびれてしまう。
もちろん右足を着地しギアを左足で変速後もそのまま右足を着地して待つ方法もあるが、検定や試験で右足で着地すると減点である。右足着地が必要な場合は、後方確認の上短時間で済ますことになっている。理由は、右後ろの車両が接触した場合に右足を怪我するかららしいが、多くのバイクでは右足より先にマフラーに当たるし、安全な所では両足で着地する方がベターだと思う。
YRRCSの場合は、赤信号で1速に減速しながらクラッチを握って止まり左足で着地する。そこでYRCCSをセットすれば左手がフリーになる。青信号が近くなって再度クラッチを握ればYRRCSが自動的に解除され、青信号でクラッチを戻しながら発進する。これで左足を着地したままで踏み変えが要らないし、左手がラクになる。
YRRCSは小柄な人や女性ライダーには特に役に立つ。左右同時に足が着かない場合はタコ踊り中に立ちコケする危険がある。
この機構はブレーキレバーに使えばパーキングブレーキとしても使える。大型バイクでも最近はサイドスタンドしか無いものが多い。勝手にバイクが動いて倒れると数十万の損害となるが、パーキングブレーキがあればまず倒れない。ちょっとした勾配でエンジンをかけたままバイクを止めるのにも便利である。
現在は端のポッチの部分が抜けやすいので、はずしてヤスリで丸く仕上げている。前側がお辞儀しにくいときは、金具が当たるグリップにワセリンを塗るか、適当なナットをオモリとして通せばいいだろう。
この形に落ち着くまでかなりの脳CPU時間と数個の試作を経ている。このページを見てその成果を知ったあなたは実に幸せ者だと思う。
参考
このシステムはその後さらに小型化最適化されている。下記を参照していただきたい。
□MTバイクが好きになる山本式クラッチ保持装置YRRCSのナゾその3 (小型化ver3編)
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YRRCS, a Yamamoto rakuraku clutch system! Here is how it works!!
Everytime you stop at the signal, you must down your left foot first while pressing the clutch lever, then you down your right foot while your left foot entering the gear to neutral, and then down your left foot again waiting for the signal turning to BLUE.
Before the signal turning to Blue, you must down your right foot while your left foot entering gear to 1st, then down your left foot to wait to start you bike while pressing cluth lever.
This movement is very tricky and your left arm may get some fatigue!!
YRRCS is the system to make this silly and ticky movement very simple!
In this system, you may gear down to 1st while stopping at the red signal.
Then, you will slide the YRRCS to engage for the clutch to be kept pressed.
Befor start, you may simple press clutch lever, and YRRCS will automatically disengage iand release clutch lever.
And then you can start your bike. !!
There is no changing your foot down left, right, left, right and left. You can keep your left foot down and free up your left arm all the time while YRRCS engage the clutch rever pressed. You don't need to press heavy clutch lever while waiting for the signal change, now more hustle and fatigue!
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先日の
□チャリの無理やり変速ゴリゴリは無くせるか?のナゾ(その2 山本式ケージカット実践編)
であるが、何でいままで気づかなかったか不思議に思うほどである。
そこで、今回画期的なMTバイクが好きになるYRRC金物(PAT. PEND.)をご紹介したい。
これは、WebmasterがMTバイクの免許を16才でとって以来の悩みを解決する画期的なシロモノである。
材料はステンレス製のS字型フックで4mmφのものを選んだ。4mmφとした理由は必要な強度と重さを持たせるためだ。125ccクラスなら3mmφでも十分だと思うがリッタークラスならもう少し太いものが要るかも知れない。。
まずこの写真の通りの形とサイズで忠実に試作していただきたい。この状態で大半のバイクで使えると思うが、その後実車に合わせて左右のU字型の部分の調節をしていただきたい。参考として見えているパイプ径は35mmφである。通常は、状態1
の形になっていて、左側が重いので下がっている。ここで、右のでっぱりを親指で下に押すと金物は右に回転して、状態2となる。
この状態で左側のU字が何かを固定する。その何かを再度右側にひっぱるとU字が重力で下方に外れて状態1に戻る。壊れるところが無いので故障も無い。
さて、何だろう?もしあなたがこれが何かを理解できれば、一生手放したくなる代物である。というか、空前絶後にバイクのあり方を変えるシロモノだ。場合によっては、バイク産業自体が活性化することも考えられる。
答えは近日中に種明かしをしたい。
11月18日から第35回アメリカズカップシリーズの前哨戦ルイ・ヴィトンカップが福岡で開催されることは知っていたが。忘れていた。18日に周囲の混雑に気付いた時には目と鼻の先で模擬レースをやっていた。基地はWebmasterが船を泊めている小戸ヨットハーバーだという。
報道によれば今回のレースにはAC45Fで戦われるらしい。アメリカズカップは1958-1987は12m、1992-2007は80フィート(24.4m)のモノハル艇(船体がひとつ)だった。船体の拡大は2009年に頂点に達し、113フィートのトリマラン(USA-17)と110フィートのカタマラン(Alinghi5)となった。第34回の2012年は縮小して、前哨戦はAC45(1.5t 45フィートクルー5名)、2013年はAC72(5.9t 72フィート クルー11名)をルイ・ヴィトンカップとアメリカスカップの本戦に使うことになったが、参加は4艇のみと少なく死亡事故と法廷争議も起きた。
今年のルイ・ヴィトンカップはAC45Fで、また2017年の本戦はnew America’s Cup Classと呼ばれるクルー8名のAC62(62フィート)で行われる予定だった。その後AC62はキャンセルされAC45SというAC45Fの新型が使われることになった。いくつかのチームが既にAC62を作ったあとでの変更である。
2009年のUSA17やalinghi5が巨大かつ高価で、電動ウインチを駆動するためにエンジンを搭載するなどがヨットの精神に反するという批判も多く、またAC72での死亡事故や政治的な駆け引きから、AC62より安価で多くのチームが習熟したAC45Fの改良型になったようだ。
今回は久しぶりに日本チームが挑戦し福岡での試合が実現した(画像はsoftbankへのリンク)。
18日は海岸から見たが船の細部まで見えなかった。そこで19日の朝に小戸に偵察に行ったが、厳重な警備のため艤装の細かいところが見えない。
それなら、船を出して沖で待ち構えて観察しようと考えた。敵が出発するまえに出港したが、船体に牡蠣殻が着いていて速度が上がらない。エンジンを吹かすと水温警告ブザーが鳴り出した。スロットルを戻すと鳴り止むが、吹かすとまた鳴り出した。冷却路が塩で詰まりかけているためで、しょうがないので4ノットでのろのろ走っていた時である。
ふと殺気を感じて後ろを見たら、曳舟と合体したニュージーランドチームの船が迫って来るではないか。あわや追突、と思ったが、敵はその直前に回避して横を追い越し、再度カットインして去って行った。彼らはギリギリで会合しては回避する術に長けているので、こんな危ない追い越しでも何とも思わないのだろう。
びっくりはしたが、細部を観察する絶好のチャンスとなった。船も細部は企業秘密らしくこれまでは断片的な情報ばかりだったが、実物とテレビの中継を見て多くのナゾが解けた。
まず構造だが、左右のカーボンファイバー製の船体を前後の2つのチューブ状の梁(ブーム)で固定し、さらに中央をマストを載せてジブの起点となる梁が前後に走っている。基本的には、先鋭的なInternational C-Class Catamaranを拡大した2012年のAC45を改良したものである。
スキッパーは後端で舵とメインセールのシート(ロープ)をクルーと二人で操作する。クルーは網の上に座るかハイクアウトするが、スキッパーだけは別格?でハッチを兼ねる板にすわる。そこには計器盤とハイドロフォイル(水中翼)の傾き(レイキ)を電動で変えるスイッチがあるが、GPSやパソコンも無くミニマムな装備である。
舵はティラー式で両側がブームで繋がっている。舵の下端には小さな水平翼が付いていて、舵の傾きを調節してリフトを調節する。船尾と前のブームにペナルティーの表示ランプがある。
船体中央には水中翼を上下させるシカケがある。水中翼は内側に曲がり翼断面になっていて常に揚力が発生している。そのため水中翼を下げるときは水中翼が下に向いて揚力が無くなったタイミングに人力で押し込む。水中翼が働いた状態(フォイリング)では電動スイッチで小まめにトリムを取る。概ね11ノットで船体が持ち上がると言う。フォイリング中はキャビテーションが水中翼の固有振動数に共鳴して唸り音を発する。
水中翼はモノハル艇でも大流行で、トップクラスの外用レース艇の多くが装備している。同時に角度やカントが可変なキールも装備しており、両者のリフトで抵抗が減らし、オーバーヒールも防ぎながら30ノット以上が出るという。船体もヒール時に最適となるようにテールが広がった三角形になっている。セイルも面積を稼げる台形になっている。最新のモノハル艇の艤装については下のビデオが参考になる。
最近の外用レース艇の進歩はめざましく、世界一周をソロで戦うVendee Globeのトップの所用時間が1989-1990では109日だったものが2012-2013では78日に短縮し、現在進行中の2016-2017では70日を切る可能性もある。ちなみに参加者は殆どがフランス人で、連中は自転車やヨットとかの我慢レースに強いようだ。
水中翼には僅かに内側に湾曲した垂直部とL字状の部分がある。リフトすると水没した水中翼の面積が減り、沈むと面積が増える。またヒールすると湾曲部が水平になり船体を持ち上げてヒールを軽くする。つまり水中翼自体でリフトとヒールをトリムする作用がある。
メインセイルはウイングセイルと呼ばれる左右対称の翼断面のもので、左右の表面の間に骨(リブ)があり形状が殆ど変化しない。前端にマスト(帆柱)があり、前から40%あたりで折れて曲がり、その前方をメインセイル、後ろをフラップと呼ぶ。これで左右のキャンバーを変え、凸の面が揚力(リフト)を発生する。
2013年のUSA-17のウイングセールはマストが中央にあって前後が曲がる仕組みだったが、このウイングセールはマストが前にある。セイルには折れ角の制限装置があり、設定された角度まで人力で一気に曲がるようになっている。
ウイングセイルの折り曲がる部分には故意に隙間がある。これは風上側の風の一部が風下側に流れて気流の淀みを取るシカケで、飛行機のフラップに隙間があるのと同じである。
マスト下端に回転するスイベルベースがあり、マスト上端から船体中央前端に1本、中央やや後ろのサイドに左右合計4本、左右後ろに2本の合計7本のステイがある。通常のセイルではバックステイを張るとセイルの前の辺(ラフ)が前に凸となり、セイルの中央でドームが浅く上下でドームが深くなるが、この船ではセイルの形があまり変化しないのでもっぱら風力中心を前後に調節するのに使われるようだ。
ウィングセールは旧来の三角セイルに比べ細長い(アスペクト比が大きい)ことにで揚抗比が大きくなっている。三角セイルは船体から遠いところほど風によるモーメントが小さくなりヒールし難いが揚抗比が低い。カタマランは船体の幅が広くヒールに強いので細長いセイルが使えるが、強風下のジャイブでは扱いが難しく転覆しやすい。
印象的なのはメインセイルに関するライン(ロープ)類の数が少ないことである。普通のセイルは風下に前後長さの10%程度ドーム状に膨らむ(ドラフト)が、強風ほどドームは浅く、弱風ほどドームを深くする。セイルを風力や風向に対して理想的なドラフトにするためにいろいろな方向にセイルを引張るシカケがある。一方、ウィングセールではセールの形が変わらないので調節する所が少ない。
ウィングセイルは30度の登り(クローズホールド)でジブ無しでもジブ付きの通常のセイルより大きなリフトを発生すると言う。2009年にウィングセイルのUSA-17が従来のセイルのAlinghi5に勝利したことで、ウイングセイルの優位性が確定したと言われる。
通常のセイルでは風下180度に走る時(ランニング)はリフトは利用できず風に対する抵抗(ドラッグ)だけしか利用できない。このためスピネーカー(船首にはる丸く膨らむセイル)を併用し風上から135度のクオーターリーでリフトを発生させることはできるがそれでも風速を大きく超えることは難しい。
一方ウイングセールでは風下135度で大きなリフトが発生し、最高で風速の2から3倍の速度が出る。このためスピネーカーポールなどの艤装が無い。最新の水中翼や可変キールを持つモノハル艇もスピンネーカーを艤装しない代わりに大きめのジブ(ジェノアとスピネーカーの中間でジェネーカーと呼ばれる)を含め何本もファーラー付きジブを装備している。ジェネカーの流行で、廃れていた船首に突出するポールが復活している。
ジブの大きさには歴史的な変遷がある。ジブは有史以来大型化を続けジェノアが出現したが、70年代80年代からはスピネーカーを多用するようになりやや小型化した。最近はスピネーカーより偽装が簡単で風向に対しフレキシブルに対応できるてジェネーカーが多用されるようになっている。船のジブの実装を見れば、いつごろの船かはだいたい解るのである。
ランニングはピッチングが激しくワイルドジャイブやブローチングを起こしたりと安定しないので角度を付けて(クローズリーチ気味)走れとwebmasterは習った。実際ランニングでは風がやんで波も消えて舟が進んでいないように錯覚する一方、ピッチングも大きく不気味である。
ヨットは横波を食らって90度以上ヒールしても沈まないように設計されているが、ランニングでピッチングしたタイミングで後ろから大波を受けるとキャビンに水が入って即沈することがある
ジブはフォアステイとは別体の前後二本+αのハリアードで吊られており、それぞれに人力で左右両方向に回転して巻き取るファーラーが付いている。2013年のAC72ではごく小さなジブを補助的に使っていたが、最近は特に弱風時に大小2枚のジブを積極的に使ってより大きなリフトを得るようになった。
前方のジブはジェノアの大きさで、後方のジブはストームジブの小さなもので、風速と風向によって細かく使い分けられる。クローズホールド(風上への上がり)では基本的に小さいものを使うが、アビームでは大、さらに弱風では大小2枚を使うようである。
ジェネーカーも選べるが、今回のレースでは全てのチームが大小2枚のジブを使っていた。19日には日本チームがジブラインが絡まって一気に失速したように、ウィングセールでもジブは重要のようである。
ウイングセイルのキャンバーは弱風のときに強くする(大きく凸とする)が、凸の頂点付近で気流が剥離してリフトを失うのでジブを使って凸部の気流を補強する。一方クローズホールド(風上への上がり)の場合はキャンバーが浅くて凸の面の流れがよく、またメインセイルに入る風を邪魔しないように小さなジブを使うのである。
タックやジャイブの前にジブをファーラーで急速に巻き込み、方向が変わったら急速に広げる操作である。普通のクルーザーのファーラーはフォアステイと一体化していて省力化が目的で、操船には使えないが、この手のものはステイ別体で自由に上下できる。ファーラーの芯は非常に細く軽量にできているようだ。
印象的なことは、短いレースでもファーラーに巻き取ったジブを頻繁に上げ下げすることだ。ファーラーに巻き取っても空気抵抗になるからだ。前方3名のクルーがジブと水中翼の世話をするようで、ジブを上げたり下げたりトリムしたり広げたり巻いたり忙しい。日本チームのジブ操作の失敗を見たせいか、その後は各チームはジブの根本のブームにクルーを一人跨らせていた。
カタマランはヒール(風による傾き)に対する抵抗力が大きく、船体も細長く抵抗が小さいので速度が出ることは昔から知られていた。最近ではウィングセールと水中翼を得て極限まで進化したが、ウィングセイルにはもちろん欠点もある。
まず、強風に対しセイルを縮小(リーフィング)できないことだ。通常のセイルだと降ろしてブームに紐で巻くことによって、三角形のまま縮小して荒天を乗り切ることができる。細長いセイルは船体から一番遠いところの風力モーメントが大きく、強風で強くヒールさせる力が働く。強風では転覆のリスクが増えるので、レースがキャンセルされることがある。
強風下ではマークを回航するためにジャイブ中に横風を受け転覆するようだ。問題はカタマランが転覆するとそのまま船体が安定するので元に戻すことが困難なことだ。ヨットクラブでは昔から新入生にまず沈からの脱出方法を教えるが、カタマランが転覆すると回復は難しい。
また船体が前後に短いので後方からの突風を浴びると前方が沈しやすい。普通のセールだと、タックでもジャイブでもセイルがシバーして推進力を失う瞬間があるが、ウィングセイルは殆どの角度でリフトが発生するので、ターン中が特に危険なのである。
転覆の経過でクルーが投げ出されたり、構造物の上に落ちたり、あるいは網の下にトラップされたりして昔から大型カタマランでの人身事故が多い。2013年にはアルテミスチームのAC72が前方に転覆し金メダリストのスキッパー、アンドリュー・シンプソンがトラップされて死亡している。
幸運にもマストとウイングセイルが破壊されなければ、ウイングセイルが空気室として浮力を持つので90度転覆で留まり回復する可能性がある。ただしマストやウイングセイルが破壊されると180度転覆となり、回復は絶望的となる。
今回の福岡大会は風も弱く危ないシーンは無かったが、それでもフォイリングを見ることができた。また、距離ゼロで観察することができたので、最新のウィングセイルとハイドロフォイル付きのカタマランの艤装も理解できた。コースが短かったが、もう少しコースが長くて風があればさらに楽しめたのかも知れないが、観覧席の配置やヤフードームの前で行うことに大人の事情があったのだろう。
そもそも浜辺の有料観覧席からは何も見えないので、福岡タワーから双眼鏡で観察するのがベストだろうが、テレビ中継もなかなか迫力がある。テレビ中継でも心得のあれば操船方法や艤装など収穫があったことと思われる。
2017年の本戦で使われるAC45Sの動画がyoutubeにあったのでAC45F(出典:http://www.cuplegend.com/)と並べてみた(下がAC45S)。基本的にはAC45Fと似ているが、AC72で開発された技術が応用され高速化している。
船体はやや細く後端が閉じていて舵が後退したことで実質的な水線長が伸びている。船首のウォーターピアサーも鋭くなり、船体にはクルーが入るピットが作られた。中央の扁平化したブームの下に半トリマラン風のフェアリングが付いている。以前はマスト下にブームと張線が露出していて波に洗われていた。
左右を接続する前の円柱状ブームは翼断面となって前進し、後ろのブームも翼断面となって後退し、前後とも後端は透明な翼になっている。前後のスパンが拡大され左右を結ぶ網も広くなっている。中央の扁平ブームは長く前に突出し、写真のようにクルーが先端まで歩いていってジェネーカーなどでもハンドリングしやすく改良されている。
AC45Fではジブの根本に行くには細い円柱状のブームに跨らなければ行けなかった。このことが日本チームがジブシートの絡みを解決するのに時間がかかった原因であろう。当初ウイングセイル艇はジブは不要といわれていたが、ジブの重要性が増している。
ラダーはティラーから小さめ舵輪(ラット)になっている。マストもより扁平で、セイルもより空力的なものが付いているようだ。水中翼の位置も前進している。
前後ブームが翼断面になり、船体の前後スペースが広くなりピットにクルーが納まることによって空気抵抗が劇的に減っているようだ。また前後のブームと翼は高速でリフトを発生する。前後ブームの翼断面化とスパンの拡大で船体の結合剛性も向上しているだろう。
印象的なのは、ラインやシート類をブームの中を通すことで、ネット上が非常にクリーンなことである。トラブルが起きたらおしまいという面もあるが、ラインが絡まったり、クルーが足を取られたりしにくくなっている。昔のレーサーでは甲板の上に迷路のようにラインやシート類が交錯していたのとは雲泥の差である。
最高速は時速80kmに達するので空力改善は効くのだろう。中央ブーム下のフェアリングや水線長の延長も効果がある。ピットで凌波性が増しクルーの待遇も改善したことで、より長距離のレースにも対応できそうだ。
水中翼が前進し舵が後退したことでピッチングが減り、船体の剛性が向上し転覆しても船体が壊れにくくなり、それらがクルーの快適性と命を守ることになる。しかし高速化は舟が曲がりにくくなることと裏表であり、マーク回航時のジャイブのハンドリングはますますトリッキーになるだろう。またクオーターリーでは40ノットを超える最高速での競り合いになる。
さて次回は、塩が詰まって冷却不良になった船のエンジンの修理について報告したい。
最近仕事部屋の掃除をしている。長年の研究活動にもそろそろ終止符を打つ年齢になったからである。そこで古い文書や記録を整理していると多くの写真が出てきた。
Webmasterは1985年にニューヨーク大学メディカルセンターの生体生理学教室(Dept Biophysics, New york Univ Medical Center)に留学した。ボスは、ワークホリックで有名なR.R.Linasであった。彼はカルシウムチャンネルなど多くの研究成果で有名だが、一つの見果てぬ夢があった。
最近なら中学生でも神経のシナプスのことを知っている。神経細胞のシナプス前膜から神経活動物質が分泌し、それがシナプス後膜のレセプターに結合し、イオンチャンネルが開いて信号が伝わる。しかし、実は中枢神経にも電気シナプスというのがある。
心臓などでは隣の細胞に直接繋がるイオンチャンネルを持っている。これは電気シナプスと呼ばれ、非常に短い時間で活動を正確に伝えることができる。シナプスの場合はシナプス間隙にあるいろいろな物質の影響を受けて時間的に確実性が無い。ネットの世界でいえば、会話用の潜時が管理された通信と、データ通信用の高速だが潜時が保証されない通信があるのと似ている。
ところでR.R.Linasの師匠はJC Ecclesでノーベル賞を抑制性シナプス電位(IPSP)の研究でとっている。彼は大学院生でその実験を担当したので、ノーベル賞をとった論文の著者として彼の名前が記されている。
彼は医学界ではめずらしいことにスペイン系で脳外科医出身である。アメリカというか世界的な学術はユダヤ系が支配していて、スペイン系というかラテン系は少数である。しかし少数派なりにネットワークが厚く強力である。もちろんイタリヤ系、ロシア系、中国系なども侮れない。出自や師弟関係が出世や予算配分に影響するのは世界中共通のことで、かれはスペイン系のために人の何倍も働いて地位を勝ち取ったのである。
そして彼が尊敬しているのが、カハール染色など多くの名前を残したスペイン人カハール(Santiago Ramon y Cajal)である。彼は1906年にシナプス説を唱えノーベル賞をとったが、彼の論争相手で多くの名前を残したイタリア人ゴルジ(Camillo Golgi)も同時にノーベル賞をとっていて、彼は神経細胞網状説を唱えていた。
網状説とは神経活動は細くなってもどこかてつながっているという説である。カハールはニューロン説をとっていたが、網状説も完全に否定してはいなかった。現在では大多数の信号はシナプスで伝えられるものの、大脳では視床、小脳では下オリーブ核などに電気シナプスが存在することが解っている。
R.R.Linasは、脳機能における電気シナプスの役割、はては脳波の起源まで興味を持ったようである。
R.R.Linasは、視床と下オリーブ核にある電気シナプスで結合した神経細胞が、脳活動のクロック源であるという。脳波の起源はいまだ定説がないが、視床から大脳に投射する活動が起源という説が有力である。R.R.Linasは、視床の神経細胞はクロックとして10Hzの倍数で自発的に活動し、それが電気シナプスを経て一定の潜時で隣の神経細胞に伝導し、そのクロックから少しずつ時間差を持って大脳のいろいろな部位に投射する活動が、脳波として見える、というのである。
これはちょうど液晶のダイナミック点灯のようである。液晶のON-OFFは、縦横マトリックスのスキャンによって実現されている。高速で液晶を撮影すると、表示が波のように広がっている様子が見える。現在のTTFではON-OFFは薄膜トランジスターで同時に行われるが、情報の伝達はやはりダイナミックに行われていて時間差はあるのだ。
彼が脳研究の雛形として目をつけたのが小脳皮質のプルキンエ細胞である。小脳は大脳より小さいが、神経細胞の数が5倍あり、均質な構造をしている。プルキンエ細胞には、前後方向に枝をもった登上繊維が分布しており、左右方向に枝をもった平行繊維が分布している。小脳は時空間的に協調運動の制御にかかわっており、キーボードをたたいたり、自転車に乗ったり練習して修得する情報が何らかの活動で記録されている。
いろいろな細胞構築を持つ大脳と違い、小脳皮質は膨大な面積のすべてが同じ構造である。小脳皮質をモデルとして脳機能を明らかにするのが彼のライフワークとなったわけだ。R.R.Linasが言うには、時間的空間的な協調運動のうち、時間要素は登上線維で、空間的な情報は平行線維で伝達され、協調運動を練習するうちにクロックに同期して必要な運動要素(多くは抑制性だが)が小脳皮質にエングラムとして記録されるのだと言う。
脳外科出身のR.R.Linasは非常にドライに方法論を考える。小脳皮質の数%以上の統計的に有意なプルキンエ細胞の活動を同時に記録すれば、小脳の時空間的制御の方法がわかるはずだ。それには多くの神経から活動を同時記録し電算機で解析すればメカニズムが解るのではないか、というのである。
そこで彼はJames M. Bowerに小脳で16チャンネルの同時記録を行えと指導した。Bowerはガラス微少電極を短く切った物を、電子顕微鏡グリッドにシリコンゴムをライニングしたものに植えて、なんとか16チャンネル(いくつかは不良であったが)記録を成功させた。なんとか前後方向に同期した活動の片鱗を記録したところで、彼はCaltechに栄転していった。
その後をまかされたのが、K. SASAKIである。煩わしいがEcclesと働いたK. SASAKIとは別人で金沢出身の日本人だ。かれは器用さと粘り強さで16チャンネルの安定した記録に成功し、やはり前後方向に同期したプルキンエ細胞の活動を報告した。
さてK. SASAKIの後にリクルートされたのがwebmasterとM. Fukudaである。M. Fukudaはもともとは理学部理論物理出身で高等数学に強みがあった。R.R.Linasの要求は当初32チャンネル、最終的には64チャンネル、96チャンネルと厳しいものであった。
多数の電極を植えるには時間がかかる。ガラス電極は中のKCLが長い準備期間に干上がるので、金属電極などを試したが、やはりガラス電極ほど鋭くなく、小脳皮質を痛めてしまう。しかしガラス電極は乾いて長く持たない。そこで研究は頓挫してしまったのだ。
まwebmasterが発見したのは、3モルKCL溶液にグリセリンを加えることであった。加えるといっても、実際はグリセリン液にKCLを入れて長時間煮たものを使った。このアイデアは1985年の不凍液ワイン事件がヒントになった。
また電極は8本ずつ作っておき冷蔵庫で保存し、それをロボットアームで植えることで64チャンネル、96チャンネルの記録に成功した。そのころの写真である。
webmasterは当時は痩せていていまより10kgほど軽かった。生意気な若者であったが、R.R.Linas、M.Sugimori、M. Fukudaの教育により学者らしくなってきたところである。やっていることは64チャンネル記録と、ラットにヒゲの動きを高速度カメラで同時記録というハードルが高いものである。
Webmasterが見つけたことは、小脳の全体の皮質のプルキンエ活動は前後方向に同期しているということである。小脳の膨大なしわを越えて大脳の5倍もある神経細胞が前後方向に同期して活動しているのだ。また活動は左右対称的に中央の虫部から時間差を持って外側に向かって活動は広がり、それもまた小脳全体がそのように同期しているというものである。
昔から電算機には同期式と非同期式がある。その点では、小脳は全体が常に同期しているのである。おそらく大脳も全体が同期しており、その場所による僅かな同期信号のズレが脳波として観察されると考えるのである。その同期信号に脳がシンクロしている間は意識が保持されるのである。なかなかダイナミックな話ではなかろうか。これに気付いたときには、神様の洋服の裾の裏がチラっと垣間見えたような気がした。
人間が行進するときには音楽があるとラクに歩ける。また歩きだす前から音楽に同期させておくと歩き出しやすい。パーキンソン病で歩くのがうまくいかないときも、音楽をかけて床にグリッドを書くとうまく歩けるようになる。音楽も前奏が無いとうまく歌えない。一方、例えばジャグラーに不規則な周期のストロボ光を当てるとうまく行かなくなる。体操で不規則なストロボ光をあてるとうまくできなくなる。これらはすべて同期の重要性を物語るものである。
さて、ラット付近の96チャンネルのアンプは、天才的技術者のRonCrankがアメリカNAVYの予算で自製した厚膜ICを使っていた。
データはNEURODATAを経営しR.R.Linasの同僚であるM.SUGIMORIが開発したPCMレコーダーに記録した。これはSONYの音楽のPCM記録装置を改造し、96chの2値データーを64kHzサンプリングで記録するものである。
再生したデーターを切り出してPDP-11に転送した。その後、kermitでVAX780に転送してデータ解析を行った。当時VAX780をシングルユーザーで使い倒すというのは、望外の贅沢であった。時代を感じさせるが、メインメモリーは4MB、写真のディスクパックはたった20MBしかない。磁気テープでさえ10MB程度の容量であった。これに比べると現在の電算機はメモリーも能力も比べ物にならないが、そのわりに無駄に資源を浪費しているような気がする。
これが解析に使ったVAX780である。単一の教室がVAX780をかかえるのは当時は異例なことで、R.R.LinasはNIHやNAVY、Appleなどから多額の研究資金を得ていた。家賃の高いNYで研究者を雇い、教室を維持していくということは大変なことで、彼は夜中まで働いて、Webmasterとのディスカッションはいつも真夜中にやっていた。
ある日我々の研究室に当時東大教授でR.R.Linasの古い友人で小脳の理論的解析が専門のMasao Itoがやってきて、我々に研究をみて驚愕した。帰国後、彼は日本の生理学は米国から10年以上遅れているとして、日本政府に働きかけて予算を獲得した。その後彼は理研の脳科学総合研究センターを作り、理研のスーパーコンピューター導入を後ろ押しした。それにはWebmasterの研究が刺激となったと個人的には思っている。
これがNYのアパートの自室で、右のパソコンはPCコンパチのEPSON EQUITYで、1200bpsのヘイズモデムを介して仕事先のVAX780の動作モニターを表示させているところである。当時のVAX780では64Khzサンプリングの5分間の96チャンネル記録のすべてのチャンネル同志の相関係数を計算するのに長時間を要していたので、実験しない日はこうやって自宅からバッチを走らせモニターしていた。
助かったのはNYの市内電話は一旦繋がったらつなぎ放題だったことだ。時にVAXが落ちるが、VAXにはシステムマネジメントのためのPDP11が内蔵されていて再起動をモデムから行うことができた。当時はFORTRANを使っていたが、通信ソフトのXTALKのVT72エミュレーションを介してスクリーンエディターを使うことができた。現在のパソコンのキーボード配列はDEC社のVT72やVT100を基本とし、それらはANSIに収載されていた。だからIBMのPCであっても、アップルであっても、キーボード配列はDECのものがベースなのである。
NYに持っていったPC9800F2ではCTERMを動作させており、VAXの監視やエディットを行っていた。この写真の数ヶ月後にはMacPlusが自宅にきて、PC9800F2は仕事場でCGに使うことになった。当時のPC9800の高解像度カラーグラフィック能力に匹敵するものはパソコン、ミニコン界を通じてなかったからである。
いまのNECからは信じられないほど当時のNECは輝いていて、多くのPCコンパチ機にNECのV20やV30が刺してあった。サムスンがICにSECと記するのはNECのような会社になりたいという願望からだと聞いている。その後NECは米国政府から目をつけられて凋落が始まるのである。
さて、これで完成したものは、下記の論文になっている。
英語論文ではわかりにくいので、そのエッセンスは、サンサーンスの交響曲3番オルガン付きのバックミュージックとともに国内発表の日本語解説付きビデオになっており、youtubeにアップしてある。長らくテープが保存されていたので痛んでいるのはご容赦いただきたい。
個人的には、Webmasterの研究を含めR.R.Linasの業績はノーベル賞に値すると思っているが、現在は脳の構造や機能より分子生物学的な方向に偏っているので、R.R.Linasが存命中に受賞する可能性は減ってきているように思う。ノーベル賞は生きていないと貰えないのである。
脳は構造があって固有の機能があり、その上で神経活動物質が演技をしているシアターのようなものである。現在の分子生物学は、料理に味の素をかけたらどうなるか、といった雰囲気でハードウェアの機能の解明がお留守になっているとWebmasterは感じている。
次に機会があれば、脳磁気の研究についても紹介したいと思っている。
今回は実践編だが、いきなりカットである。名付けて山本式ケージカット変造である。
表側ケージの上端をカットした。生贄のClarisの後デュレーラーはAMAZONで\1700と安価なので大胆にカットしてみた。さらに表裏ケージの下端もカットしたが、チェーン外れ防止のL字型の部分は残し、チェーンが外れないようにギリギリまで曲げておく。薄いホイール砥石を使ってのリューター加工3カ所に15分、削った部分の塗装乾燥と昼飯に3時間、取り付け調整に15分程度の作業である。
セットアップ後、チェーンを後ギアの最アウターにかけ、その状態でコントローラーで無理やりガイドプーリーをインナーに押しつけた状態を横から見ると、
チェーンは奥のガイドプーリーから手前の最アウターのギアへ向かっている。通常はオレンジの部分の表ケージがチェーンをインナーに押し付けるので、チェーンは最アウターのギアと急な角度で曲がり、しかも短距離で擦れ合うため変速操作が重く、変速し難い上にケージが擦れて大きな異音が出る。
ケージカットにより、チェーンはガイドプーリの途中からある程度の距離を保ちながら浅い角度で最アウターのギアに絡むため変速し易く、またケージを擦る異音も振動も出ない。チェーンをムリに曲げる度合いが少ないので、変速が軽く、しかも一挙に大きく動かすことができる。
これを後ろから見た所が、
オレンジの線のように、チェーンがインナー側に動かされたガイドプーリーから最アウターのギアまで距離を保ちながら浅い角度で絡んでいる。ケージがあるとケージによってチェーンの長く穏やかな変形が抑制され、黄色の線のようにケージ端から急な角度でギアに絡むため、チェーンが痛む上に変速し難い。変速コントローラーも重く大きく操作ができないし、罪悪感を感じるほどの異音と共にデュレーラーやチェーンにムリな力がかかる。
基本変速は後デュレーラーの働きでプーリーとギアの間だけで行われるのがベストであり、ケージはそもそも不要なのである
今回はさらに不要な部分をカットし整形することで15gの軽量化となった。ケージ部は15%の軽量化となり、特にケージの最外側がカットされるのでケージの回転慣性重量が減り動作が機敏となる。またショックでチェーンが暴れてもケージが迅速にフォローしてチェーン外れを防止する。
これだけ説明しても疑り深い人は多い思うので、ビデオを用意した。
ビデオの最初ではチェーンは最アウターのギアに掛かっている。ホイールが静止したまま無理やりコントローラでガイドローラーをインナー側に大きく(6速分)動かす。ケージがあるとケージが強くチェーンに当たるので操作は重く、またこれほど大きくインナーには動かせない。ケージが無いと軽い操作で、一気かつ大きくインナーに動かすことができる。
チェーンが理想的な角度でギアと絡むので、クランクを回すとDi2を凌ぐ速度で瞬時に6速分変速する。無理な変速をしてもチェーンがケージを擦る下品なゴリゴリ音もしない。
どうして何の役にも立たないケージがあるか疑問である。おそらくチェーンがアウター側に外れるのを危惧しての装備だと思われるが、ケージがあっても正しくリミット調整がなされていなければやはりチェーンはギヤから外れるわけで、ケージは基本的にジャマ以外何の働きもしていない。チェーンは後デュレーラーの二つのプーリーで保持されているので、リミット調整が正しければ衝撃で大きく左右に曲がり外れることは無いのである。
おそらく、昔カンパかどこかのメーカーがケージを設計し、業界は疑うことなくそれをコピーして来たのだろう。さらに変速が改善すると錯覚してケージの耳を拡大したが、実際は改悪だった。
昔は変速段数も3−5段と少なくギアも小さかったのでケージがあってもボロがでなかったが、最近はギアも大きくなり、多段変速のため一気に大きく迅速な変速が必要になってボロが露呈したのである。それをメーカーは抜本的な改善でなく、エレキでゴマかそうとした。
山本式ケージカットは、無理な変速でもリアデュレーラーが本来の働き、つまりガイドプーリーがチェーンをギアへ変速しやすい角度で導くので素早く、一気に大きな変速が可能なのである。ケージで変速させるのは邪道なのだ。
巷では、電動変速など、本来人力のみに頼るべきロードバイクにとって異質である電動メカを取り入れるメーカーの策動が盛んだが、このような改良で人力でも軽く、またDi2を凌ぐ速度で変速させることは可能だ。メーカーは同じ様な製品をクラス分けして市場を拡大することに腐心しているが、肝心なメカに対する改良を怠っている。
エレキに頼る前に変速メカニズムの根本に立ち返って見直す点があるんじゃないのか? というのがwebmasterの論点であるが、どうだろう?
依然としてチャリで通勤しているwebmasterだが、現状のリアの変速機構には大きな不満がある。
確かに変速装置は進歩していて、1段ずつの変速は迅速に行えるようになった。これは後述する仕掛けのためであるが、WebmasterがMTBに初めて乗った時には感激したものの、その後20年間全く進歩していない。
例えば、公道を後ギアをアウター(高速側)で走っている時に信号にひっかり、やむなく停止するとする。残念ながらチャリにはクラッチが無いので、停止中にはコントローラーを操作してもギアをインナー(低速側)に変速されない。
そして重いペダルを踏んで発進しながらインナー側に大きく無理やり変速しようとすると、ゴリゴリガリガリと音と金属が削れる不愉快なフィーリングとトルクのムラ、雑音、滑りあるいは振動を伴いながらいかにも苦しそうに変速するのである。この現象は改善されるどころか、むしろ悪化している印象すらある。
レースでは公道を閉鎖しているのでいきなり停止することは無いが、通常走行では、信号のため低速側に変速する間も無く停止を余儀なくされることは多い。その後のギリギリゴリゴリガチャンと不愉快な変速とは何とかならないのだろうか?
その対策を考えるのが今回の理論編だが、その前にどうやって後ギアが変速するか?を考えたい。ここではまずより難しいアウターからインナーへの変速を考える。下の写真を見て欲しい。
リアのギヤにはいくつかおきに1と2のような凹みが作ってある。2の凹みは内側が丸くえぐられていてチェーンの丸い部分が嵌り込むが、1より深くなっているので、チェーンが左奥へ斜めに落ち込む。
次に噛み合う3の歯は4の歯より幅も厚みも少なく、しかも歯の右側が手前側に斜めに向いていている。さらに、チェーンの外板5は、3の歯が入り込みやすいように端が斜めに削ってある。
チェーンの外板が歯3、歯4の奥に潜り込む様子が解るだろうか?
一方、インターからアウターへの変速はギアの直径が小さくなるのでチェーンが落ちやすい。ギアの歯にはインナー向きの歯とアウター向きの歯があって、アウター向きの歯のへこんだ部分に入り込んだチェーンの外板を次のインナー向きの歯が掬うようになっている。
このようなシカケのために、現在のギアはきちんと変速されていても何となくチリチリと振動するフィーリングが残る。これは変速のしやすさのためのシカケが原因なので致し方無いところである。
さて、後デュレーラーには上下2つのプーリーがあるが、上のプーリー(ガイドプーリー)は歯が厚くチェーンの内リンク幅よりわずか0.2mm狭いだけなので、かなりキチキチにチェーンに入り込む。ただし、内外にズレがあっても後ギアとうまくセンタリングするようにプーリー自体が僅かに内外に動く遊びが設けられている。
通常の変速ではガイドプーリーが内外に動きチェーンを次のギアに押し付けて変速する。ガイドプーリーには金属ブッシュが入っていて、チェーンを確実に押すため首を振りにくいようにできている。一方下のプーリー(テンションプーリーと称する)は上より歯が薄く、また金属ブッシュがなく左右に首を振りやすく作られている。テンションプーリーによっては回転方向が指定され歯の前側が薄く削られているものもあるが、個人的には効果は疑わしいと思っている。
大昔は上下のプーリーは同じものだったが、現在は作りわけられている。ただし、同じプーリー(例えばY5TT98020)は8速のRD2400、9速のRD-3500、10速のRD-4500とチェーンの幅が異なるにもかかわらず使われているように、幅には遊びがあってもチェーンがプーリーにかみ合っている限りは変速するのである。
プーリーにはベアリング入りもあるが遊びがないと変速性能が低下するし、シールの抵抗も発生するなど、ベアリングがあればいいという訳でもない。安物のガイドプーリーは金属ブッシュ、テンションプーリーはブッシュ無しでシール類は一切無いが、満足に給脂されなくても過酷な環境でも10年はまともに動くのである。
問題はチェーンがアウター側(高速側)にあるまま停止し、そこから発進する場合である。重いペダルに耐えかねたライダーはギヤをインナー側に大きく変速させるが、
チェーンは後デュレーラーの上アイドラーのケージ(オレンジの部分)にあたり、これがチェーンを強くギアに押し付ける。このデュレーラーはたかだか300km程度しか走っていないが、すでに削れて傷が付いている。ケージもギアもチェーンもお互いが削れてゴリゴリと不快な音と振動のフィーリングとなるのだ。
そもそも円滑な変速のためには、
1)ギアとチェーンが適切な角度で摺り合う必要があり、その角度はわりと浅めである。
2)チェーンとギアが摺り合う距離がある程度必要である。
しかしケージがあると
1)頑丈なケージはチェーンを急な角度でギアに押し付ける。
2)チェーンとギアが摺り合う距離が短いために変速し難い。
3)チェーンとケージが擦れ合い下品な異音と振動が発生する。
それを改善するには
1)ガイドプーリーからギアまでチェーンが変形できるように距離をとり、浅い角度で長く擦りあうようにする。
2)そのためには、ケージはそもそも不要ではないか?
ひょっとして大会社であるshimanoの設計がまずいのか?あるいは改良をサボっているのか? お手本のマネに縛られて思考が停止しているからか?
もしこれが簡単に改善できるとすれば、会社の面目はまる潰れである。実は、メーカーはゴリゴリをなくすためにケージに樹脂を貼ったことがあるが、改善がなくやめた過去がある。樹脂を貼ってもケージがチェーンが急に曲げ変速に要する距離が短い限りダメなのである。
どうすればゴリゴリガリガリが無くなるかは、次回の実践編で紹介することとする。(続く)
過日、CB1100に試乗したときに第二希望としてアフリカツインを予約していた。好印象だったCB1100の次にトライしたので辛目の評価となっている。
アイドリング状態での初対面だが、とにかくデカくて重い。
2335mmの全長は、もともと長めのNC700Sよりさらに14cmも長いしシート高も8cmも高い。Webmasterは身長が178cmなので今まで足つきに苦労したことがなかったが、このバイクでは両つま先立ちで心もとない。
そこでシートに細工があって簡単に2cm低くなるが、それでもNCのように両足べったりとはならない。重量も232kgとNC-700Sより21kg重く、その差は灯油缶一個以上ある。
個人的には、重量級オフローダーのコンセプトに疑問がある。人気で納車待ちが長期に及ぶとのことで、どこが良いのかを探るために試乗をお願いしたのである。
もともとはパリダカ仕様のオフローダーの流れで、ワークス車も初期はXL550R改で出力52PS、乾燥重量は160kgだった。
その後BMWが水平対抗の大型強力マシンを投入し砂漠直線で悪魔的速度を発揮するに至って、馬力が必要となった各社はバイクを大型化する。ホンダではNXR750で70PSの190kgまで大型化するが、2009年よりレギュレーションが変わり単気筒450cc以下となったので、最新のCRF450ラリーは58.5PSで150kg以下である。大型強力オフローダーはエコな時流にあっていないし、転倒や事故のリスクも高すぎたのだろう。
世界の超一流の選手が過酷なレースで使う最新のマシンが160kg以下なのに、なんでこの車が232kgもあるのか? よりパワフルで大きなオフローダーが最近ではアドベンチャーモデルとかで良く売れるから、という理由でレースなどとは完全に遊離した超大型アドベンチャーバイクなるものが横行している。
乗る前にバイクの回りを一周したのだが、気付いたことはエンジンがNCシリーズのパラレルツインの拡大版ということである。シリンダーの角度や変速器の位置が違うが、腰下はNCの発展型であることは間違い無い。今後のDCTを搭載するツインエンジンはNCをベースになるのだろう。後で調べるとNCと同様に270度クランクを使っており、鼓動感や排気音も似ている。
フレームは鋼管製セミダブルクレードルだが、組み方や溶接がどことなくNCに似ており、これが軽量、高剛性でコストダウンも両立した新時代の設計手法なのだろう。コストと格闘するメーカーの努力は理解できるが、いろいろな所から低価格NCと同じにおいがして、価格なりの高級感はあまり感じられない。
もう一つの問題が試乗車がDCT仕様であることだ。アイドリングでクラッチが切れて駆動力がなくなるので、低速Uターンなどで立ちゴケしやすいのである。バイクは基本的に後輪に駆動力なり制動力が加わっていないと安定しない。
スクーターでも同じだが、低速で小回りするにはエンジンを敢えて回してクラッチを滑らしながら後輪ブレーキを引きずって安定させる操作が必要になる。スクーターなら足付きが良いので立ちゴケには至らないが、足つきが悪い超重量級オフローダーでは不安が残る。ネット検索すると、DCT車で納車早々に立ちゴケしたユーザーは多いようである。
とりあえず、一通りDCTの設定を習い、おそるおそる走り出すこととする。
一旦走り出すとバイクも小さく感じられ、加速している間は安定している。オフローダーは着座位置が高いので前に乗用車がいても見晴らしが良い。この点は渋滞や車線変更を早く察知できるので安全だが、ハンドル幅が930mmとNCより14cmも広いのですり抜けはむつかしい。
操作は標準的なDモードで走るかぎり平和でショックも皆無である。信号のたびにギアダウンしなくても済むのは便利だが、加速では低回転域のままどんどんシフトアップされるので、大型二輪特有のトルク感やレスポンスが乏しい。キックダウン?も可能だがショックは少ないかわり反応も鈍である。
さて、あなたは穏やかで平和な走行だけの超大型オフローダーに満足できるだろうか?
そもそも大型二輪の魅力は何だろう?個人的には、低速でもトルクが太く加速が強力なことだと思う。Dモードではそういう走り方は想定されていないので、大型らしさを味わうにはMTモードを選ばなければならない。ただしMTモードでも状況によって自動的に変速する。大排気量の野蛮さはGモードでないと味わえないようにできている。
個人的にはDCTが一番マッチしているのは大型二輪のプリウスと言われるNCシリーズだと思う。短時間の試乗では、平和ながらトルク感が発揮できず、低速ではDCTのために取り回しに神経を使う大きく重いバイクという印象で終止した。安楽なNCに慣れ過ぎたせいかも知れないが、郊外のロングツーリングに連れ出せば印象が変わるのかも知れない。
個人的にオンロード/オフロード両方を楽しむなら中型のKTMモタードの方が何倍も楽しめると思った。素人ライダーがコントロール可能なオフローダーの限界は重量160kgあたりでは無いかと思う。
まともに走っている間はいいが、コースアウトやスタックした場合、この重量では自力で脱出できない。個人的には30年前にTLR200でドブに落ち、重量90kgのトライアラーでもなかなか脱出できなかった経験がある。すでにダカールラリーも400ccに小型化されているので、超大型オフローダーのコンセプトは実体から遊離している。
メーカーのイメージビデオで荒野を走っているアフリカツインはブロックパターンのタイヤを履いている。プレス向けオフロード試乗会でもブロックパターンのタイヤを履いていて、メディアのテスターはオフロードでも案外行けますよと言う。しかし新車は明らかにオンロード向けタイヤを履いており、国内にはこのサイズのブロックパターンのタイヤは無く、ホンダ販売店も供給しないらしい。
だから新車のタイヤではそもそもオフロードは走れない。何という矛盾なのだろう。イメージビデオに出てくるライダーも身長185cmはありそうな屈強な若者でジャンプを披露するが、いかにも車が重そうである。そもそもWebmasterのような貧弱なユーザーは設計の前提に無いようである。
一旦スタックしたらどうするか、とかを真面目に考えるのはムダなのだ。このバイクは、コンクリートジャングルに住んでいても、果てしない荒野をどこまでも爆走できたら素敵!との妄想向けであって、滑ることの無いスキーや、波に乗ることの無いサーフボードを積んで都会を走る車と同じと解するべきなのである。都会から脱出できなくても、人間は実現されない夢や妄想に金を出す動物なのである。
超高性能オンロードモデルの大半は一度もサーキットを走らずに廃車となるのと同様に、アフリカツインもフルパワーでオフロードを爆走することはバイクの一生で無く終わるのだろう。まかり間違って体力の無いライダーが実際にこのバイクで本物のオフロードを目指せば無事には帰って来れない。というか、まずタイヤを交換しなければオフロードの入り口でスタックするだろう。
つまり、アフリカツインはオフロードの夢を見るオンロードバイクなのである。やはり超大型豪華ハイパワー自動変速オフローダーはWebmasterには向かないということを再確認した次第である。
本題の前に報告することがある。125ccマニュアル車のEN125はとなりの市のベテランライダーにお譲りした。なんでも子供にマニュアル操作を習得させるために使うそうである。またLead100はご近所のベテランライダーにお譲りした。過去LEAD90に乗っていて欲しくなったとのこと。いずれもコスト+アルファだったのでメンテや変造した経験を買った感じだ。特にフルレストアに近いLEAD100はいい思い出である。
さて、過日にNCにETCを付けた。しかしながら、二輪用は当局のお達しにより業者に取り付けを依頼しなければいけないところが未だに気にいらないのである。
4輪用ETCは通販でセットアップ込みで安く入手できる。通常は車検証のコピーを郵送なりFAXすることでセットアップ済みのものが自宅に届く。プリウスに付けているものは10年以上前にセットアップ込み\6000で入手して自分でとりつけた物で、今でも同じ位の価格で手に入る。
業者に取り付けを依頼するにしても、ETCをセットアップ込みで\10000前後の所もある。いろいろインセが用意されているので四輪なら付ける価値は確かにある。
取り付けといっても、常時12VとアクセサリーON時12Vとアースの3本をつなぎアンテナをフロントグラスに貼るだけである。”カードが入っています”のアナウンスが不要なら、12Vの二本は一本にまとめても問題なく動作する。
しかし二輪用ETCは以前の半額(\17000-\27000)になったものの依然として四輪用の倍の価格である。装置自体は似たものだが20G耐振で防水であることが倍の値段の理由になるのか?
さらに、取り付けは当局のお達しにより指定業者に頼まなければいけない。本体を簡単にはずせないので、セットアップも同じ業者に頼むことになり、合計約\10000+の経費となる。
よって、四輪用で軽自動車登録したものを二輪に付けているユーザーは以前から非常に多い。二輪でめったに高速を利用しないWebmasterにとって、こんなものに\10000以上払う価値があるのか疑問であった。
しかし、私の周囲では以前からバイクを買ったらバイクの聖地たる阿蘇大観峰を訪れるのが慣わしであった。NCの開発に使われたミルクロード経由で大観峰に参るには高速に乗る必要があり、ETCが欲しくなったのである。
そこで大手販売店を眺めると、最も安いアンテナ別体式MSC-BE51(16,800円)+取り付けセットアップ込みで\30000弱のチャージが多い。それにNEXCOからの助成金が\10000あるので、\20000弱となるが、もう一声欲しいところである。
宣伝を見ていると、N社ではETC本体が10%オフで、三○住○カードに加入すると\3000割引のチケットが貰えるという。またそのカードで\15000以上買い物をすると半年後に\2000キャッシュバックがあるという。そうすると、最終的には\10000前後のコストなので、買ってもいい気になった。
ただし、落とし穴があった。こちらはMSC-BE51を希望したが、LEDインジケーター付きアンテナが大きく貼る場所が無いのでアンテナとLEDインジケーターが別体のMSC-BE51W(\18,500)にしろと言う。ただでさえ高いETCのLED一個のために\1700も余計に払うのはバカバカしいし、配線が増えることはトラブルの原因になるので、根気強くアンテナを貼る場所を探してMSC-BE51にして貰った。
次の落とし穴は、電源を分岐するのにホンダ純正ワイヤーが一本いるとのことで、まあこれは仕方がないだろう。電線は、イグニッションON時+12Vとアースの2本しか無いので、本来はユーザーでも簡単に取り付けられる代物なのだが。
さらに落とし穴がある。三○住○カードの合計\5000の割引の原資は、基本的にこのカードがリボルビング払い専用であることだ。幾ら使っても、毎月ミニマムペイメント額しか充当されず、残額には年率15%なるサラ金並の金利がかかる。
Webmasterの場合は別途ETCカードを用意したので、ETC代金とプラスαで\15000を消費後は三○住○カードとそのETCカードは金庫で休眠しており、キャッシュバック後は解約の予定である。
で作業である。NCはネイキッド仕様ながらタンク部分がトランクとなっているので樹脂製の外装部品を多く剥ぎとる必要がある。以前エアクリーナー入り口を拡大したときに結構手間がかかった記憶がある。そこで個人的にUSB配線を追加したときには外装は剥がずに済ませた。
作業員はマニュアル通り丁寧に要らないところまで外装を剥いでいたが、NCは数も多くETCのスペースも予め確保されているので手間はかからない方だと言う。ハーレーなどは設置スペースが無いので厄介らしい。
作業には待ちがあったので店の中を一回り観ることができた。この手の店にはあまり来ないのだが、以前は殆どがぼったくり価格だったものが、通販が増えて二輪ユーザーの金銭感覚が成長したせいか、かなりまともな価格になっている。ウェア類はアパレルショップよりむしろ安い印象がある。
しかしどうしても納得が行かないのが社外サスペンションの価格である。あのオー○ンズのサスは前後を交換すると30万近くもして、4輪向けより高いのである。品質が良くて分解修理できて細かく調節できる価値は解るが高すぎないか?4輪用ダンパーの工場納入価格は一本\1000程度と言われている。
一方同じオイルを使う部品のなかで、一流品と目されるブレンボのキャリパー類は割と安い。削り出す作る手間や精密性を考えると、やはりオー○ンズは高すぎると思う。他の部品でも通販より安いものがけっこうあるのは意外であった。
組み終わると、ゲートが開かないときどうするか、などの注意が一通りあった。さっそく都市高速で試したところ、LEDインジケーターにまったく愛想が無いことが解った。四輪用ETCではアニメの声優がいろいろ話しかけるのとはえらい違いである。
インジケーターはETCカードが入っていれば故障が無い限り点灯したままだ。ETCのゲートに入っても出ても点灯したままで何の変化も無いのである。
それはそれで設計者の考えなのだろうが、ゲートをくぐるときに四輪用のように音が鳴らないのでせめて”OKインジケーター”位は欲しい。私が設計者だったら最低でも2色LED位は使うだろう。設計者はおそらく頑固なミニマリストなのだろう。
高速に上がる時にETCは便利であるが、二輪は混雑した市街地でも四輪より早く目的地に到着するので、高速はあまり使われないままである。それよりも都市部では大型二輪が目的地で駐車できるかどうかリスクがあるので、どうしてもアドレスV125の出番が多くなるのは致し方ない所だ。
さて実践である。まずリアのスプロケカセット交換である。
元のCS-HG50-8Sに比べCS-HG500-10は軽め孔が多数あるが28Tのギアが効いて10g程度重いようだ。ギア幅を計ると8Sより10sは1mm薄いのは想定通りである。
以前のshimanoハブでは1mmシムが無いと十分に固定できなかったが、今回のハブではシムを入れるとリングが固定できなかった。このハブは8速から10速までシム無しで固定できるようである。
元のチェーンとCN-4601を吊って長さを比べると8速は108Lだった。スプロケが26Tから28Tになることを考えプラス2Lの110Lとした。KMC製ミッシングリンクは便利な代物だが、玄人筋では評判が悪いらしい。
後輪とチェーンを戻し後デュレーラーの内外リミットとワイヤー長を調節すると、8速コントローラーのままも中間のギアがいくつか飛ぶものの、最インナーと最アウターは良好に動作することが確認できた。はやり後デュレーラーはクラリスからティアグラまで基本動作が同じという予想は正しいようである。
チェーンは110Lで後デュレーラーを最アウターとしたときに2つのアイドラが地面とほぼ直角になっている。ただしshimanoによれば、チェーンはベストとされている調整位置よりも僅かに短い方がベターとのことで、108Lで良かったのかもしれない。
とりあえず一安心したところで、STIコントローラーの交換である。
変速とブレーキのワイヤーを抜き、バーテープを剥ぐ。次に左コントローラーを右と同じ位置に固定し、ワイヤーにモリブデングリースを塗布してを元通りに設置しバーテープを巻けばOKである。
問題は山本式ドロップハンドル補助コンバインドブレーキシステムへの影響である。
元のMicroshiftコントローラーはブレーキと2本の変速レバーが独立しているが、ST4600はブレーキレバーと変速が兼用である。実際には補助ブレーキを引っ張っても変速には影響が無かった。ST4600はブレーキ中は変速し難い設計のようだ。
独自調査で、前デュレーラーのケージ幅はクラリス、ソラが14mmで、ティアグラ、105は11mm(樹脂ライナーあり)とほぼチェーン幅の2倍に設定されていることが解った。ケージの有効幅が8速と9速が同じ、10速と11速が同じとはshimanoにしてはいい加減な設計である。しかもプレスの戻り具合なのか、shimanoにしては高級クラスであってもケージの歪み具合や寸法に個体差(〜0.5mm)が見受けられた。
前ディレーラーは原始的にチェーンを左右に押しのけるだけなので、ケージの絶対的精度はあまり必要無いというのがshimanoの綿密なリサーチの結果なのだろう。半世紀進歩していないシカケなので、個人的にはケージでなくプーリーで変速する前デュレーラーがあってもいいような気がする。
前デュレーラーのケージ外側の中央付近の幅をペンチで2mm潰してみたところ一発で変速するようになったものの、前後デュレーラーをタスキ掛けにしたときに調整しても若干こすりが残るようだった。
タスキがけは長く使うことは無いのでこのままでもいいのだが、元のサイズに戻してインナーへは変速ボタン2回プッシュで使うこととした。実際には1回プッシュだけでも2枚のギア間に落ちることは無く、トルクをかけるときちんと変速する。リアギアがワイド化したために前を変速する機会は減るが、週一回登る近くの山に極坂があるので使えることは大事である。
後輪を脱着したのでリアブレーキの遊びを調整したら、片方のシューが僅かに引きずっていたことが解った。シューとリムの間に厚紙を挟んでキャリパー全体の固定ネジを調節した。前輪はデュラエースのシューに交換した際に調節して十分な制動力を得ているが、リアブレーキに目が届いていなかったのである。非純正のブレーキの精度や剛性はshimano製品より劣るが、シューを交換し十分に遊び調節すれば実用上問題の無いレベルまで持っていくことは可能である。
今回の変造で、実用条件での重さはスタンド、鍵x2、ライト類を含めて殆ど変化はなかった。スプロケカセットの重量増はチェーンの重量減で相殺されたようである。そもそも今回のトライでは重量を軽くすることはまったく目的としていない。
ポタリングしてみると、アウターに増速する時にプッシュの数が増えるが、インナーに大きく振ると一度に3段変速できるので段数が増えてもなんとか耐えられる。
慣れの問題もあるのであろうが、やはりポタリングにはめんどくさくなった感じがある。ただしインナーの26Tから28Tへの変化は大きく、かなりの坂から発進で頼りになるので前ギアの変速機会は減っている。変速ピッチが狭く、少ないチェーンの移動で変速できるせいか、以前より素早く変速される印象があるがプラセーボかも知れない。
ビデオのように変速でもショックは無く非常に迅速である。
ただし10速化して時間がたつと変造したことも忘れているし、意識も老齢化のせいか希薄である。日常使いではギアの中央付近しか使わないし、ギアの刻みが小さくなった印象はあるが、さりとて8速でも特に不自由は無いものである。
今回の結論として8速のクラリスの後デュレーラーのままでの10速化は、スプロケカセット、チェーン、コントローラーの交換だけで可能である。変速時のチェーンの動きが小さいせいか変速は迅速でショックが少ない。なお前デュレーラーには精度はあまり必要では無いことも解った。
当然ながら10速化はクラリスの前身の2200シリーズ、2300シリーズでも可能である。
同様に、ソラ9速からの10速化もスプロケットカセット、チェーン、コントローラーの交換で可能である。もともとソラのリアデュレーラーはクライスと構造、材質とも殆ど同じものである。11速化にはこれにリアハブあるいは全組ホイールの交換が必要になるが、チェーン、スプロケ等の寿命が短くなるのが通勤通学用としては問題だろう。
ターニー7速からの10速化もスプロケットカセット、チェーン、コントローラーの交換で可能だが、7速のハブはボス式のものが多いので全組ホイールが必要となる。ただしターニークラスはフレームなど他のパーツの品質も低い場合があるので、そのあたりを見極めないと費用対効果が悪くなる。
変速段数が増えると市内走行では信号で止まるたびに変速が煩雑になる。ただしリア28T化の効果は大きいので、坂が多い使用条件では8速のまま後ギアだけを交換する価値はあるかも知れない。いずれにせよ、結論としてはクラリスクラスのロードバイクを10速化することは簡単だが、そうするメリットはあまり大きく無いというである。
今回の交換では重量を軽くすることは目的としていない。軽くしたいのであれば、まずホイール、次にフォーク、ギアクランクを交換すべきであろう。デュレーラーの重さはどのクラスでも大した差はなく、それより重量に効く部品が他にあるからだ。そもそも高級コンポのメリットは性能や精度より軽量であることだと思っている。
そもそもギアの変速はデュレーラーはチェーンを横に押しつけるだけで、変速するのはギヤとチェーンの仕事である。チェーンが這い上がり易いようなギアの歯の形状やえぐり、ピンなどが技術のカナメであって、デュレーラーなんかたいした仕事はやっておらず、技術的にもここ30年ほどは部品が一部樹脂化した以外に何の進歩も無いのである。
クラリスでも、あるいはターニーでみ10速スプロケをドライブできることぐらいは殆どの自転車屋のオヤジは知っている。同時にメカに詳しい素人でもうすうす気付いているだろう。しかし、マニア(他人)の目が気になることと高級コンポは軽いことで諦めて使っているのだろう。
依然として多くのメカに詳しくないロードバイクマニアには理解して貰えないと思うが、今回のトライはshimanoのクラス分けが恣意的で商売上の都合で決まっていることを確認するのが目的であり、その目的は達成したと思っている。
クラリスコンポのロードバイクを買ってからはチャリ通勤となりダイエットや健康に役立っている。ロードバイクはころがり抵抗が小さく走るのはラクだが乗り心地が悪いので、Dペルギャンガーのシートポストサスを組み込んでいる。
他に、STXコンポにTangeフレームとママチャリ用サドルをつけてタイヤをスリック化した3x7速のプジョーと、フルサスでタイヤをスリック化したレボシフトの3x7速のMTBルック車もある。そして通勤に一番ラクなのは圧倒的にフルサスのMTBルック車である。
フルサス車は段差を意識しないで走れるし乗り心地が良い。アルミフレームで15kg弱とママチャリより軽い上に前後とも変速の節度が非常に良いのだ。一方、STXコンポ車はフレームが固く、特に前デュレーラーの節度が新車の時から悪い。しかも変速コントローラー(ラピッドファイヤー)は動作が不確実で、頻繁に油切れで不調になるなど品質面でも問題があった。安価なレボシフトで無意識に行われるオーバーシュート操作による迅速な変速がSTXのラピッドファイアーではうまく行われていなかった。二車の価格差は10倍なのにSTX車の変速性能は明らかにルック車のターニーより劣っていたのである。
20年間格闘してわかったことは、STXの前デュレーラーはジオメトリー的に純正の小径ギヤクランクとの相性が悪い事であった。ギアとケージの距離を小さめにとるとケージ後端がチェーンステーと当たってしまう。さらに前デュレーラーのパンタグラフのスパンが短く、頑強なターニーより剛性が劣っている。STXコンポはその後無印Dioleになったが、名前が消失するにはそれなりの理由があったのだろう。
それ以来、Webmasterのshimanoのコンポを見る目は厳しくなっている。前後デュレーラー合わせて3千円しないターニーでも十分な精度を持つことは十分尊敬に値するが、高いコンポほど実用品としては費用対効果が低くなる。精度に関しても、高いコンポが優れていると言うよりは、基本的にshimanoは全てのクラスで同等以上の精度を確保していると言うべきであろう
高いコンポほど強度や耐久性が優れるという人もいるがウソだと思っている。ブラケットボディーやプレートボディーが樹脂だと剛性は低くなるが、デュラエースのプレートボディーは樹脂である。ターニーのママチャリが赤錆状態で10年間日々の実用に耐えるように、デュレーラーにはそもそも大きな力は加わらないのである。高いコンポで良い点といえば重量だけである。
以前にも報告したがコンポの重量、材質、寸法などを調査し、また実際に採寸もしてみた。
これによると、クラリス、ソラ、ティアグラの後デュレーラーは重量的には殆ど差がなく形状も殆ど同じである。一方、105から上のクラスは価格の対数値に比例して軽くなっていくが、昔のように価格と重量、材質の関係が単純では無い。昔はデュレーラーの材質は廉価版はスチール+樹脂製で、高級品はアルミになっていた。最近は廉価版と最高級グレードのプレートボディが樹脂製であり、中間クラスがアルミとなっている。ずるいことに、最近のshimanoはパーツの重量や材質を非公表としていている。
今回は前デュレーラーのケージ幅を加えて再掲載している。段数が増えるにつれてスプロケのピッチは減少するが、もっとも大事なチェーンのトルクを伝える部分(内リンク幅)は殆ど変わっていない。実際に多くのメーカーの普及品ではギヤクランクは8速から10速まで同じものを使っている。
さらに、変速を実行させる後デュレーラーのアイドラーは変速段数にかかわらず同じ物である。例えば8速のClarisのアイドラーセットY5TT98020は9速のsora(RD3500)、また10速のTiagra(RD4500)でも使われている。
最近の上位コンポは11速化しているが、チェーンの内リンク幅があまり変化していないのに対し外リンク幅が小さくなっているためチェーンの寿命は10速用の半分と言われている。11速以上はホイールハブのスプライン幅が変わり、デュレーラーのワイヤーの引き幅と動きの比率が変わるなど、多くのパーツが10速以下と仕様が異なる(注意:10速もティアグラ4700シリーズから比率が変わっている))。
このため、クラリスクラスを最小限のパーツで変造するには10速化が適しているようだ。もともと11速は無理をして作った規格なので、長期間維持する実用車には向かない。
というわけで、今回は前後デュレーラーをクラリスのまま10速化することとした。もちろん、どのクラリスクラスのバイクでも10速化が可能とは限らない。また、10速化はポタリングや通勤通学には変速が煩雑になるなどのデメリットもある。また今回のトライでは重量を軽くすることは目的としていない。
今回は、shimanoのコンポクラスの差別戦略がどうなっているかをクラリスの10速化を通じて実証するのが目的である。ティアグラの後デュレーラーは\3000台で売っているので、敢えてクラリスに拘る必要は無いのだが、重量も性能も大して変わらないので手を汚してまで?交換するメリットも無いと考える。
とは言っても、最低限の部品は必要だ。今回手当したのは基本的にティアグラクラスのパーツである。
1)10速用スプロケカセット(shimano CS-HG500-10 10S 12-28T 2345791358 )amazon価格 ¥ 2,924
CS-4600、CS-5700やCS-6700も使える。フロント52T/42T、リアCS-HG50-8sの13-26Tだったので少しワイドにして前の変速無しで広い範囲に対応させる狙いである。
2)10速用チェーン(shimanoCN-4601 10S(ROAD) )amazon価格 ¥ 2,336
CN4601、CN-6701でも良いが、重さ価格とも殆ど同じであり仕上げが違うだけという説がある。元々はKMCのチェーンがついていたが動きが固いリンクもあり、やはりshimano製の品質は優れている。
3)10速チェーン用ミッシングリンク(KMC CL559R 2セット入)amazon価格 ¥ 850
玄人筋に評判の悪いミッシングリンクだが長さを調節する可能性を考えて使ってみた。最終的には100Lとなった。
4)10速用STIコントローラー(shimanoST4600左右) 中古ヤフオク \5000 今回は右のみ使用
元々のMicroshiftと変速ワイヤーの取り回しが同じでギアインジケーターが付いている点でベターである。ST4700は引き幅が異なるので使えない(デュレーラー側で改造が必要)。
この作戦のキモは、シマノの7速から10速までの変速ワイヤーの引き幅と後デュレーラーの動き幅の比率が同じなので(注意:10速はTiagra4700シリーズから比率が変わっている)、同じ後デュレーラーが使えるということである。ギヤスプロケの包括線もコンポのクラスにかかわらず同一なので、後デュレーラーの動作軌跡も同一である。ただしシフトに要するワイヤー引き幅のピッチが小さくなるので10速用のSTIコントローラーは必要になる。
なお段数が同じであれば、カンパとシマノのコントローラーと後デュレーラーを混ぜて使うことは良く行われている。デュレーラーの変速ワイヤーの固定位置をずらせばパンタグラフのアーム比が変わるので変速ピッチを合わせることが可能である。俗にシマニョーロとか言われている手法である。
工具としては、
1)PWT フリーホイールリムーバー/フリーホイールチューナーセット amazon価格 ¥ 1,610
2)チェーン切り DIYショップ価格 \1,310
計画ではパーツ代が1万円前後で10速化できることになるが、さて、うまく行くだろうか(続く)
ホンダのサイトには、CB1100エンジニアトークというページがある。ここには、エンジンの開発の油冷、造形美、出力特性、車体、車輪などについて担当エンジニアのインタビューが載っている。
そのトリは開発責任者の福永博文氏のインタビューである。彼が言うには、
”私のような50歳代の中年オヤジが“乗りたい”と思うようなバイクが、なかなかないと感じていた”、”ゆったりと周囲を見渡しながら、じわっと景色を楽しみながら走りたい”、”冷却性を考えた風通しの良さもありましたが、シリンダーヘッドの見た目を良くしたいがために、開発途中でバルブの挟み角を広げた経緯があります”
なんだそうである。ちなみにバルブの挾み角は1気筒2バルブエンジンでは少しでも大きなバルブを使うために開き気味にするが、1気筒4バルブエンジンでは挾み角を狭くしたほうが燃焼室がコンパクトになって熱効率的に有利というのが最近のセオリーのようである。福永氏は長らくCBR900/1000RRというパフォーマンスバイクを担当されていたので、レトロ志向のCB1100を担当されるとは若干の違和感があるのだが、何が彼を変えたのだろうか?
彼は、どんなにすごいバイクを作っても売れなくて、客はレトロなバイクに走ってしまう、と発言されていたようである。また、このバイクは阿蘇を徹底的に走り込んで煮詰めた、との発言もあった。実際に、CB1100エンジニアトークには、(写真はホンダサイトへのリンク)
気持ち良くミルクロードを走る風景まで載っている。そこで、Webmasterも熊本製作所からミルクロードをNCで走ってみて、開発者がどういう考えで熟成したのかを探ることとした。実際に走ってみると、その発言の意味が良く理解できたのである。
過日熊本市内から大津の熊本製作所を経由してミルクロードに入った。現在阿蘇に向かう主要な国道57号線は崩落で通行止になっているので、多くの車がミルクロード経由で阿蘇に向かっていた。しかし、かなりの交通量にしては60-70kmで順調に流れている。
その理由は簡単で、熊本製作所からバイクの聖地である大観峰まで40分間に信号がたった3カ所しか無いのである。
GoogleMapは行程を32.8kmを44分(平均速度45km/h)と見積もっているが、実際はもう少し速度が出る。最初は森林のなかの、その後は日本ではあまり見かけない阿蘇外輪山の頂上付近の高原の360度パノラマのくねった道を気持ちよく走れるのである。さらに阿蘇は平地より気温が低いので、空冷バイクでも問題無いであろう。
熊本製作所から40分でバイクの聖地の大観峰まで試走でき、さらに多くの温泉がある久住や小国を経由して別府まで繋がっている。実に恵まれた開発環境である。ホンダから「阿蘇」と名付けたバイクが発売されるというウワサがかなり以前からあるほどに思い入れのある開発環境なのだろう。
そういえば、NCシリーズも熊本製作所で開発、製造されていて、同様にこの行程で煮詰められたらしい。Webmasterも、また遺伝子に遠い記憶があるのかも知れないNCもミルクロードを気持ちよく走っての燃費は40km/Lを記録し、高速を含む全行程でも35km/L以上を記録した。CB1100もミルクロードではかなりの好燃費であろうから、CB1100が空冷で燃料タンクが小さ目なのも開発環境を考えると納得が行く。
ただし、ここで残念なことを書かなければいけない。
バイクの聖地である大観峰は休日にはバイクが溢れるほどやって来て、旧車も多い。地震の影響なのか、当日は50台程度しかバイクがいなかったが、ほぼノーマルな個体から激しくチューンされた個体まで10台位のZ1がいた。なんと世にも珍しい6気筒のCBX1000が3台もいたのにCB750FOURは一台もおらず、僅かにCB1100を1台見かけただけであった。やはり旧車の人気には見映えが効くのだろう。
さらに、大観峰へ向かう途中で数台のZ1とすれ違ったし、帰りににも別の数台のZ1とすれ違った。バイクの聖地である大観峰はまるでZ1の巣なのであった。
全国にはバイクの聖地と呼ばれる観光地がいくつかあるが、そこにも多数のZ1が出没するのであろう。現時点で実働可能な旧車の中ではZ1は一大勢力であり、あたかも世界中のZ1が日本に集まっているかのようである。
Z1が発売されていたのはWebmasterが中高生のころで、らっきょうのようにスリムな朱色のタンク、前後の白黒カムカバーが開いたフィンの美しいエンジン、空気をキャブに効率良く送りそうなサイドカバー、ダックテールのリアカウル、すっと長いフロントサスなど、いつみても格好が良いバイクである。引退して資金と時間に余裕ができた団塊の世代が欲しくなるのもムリが無い。
意外やKATANAは見かけなかった。KATANAの発売が81年であり1972年発売のZ1と10年ほどタイムラグがあるので、KATANAにあこがれて育った世代が引退を迎えるころに波が来るのだろう。個人的には79年発売のCB750-Fのタンクとサイドカバーが繋がったデザインが好きだったのでCB1100にも採用して欲しかったが、CB750-Fの波が来るにもまだ若干の時間を要するのだろう。
いずれにせよ、ホンダの開発部隊が開発中のバイクを駆ってミルクロードに試走に行けば、毎回のように必ず大量のZ1と遭遇したハズである。開発部隊には、Z1に乗っている年寄りライダーにCB1100も買って欲しいと思った人もいたかも知れない。
その経験が、CB1100の特にエンジンのヘッドまわりが、CB750kよりはライバルのZ1に似ている原因の一つでは無いかとWebmasterは邪推しているのだが、いかがであろうか?
国土交通省は2015年1月22日に2輪車にアンチロックブレーキシステム(ABS)もしくはコンバインドブレーキシステム(CBS、前後2輪にブレーキがかかる)を義務づける法令改正を公布・施行した。今後二輪(125cc超)にはABS、原付二種(排気量50cc超125cc以下)にABSまたはCBSが義務づけられる。
ホンダはCBSをかなり以前から全てのスクーターに搭載しており、我が家のリード100にも付いている位なのでコストアップは殆ど無いが、二輪はABSによる2,3万円のコストアップは避けられない。適用は新型が2018年(平成30年)10月1日以降、継続生産車は2021年(平成33年)10月1日以降だそうである。
リード100のCBSは釣り合いリンクを使ったもので、左手操作で前後にブレーキがかかるが、今後は右手ブレーキに組み込まれることになるのだろう。個人的には250ccクラスはこれでもいいような気がする。
さて、いままでのロードバイクの費用対効果的解析でポタリング用ならClarisコンポクラスで済まし、真面目に走るなら105コンポクラスを買うという2つのチョイスが効果的だと解った。そこでネットを漁ったところClarisコンポの安いものを見つけたので入手した。
気になるのが乗り心地だが、空気圧7barではTANGEフレームに26x1.5のスリックを履かせたMTB改造クロスバイクよりも良好で、おそらくフレーム剛性がMTBより低いことによるのだろう。しかし8bar入れるとバイクは跳ねるようになる。走行抵抗は4kg□入れたスリックより明らかに長く空走する。やはり長距離ならこの方が楽だろう。
問題はドロップハンドルである。Webmasterの脚力では大半はポタリングでハンドルの上を握るのが関の山だが、この状態だとブレーキをかけるのに時間がかかる。
そこで紹介するのが山本式ドロップハンドル補助コンバインドブレーキシステムである。このシステムはポタリング姿勢で前後のブレーキを一定の割合で効かせるCBS的で高度なシカケである。
写真を見れば全てわかると思うが、8.5mmφの編みロープを使用しSTIレバーの先端付近に二回巻きつけ縛ってある。断端と縛り目はライターで炙って溶着している。
左右ちょうど良い長さに設定し、ステムにゴムでひっぱってある。ロープの長さは試行錯誤の結果、ステムから5cm付近まで来る位が具合がいい。角度は写真を参考にして欲しい。すでにあったロープなのでコストはタダ、施行時間は10分というところだ。ロードバイク乗りが重要視する重量もわずか5gと理想的である。
使用法は説明するまでも無いが、ハンドルに手をかけてロープを引っ張る。右手だけあるいは左手だけでも使えるし、持つ場所によって前後のブレーキレシオをコントロールできる。右側のSTIレバーに近いほど前輪のブレーキトルクが強くなる。前後調節式とは最新式のレースマシンのようでもある。ブラケットポジションより若干ブレーキの効きが甘いが、ポタリングポジションではさほど速度を出さないのでちょうど良い具合である。
STIへの編みロープ固定部分はロープが柔らかいので操作の邪魔にはならない。見かけを気にする人なら黒いロープを使えばもともとブレーキや変速のワイヤーが飛び交っている部分なので不自然でなく美的にも耐えられると思う。
この方法はWebmasterが高校生の頃に使っていた方法で、これがオリジナルかどうかは自信が無いが、少なくとも現在はすたれているようなので、ぜひ試されていいのではないかと思う。
やはりサイクリングも安全第一が重要である。
MTBをクロスバイク化して楽しんでいるwebmasterだが、最近やたらとロードバイクが自宅周辺を多く走っていて、そのユーザーは若年層よりは中高年層が多い。そんな時代に育った中高年が健康対策をかねてロードバイクに戻っているのだろう。この世代はご近所と同じグレードのものを揃える性癖がある。
最近のバブル以降のデフレ世代は、男子でもママチャリに乗っていても気にしない。チャリはチャリと割り切っており、高価なチャリに金を投じるユーザーは少数のようである。安価ながら一定の品質を持ったアジア製品が溢れていて、スーパーでは常に1万円+αで拡販されていることもあるだろう。
Webmasterもロードモデルも気になるが、細いタイヤとフレームがネックだと考えている。WebmasterはBS社のスポーツ車で通学を含め朝から晩まで走り回っていたが、ある日前車軸が疲労骨折した。修理した自転車屋が「スポーツ車は強度が低いんで悪路走ると壊れるものだ」と言ったことが固着していてロードバイクに手が出せないでいる。
過日近くの大手スポーツショップに行ったところ、自転車売場は10年前は殆どがMTBだったが今はクロスバイクが多く、ロードバイクも高級品を中心に多くの品揃えがあった。売れ筋のGiant製はほぼ全車種が展示されており、コンポがClarisクラスのDefy4が大売り出し中であった。
店員にロードバイクの売れ筋を聞くと、105コンポを積んだクラスが人気で、あとはClarisクラスがちょぼちょぼ出るとの事である。Clarisクラスと105クラスでは価格が倍も違うが重さは1kgしか違わないので考える所である。この程度の重量差は体重や装備品によって埋まるからだ。
彼が言うには、ポタリングならClarisクラスで十分だが、一生で初めて買うロードバイクなら後悔の無いように105クラスをお勧めするそうである。特に坂を登る時は段の刻みが細かいほうが体力が無いユーザーにも助けになるとも言う。高度成長時代を生き抜いた中高年には105クラスであっても安く見えるようで「いつかはクラウン」的なメンタリティーも働くのだろう。
彼らは105クラスならパーツを変えながら長く使えると言うが、おそらくそうはならないだろう。多くのユーザーは一度乗れば満足してしまうが、ハマるユーザーは、どの道より高価なアルテグラやデュラエース、カーボンフレームが欲しくなって買い換えるからだ。チャリには車検も税金も無いのでスペースさえ許せば何台でも維持できるからである。
さて、この業界では高いコンポほど変速段数が増えるものの重量は軽いのが常識である。前回の、
□ロードバイクの重量と価格の関係のナゾ(どのクラスがオトクか?編)
でも重量ー価格帯の分布が15万円前後の105クラスで大きく二つに分かれていた。そこで、今回はコンポだけに絞って同様の解析を試みた
対象はShimano社と、そのコンパチを作っているMicroshift社のコンポを中心に高級ブランドを加えてクランク、フロントとリアのデュレーーラーの重量をグラフ化してみた。ブランドの軸は価格で対数化していないが、おおむね対数的な並びになっている。変速は前2段でギアの歯数はコンパクトに揃えてある。microshift社はクランクを作っていないので、同クラスのshimano社の製品重量で補填した。変速段数は青色で10倍の値を示している。
コンポで一番重いのはクランクだが、105クラス未満ではあまり差がない。これはアルミの加工技術が進歩して廉価版でも軽く作れるようになったからだ。しかしその上のクラスでは確実に軽くなっている。
もともと軽いデュレーラーの重量差は小さい。高級版はアルミやGFRPを使用しているが、廉価版も樹脂で軽量化されているからだ。リアはTurneyはブラケットボディ(フレームに固定する部分)とプレートボディ(2個のプーリーを固定する部分)が樹脂だが、Claris以上はブラケットボディがアルミとなり、Tiagra以上はプレートボディがアルミだが、Urtegra以上はプレートボディはGFRPになる。
樹脂は強度があっても剛性が低いので変速が粘る印象がでる。初期のTouney TYはオールスティールだったので変速は迅速だったが、重く、またBテンション調節が無かった。しかし錆び錆びのガタガタになっても丈夫なので車体寿命と同じ位長持ちしていた。基本的にリアディレーラーは変化幅さえあれば段数はあまり関係なく、原理的にはTourneyのディレーラーを105のスプロケットに付けることも可能である。
フロントも段数が多くなるとチェーンガードの幅が狭くなるだけである。原理的にはターニーのフロントディレーラーのチェーンガイドを狭くする(具体的には中央付近をペンチで絞る)だけで、105コンポのフロントに使うことも可能である。当然ながらワイヤーの引き幅とピッチが異なるのでシフターは交換する必要がある。基本的にshimanoのリアディレーラー(7-10速)はワイヤーを1mm引くと2mmIN/OUT方向に動くことになっている。
基本的にコンポは105クラス未満はあまり重量差が無く、105クラスからはアルミが増えて値段の対数に比例して軽くなる。段数によってグレードが細かく分けられているが、段数を規定するのはカセットであってリアデュレーラーでは無いのでキャパとストロークさえ合えば段数が違っていても使える。
グレードでの重量差が小さいことが原因であろうが、Shimanoは105クラス未満のカタログに重量を記載しなくなっている。重量命のこの業界においては信義にもとる行為ではなかろうか。非公開の重量は世界中の通販サイトでの記述から数字を拾っている。
shimanoのスプロケットやチェーンの規格は下記の通りで、7速から11速までのチェーンの内リンク幅があまり変わっていないことが解る。
ClarisやSoraクラスでは前後のデュレーラーを合わせても数千円にしかならない。一方105クラス以上は前後デュレーラーで数万円するなど価格には10倍以上の差がつく。さらに廉価版のTourneyは前後デュレーラーを合わせて千円以下で入手できるので、ハイエンドとの価格差は実に100倍である。コストにそれほどの差があるとは思えないので、Shimano社は精度の高い普及品を大量に安価で提供する一方、高価な製品のユーザーから費用を回収していると考えられる。
ちなみにTourneyはShimanoの前身の高木製作所ではハイエンドのクレーンに継ぐオールアルミの中級品だった。多く見かける鉄板プレスのTourney TYシリーズはLarkシリーズが前身である。高級版とはBテンション調整が無い点で区別されていたが現行品には装備されている。Tourneyは転倒で壊れないように特に強化されていて、上級品に無いワイヤープーリーを持つなど、重量を無視して機能性と耐久性の点だけから見ればShimanoで一番タフ?あるいは高級?なディレーラーかも知れない。
このように、前回の車重と価格の関係と同様にコンポについても105クラスを境に2群に分かれる。105未満のクラスではコンポの重量はあまり車重に響かないが、105クラスからは確実に軽くなるものの、それに投じる金額は対数的に増えるである。
というわけで、販売員が言ったことは一面の真実を伝えている。
つまり、金を払いたくなければ数万円のClarisクラスで済まし、金を投じて良いなら105クラスを買うべきで、その中間のクラスは中途半端で投資効率が良くない。
それより高価なモデルは好みや使用目的によって車種が細分化されるので、まず105クラスに乗ってから好みに応じて選べばいいようである。
文鎮からグローバルモデルMicromaxA110 CANVAS2に化けたPANDAが、なぜか0simではネットワークに接続しないのである。正確に言うと、SIMも認識しDOCOMOネットワークも見えているがコネクトしない。
しかし、これは以前のセルスタンバイ問題と根が同じことに気づいた。セルスタンバイ問題とは、データ用SIMでセルスタンバイが高率になり電池が早く消耗する問題である。他にグローバルモデルでもデータ用SIMが接続しない、あるいは接続するがアンテナピクトが立たないなど、端末によっていろいろな症状が出た。
セルスタンバイ問題と同様にグローバルモデルのCANVAS2がネットワークを認識しない理由は、早い話0simにSMSサービス(ショートメール)が付いてなかったからである。世界的にはデータ専用SIMにはSMSサービスが付いているのが常識で、欧米のユーザーはSMSで済ますことが多いのである。メアドがわからなくても電話番号でメールが打てるのは便利だ。
端末は常に基地局との間で位置登録などのためにハンドシェークを繰り返している。その端末が移動していないと判断されると電池節約のためにその頻度は落とされるが、そのハンドシェークの空き部分を利用したのがSMSである。
パケットのサイズに限りがあるため、当初は文字数がアルファベットで70文字程度で、今は140文字程度まで拡張されている。ハンドシェークの空白を利用しているのでプッシュによりリアルタイムで伝えられる。
我が国でSMSが普及しない理由はいろいろ考えられるが、漢字が2バイトを消費するため、当初は漢字で35文字程度、現在でも70文字程度しか使えないことが原因であろう。日本人的に時候の挨拶などを入れると用件の前にリミットになってしまうのである。
そもそも、3Gでも(回線交換式の通話+SMS)が本体であり、それに帯域保証の無いモバイル(パケット)通信がオマケとして付属している扱いなので、端末によってモバイル通信の扱いが違うのだ。つまり(会話+SMS)の機能がなくても、モバイル通信のみを許容する端末とそうで無い端末がある。
セルスタンバイが問題となる端末は、モバイル通信のみ使用しても(会話+SMS)のサービスを探すために頻繁に基地局とハンドシェークして電池が消耗するのである。
現在の端末も基本的にダイヤルや電話番号を管理するNCU(網制御装置)とモデムからできている。ちょっと前までもパソコンがNCUの役目を果たして有線モデムを制御していた。ブロードバンド普及前は、ユーザーはみんなモデムで通信していた。一旦モデムがコネクトするとIP電話も可能であり、Webmasterは半二重9600bpsのモデムでNetscape付属のIP電話や創世記のSkypeなどを使っていたことがある。
当時のモデムはヘイズのスマートモデムのATコマンドを拡張して高速プロトコールの制御をしていた。同様に、殆どの携帯もPHSもNCUがモデムを拡張ATコマンドで制御するスタイルが3G、4Gまで続いている。さらに、VoIPアダプターなどの制御もやはりATコマンドの拡張で成り立っている。Webmasterは米国にいた時に在宅からVAX780を制御していたが、手動式300bpsモデムからスマートモデムに昇格したときは非常に感激したのを覚えている。
Android端末では、モデムの制御は/system/frameworkにあるframework.jar中のclasses.dexにある。モデムに発行するAT+コマンドについては、FOMA ATコマンド解説を参照していただきたい
その中で問題になるのは、AT+CREG?コマンドで、モデムが返すリザルト+CREG: 1,nが1,0の時に回線交換式による通話が圏外(基地局とコネクト不能)、1,1が圏内(コネクト可能)ということである。携帯の世界では圏内=コネクトということである。
一方モバイル通信(パケット)部分については、AT+CGREG?コマンドにモデムが返すリザルト+CGREG:(0,n)で、nが次のようになっている。
0:パケット圏外 1:パケット圏内 4:不明 5:パケット圏内(ローミング中)
この会話部分とモバイル通信部分のリザルト処理によって、SMSサービスの無いデータ専用SIMが繋がるかどうかが決まる。会話部分がつながっていなくてもモバイル通信が繋がる端末と、会話部分が繋がっていないとモバイル通信が繋がらない端末がでてくるのである。
そこで、リザルトの処理テーブルを書き換えて、モバイル通信が繋がっていれば会話部分も繋がっていると端末を錯覚させればOkなのである。ただし、アンテナピクトを立てるかどうかの処理がコネクトするかどうかの処理と独立していて、モバイル通信が繋がっていてもアンテナピクトが立たない端末もある。
手順はADB接続し、framework.jarをpullしclasses.dexを取り出す。それをbaksmaliでsmaliファイルに逆コンパイルし、その出力のGsmServiceStateTracker.smaliを編集しpacked-switch処理のテーブルを書き換え、前述と逆に作業して変造したframework.jarを書き戻せばいい。
今回はブローヴちゃんさんの「datasim_framework_jar_patcher_20120317.zip」を使わせていただいた。今回は安全策で、「全モードを同時に適応(非推奨)」を指定した。その結果は、
のように見事アンテナピクトは立ったのである。なお、このスクリプトは権限の処理をしないので、端末がFASTBOOTやリカバリーモードでないと最後でエラーになる。エラーになっても変造したframework.jarはPCに作成されているので、作動中の端末でadbを使うか、あるいはroot権限をもったファイルマネージャーで/system/frameworkに書き戻す必要がある。またDalvik キャッシュもワイプして再起動する必要がある。その結果、端末がどのように認識しているかというと、
のように、Current networkは空白(unknown)ながら、Default pdp statusはConnectedとなっている。networkの選択は相変わらず”Unabel to connect”と出るが繋がるので問題は無い。試しに速度を計測すると10Mbps弱出たので、間違いなくHSDPAで繋がっているようである
というわけで、今回はPANDAのAndroidを4.1.1からブローバル版4.0.6に戻すことでシステムが小さくなり、不要アプリを掃除することでRAMに200kbytes以上空いてアプリの反応も良好となった。さらに、内部SDカードにスワップを作成することで快適に動作している。CANVAS2では/system/xbinにswaponが存在するのでswap変造は簡単である。このswaponは他のメモリーが不足気味の端末にコピーしてうまく稼働している。
ついに文鎮は完全に復活した。ROMの回復にはfreebitが施した様々な改造が邪魔したようだが、そうせざるを得なかった連中の苦労の一旦は味わうことができた。またMediatekのシステムはセキュリティーが甘く簡単に不正が行えると言うことも解った。日本の大手キャリがMediatekのチップセットを使った端末を採用しない理由もよくわかったのである。
今回の回復には10時間近くロスしたが、ボケ予防としてAndroidの勉強ができたし端末も復活したので、かけた時間は十分ペイしたと思っている。
完全な文鎮と化したPANDAだが、前述したように、この端末は電源OFFでもSPTOOLでパソコンからイメージをロードできる。 ただし問題は、ドライバーの相性とSPTOOLのバージョンが厳しいことである。
端末のUSBとパソコンにはいろいろなドライバーがある。まずパソコンから見て端末のSDカードのストレージとして見えるドライバーがある。次にADBやFASTBOOTで使われるADBドライバーがある。そして、端末をUSBを介したシリアルポートを通じてモデムとして見えるドライバーがある。これには、低速のドライバーと、METAないしVCOMと呼ばれる高速のドライバーがある。SPTOOLで書き込むには、このMETAないしVCOMと呼ばれるドライバーが必要なのである。
ネットをかき集めると、Mediatekから流出したと様々なドライバーがあるが、なぜかMETAドライバーだけがうまく働かないのだ。手元にあるものでは、
Android_Gadget_CDC_driver (usbser.sysのバージョン5.1.2600.5512) ○
USB VCOM Driver(binary) (usbser.sysのバージョン5.1.2600.5512) △
USB VCOM Driver (usbser.sysのバージョン5.1.2600.2180) △
usb driver (usbser.sysのバージョン5.1.2600.5512) △
△は動いたり動かなかったりである。端末オフでパソコンに接続し、その後パワーをONとしてうまくSPTOOLが動作したのは、デバイスマネージャの上の方にADBドライバー、ポート(COMとLPT)の所にGadget_CDC_driverが現れた時だけだということが解ってきた。
さてストックROMにはANDROIDver4.0(Ice Cream Sandwich ICS)がv1,v2、ver4.1(JellyBean JB)がv3,v4と4種類あるが、まずv4のver4.1.1版の
S9081_MP_F4.1_B1_IN_MMX_1.11
を焼き込んでみたが、”PMT changed for the ROM, it must be downloaded”とか”S_DA_EMMC_FLASH_NOT_FOUND(3144)”とかエラーが出てabortしたように見える。GSM-Forumの情報によれば、これはSRAMのブロックと書き込むimgのサイズとアドレスがバージョン毎に異なるかららしい。
そこで、bootloaderを含め全体をフォーマットしてから書き込んでも繰り返してもエラーがでる。
そこで諦めてパソコンからとりはずし、何げに端末の電源を入れるとCANVASなるブートイメージが出るでは無いか。ただしそれ以上は進まない。つまりSPTOOLで書き込まれるコードの先頭付近はブロックのサイズもアドレスも同じなので書き込まれるが、boot.img以降はバージョンアップに伴いサイズ肥大しアドレスが変更されていてでうまく書き込めなかったようである。
そこで、電源+音量上下でリカバリーでFASTBOOTに持ち込み、FASTBOOT FLASHで各イメージを書き込むこむと、ついにANDROIDVer4.1.1はインストールされ、WiFiも動き、なじみのアプリも動きだした。
これで少なくとも文鎮からは脱却したが、問題が2つ残った。
第一にSIMが認識されていないことだ。設定では、
ベースバンドのコードが不足しており、IMEIも無くなっている。いろいろ調べてみると、やはりSPTOOLでストックのROMをきちんと書き込み、その後Maui META 3GなるMediatek純正ツールでIMEIとBASEBANDとAPのライブラリーを書き込まなければいけないようだ。
第二に、Androidver4.1はver4.0より肥大していて512kBしか無いRAMが逼迫している。
rootをとって不要なアプリを片っ端から消去しても、空きRAMが160kBしか無いのである。これでは、大きなアプリを動かすと反応が鈍くなってしまう。もしAndroidver4.0にすれば、空きRAMが200kBを越えて良好なレスポンスになるだろう。
実際にfreebitからやってきた当時のPANDAはAndroid ver4.0で軽快に動いており何の問題も無かったが、ver4.1にアップグレードしてツール類が増えたとたんメモリー不足で動きが鈍くなったことを思い出した。
の それにはまずドライバーだが、前述のAndroid_Gadget_CDC_driverで、安定してSPTOOLやMaui META 3Gが動くようになったが、なによりこれらのバージョンが大事ということが解ってきた。
通常は、この手の純正ツールはバージョンが新しいほど良く、また新しい端末にも対応すると考えるのが普通であるが、Mediatek社にはその常識が通じないのである。つまり、PANDAは、当時のバージョンのドライバーとツール類でしか動かない、ということである。これでICSの最終版のストックROMv2を焼き込むこととした。具体的には
SP FLASH TOOL v3.1344.214
を使って、
S9081_MP_F4_B1_IN_MMX_0.16__flasher_user
を焼き込みが成功した。
ただし、V4とはブロックのサイズやアドレスが異なるので、downloadでなくFirmware→updgradeで行う必要がある。なぜかこの時点で、本来のIMEIが回復していた。どうやらPANDA端末にはIMEIを書き込む部分が2カ所あるようだ。ベースバンドも回復しているが、バージョンが違うのでデータベースを書き込む必要がある。ツールは
MauiMETA 3G v6.13080
で、ベースバンドおよびAPのデータベース
BPLGUInfoCustomAppSrcP_MT6577_S00_MAUI_11AMD_W12_22_SP_V5_P2
APDB_MT6577_S01_ALPS.ICS2.MP_
とIMEIとBARCORD(シリアルナンバー)を焼き込む。ただしシリアルナンバーは何度やっても書き込まれない。本来のMicromax社のシリアルナンバーは銘板にあるfreebitのものとは違っていてこれも2カ所に記録されているようである。
これで、PANDAはMicromax CANVAS2 A110(ANDROIDver4.0.4)として完全に生まれ変わった。以下は常用アプリ群だが備忘録として書いておく。
1)root(Kinguser)をとる。
2)CWM recoveryv6.0.1.2を入れ、システムのbackupをとる。
3)morelocale2で日本語に設定する。タイムゾーンと日時を訂正する。
4)ES FileManagerとESTaskManagerを入れ、rootを指定する
5)/system/mediaのbootanimation.zipと/system/media.imagesのboot_logoをリネームする。
6)ISTweakをインストして不要なアプリを停止する。
7)常用アプリをインストする。(メモリーを節約するためになるべく古いものを使う)
Lancher Pro、Adobe Flash Player11.1、simeji、Mobileunckle Tools
Slingplayer、WiTV(ロケフリ)、Smartnews(IP電話)
8)AppNetBlockerをインストして不要な通信を止める。
常用アプリをすべてインストした状態で、起動時の空きメモリーは236kbytesとなり、RAMが512kbytesでも通常の使用には問題無いレベルになった。ちなみに、ランチャーの色調やアプリ配置はWebmasterが所有する数台のAndoroidで殆ど同じになっている。
とここまでは順調だが、問題はアンテナマークに”♀”がついていて通信が出来ないことである。いろいろ調べたが、SIMの認識自体はされており、Mediatek純正ツールEngineerModeで見てもconnectしていないだけでSIMMもハードも問題無いようなのだが、なぜか繋がらない。
設定のSIMマネジメントでは0SIMはDOCOMOとして認識されており、Voice CallとData connectionにもDOCOMOと表示されている。Mobile Networkでも"NTT DOCOMO 3G"と"SoftBank 3G(forbiddenn)"が見えているが、DOCOMOを選択すると"Unabel to connect to this network at this time. Please try again later"と表示される。
この警告の微妙な表現”at this time. Please try again later”から、基本的なハンドシェークはできているが、”今”は繋がらないよ、と言っているのである。完全にダメなのではなくて、部分的に問題がある、ということなのだ。
この現象にかつて苦労したユーザーはdeja-vuを感じるユーザーがいるだろう。ははん、あれか?と思うユーザーもいるだろう。
この問題は、もともと大学系から始まり、政府の出資を受け、現在はNTT系であり、日本の最初のプロバイダーにしてネット創世記から商売していて多くのSIMを販売し、今は郵政と組んで商売を始めた大会社でさえ、当初理由が解らなかったというマヌケな話なのである。もともと3GはGSM網のハンドシェークの上にWCDMAを乗っけた形になっていて、ツギハギの規格とGoogle社から提供される雛形に対する各端末メーカーの解釈の違いが大きく現れるところで、各社の端末によって振る舞いが異なるトラブルの一つなのである。
ヒントは、CANVAS2はグローバルモデルということである。そして、諸外国では問題無く使われているデータ専用SIMと、日本国内で流通しているデータ専用SIMとでは、重要な用途の一つが違うのである。グローバルモデルを見ると、やはり日本は特殊な国であることが実感される。よくある、日本の常識は世界の非常識というやつである。
さて、その差が解れば解決は簡単だ。(その3 解決編へつづく)
それはちょっとした気まぐれから始まった。
以前、
のように契約した初代PANDA端末は、Mediatek社のチップセットを使ったMicromax A110 Canvas 2(インド製)をfreebitがアレンジしたものである。Canvas 2はMediatek社が提案する標準モデルそのものに近く、世界的にも大量に販売されている。2年の年限を過ぎたので解約し、SIMフリーの実験機として使っていた。その後雑誌のおまけの、
0SIMを挿してプリウス専用のナビや安全ドライブアプリSafeSightに使っていた。
この端末のいい点は低解像度ながら画面が5インチとデカいことである。欠点はRAMが512KBytesとアンドロイドVer4端末としてや小さいことである。
Freebit社もいろいろ対策を打ったが、その対策自体がメモリーを喰い、さらにAndroidがver4.0からver4.1とアップグレードされたことで、いよいよメモリー不足が逼迫していた。
仕方なくrootをとり不要なものを掃除して常時225kByteの空きができて安定して動くようになったのである。この手の掃除では、まず\system\mediaにあるbootanimation.zipと余計な音楽bootanimation.mp3を消すことから始まる。(機種によって場所が違うが)。立ち上がりの不要なマルチメディアはCPU時間を食い、メモリーを喰うので動作が遅く不安定になるからだ。
具合良く使っていたのだが、そこでポケモンGOである。スポットの近くをウロウロしている大人の中にはスマホを2台使っている人がいた。常用のシャープSHL25に加えPANDAにもインストールしようとしたが、ANDROIDがVER4.1なので蹴られたのである。そこで、\systemにあるbuild.propのバージョンの記載を操作すると、ひょっとしてGooglePlayが騙されてインストールできないか、と試したくなったのである。
しかし、起動するものの立ち上がらなくなってしまったのである。build.propの編集で何か余計なことをしでかしたようなのだ。
PANDAにはrootを取ったときにCMWリカバリーをインストしていたつもりであったが、OSがアップデートした時なのかいつのまにか消えていて標準の不親切なリカバリーに戻っていた。イメージもバックアップもとっていたつもりだったが、単につもりだけだったのである。
通常、webmasterは常用していてrootを取る端末は同じ物を2台持つこととしている。過去IS04もT1CもIdealPadも2台ずつあるのだが、これは一台が文鎮化しても動作しているペアがあれば回復がやさしいからである。もちろんCMWでイメージのバックアップを取っているので、PANDAのもそのつもりだったのだが、車に乗せっぱなしでバックアップが無かったのだ。
通常なら青くなるところだが、PANDA端末は世界中で相当数販売されていたようで、オフィシャルROMが4バージョンあり変造ROMも多数あることを知っていたので、この際インドバージョンに戻せばさらに軽量化できる、と楽観的だったのである。
まず最初に試すのはFactoryResetであろう。MicromaxというかMediaTekはかなり変態で、音量上下+電源を押しながら起動するとリカバリーと機器テストモードのメニューが表示されるが、通常は音量上下と電源ボタンで選ぶところをなぜか音量上で選び、音量下で確定なのだ。
次のリカバリーメニューで、update用ZIPファイルを指定したり、FactoryReset、Userdataのワイプができるようになっている。このメニューも変態で、音量上下で選んで、下三つボタンの一番左で確定である。つくづくMediatekは変態である。
オフィシャルなROMはver4.0が2つ、ver4.1が二つ見つかった。そこで、オフィシャルROMのZIPファイルをSDカードのトップに置いてら読ませるがエラーとなる。オフィシャルROMの中身はイメージファイルといくつかのファイルで構成されているが、ダメなのである。
ネットで調べると、その方法では差分のファイルしか読み込まないことが解った。adb sideloadと同じである。IS04もT1CもIdealPadも直接オフィシャルROMを読むので簡単に復活するのだが、つくづくMediatek社は変態なのである。
さらにネットで調べると、Mediatek純正のSPTOOLなるROM書き込みツールがあり、それがオフィシャルROMを読んで書き込めるようである。ただしPCドライバーは二種類あって、いわゆるADBドライバーとVcomドライバーがあるが、Vcomドライバーを使う方が安定するようである。SPTOOLのバージョンも複数あるが、ver3とver5を見つけることができた。
そこで、PCにPANDAを接続してSPTOOLを起動するが、PANDAをどのモードで待ち受けるかが解らなかった。メニューの、”ADBでsideload”やFastbootのどちらで動かない。
説明をまじめに読むと、何と電池をハズして繋ぐとある。ドライバーが認識しない場合は音量上下を同時に押せと書いてある。これでUSBドライバーがうまく動作すれば書き込みモードになるのである。つまりMediatekのチップは電池が無くてもUSBからの電源で最低限のレベルは動作するのである。通常ROMはADBかFastboot状態で書き込むものだと思う常識が災いしたのだ。
思えば、これはUSBメモリーと同じで、端末のストレージのみがUSBで読み書き出来るのだ。たしかに電源不要なら大量生産に都合がよいというMediatek社の考えなのであろうが、PCのドライバーの認識が不安定で、何度かUSBを差し替える必要があった。
そこで、Downloadボタンを押すと、バーが伸びて100%と表示されるが、そのままダンマリがあり、しばらくして、”MPTが無い”、というエラーが表示されるのだ。ネットではパーティションをFormatすれば動くとの情報があるが、Bootのパーティションをフォーマットする勇気はなく、この方法は使えないと思ったのである。エラーの原因は不明だが、Freebit仕様はどこない細工されているのかも知れない。
となると、ADBかFastbootで直接イメージを焼き込むことになるが、リカバリーメニューの”ADBでsideloda”は通常のADBコマンドを受け付けないので、Fastbootしか無いのである。
そこで、kitkatver4.4の変造ROMのイメージ群を直接fastboot flashで逐一書き込んだ。ただし書き込むイメージの順番が大事なようで、boot.imgとrecovery.imgは最後に焼かないとうまく立ち上がらないようだ。
ついに夢にみたPANDAでver4.4が実現したが、空きメモリーが減った上に変な現象が出た。まず下の中央のボタンが動かない。またSIMをドコモ製と認識してAPNの設定は可能だが、実際には電波をつかまない。radio.imgなどのベースバンドやキーの設定のファイルが見あたらないようである。WiFiでは動作するが、これではナビに使えないでは無いか?
とすると、SPTOOLでオフィシャルROMの内容のすべてを所定の位置に書き込むしか方法がないが、書き込みがエラーとなる。
最後の手段として、SPTOOLで禁断のフォーマットをかけるが途中で反応しなくなる。さらにブート部分を含めてフォーマット後に書き込みをトライするが途中で反応しなくなる。
そこで電源を入れるが真っ黒なままである。ブートローダーが飛んだから当然ではある。
つまりPANDAは再度文鎮になってしまったのだ。
5インチのSIMフリー化したDELLの初代Streak をナビとして車に装備すれば実害は無いのだが、Webmasterは生まれて本当に初めて救えない文鎮を作ってしまったのはちょっとしたショックである。実はサブとして購入したAndroidはどれも立ち上がり不良を入手して復活させたものだからだ。さて、どうするか?
(その2に続く)
過日、全国のホンダ販売店で試乗キャンペーンがあった。そこでwebmasterはホンダの誇るノスタルジックバイクCB1100の試乗を予約していたのである。
Webmasterが到着すると、スタッフがCB1100を引き出しエンジンをかけた。30度を超える高温の中、webmasterが書類に記入している間のおそらく5分以上アイドリングで放置されていた。アイドリングは安定しており、空冷なのに機関音は非常に静かで排気音も落ち着いていた。
スタッフに聞くと、今のCB1100はアイドリングで放置しても大丈夫とのことであった。ただし長く放置するとECUが自動的にエンジンを停止するそうである。
かつてのキャブ式の空冷バイクは高温で次第にアイドリングが不安定になってエンストすることがよくあった。
80年代の話だが、ツーリングから帰って来て市街地に入ると、友人は彼のCBX400Fと私のVT250Fを交換しようと言ったのである。最初は???であったが乗ってみて理由はすぐわかった。CBXは調子よく走ってきて信号で停止すると1,2分でエンストするのである。
おそらく油温の上昇とキャブ付近の熱気で混合比が狂うからだろう。いったんエンストするとなかなか再始動しないが、また少し走るとまた俄然元気に走り出すが、それを信号のたびに繰り返すのである。一方VTは水冷でラジエーターにもファンが付いていることもあって、真夏にアイドリングで放置してもエンストすることは無かった。
さてCB1100では、二番目のオイルポンプからオイルクーラー経由で冷えたオイルを各気筒のエキゾーストポートの間からプラグ周辺を流して冷却するようになっている。シリンダーとヘッドには細かいフィンがあり、カムやシリンダーには通常の系統のオイルが流れている。バルブとプラグ周辺だけを特に油冷するようになっているが、エンジンの見かけは過去の空冷と殆ど同じところがミソである。
かつてはスズキには空油冷バイクが多数あった。スズキはヘッド全体を大きなオイルの入れ物にして、プラグホールとバルブステム付近をオイル漬けにしていた。さらに熱境界層を破壊するためにノズルからオイルを噴射していた。ヘッド全体が入れ物になっているため4輪のエンジンみたいで、空冷DOHCヘッドの造形は失われていた。CB1100はスズキとは異なりあくまでも空冷DOHCヘッドの見かけに拘ったのである。
試乗してみると、空冷にもかかわらず機関音は一貫して静かであり、エンジンを見なければCB1300かと間違えるほどである。走り出せば1速から6速までどのギアでもスナッチ無く走るが、トルクはCB1300より僅かに薄いようである。低速ではNC700Sよりレスポンス感は弱いが吹き上がりは軽く、やはり回さないと楽しくない。ホンダの4気筒は絶えずもっと回せ回せ、と語りかけるのだ。
いずれにせよ、CB1100のエンジンの造形美、乗りやすいトルク特性そしてレトロに振ったデザインは魅力的で、価格はバーゲン的に安いと思ったのである。
川辺に止めて5分ほどアイドリングしエンジンの造形を観察すると、小ぶりで丸みを帯びたカムケースは、まるでヘッドから浮いているように見える。カムケースとヘッド間に多くの通風口があり、まるでバルブとチェーンの部分だけで繋がっているかのように見える。プラグの回りには環状の油冷通路の屋根となる丸い部品があり、そこからも縦にフィンが生えている。
最近のエンジンのセオリーを無視するかのようにバルブの挟み角は大きく、前後のカムの間はプラグホールに向かって広く深く落とし込まれている。その底のプラグの周囲にはバルブガイドの高まりが見えるほど肉が抜かれていて、ヘッドを通った風が抜けて行くようにできている。シリンダーの気筒間の通風口も大きく、ヘッドやシリンダーの隅々まで風が良く回るように造形されている。
重要な部分は油冷でここまで作り込む必要は無いのに、風の道が凝った造形になっている。カムケースは過去の直打式のCB750Fよりもさらに小ぶりで丸く、その上半分だけが塗装されずアルミ素地が輝いている。
他のメーカーはこれほど通風に凝っていない。例えばヤマハのXJS1300は直打式でカムケースは小さめなのにヘッドの通風は良くなく、上部に導風ガイドを置いている。スズキはタペット式が多くカムケースはヘッドに密着した矩形で、やはり通風は良くない。ホンダのCB750Fも直打式だったがカムケースは大きめで前後カムシャフトの間も狭く通風はさほどよく無かった。CB1100ほど通風の良いエンジンは無いのではなかろうか?
と思ったが、カムケースの造形が似ているエンジンを思いついた。それはカワサキのZ1のエンジンである。Z1のカムケースは丸くヘッドから浮遊していて、上半分だけアルミ素地であった。右クラッチカバーもアルミ素地で平たく、ポイントカバーは小さい目と、いろいろな所がCB1100と似ているのだ。Z1のエンジンもヘッドまわりの通風が良く、カムも大きく開いていてフィンも美しくきざみ込まれていた。オイルクーラーが無くしかもウェットサンプで済ますために、細かく通風が工夫されていたのであろう。
webmasterもこの事に気付いたときにはかなり驚いた。プライドが高いホンダが、ライバルメーカーのZ1に近い造形や塗装を採用する、なんてことがあるのだろうか?
しかしながら、今回のCB1100が、古き良き時代の空冷大型バイクの代名詞であったCB750FOURとZ1のオマージュであるとすれば、納得は行くような気がする。今回の空油冷も、厳しい排気対策の時代に古き良き時代の優雅な造形を作り出すための手段なのであろう。
さてあなたはどう思われるだろうか?。CB1100のエンジン造形は見物で、細かい所までフィンが切られていて、どうやって製造したのは非常に興味がある。ぜひ近くのホンダ販売店に行って紙のコヨリを使ってヘッドやシリンダー間の通風口がどこに開いているか確かめてみて欲しい。
ポケモンGOが大人気である。Webmasterはポケモンも対戦ゲームも基本的に嫌いだが一応は試してみた。前情報を読むとIngressに似ていると思った。さらに読むとIngressをやっているNiantic社が(株)ポケモンとのジョイントで作ったことが解った。
Webmasterは観光地に近い所を通勤するのだが、通りには子供よりは成人が目立つようである。個人的にはゲームを一通りやりジムを一つ確保した時点で興味がSTOPしてしまった。やはり基本的に野蛮な対戦ゲームが嫌いだからである。
また、主人公の子供が学校にも行かず勉強もせずに流浪して対戦するという設定もキライである。さらに、自由に暮らしていたポケモンを暴力的に捕まえて小さなカプセルに閉じこめ、瀕死になるかもしれない厳しい対戦に投入する、という筋書きも狩猟民族的なエゴが感じられてキライである。
ゲームへの興味が薄れたものの、このゲームの社会的影響は大きいと感じた。ポケモンGOはゲーム業界を最終的に破壊し、あとはペンペン草しか生えないのではないか、ということである。また家庭内で過ごす時間が減り外出するので、ユーザーの支出対象が変化する可能性もある。
そう思う理由として、
1)ゲームへのアクセスが良すぎる。ゲームにはAndroid4.4以上のスマホかiPhoneがあれば良く、ゲームも無料である。新たに購入する特定のハードもソフトも無いので、ユーザー人口が膨大となる。
2)課金が無くても楽しめる。報道によればガチャ課金で稼いでいる胴元も多いらしい。かつて友人がやっていた原始的な釣りのゲームで、バーチャルな釣り竿が数千円するのに驚いたことがある。近くの釣具屋で、釣り入門セット一式が3000円以下で買えるのに、である。
3)身の回りにスポットやジムがありポケモンが出現する。通学通勤の過程でも種々のアイテムやポケモンが拾える。わざわざ特定の場所に行かなくても十分楽しめる。
4)ゲームの要素が時間的空間的に多彩である。スポットを巡り、ポケモンを集めるフェーズ、戦うフェーズいずれもユーザーが移動するのに交通費が発生し、また腹も減るので外食も増える。過去のゲームは家に籠もってやっていたものが、移動がからむことで出費が外に拡散する。
おそらく、ポケモンGOにより特定の有料ハード、有料アプリを購入させ違法に高価なガチャ課金で儲けていた業界は破滅するであろう。一方ユーザーが歩き回るので、出費が家庭内から外に広がり、コンビニや外食産業は儲かる可能性がある。ゲームに向いた服装や小物も売れる可能性がある。
まるでナビの変化のようである。以前のナビは高価で機能も限られていた。最新のGoogleナビは音声で検索可能で情報も最新だし、地図はリアルな3Dで渋滞まで表示されるなど、旧来のナビはまったく太刀打ち出来ない。多くの専用ナビ業界は破滅に瀕している。
さて、私がNiantic社の人間だったらどうやって儲けるか?を考えてみたい。現状ではNianticはGoogleにぶら下がっており、ユーザーの位置情報などをGoogleに流していると思われる。またスポットやジムの設定で特定の業者、例えばマクドナルドから金をせしめている程度であろう。
しかしそれでは大した儲けにならない。やはりゲーム中のコインやポイントをグローバルな課金システムや購入システムに繋げることが考えられる。ちょうどTポイントのようにポイントを得たり購入できるようにし、余ったポイントはポケコインとして蓄積できるようにすれば、ゲームが廃れた後もポケコインが続く可能性がある。
とすれば、多くの消費や金融がポケコインを中心に回るようになることも考えられるし、既存の通販や金融も大きな影響を受けるであろう。その間、多くの情報や課金ビジネスはGoogleを中心に回り、ポケコインがグローバルなバーチャル貨幣となる可能性もある。
当然ながら、ゲームにはLineのようなトークや電話機能も包含されるであろうし、ジムの位置を仮想化し、特定の場所に移動しなくても対戦できるようにすればユーザーの交流もますます盛んになるだろう。ポケモンの交換や売買も可能になるかもしれないし、ゲームを介した婚活も盛んになるかも知れない。
ただしブームには必ず終わりが来る。
膨大なユーザー人口から勝手に様々なコミュニティーが立ち上がり、狂騒が狂騒を呼び、ブームは当分(おそらく1−2年)は続くと思われる。iPhoneの流行でも解るように、多くの人は基本的に同じものが欲しく、話題も共有したいのである。
しかし、駅など公共施設からポケモン出現禁止要請やスポット返上が大量に出るだろう。そのうちにポケモンハンター=迷惑、あるいはポケモンハンター=ダサイと見なされるようになるだろう。多くの場所でゲームが禁止され、また国や地方によっては一律禁止されるところも出てくるだろう。
そうやってゲームのブームは急速に終焉を迎えると思われる。
しかしその間にポケコインが大量に流通するようになっているとしたらそれはそれでバーチャル貨幣として生き残る可能性があると予想している。
いずれにせよ、いろいろな業界で、”ポケモンGOショック”はここ10年で最大のトピックになることは間違い無い。
最近当地でも”ばくおん!”なるアニメの放送があって、特に面白かったのは趣味としての自転車との比較であった。曰く、”自転車の価値は価格で決まる!”なる発言である。
以前から、自転車は軽いモデルほど高い!というのがコンセンサスだが、パーツの重量と価格の関係を研究してきたwebmasterはそれに大きな疑いを感じていた。データを収拾するうちに世界最大のコンポメーカーSHIMANO社はコンポ類の重量を秘匿していることに気付いたのである。公表すると何か都合が悪いことがあるのだろう。
そこで、世界最大クラスの自転車メーカー大男社のオンロードモデルについて、価格と重量をプロットしたものが下のグラフである。大男社は普及品から高級品まで多くのモデルを作っており、価格設定もまとも(ぼったくりが無い)なのでサンプルの対象としてみた。
図で対数の近似曲線を示しているが、価格の対数値と重量は強い相関があることがわかる。高いモノは軽いのだが、材質が進歩した現代では、話はそう簡単では無くなっているのだ。
自転車では、フレーム材質が高張力鋼からクロモリやアルミ、チタンやカーボンと軽くなるにつれて高価となる。しかし、工業技術の進歩により、普及品でも最近のフレームは殆どがアルミ製である。普及品のコンポにも繊維強化コンポジット樹脂が使われており、以前ほど重量と価格の関係が簡単では無くなっているのだ。これがSHIMANO社がコンポの重量を公表しなくなった原因の一つであろう。
さらに、普及品の多くは前の変速ギアが3枚であるのに対し高級品は2枚であり、当然2枚の方が軽くなる。たとえば価格がほぼ同じで前ギアが3枚のESCAPE RX2と前ギアが2枚の軽量版ESCAPE AIRの重量差が0.7kgであることから、前ギアが3枚のモデルからは一律0.7kgを差し引くこととした。
加えるに、普及品は700x28cと太めのタイヤを履いているが、価格が上がるにつれて700x25cや700x23cと細くなる。しかも高級クラスのタイヤはケブラーなどを使って非常に軽く出来ている。そこで、多くのデーターから、700x28cの製品からは0.8kg、700x25cの製品からは0.4kgを差し引き、700x23cに換算した重量に揃えることにした。
そこで再度グラフを作ってみると、
かなり様相が変わってきた。特に価格が5万円から15万円の製品が回帰曲線から外れたグループをつくっており、それらの重量は殆ど変わらないことが解る。
その理由として、このグループのフレームはかなりが同じクラスのものを使っていて重量差が殆ど無いことが大きな要因と考えられる。具体的には、このクラスではチューブの壁の厚さの変化(バッテッド)がないものを使っている。厚みの変化を付けると僅かに軽くなるが、価格は指数的に高くなる。
コンポ類は価格に応じてすこしずつ上等にはなっているが、現在ではリアディレーラーやシフターは普及品でもコンポジット樹脂を使っており、軽量材を使った高級品と重量があまり変わらない。
これは、安物であっても精度や性能が良くて高級品との差別化が難しいというSHIMANO製品の通弊である。古いターニーであってもSISでスムーズに7段変速するし耐久性はむしろ高級コンポより高いのである。
ということは、このグループで最も安いモデル、例えば、Escape R3(\50000)を買い、タイヤが減った頃に700x23cに交換すれば、10.7kgの車重は9kg台になるし、仮に前ギアを2枚にすればさらに0.8kg軽くなるので、15万円クラスの重量と大差なくなるのだ。
ただし、ツーリング専用ならともかく、買い物や通勤通学に使うとなれば、凹凸でパンクする可能性が高い700x23cよりは700x25cあたりが順当だし、坂を昇るには0.8kg軽いことよりは変速幅が大きい3枚ギアのほうが有利であろう。
アニメ”ばくおん!”でも、15万円未満とそれ以上でクラスが変わるとの表現があるように、大男社でも約15万円のTCR0からが上がコンポが105となりレーサーモデルに分類されるらしい。30万を越えるとフレームは凝ったものにあり、50万を越えるとここまでするか、というほと細かい所に手が入ったフレームになる。
例えばシートポストを短くしてカーボンファイバー製フレームのシートパイプを延ばすなど、乗り手の調節幅を削ってまで重量を軽くするのである。用途によっても細かい作り分けがあり、次第に普遍的なモデルが存在しなくなる。
同様にコンポも重量だけでなくより抵抗が少なく、変速がスムーズで、余計なベアリングが使われており、ラチェットも軽いなど、値段の対数に比例して上等になっている。
それでも自動車やバイクよりは安く税金もかからないいので、良い物が欲しいと思えば高いものを買えば良いのだ。ただし、グラフのように、品質は値段の対数に比例するので次第に投資効率が悪くなるのは仕方がない。
個人的には、高めのMTBを買ったものの、町に乗り出して盗難にあうのが怖くてあまり乗らなかった間に錆び錆びの旧式になってしまった経験がある。どんなに高いバイクでも乗らなければ何の価値も無いのである。
そういえば、Webmasterの友人は一時ロードバイクに凝っていた。当時高価だったカーボンファイバー製フレームにカスタムなコンポを組んだバイクを購入したが、その後体を悪くしてしばらく乗っていなかったそうである。最近になって体調が回復したので自転車を探したが姿が見あたらない。奥様に聞くと、”何年間も乗ってなかったので5年ほど前に廃品回収に出した”とのことだった。
友人は強く抗議したが、奥様に”捨てたことに5年間も気付かれない自転車なんて無いのと同じ”と言われ、返す言葉が無かったとのことである。
Webmasterはその話を聞いたので、早速古い自転車を整備してピカピカ磨いた。各々方も時々は示威行為などして、くれぐれも大事な品を廃品回収に出されないようにご注意いただきたい。
最近は低炭水化物(糖質制限)ダイエットというのが流行しているらしい。糖質の摂取が多すぎる人には有効なダイエットだと思うのだが、一日糖質50gという極端な制限は長期的には蛋白質の代謝が破綻し高血糖より有害である。さて、先日国営テレビを見たら、ヘンな医者が出てきて、
1)糖質は本来毒である。原始時代の人間は糖質をとっていなかった。
2)脂肪はどんどんとっていい。脂肪は糖にならないからである。
3)焼酎などのアルコールはどんどん飲んでいい。アルコールは糖にならないからである。
4)炭水化物をとらなくてもアミノ酸からブドウ糖が作られるから炭水化物はいらない。
5)炭水化物をとらなくても脂肪からケトンが作られ、ケトンは脳の栄養であり毒物ではなく善玉の栄養源である。
とか言っていた。どれも殆どウソと言っていいだろう。医者の肩書を持つ人間が言うと広がってしまうのである。一つづつ問題点を説明したい。
まず、
1)糖質は本来毒である。原始時代の人間は糖質をとっていなかった。
これは嘘であろう。少なくとも日本の原始人?には当てはまらないと思われる。
その前に、糖類と糖質、炭水化物の違いから説明が必要だろう。狭い意味では炭水化物とは単糖類、二糖類や多糖類などの糖質を指しているが、広い意味では消化が困難な繊維質も含んでいる。単糖類のブドウ糖などと二糖類のショ糖(いわゆる砂糖)などを糖類、多糖類のデンプンなどを含めて糖質である。
多糖類はブドウ糖などの単糖類に分解される。ブドウ糖の良い点は、燃えると二酸化炭素と水になって燃えカスが残らないことである。脳みそはカロリーを大量に消費するので燃えカスが出ないブドウ糖を使うので、低血糖になると昏睡し死亡の危険がある。ただし草食動物はセルロースなどの繊維質も分解利用できるから、炭水化物を繊維質と糖質に分けるのは繊維質を分解できない人間が対象の場合の分類である。
通常はカロリーの多くは炭水化物由来である。ブドウ糖が余るとグルコーゲンとして肝臓に最大100g、筋肉に300g程度貯まるので、合計400g=1600Kcalの蓄積がある。グリコーゲンの良いところは低血糖になるとグルカゴンの働きで即座にブドウ糖に分解されて供給できることだ。しかし、当座脳が低血糖が陥らない程度の蓄えでしか無く、その後は脂肪からブドウ糖が新生されて供給されることになる。
さて原始時代の人間は何を食っていたか?主な食事は、木の実や果実、野草、魚、貝、イノシシだったようだ。日本の縄文遺跡で一番多く出土するのはドングリであり、粉にしてパイを作っていたようだ。ドングリは甘く成分の50-60%が糖質でタンパク質や脂質はそれぞれ2%程度しか無い。渋み(タンニン)は水にさらしてアク抜きが可能であり、酒も作られていたとの説もある。他にも甘い木の実や果実はたくさんあった。
貝や魚も主要な食物であった。たとえばアサリは100gあたり48kcalだが、炭水化物は1g、脂質も1gと少なく、タンパク質が8-9gある。これらは主としてタンパク源として食べられていたようである。通常人間は体重1kgあたり1日1gのタンパク質を必要とする。
肉食としてはイノシシが代表的で、他にシカ、クマ、トリ類を食っていたようだ。大量にあったどんぐりを食ったイノシシがいたはずで、今でもドングリを食ったイベリコ豚が珍重されるように美味だったと思われる。いずれにせよ、縄文人も現代人ほどではないにしても有る程度の糖質をとっていたことは確かである。
よって1)は少なくとも日本人に関しては嘘である。
2)脂肪はどんどんとっていい。脂肪は糖にならないからである。
脂肪はアシルCoA、そしてβ参加によりアセチルCoAとなり糖と同じようにTCAサイクルに入って代謝される。糖質が不足するとアセチルCoAやピルビン酸から糖新生によって解糖経路が逆回転してブドウ糖が作られるから、糖を枯渇させても脂肪から糖はできグリコーゲンとして蓄えられ必要に応じてブドウ糖に分解されて使われる。ただし糖新生には多くのエネルギーを消費するから、脳や筋肉が必要とする以上の余分な糖質は作られない。
余ったグルコースは、TCA回路のクエン酸からアセチルCoAを経て脂肪に合成されて蓄えられるし、摂食された脂肪も体に蓄積する。脂肪の良い点は1gが9カロリーで重量が軽く貯蓄効率が高い点だ。また断熱性がよくショック吸収力もある。女性が男性より脂肪を溜め込みやすいのは、飢餓条件でも妊娠を継続し授乳するためであると言われる。
脂肪の問題点は、エネルギーになるのに若干時間がかかる点だ。また、解糖経路を逆転させる糖新生にも時間とエネルギーが必要である。だから血糖値が下がると当面はグルカゴンが分解してブドウ糖を供給し、数時間たってから糖新生されてブドウ糖が作られる。カロリー源としては糖も脂肪も同じようなものである。
だから断食を開始すると、4時間程度で血糖値が下がっていったん空腹になるが、それを乗り切るとグリコーゲンからブドウ糖が作られて空腹感が低下し、さらに数時間たつと脂肪からカロリーが供給されるので耐えられるのである。
ぶどう糖自体は正常血糖値であれば毒性は無く、脳に必要な量を充足すればグリコーゲンや脂肪は一定量に維持され体重も変わらない。一方、低血糖になると直ちに意識を失い生命の危険があるので、人間の体には何重にも血糖値を保つ安全装置があるが、血糖値を抑える物質はインスリンだけである。これは人間の歴史のなかで、糖質がオーバーになるほど摂取されることが少なかったからであろう。
人間が一生に食べる食物はダンプカー数十台分になるが、体重の変化はたかだか10-20kgである。脳はありとあらゆる情報から高い精度でエネルギー代謝を制御しているわけで、結局のところ蓄積する脂肪は余剰に摂取したカロリーにすぎない。糖も脂肪もアセチルCoAからのエネルギー代謝経路は共通なので、トータルとして管理されているのである。
3)焼酎などのアルコールはどんどん飲んでいい。アルコールは糖にならないからである。
これも真っ赤な嘘である。
糖質や脂肪と同じくアルコールもカロリー源としては同じである。アルコールは、第一段階のアルコール脱水素酵素でアセトアルデヒドに分解され、第二段階のアルデヒド脱水素酵素で酢酸になる。酢酸からはATPを消費してアセチルCoAになる。アセチルCoAは糖や脂肪と同じようにTCA回路に入りカロリー源となる。また解糖経路を逆転させて糖質を新生することもできる。
巷に低糖質ビールがあるが、糖質が少ないだけで、アルコールの%分だけしっかりある。ややこしいことに、栄養表示基準では100ml当たりの糖質が2.5g未満なら糖質オフ、0.5g以下なら糖質ゼロと表記しても良いことになっているが、アルコールのカロリーが7kcal/gなので糖質ゼロでも360ml缶で126kcal、大瓶ならその倍のカロリーがある。アルコールのカロリーに比べると糖質のカロリーは低く、あっても無くてもたいした問題にならない
のだ。 そもそも、アルコールは糖質をイーストが嫌気性にアルコールと二酸化炭素に分解してできるので、原料は糖質だからアルコール自体も糖質と同じようなものである。
ちなみに、気分がよくなるのはエタノールの効果で、二日酔はアルデヒドの効果である。日本人は2つの酵素のどちらかか、両方が欠損している人が多いので、欧米人ほど飲めない。あのオソロシア共和国ではウォッカは重要なカロリー源だが、オソロシア共和国男子の死因の第一位は事故死で、具体的には泥酔による凍死と水死とのことである。 インスリンによる糖の取り込みと関係なく、アルコールは脂肪にも新生されて糖質にもなるのである
4)炭水化物をとらなくてもアミノ酸からブドウ糖が作られるから炭水化物はいらない。
確かに、飢餓状態で糖質も脂質も払底すると、最後にはタンパク質を分解したアミノ酸からブドウ糖は作られるが問題がある。まずアミノ酸から活性の高い窒素を取り外してアセチルCoAやピルビン酸を合成し、さらに糖新生を行うのには大量のATPが消費されてエネルギーが無駄になる。
さらに、アミノ酸を分解すると窒素や硫黄などの生理活性が強い燃えカスが出てさざまな副作用を起こす。大量に出てくる窒素は腎毒性があるし、骨や軟骨、靭帯、皮膚などの構成要素であるコラーゲンが分解されると骨折や皮膚の老化が起きる。アミノ酸からできている酵素も枯渇して代謝が低下するし、アルブミンが減少すると体内の浸透圧のバランスが狂ってしまう。飢餓状態の子供は腹が膨れてくるが、これはアルブミン低下で浸透圧が低下して腹水がたまるからだ。
アミノ酸から糖を新生するのは、違法サラ金から金を借りるようなもので危険な策なのだ。その目的は、糖を使う脳、神経、網膜、腎臓などのバイタルパートを守るために毒物をまき散らして糖を確保するギリギリな戦略である。やはりアミノ酸から糖質が新生されない程度の糖質は必要なのである。
カロリーが不足すれば蛋白質を分解して糖質が作られるが、それは必要最低限の量でしかなく血糖値が以上値までは上がらない。一方血糖値が下がるのでHbA1Cも下がるが、体は蛋白質不足で全身の臓器でダメージが進行する上に、ただでさえ弱っている腎臓に窒素の負荷が加わり、長期的には腎不全につながる。
従って、過酷な糖質制限には十分な蛋白質の補充が必要になる。蛋白質が不足すると、血糖値とHbA1Cが正常であると喜んでもいてもその間に全身は回復不能なダメージを負うのである。糖質ダイエットを行っていた多くの有名人の死亡はその結果なのである。
5)ケトンは脳の栄養であり毒物ではなく善玉の栄養源である。
ケトン=善玉説は白澤卓二氏や江部康二氏などが唱えている説である。白澤卓二氏は立派な医者だったらしいが、最近は”白澤卓二のポリフェノール青汁”、”100歳までボケない朝一番の簡単スープ”、”白澤卓二先生の 100歳までボケないレシピ”、”2週間で効果がでる! <白澤式>ケトン食事法”などと商売に余念がないようである。江部康二氏はもう少し穏当な印象で、糖質制限は一般人よりは糖尿病の方に勧めている様子である。
医者にとって”ケトアシドーシス”という言葉は恐怖を感じさせるものである。重度の糖尿病ではインスリンが枯渇していて細胞がブドウ糖を取り込むことができない。このため脂肪からケトン体が作られて脳など特定の臓器の栄養となるが、ケトン体だけでは脳を十分栄養することはできず、ケトン体が大量となると血液は酸性となり毒性が出てきて脳い障害を起こす。腎機能が低下している場合はケトアシドーシスは危険で命を落とすこともある。
脂肪から作られたアセチルCoAは筋肉ではTCA回路で二酸化炭素と水に分解されるが、肝臓ではケトン体のアセト酢酸などに変化し、心筋、骨格筋、腎などで利用される。これで飢餓時に糖新生で作られる貴重なグルコースを脳のために温存するシカケと言われている。成人男性では脳は一日に120gのブドウ糖(480kcal)を消費するので、摂取するカロリーの1/3から1/4は大脳が消費することになる。
ケトン体とは主としてアセチルCoAから作られる3-ヒドロキシ酪酸で、酵化されアセト酢酸に、最終的には脱炭酸してアセトンになる。マニキュアの除光液に使われているアセトンは毒性がある。ケトアシドーシスの患者からはアセトン臭という甘い匂いがする。ケトン体はブドウ糖が不足する時に緊急事態でブドウ糖を補うために増えるものであり、ケトン体が高濃度であっても脳を十分栄養することはできずにむしろ毒性が出てくるる。
しかし白石氏らは、糖制限によりケトン体が増えるとダイエット、気力集中力のアップ、病気への抵抗力、アンチエージング効果などがあるとしている。また妊娠中の胎盤にはケトン体が多く、胎児がケトン体を利用しているが、同じことが成人にはあてはまらない。妊娠中に母体が糖尿病ケトアシドーシスになると胎児の死亡率が高くなるので、産科の医師はこの説には絶対に賛成しない。
ケトン体=過剰だと有害な非常時の栄養源なのか、ケトン体=増えたほうが良い善玉なのか?
ケトン体が善玉になるのか悪玉になるのかはその量による。脳が必要とするすべてのカロリーを全てケトン体でまかなうことはでき無いので、あくまでもグルコースの不足分を補うために使われるのである。
また糖質制限を続けてブドウ糖が不足しても次第に糖新生の速度が上がり、やがてブドウ糖が必要分を満たすレベルになればケトン体は減少する。ケトン体はあくまでも非常用のエネルギーなのである。ケトン体の効果については、結局のところ江部康二氏や白澤卓二氏がどれくらい長生きするを見るまでは議論は定まらないと思っている。
基本的に糖質オーバーは良くないし、糖質を制限したらその分脂肪とタンパク質は十分に取る必要がある。明らかに糖質がオーバーな米国人では糖質を制限する必要があり、米国糖尿病学会も糖質を減らすことを勧めているが、糖質12%以下のような極端な糖質制限を勧めたことは一度も無い。
そもそも一日の糖質を20ー40gに抑える糖質制限ダイエットは、米国ではアトキンスダイエット(Atkins Diet)として2003年頃に大流行した。その時もケトン善玉説が唱えられたが、心筋梗塞や脳卒中の発症のリスクが増える統計が出て廃れた経緯がある。極端な糖質制限はアトキンスダイエットの亡霊なのである。
さらに、日本人の大部分でタンパクの摂取は不足しているので、きちんとした栄養管理もなく厳しい糖質成分を行えば貴重な蛋白質が不足して体全体がガタガタになる。人間は糖質が一時的に不足してもそれを補うシカケはあるが、牛と違って草から蛋白質を作ることができない以上、蛋白質が不足すると生きては行けないのである。
成人男性であれば1日に脳が必要とする糖質120g、カロリーにして約500kcalが必要である。またタンパク質は体重1kgあたり1日1gが目安になるだろう。その他のカロリーは脂質で補い、男子なら1日カロリー総量を1800kcalに抑えれば、確実に毎日健康を害せずに減量できる。
確かにスイーツがあふれる現代でアンチテーゼとしての糖質制限ダイエットには一定の意味はあるが、極端な糖質制限は有害である。それに複雑な社会情勢で働く現代人、特に女子にとってストレス解消にある程度のスイーツは必要かも知れない。
webmasterの患者さんの中にも、大病の後に洋服の購入や食事に外出しなくなり精気が無くなった女性を多数見ている。彼女らに、試しに繁華街に出かけて(買わなくてもいいから)洋服を見て、その後喫茶店でケーキ付き紅茶を飲んでくるようお願いしたところ、多くの方が再び化粧や洋服がぱりっとして心身ともに元気になった経験がある。
ともあれ、現在の日本人は男女とも平均寿命は世界のトップクラスなので、ダイエットも中庸でいいのだ。解糖経路を逆転させて脂肪やタンパク質から糖を新生する必要がない程度の糖質摂取は必要なのである。
何事も極端は良くないし、順方向で順調に回転している代謝経路を逆回転させるとロクなことは起こらない、という事である。
最近マツダが宣伝しているのが、G-ベクタリング コントロール(GVC)(リンク)である。
一言で言うと、電動ステアリングに入力が加わったときにエンジンのトルクを僅かに減少させて0.01G程度の減加速度を発生し、前の駆動輪の荷重を僅かに増やしてコーナリングパワ−(CP)を早めに立ち上げる、という技術らしい。
ステアリングを切ったときに早めにCPを穏やかに立ち上げることによって乗客の感じるヨー成分の立ち上がりが穏やかになる。そうで無い車はステアリングを切ってもCPが立ち上がらず、さらにステアリングを切ってから唐突にCPが立ち上がるので、乗客が強くヨーを感じる、と言うのである。タイヤはステアリングを切っても有る程度変形して摩擦が発生してからCPが発生するが、その立ち上がりは荷重に比例するからである。
同様に、高速を直進するための当て舵の量もステアリングの反応が良くなるために減少すると言う。その効果は、上の動画の綺麗なおねえさんの体とペンダントの傾きで分かる、というように広島の会社にしては洒落た嗜好になっている。やはり、本業が儲かると宣伝まで文化的で品が出てくるモノである。
もちろん、これと同じことはタイヤの空気圧を上げても、またサスのブッシュを固めても実現できるが、この細工ならそうしなくても電気的な細工で乗り心地を損なわずに実現できる。これについては、
では、”ステアリングがシャープになり、まるでステアリングの減速比が小さくなったかのようである。感覚的なステアリングの切れ具合というのは減速比だけでなくシャーシ全体の反応性に大きく影響されるのである。”と記した。
では、”ダンパーのアッパーブッシュを強化したことで乗り心地が締まることは予想通りだが、まるでステアリングギアボックスの減速比が変わったようにシャープに感じられる。”とも記した。最近でも、
□プリウスの車体強化のナゾver.3(フロントサブフレーム補強編)
”ステアリングの切れがまるでタイヤの空気圧を高くしたときのよう良くなっている。”とも書いている。
マツダは暗に、”ウチの車は車体もサスもしっかりしていてエンジンのレスポンスが良いからGベクタリングの効くのだよ。(他のメーカーの車はゆるいので、マネしても効果は低いよ)”と言いたいかのようである。
そういえば似たような話を、ブリジストンタイヤPlayzシリーズでもしていた。Playzシリーズは過去発売したものの全く売れず、そうこうする内にエコタイヤへの急激な流れに飲み込まれて頓挫していた。エコタイヤが一段落したことで、エコタイヤに細工して再度宣伝に注力し始めたのである。
ただし、ブリジストンの宣伝は下手で、”タイヤのIN側とOUT側の再度形状が異なるため路面の接地を安定させ、運転時のハンドルのふらつきを減らすために、運転者の負担が少なく疲れにくい”としているが、意味不明である。これで普通のドライバーに理解できるだろうか?売れないのも当然である。
ホームページのグラフから読み取る限り、意味するところはマツダGベクタリングと同じで、ステアリングの反応が良くなるので当て舵もヨーも減りドライバーや乗客がラクで疲れない、ということのようである。
技術的には、タイヤのトレッド剛性を上げ、コーナリングの変形を念頭に置いて断面を工夫し、昔から得意のフィラーを仕込むことで乗り心地をあまり損なわずに横剛性を上げCPの立ち上がりを良くしたようである。ミニバン用は最終兵器として何とアドバンHF-Dに似たディンプル入りスリックを最外側に配している。もちろん、エコ時代なりに転がり抵抗や寿命も良くしたそうである。
持てる技術はてんこ盛りであるが、ブリジストンは”どうせ詳しく説明してもドライバーは理解できないよね”と考えているようである。綾瀬はるかまで動員しても、どうして疲労が減るか?の説明が足らないのでユーザーには解って貰えないのである。
しかし、マツダやブリジストンの宣伝する効果は、簡単に、しかもタダで今すぐ実現できる。基本的には前輪のタイヤの横剛性を上げればいいわけで、空気圧をほんの0.1kg/cm2(10kPa)上げれば済むことである。その位なら乗り心地もさほど悪くならず、無用なピッチングも減って快適になるし燃費も良くなる。
残念ながら今現在走っている車の空気圧は殆どの場合適正ではなく、FF車の場合は多くの場合前輪はアンダー気味で、後輪はオーバー気味なのである。たとえドアのコーションラベルに書いてある通り入れても適正とは言えないのだ。
その理由は、記載されている空気圧は車検証に書いてある車両総重量および前後輪の荷重をベースに計算されているからだ。車両重量は車体本体の重量に燃料(満タン)、エンジンオイル、バッテリー、冷却水、スペアタイヤ、車載工具を含めた重量で、車両総重量はそれに人間一人あたり55kgで定員分乗った場合の重量を加えたものである。
日産自動車によると、乗用車には最大積載量という概念は無いが通常手荷物として定員一人あたり10kgとしている。おそらく指定された空気圧はトランクに50kg+αを積んだ場合に対応していると考えられる。
しかし、実際には常時満タンで大人が5人乗り50kgの荷物を積むことは少ないので、後輪の指定空気圧はオーバー気味である。一方、トランクに50kg積むと後輪を支点に車体が後ろに傾き前輪荷重が抜けるので、前輪の空気圧指定はアンダー気味になっていると考えられる。
だから、コーションラベルの数字より後輪はマイナス0.1kg/cm2(10kPa)、前輪はプラス0.1kg/cm2(10kPa)程度が適正なのである。
というよりは、普段使っている状態で4輪のタイヤの潰れ具合が同じよう空気を入れるとだいたいその位になるハズである。潰れ具合はタイヤを真上から見て、ホイールからはみ出た部分の膨らみで判断できる。方法としては、まず前輪の指定空気圧に0.1kg/cm2(10kPa)加え、次に後輪のつぶれ具合が前輪と同じようになるように後輪の空気を抜けば良い。
そのように設定すると、マツダGベクタリングやマツダGベクタリングが無くても、十分に快適なドライブが楽しめる、というものである。特に後輪の空気圧を下げると後席の乗り心地は格段に改善するし、ステアリングも軽くて切れも良くドライバーもラクになる。燃費は主に前輪の空気圧に依存するので燃費も良くなる。
とまあ、話は終わりなのだが、すべてがゆるい車の場合にはそれなりの疲れない運転方法があるもの事実である。
かつてwebmasterは米国の砂漠でフルサイズのアメ車を一日中走らせたことがある。かなりダウンサイズされてはいたが、依然として無用にデカく、ステアリングも雲をつかむようにゆるく、車体も左右に上下に、さらにはダイアゴナルにゆっくり揺れ続けるのである。ステアリングを切ってもなかなか反応せず揺れが続くのだが、そのうちに揺れに先行して当て舵を当てればいいことに気付いた。ヨーとは殆ど逆の位相で先にステアリングを切るのである。
それはちょうど海の上で揺れるクルーザーの舵の切り方と同じである。クルーザーは波を越えてピッチングする度に舳先が左右にヨーが発生するが、それを予想して当て舵を先に先にあてるとヨーもダイアゴナルな揺れも減る。
そんな運転方法に慣れてくると、ずっと続いていた揺れも止まり、冷房が強力なこともあって快適となった。延々と運転しているとラジオ局のレンジから外れて自動的に選局を始めるが、次の放送局でもカントリーである。アメリカとはそういうところである。
極端にブッシュもサスも車体もゆるくて重い車なら、それなりの運転で高速を快適に転がすことは可能である。アメ車に長く乗っているドライバーは皆そのように転がすようである。
イギリスの国民投票で離脱派が勝利した。国の将来に関わる重要な問題を、周到な準備や十分な討論無しに国民投票にかけたキャメロン氏の失政である。彼は自国の行動が世界中に与える影響を思い至らない絶望的に政治的センスが欠落した愚鈍な政治家である。世界中の政府も経済界も、離脱派が勝利するとは予想していなかったようである。
もしイギリスがEUから離脱したらイギリス経済は崩壊するであろう。いや、離脱せずとも離脱するとの方針を決めただけで今年中にも経済は崩壊するかも知れない。いずれにせよ、イギリスのGDPは世界第5位であり世界中の経済に及ぼす影響は小さくない。
日経新聞によると、2016年中に新たな首相を選出しEUに通知する。欧州委員会が通知を受理すれば離脱交渉が始まり、欧州議会が脱退協定案を合意し離脱するとしても2018年以降になる。通知から2年という年限は加盟国の合意で延長されうるから、最終的に離脱するのは2020年以降と見込まれる。離脱するにしても関税などの特典には基本的に離脱に反対だったEUの合意が必要なので、離脱まで最低で4年、実際には10年以上かかるとの見方がある。離脱後はイギリスにEUと世界各国間との関税などの条件が適応されなくなり各国との再交渉が必要になる。TPPを見てもわかるとおりこの手の交渉には10年単位の長い時間がかかる。
それ以前にイギリス政府で離脱を決める法律が制定された場合、権限委譲を受けているスコットランド、ウェールズ、北アイルランドの地方議会の同意が必要で、残留派が多いこれらの地方が同意するはずが無いのである。歴史ある連合王国が分裂しかねないのだ。
今回の国民投票の結果で、ポンド/円は一日で18%暴落した。ポンド/円は12%下がったので、その差6%は円買いによる円高の影響ということになる。今後ポンドは国際的な購買力が低下し国内からあらゆる資金が流出するであろう。
Webmasterは、イギリスが離脱を表明しただけでインフレと不景気によるスタグフレーションにより早晩経済崩壊の危機に陥るので、結局は離脱できないと予想している。
離脱を表明しただけで、それが自分たちの生活にどう響くかを離脱派の人間が深く考えた形跡が無く、単に中近東情勢による最近の移民の急増に対する反感が主な原因のようである。離脱派は、今の生活水準が保たれたまま移民だけが減ると期待しているようだが、甘すぎる予想である。イギリス経済がボロボロになった時点でハゲタカファンドが底値であらゆる資産を買い漁り、イギリスは他国のファンドに支配される国になるだろう。
イギリス経済の内訳を見ると、輸入高は第5位だが輸出高は10位と振るわない。財政収支(対DGP比)は130位と日本の141位といい勝負で慢性的な財政赤字だ。GDP構成比を見ると、一次産業(農林水産) 0.7%、二次産業(製造業、鉱業、電力を含む) 20.5%、三次産業(通信や金融、小売などサービス関連) 78.9% であり、日本の一次産業1.1%、二次産業25.6%、三次産業73.2% よりサービス産業の比率が高い。ちなみにドイツは一次産業0.8%、二次産業30.1%、三次産業69.0%と製造業の比率が高い。
なおアメリカは 一次産業 1.1%、二次産業19.5%、三次産業79.4% とイギリスに近く、フランスも一次産業1.9%、二次産業18.7%、三次産業79.4% と農業の比率が高いことを除けばイギリスに近い。ようするに、製造業に強いドイツ、サービス産業に強いアメリカ、イギリス、フランス、日本はそれらの中間ということである。ちなみに財政収支が黒字なのはドイツだけである。
仮に、イギリスがEUから離脱すればEU内の資本の移動の自由が失われ金融業などの第三次産業は衰えるであろう。同時にイギリスが最近力を入れている製造業のEU向け輸出に対しEUは懲罰的な関税をかけるであろうが、それまでポンド安もあって当面は輸出は続くであろう。
イギリス国内では離脱の方向性を示しただけで優良企業の担保価値が収縮し、さらに優良資産の切り売りが続く。大半の資産が処分で疲弊したところにハゲタカファンドが底値で買収にやって来る。信用収縮は限りなく続き、会社が撤退したコニュニティーは疲弊し若者が去って過疎地域に高齢者だけが残る。このままではイギリスは過去の日本で起きた信用収縮が何倍もの速度で発生しコニュニティーが崩壊するのであろう。
さてそうなるとして、日本にどういう影響が出るだろうか?
日本にも資金が逃避してくるために円高になるだろう。そのために輸出産業は打撃を受けるだろうが、逆に過剰流動性の流入で国内は活況あるいはバブルになる可能性もある。事実、離脱直前から外資は一貫して日本株式を買い続けている。情けないことに狼狽売りしたのは国内の機関投資家なのである。
現時点で日本への大きい影響があるのは、漠然とした経済に対する不安感であろう。下はNikkei255.jpの各国の恐怖指数グラフである。特にリスクをとらずに過剰に安定を要求する国民性のために金を使わなくなるからだ。
おそらく当分は円高が続くと思われるが、イギリスが離脱するとしても4年以上、おそらく10年はかかること、おそらくEUは離脱を許容せず、離脱しても懲罰的な関税をかけるであろうこと、離脱を表明しただけで今後経済危機に見舞われることから、結局は離脱は回避されるという見方が広がり少しずつ回復するとWebmasterは予想している。その間ポンド安で輸出産業は利益があがるから、日本の製造業も工場設備への投資は回収できて優雅にイギリスから退場できるだろう。
それでも今年はwebmasterのマーケット部門もリーマンショック以来の赤字になる可能性がある。しばらくは今まで通り市場を注視し下げ過ぎた場面で少しずつ落穂拾いをする予定だ。世界経済を恐怖に陥れたイギリスへのささやかな報復として、今後webmasterはイギリス製のものは一切買わない方針である。
Webmasterの自宅には屋根上の太陽光とは別に、ささやかな自室専用の太陽光システムがあり、非常電源としてだけでなく携帯の充電などにも常時働いている。
部屋を片付けていたら太古テスターSP-6Dが出土した。これを太陽光システムに繋いでみるが表示がおかしい。このテスターは、
●大古テスター復活のナゾ・その2(スーパーフラックスZ編)
●大古テスター復活のナゾ
に登場したもので、中身を見ると一箇所は巻線抵抗の半田不良で、もう一箇所は巻線式の可変抵抗の断線であった。可変抵抗の修理については、
写真のように、”スーパーフラックスZ(サンポール)”で巻線を半田付けして修理していたが、再度2箇所で断線しているようだ。メーターの永久磁石のパワー低下、あるいは炭素抵抗類の吸湿などによるものか、表示がアンダーとなっていた。
そこで、今回は可変抵抗は修理せずにトリマー抵抗に交換して精度を重視することとした。リチウムボタン電池直接3個の電圧で3台の電子テスターと比べながら校正したので誤差は2-3%以内に収まっていると思われる。面白いことに電子テスターもそれぞれ1%程度の誤差はあるようで、表示がまちまちであった。今回の修理では抵抗測定でのゼロセットができないが、今後電池の液漏れで全損となる可能性を考えて抵抗レンジは無視することとした。
手前の巻線抵抗の半田不良は修理したが、他にも半田の色が悪く脆くなっている所が幾つかあったので補修した。やはり50年もの日時は半田の材質にも影響があるものだ。
この頃のサンワテスターの品質は素晴らしい。特にスイッチは接点不良が無いだけでなく、回転に伴うパチン、パチンという節度が非常に良いのである。当時はタチカワやヒオキなどいくつかテスターのメーカーがあったが、サンワのスイッチの節度はずば抜けていた。プリント基板を使っていないので基板不良や反りも起きないので、むしろ寿命が長いとも言える。半田付けも綺麗で、当時の品質管理の水準が忍ばれる。
というわけでSP-6Dは現役に復帰した。50年前の製品が最新の太陽光発電の電圧を表示している訳だが、常時電圧を表示する用途には電池が不要なアナログメーターが適している。基本テスターはメーターとスイッチが生きていれば修理は可能で、メーターの感度低下もメーター周囲の抵抗を可変抵抗に変えて校正すれば良いのである。サンワのテスターのパーツは高品質なのでリカバリーは容易である。メーカーのパーツ供給は製造中止後6年となっているが、相談には乗ってもらえるかも知れない。
思えばこのテスター登場した60年台の後に幾多の電気製品が登場したが、既に儚くなっているもの、あるいは存在すら忘れられたものも多い。ネットで検索すると、
なるページに、懐かしい測定器や光学機器が美しくレストアされてコレクションされている。そこによると、SP-6Dは”60年代中級品アナログテスタのレベルを反映した逸品”とある。実に的確な表現である。
相変わらずNCで8の字とスラロームばかり練習しているwebmasterであるが、もともとこの車はホイルベースが1525mmと長いので小回りは苦手のようである。Webmasterは以前から大型二輪の寿命については疑問を持っている。大型二輪は小型のバイクより耐久性が良いハズだが、なぜか中古の大型二輪の走行距離は中古の125ccスクーターより少な目なのである。
さて、以前webmasterはカブC50を持っていた。というか、卒業する学生から引き取りを頼まれたのだが、走行は5万kmでメンテは最低限でチェーンケースからガラガラ音がしていた。そこいら中に給脂しオイルとタイヤ、前ブレーキシューを交換し、チェーンを引いたところで本調子となった。メンテコストは1万円以下であった。
タフなカブでもタイヤやブレーキはもちろん交換が必要だが、問題はチェーンだ。チェーンは伸びてはいたが、スプロケ共々まだ寿命には間があったのだ。油でギトギトのチェーンはどうやら新車からのもののようである。大型2輪はシール付きチェーンでも2〜3万kmの寿命しかないから、チェーンが長持ちしたのはケースに入っていてホコリを拾わなかったからだろう。
大型二輪の走行距離が伸びないのは、取り回しが重いので普段乗りに適さないということもあるだろう。通勤は125ccのスクーターで、というライダーも多いようだ。また車検があるので、車検整備のコストに見合わない車は早期に廃車になってしまうこともあるだろう。250cc以下は車検が無く税金も安いので、完全に動かなくまで廃車にならない。そもそも大型二輪は、”単に男の子の(あるいは女の子の)自己満足のための存在”とも言えるが、それにしても大型二輪の寿命は短かすぎる。
ホンダがNCシリーズを出したのには、二輪の販売数が減少しライダーが高齢化する冬の時代には、最低限ヘルメットの収容力があり燃費が良いバイクでないと生き残れないのでは、という恐怖心があったからだろう。なるほどNCはトルクがあり姿勢もアップライトで疲れないし、燃費も30km/Lを越えヘルメットの収納能力があるなど、大型二輪での実用性は間違いなくトップクラスである。
しかしクラッチレバーの支点やワイヤー類、シフトリンクや後輪ブレーキリンク等には絶え間なく注油が必要で、他にも水が入って不良となる箇所が多いなど、本当に進歩していない。チェーンにシールがある時代に、なぜワイヤーの出口やシフトやブレーキのリンクにシールが無いのか不思議だと思うのだが、普通のライダーは疑問に思わないのだろうか?
さらにチェーンケースには扁平率の低いワイドタイヤをクリアするために肝心な所に切り欠きがあり、回転するタイヤからの塵埃や雨水からチェーンを保護する能力が低いのである。写真はチェーンカバーを上から見たところだ。
わが家のNCには後ダンパーのゴムカバーを付けており、また前輪フェンダーもゴムで延長しているので雨水がエンジンに飛散せず便利なのであるが、相変わらずチェーンには塵埃や雨水が降りかかるのである。
そこで工作である。3mmのゴム板を買ってきてタイヤの輪郭に沿ったゴムカバー作成しチェーンケースに張り付け、タイヤのゴミや雨水がチェーンを直撃しないようにした。
思えば昔はSSであってもチェーンケースにタイヤの切り欠きは無かった。おそらく車のディメンションが変わらないのにタイヤのワイド化が急だったので、単に切り欠きを作ってごまかしたのだろう。そのごまかしの帳尻はチェーン寿命と言う形でユーザーが払うのである。
その効果はしばらくしてから報告したいと思う。どの程度このカバーが汚れるかによって、防いだ塵埃の量も解ると言う物だ。興味のある人はぜひ追試していただきたい。
過日ハーレーの試乗会に出かけてみた。その日は全国統一でハーレー試乗会をやっていたらしい。朝10時過ぎに着いて書類に記入するとさっそく試乗である。他に客がいないせいか、それぞれ40分ほど試乗することができた。
店員は心底ハーレーが好きなようだが、説明はpushyでは無くいい人みたいである。webmasterのアパレルはハーレーには場違いな雰囲気だが、一応コケることも考えて上下ともプロテクターを仕込んで来た。
Street750は最近発売されたばかりで、メカ的には最先端のバイクだ。水冷で全長2225mm、ホイールベース1535mm、車重223kg、最大トルク58Nmは、NC700sの全長2195mm、ホイルベース1525mm、車重211kg、最大トルク61Nmと非常に近いスペックである。やはりNC700はV型エンジンのバイクのプロポーションなのである。
エンジンの左側からベルトドライブが出ていてクランクケースもコンパクトで近代的で、社外から設計者を雇ったのであろう。ポジションは着座位置が低くペグが少し前にあるもののムリのない姿勢である。女性にも向きそうだがハンドルだけが少し遠い印象がある。
一番の驚きはエンジンの振動が非常に少なくハーレーに期待される鼓動感が乏しいことだ。85x65mmとショートストロークで一軸バランサーが付いているためである。NCが73x80mmとロングストロークで270度クランクに一軸バランサーを加えて鼓動感を残しているのとは対照的である。排気音もパルス的な音は殆どなく静かである。
乗り出すと操縦性もNCに似ていて一瞬試乗中であることを忘れたほど楽ちんである。ただしアクセルはNCよりツキが過敏で気を使うが、開けてみるとトルクは細い印象。乗り心地は後輪が跳ねる感じで、おそらく外人の体重にあわせた設定なのだろう。
車を観察すると、ヤマハのBOLTよりモダンで格好も良い。ただし樹脂成形や電線の処理などはプリミティブで、購入者はすぐカスタム仕上げしたくなるであろう。挟角V型エンジンの問題はスペース的にインテーク長やエアクリーナー容量が不足することだが、このエンジンにはエアチェンバーが付いているなど他のハーレーよりは進化が見て取れる。750クラスを補強するとともに、将来の排気対策も対応可能な保険モデルでもあるのだろう。
形はハーレーっぽいが、乗った感じは国産2気筒のようにジェントルで、ハーレーらしい鼓動や排気音を期待すると裏切られる。個人的にはエンジンをロングストロークとして鼓動を残して欲しいところである。設計が新しく水冷なのでストロークと排気量を拡大する余地はあるようだ。性能的に余裕があり故障も少ない雰囲気である。一つ気になったのはサイドスタンドの位置が悪く、操作するたびに必ずスネがペグに当たることだ。
全体的にNCとは車体やエンジン特性や振動の出方まで似ているたが、あるいはこのバイクはNCの設計上の仮想敵の一つだったのかも知れない。
次はIron883である。前輪は細くて大きくクラシックで、市販モデルでありながら不良的なカスタム感が満ちている。渋いオリーブゴールドの塗装がいい感じでエンジンの格好も古風である。クロムメッキでキラキラなハーレーが好みでないwebmasterもこのスタイルにはグラっと来るものがある
すでに暖機の済んだエンジンは排気音に連れてゆらゆらと揺れている。インジェクションではあるがフリーホイールが大きい割に混合気が薄いようで、アイドリングで失火が不規則に起きて時に3拍子にもなる。今どき国産ではこれほど失火するバイクは無いだろう。
全長2215mm、ホイールベース1515mm、車重247kg、最大トルク67NmとこれもNCに似ている。着座位置が低目なので重量はあまり感じない。ポジションは前輪が大きいため、よりアップライトである。
走りだすと乗り心地はStreet750より良い。しかしトルク感は期待したほどでは無く、加速も車重があるせいか予想より遅かった。エンジンの鼓動は常時大きく、これを期待する人にはStreet750より魅力的であろう。操作はウインカーが両側にありオートキャンセルがついているものの、アクセルを開きながらの操作は難しい。やはり外人の手のサイズに合わせてあるのだろう。
細部を観察すると、フレームは細く華奢である。エンジンは今となってはハーレーの中でももっともクラシックな部類に属する。排気量が大きく空冷で振動も大きいのでメンテに気を使う必要があるだろう。燃料タンクは12.5Lと小さいので航続距離は短いが、スタイル的にはやはりこのサイズのタンクが似合っているし、振動が大きいので長時間乗るのには向かないバイクである。
排気量の割に低域のトルクが細いのはインテーク長やエアクリーナー容量が不足しているからである。ハーレーは旧来のデザインを踏襲するためかインテーク系に手をつけずに無駄に排気量の拡大だけを続けている印象がある。国産のようにインテークにエアチェンバーを付け、エアクリーナーの入り口にファンネルを増設するだけでかなりのトルクアップの余地があるように見えるのだが。
このバイクで長時間走ると振動のために疲れるであろうが、短時間なら積極的に振動を楽しむことができる。Webmasterの後輩は毎日XL883で通勤しているが、ハンドル幅が意外や狭くすり抜けも容易だと言っていた。
そう、最近の若者は免許をとると最初にハーレーを購入するのだ。今や大型二輪新車でのハーレーのシェアは5割を超えていて、街ですれ違う大型二輪の大半もハーレーである。
最近のユーザーは馬力や速度よりは鼓動や排気音を求めるようである。4気筒の高性能リッターバイクのエンジンは絶えず回せ、回せとつぶやくが街中ではパワーを発揮でき無い。一方、ハーレーならアイドリングであっても揺れるエンジンと排気音は楽しめる。2ストエンジンのように不規則なアイドリングもそれなりに風情が有る。
人間の満足はいかに感覚に大きなフィードバックが戻るかで決まるので、その点低速でも振動や排気音が楽しめるバイクは速度を出す必要が無いので安全であるとも言える。
個人的には無駄に排気量が大きくメッキがキラキラなハーレーは好みでないが、排気量が手頃でデザインがクラシックで美しい883が売れる理由は十分に納得できるのである。
今回の熊本の震災で被害を受けられた方に心からお見舞いを申し上げます。
さて4月23日に熊本の複数の関係先に物資を届けるために熊本に行ってきた。届けた資材はブルーシート、ビニール袋、ロープ、ガムテーム、軍手、ビニール手袋、ラップ、紙皿、ウェットティッシュなどである。
午前6時に福岡を出発し、7時半過ぎに植木インターに到着。高速の渋滞は菊水インター、植木インターも2km程度である。高速出口で警官が国道3号線への合流を整理していたために合流はスムーズであったが、その後の渋滞は市内にも続いており、市内には8時半頃に到着した。
まず北側の市街を展望する写真である。
みると、ブルーシートを被っているのは重厚な瓦を持った家で、中には新しい家もあった。一方軽量なスレートや金属屋根の家は見た目では被害は軽い。非常に古い木造商店などでは崩壊したものを見かけたが、一方でかなり以前から放置されている廃屋が無事だったりしている。
屋根の形も関係あるようだ。複雑な入り母屋が一番被害が多く、ついで寄棟屋根で、切妻が一番被害が軽い。建物の形もが単純なほど被害が少ないようである。寄棟では屋根の接点である尾根部分の脱落が多かった。地震の多い日本では、総檜造りで重厚な瓦葺きは適していないようである。
熊本市付近は中央構造線が近くを走っている割に地震が少なく、古い瓦葺きの家が相当のこっている。また重厚な瓦の下には空気層があるために夏涼しく、重い瓦は台風で飛びにくいということもあって、結構瓦葺きの建物が多いのである。
ただし、重厚な瓦は平米あたり約60kgの重量がある。とすると平均的なサイズの家では6トン以上の荷重になる。一方、最近多いスレート葺きは平米20kgで、金属屋根は10kgであるという。Webmasterは屋根の上に乗ったソーラーパネルの重量が地震にどう働くか気にしていたが、パネル全部の重さは300kg程度で大きな影響は無いようである。
ただし瓦といっても、モダンな薄い瓦や、瓦に似せたスレートも多く、その重さは平米30kg前後のようで、今回の被害は重厚な瓦より明らかに少ないようである。
被害には局地的に地盤の状態が影響するようで、写真の地域は熊本城から1km以下だが被害は軽いようである。しかし瓦や建物の被害が軽くても、室内は散乱しているようで、通りの指定地域には多くの瓦礫やビニール袋が捨ててあった。
家具の被害には振動の方向も関係あるようだ。今回の地震は北東と南西を結ぶ方向に揺れたようで、それに家具の長辺が並行な場合は短辺側に倒れにくいようである。
建物の硬さも関係あるようだ。作りの良いRC造のビル躯体自体の被害は少ないが、屋上の水道タンクが激しく振動して破損し、修理がおいつかず未だ軒並み断水となっている。一方鉄骨造では建物の強度自体は保たれているものの、激しい振動のためパネルの破損や脱落が多いようである。
今回の被害に2005年の福岡県西方沖地震での観察を総合すると、2階建の個人住宅では木質パネル系プレハブ、もしくはRC造系プレハブのが被害が最も軽いようである。軽量鉄骨系プレハブは強度があるものの振動が激しくパネルの破壊や脱落が発生し不評のようである。在来工法の被害は様々だが、床や壁を構造合板で補強するタイプが丈夫なようである。もちろんRC造が一番丈夫であるのは確かだが、地盤が割れた場合はどんな建物でも壊れるし廃棄となるとかなりのコストを食うようである。
熊本市の中心の通町筋を通るといよいよ熊本城が見えてきた。
一の天守は瓦や鯱が落ちて、敗軍の将という感じである。すぐ左下は飯田丸五階櫓でかろうじて崩壊を免れているが、櫓の下の城壁が崩壊したために建物が湾曲している。熊本城は市民の誇りであっただけに個人的にも落胆はかなりのものがある。
熊本城は一の天守、二の天守が勇壮な城だが、現存する宇土櫓の他に裏五階櫓、数寄屋丸五階櫓、飯田丸五階櫓、西竹之丸脇五階櫓、本丸東五階櫓と合計6基の五階櫓があった。その一つだけでさえ小さな城では天守ほどの規模であり、そのうち飯田丸五階櫓は2005年に木造で再建されたばかりだが、写真のように崩壊に瀕している。
さらに嘗ては小広間西三階櫓、月見櫓、本丸東三階櫓、飯田丸三階櫓、長櫓上三階櫓、戌亥櫓、未申櫓、櫨方三階櫓、森本櫓の9基の三階櫓があった。そのうち戌亥櫓と未申櫓は既に木造で再建されたばかりだが近くの城壁が崩壊している。一階櫓の重要文化財である北十八間櫓、東十八間櫓も今回崩壊している。
熊本城公式ページからの図だが、2007年の清正による築城400周年にあわせて本丸御殿大広間の他に多くの建物や塀が再建されていて、現在7番の馬具櫓および続塀が再建されたところである。規模としては日本一といって過言でないほど壮麗な城となっていただけに、今回の損害は実に残念である。
不思議なことに、撮影に耐えるこれほどの城がありながら、何故か今までNHK大河ドラマの舞台となっていない。地元民の中では、種々の理由でNHKが加藤清正を取り上げるのに躊躇っているからだとという説が有力である。その理由は詳説しないが、過去”ぼした祭り”という呼称が無くなった事情に近いものが推察される。
今回、日本財団が出資を表明し、また市長も知事も再建に乗り気なので年数はかかるが熊本城は必ずや再建されるだろう。九州の観光の目玉でもあるので、復興はこの地域全体の経済にも大きな影響がある。すでに我が家の家族は一口城主であるが、今回熊本城災害復旧支援金に寄付し、益城町(ふるさと納税申し込み書)、嘉島町、高森町にふるさと納税を申し込んだところである。
さて、土曜日時点では多くのコンビニやDIYショップが開店していた。また驚くべきことに、瓦に被害があった家屋のほとんどには既にブルーシートがかかっていた。最低限の物資が出回るようになっており、今日からは福岡ー熊本間の新幹線も走り出した。今回の地震の被害は甚大ではあるが、復興はすでに始まっているように感じた。
エンジンオイルはいろいろな成分の混ぜ物である。利益率が異常に高いので多くのメーカーはシェアをとるために派手な宣伝合戦が続いているが、この業界には本当の成分に関して昔から黒い霧がかかっている。現在100%エステル系と称するオイルが多数出回っているが、本当なのか疑わしいと思っている。基本的にWebmasterはオイルメーカーの宣伝文句はあまり信用していないのだ。
エステルとは有機酸とアルコールからできている。果物のよい香りはエステル類に由来することが多く、自然界にはエステルは数多く存在しているのである。サロンパスなどに使われているサルチル酸メチルはサルチル酸とメチルアルコールのエステルである。
歴史的にエステル系オイルは、世界大戦中のオイル欠乏下のドイツで二価の酸であるアジピン酸と多価アルコールのエステル(アジペート)として開発された。粘度を上げるために炭素数の多いアゼライン酸、セバシン酸などが使われるようになった。これらは酸素との二重結合が金属との親和性をもつために摩擦係数が低く、特に直鎖のものは粘度指数が優れている。しかしエステル結合は加水分解されやすく、また酸の水酸基から2番目のβ位の炭素に付いている水素が熱劣化の原因となった。
そこで、分岐を持つ多価アルコール類を使ったポリオールエステルが開発された。これにはβ位に水素が無いので熱劣化性が改善されジェットエンジンに使われるようになった。また酸基の近くに分枝を持つ事でエステル結合を加水分解から保護するようになったが、分枝が増えると粘度指数などの性能が低下する。そこで用途によって複数の種類を混ぜたり使い分けられている。車ではエアコンのコンレッサーオイルとして古くから使われている。
しかしエステル系オイルはジェットエンジンと異なりレシプロエンジンではクランクケース充満した水蒸気がよって早期に加水分解されてしまうので、レースなど短時間の使用が原則であった。また加水分解されにくいエステル系オイルもあるが、粘度指数が低下してしまう。さらにオイルシールへの攻撃性もあるし、極性をもつことから同様に極性を持つモリブデン系や亜鉛系の減摩剤との場所の取り合いが起きて相性が良くない。境界潤滑領域では亜鉛系やモリブデンの減摩剤方が遥かに性能が良いから、エステル含有量が多いと性能は低下するとも言う。
このため大手メーカーからは100%単一のエステル成分のものは無く、通常はPAO系かVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものをメインとしエステル系は部分的に使い、それに亜鉛系やモリブデンの減摩剤を併用するのが普通である。しかし、少数ながら100%エステル系と称するオイルは市場に存在している。業界人に言わせると、エステルは減摩剤との相性が悪いので真の100%エステルなるオイルは無いはずだ、とも言う。どれが本当なのだろうか?
さて、エステル系として人気が高いのは*OTULの300V Factory Line Road Racing 10W40なる品である。ネットの評判も良いようでかなりの高価で流通している。
売り文句は、
”300V FACTORY LINEは、*OTUL独創のESTER CoreR(エステル・コア)テクノロジーによって誕生した100%化学合成のモーターサイクル用エンジンオイルです。
300V FACTORY LINEは、このESTER CoreR テクノロジーによって最適化されたベースオイルとバイク専用に開発された添加剤の配合により、旧来の300V 4T Factory Lineと比較した当社試験において1.3%の馬力の向上と2.5%のトルクの向上を達成すると同時に、信頼性と耐摩耗性を損ねることなく優れたギア保護性能とウエット・クラッチの性能を維持。”
本当だったらものすごくいいオイルのようである。
詳細な成分は公開されていないが、製品安全データシートMSDS(material safety data sheet)に、製品を飲んだりしたときの対処のために成分が書かれている。
SAFETY DATA SHEET 300V FL ROAD RACING 10W40 - 12801 Version 4.2 (08-07-2015) Mixtures Composition : Identification (EC) 1272/2008 Note % ------------------------------------------------------------------------------------- CAS#72623-87-1 GHS08 25 <= x % < 50 EC: 276-738-4 Dgr Asp. Tox. 1, H304 LUBRICATING OILS (PETROLEUM),C20-50, HYDROTREATED NEUTRAL OIL-BASED CAS#64741-88-4 GHS08 DgrAsp. Tox. 1, H304 1 <= x % < 2.5 DISTILLATES (PETROLEUM),SOLVENT-REFINED HEAVY PARAFFINIC
最初のCAS#72623-87-1 は 水素化中性油を原料とする潤滑油(C20〜50)なので、25〜50%は水素添加された鉱物油(PETROLEUM)である。C20〜50と書かれているように種々の分子量の混ざり物である。
CAS#72623-87-1を追跡すると、フィンランドNeste社製のNexbase 3080などがあり、そこには”NEXBASE(R) base oils are top-tier Group III base oils”と書いてある。
さらに追跡すると、米国ChevronのEngine oil compositions and preparation thereofなる特許の中に、”NESTE 3050, 3080 and 3043XV are Group III base oil stocks from Neste Oil Corporation”という記載がある。Neste社は世界の著名メーカーにCAS#72623-87-1を供給しており、一方、Chevronは水素化に必要な触媒をNESTEに供給しており協業関係にある。
さらに、国立製品評価記述基盤機構のCAS#72623-87-1に関するページには”CAS#72623-87-1は未精製または軽度処理油はグループ1、高度精製油ではグループ3に分類される。”と書いている。
他には、*OTUL社のESTER CoreR テクノロジーの説明動画で製法としてHydrocracking、Polymerization、Hydroisomerizedと説明しているが、これは典型的なVHVI油とかグループIII基油の製法でエステル系オイルの製造法とは異なる。
つまりCAS#72623-87-1は鉱物油を水素化して得られたVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものの一種であることが確認された。VHVI油とかグループIII基油の性能が悪いと言っているわけでは無いが、少なくとも書かれている成分はエステル系で無いことは確かということである。
次の1ー2.5%を占めるCAS#64741-88-4およびEC:265-090-8 のDISTILLATES (PETROLEUM),SOLVENT-REFINED HEAVY PARAFFINICも鉱物油由来だが、高度精製と書かれていないのでやはりグループ1と考えるべきであろう。いずれにせよ含量が少ないので大きな影響は無い。
このMSDSは何かの間違いだろうか?記載されていない成分がまだ50%あるのでそちらにエステルが入っているということかも知れない。数年前までは300V FACTORY LINEの瓶にDouble esterと書かれていたのがESTER CoreRと書かれるようになって組成が変わったという声も多い。
なお、*OTUL 300V ESTER Core Launch (3:08)では、原料としてSynthetic Base Oilに、Vegetable oil(植物油)とAnimal fatty acid(動物脂肪酸)が表示されているが、これらがエステルの原料ということだろうか?
面白いことに、この製品より格下の300V Factory Line Road Racing 5W40のMDSDには、25%から50%は、CAS#157707-86-3、EC: 500-393-3 Dgr、DEC-1-ENE, TRIMERS HYDROGENATEDと書いてある。このCAS#157707-86-3のDEC-1-ENEは、多くのエンジンオイルに含まれているPAO系基油で、エステル系では無い。
以上のように、*TUL社の成分はなんとなく胡散臭い。特に*TUL社自体がESTER CoreRの製法としてHydrocrackingとはっきり言っていることが不可解だが、VHVI油とかグループIII基油に植物油と動物脂肪酸由来のエステルを混ぜてあるということなのだろうか。他にはNISMO仕様の製品もあるが、なぜかPAO系オイルだけがMSDSに記載されている。
さて昔からPAO系合成油として標準的なモービル1はどうであろうか?300V FACTORY LINEに相当するグレードは、GT-Rでも指定されている0W-40 RP(現在はUltimate Performance)である。そのMSDSを見てみると
名称 CAS# 濃度 -------------------------------------------------------------------------- 1-デセン(ポリアルファーオレフィン)水素化処理したホモポリマー 68037-01-4 30 - < 40% 有機硫化モリブデン複合物 99-317 0.1 - < 1% ポリオレフィンポリアミンコハク酸イミド 147880-09-9 1 - < 5% ZINC BIS(O,O-DIISOOCTYL) BIS(DITHIOPHOSPHATE) 28629-66-5 0.1 - < 1%主成分CAS#68037-01-4はPAO系基油である。このオイルにはVHVI油とかグループIII基油とか呼ばれる油は入っていないように見えるが、合計が100%に遠いので他に何か入っているのかも知れない。有機硫化モリブデン複合物は減摩剤であり、これが潤沢に入っていることがUltimate Performanceと称する利用だろう。
一方、モービル1のエコノミー仕様の0W-20(Advanced Fuel Economy)のMSDSには、
名称 CAS# 濃度 ---------------------------------------------------------------------------- 1-デセン(ポリアルファーオレフィン)、水素化処理したホモポリマー 68037-01-4 30 - < 40% 環状, 直鎖及び分岐構造をもつ重質蒸留物(フイシャー・トロプシュ法) C18-50 848301-69-9 10 -< 20% 高度水素化重質パラフィン系油蒸留物 64742-54-7 30 - < 40% ジチオフォスフェート亜鉛 68649-42-3 0.1 - < 1%30ー40%はPAO系基油だが、10ー20%はCAS#848301-69-9のフィッシャー・トロプシュ合成によりガスから作られるVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものである。
また30ー40%はCAS#64742-54-7(石油留分又は残油の水素化精製又は分解により得られる潤滑油基油、Distillates (petroleum), hydrotreated heavy paraffinic)で、高度水素化と記されているのでVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものらしい。ジチオフォスフェート亜鉛は0W-20の粘度で不足する耐久性を担保するための減摩剤である。
エクソン社としては、GT-Rなどに指定されている油はPAOが主だが、エコカーに使う油はPAOにVHVI油とかグループIII基油とか呼ばれるものを混ぜていてもモービル1と呼んで差し支えない、ということなのだろう。確かにこの0W-20(Advanced Fuel Economy)には100%化学合成油とは書いていない。
もっともモービル1の最初のページにはモービル1=100%化学合成油なる表示が残っているが、今はVHVI油とかグループIII基油とよばれるものが入っているのである。ただし、モービル1の記載とMSDSに大きな離反は無いので、*TUL社よりよっぽど信用して良いようだ。
もうひとつの歴史のある大手カストロール社の全合成油と表示されている高級オイルEDGE 0W-40 A3/B4はどうだろうか?
表示成分 CAS 番号 % ------------------------------------------------------------- ペンタデカン、7-メチレン、1-テトラデセン/二量体/三量体と混合、水素化 25-<50% 基油-高度精製 10 - <25% 多くの種類 基油-高度精製 3 - <5% 多くの種類 留出物(石油)水素化処理重質パラフィン系 1 - <3% 64742-54-7最初のものがPAO系、2〜4番目がVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものであろう。基油-高度精製はCAS番号が書いていないので詳細不明だが、全合成油という表示なのでやはりVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものに属するのだろう。
つまりPAO系基油にVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものを混ぜたものである。これより格が落ちて、部分合成油と表示されているMagnatec10W-40では、
表示成分 CAS番号 % ------------------------------------------------------------- 基油-高度精製 多くの種類 >90 高精製ベースオイル 所有者 >5-<1090%以上は、全合成油のEDGE 0W-40の成分と同じなのでVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものであろう。
米国の裁判で、カストロールがVHVI油とかグループIII基油を合成油と表示したことに対してモービルが訴えて負けたことから、この呼称が認められることとなった。しかし被告のカストロールはVHVI油とかグループIII基油のみの油を部分合成油と表示している。
さらに格落ちで合成油なる表示が全く無いGTX 5W-30では、
表示成分 CAS番号 % ------------------------------------------------------------- 基油-高度精製 多くの種類 50 - <75 留出物(石油)水素化処理 重質パラフィン系 64742-54-7 10 - <25 高精製ベースオイル 所有者 5 - <10最初の基油-高度精製がCAS番号が無いが、部分合成油のMagnatec10W-40にも90%以上含まれていたのでVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものであろう。2番目はVHVI油とかグループIII基油と呼ばれるものである。3番目は鉱物高精製と書いてあるが高度精製とどう違うのかは解らない。いずれにせよこのオイルは部分合成油とも言えるようだ。
安く売られているGTX 5W-30は全鉱物油と思っていたので、VHVI油とかグループIII基油が多く入っているのは意外であった。作る方の立場からすれば、各グレードの需要は変化するが、プラントは常時一定量の製品を吐き出すので、操業を維持する点から無理やり複数のグレードを設定しているのかも知れない。インテルのCPUと同じようなものか。
いずれにせよ、カストロール社のMSDSは記載と大きな離反は無いので*TUL社よりよっぽど信用して良いと思う。
このように、信用できるメーカー(もしあれば、であるが)でも表示はその油が最低限満たしている規格であって、実際は何が入っているか解らないのである。最近の傾向として、大手メーカーは基油よりは添加剤の数や量でグレードを作り分けているようだ。
なお、油の成分はあくまでも現時点のMSDSであって、グローバルな今日、販売時期や地域、バージョンによって頻発に変化していることに注意する必要がある。結局あなたが入手した油は何が入っているか解らない混ぜ物に過ぎないので、車の調子が悪くない限り神経質になってのしょうがないのだ。
もともとWebmasterはあまりオイルに凝らない方である。指定より1段硬いオイルを古くならない程度で交換していれば、オイル経由がスラッジで詰まっていない限りブローしないと思っている。エンジンにとって厳しいのは夏期の渋滞でエアコンをかけて油温が高い状況であって、高速走行でも制限速度で巡航している限り油温はあまり上がらないものだ。
Webmasterのオイル観には、ヤナセ純正オイルが入っていたオペルビータがエンジンブローした経験が大きく影響している。原因はカムチェーンの樹脂製アイドラーが割れてエンコしたのだが、樹脂が悪かったのか、あるいは油との相性が悪かったのかは不明である。要するに、どんなオイルが入っていても、エンジンは壊れるときには壊れるのである。
現時点では、指定オイルより一段粘度が硬いオイルを5000kmを目処に交換としている。メーカーが10000km以上での交換間隔を指定しているもあるが、日本の夏期の渋滞は過酷でシビアコンディションに相当するので、指定より早めに変えたいところだ。硬いオイルを入れるのはエンジン騒音を下げるとともにブローバイを減らし、インテーク系の汚染を減らすためだ。アイドルコントロールバルブやエアフローセンサーなどインテーク小物が故障すると高くつくからだ。
特に合成油にこだわっていないが、一応名の通った銘柄の中より下のレベルのものを使うことにしている。以前は添加剤として有機モリブデンを入れていたが、今はオイルとの相性を考えて入れていない。オイルは種々の成分の混ぜ物なので、添加剤との相性でスラッジを作りかねないからである。
なおオイルフィルターはある程度目が詰まってこないと本領を発揮しないと考えているので、オイル交換4回に1回程度しか換えていない。
最後に面白い動画を紹介したい。この車はエンジンの上下の蓋を外してオイルが全く無い状態でいつ壊れるかテストしている。結果は書かないので、ご自分で確認していただきたい。(注:個人的に動くものをわざわざ壊す行為は好きではないが、教育効果が得難くこの一編から多くの事を学べるのでこのビデオを是と判断している。)
今回はUSBとHDMI編である。usbについては、
で簡単に説明したが、今回はコンタクトZ処理も加えてもう少し分かりやすく写真を交えて解説したい。USB端子はオス、メスとも良く似た構造なので接触が不安定な場合は両方を処理する。
まずコンタクトR(感熱紙レシート)を折りたたむが、USB端子の幅より少し小さめにするのがコツである。これで接点を掃除する。ヨコヨコ、タテタテと数度こすって処理する。もし不足なら折り目を変えて再度処理しよう。研磨剤は炭酸カルシウム粉なので接点を痛める心配は無い。
次に、イヤホン編のように、コンタクトRを裏返ししてコンタクトZ(鉛筆)をこすりつける。イヤホンの時の写真の使い回しだが、
これを再度たたんで写真のように接点を処理するのである。
これでも接触が不良な場合は端子のフレームに細工する手がある。
端子のフレームを少し潰して接触圧を高めることもできる。写真は分かりやすくするために大きめに潰したが、実際にはもう少しお手柔らかにすべきである.
同様にHDMI端子も処理できる。
HDMI端子の設計仕様は力学的に欠陥というか貧弱過ぎで、太いケーブルの圧力で接触が不安定になりやすい。チラチラとノイズが入るのは、ハードやソフトの相性だけでなく、接触不良でも起こり得る。我が家に来た数本のHDMIケーブルの内、3本は来た時から接触不良気味であった。HDMI端子は欠陥仕様だから、新品だからと言って油断はできない。
まずコンタクトRでメス側の処理である。メス側は板状の接点になっていて、接点はその上下両方にある。通常メス端子は水平に位置するので、板状接点の上側にホコリがついて汚染や酸化が起きやすい。従ってまず上側を念入りに、
とその下側も、
ヨコヨコタテタテと動かして処置する。次にコンタクトZでも処理する。
HDMIのオス側は間隙が薄いので、コンタクトRを縦に二分し薄くして処理すると良い。オスについてはケーブルの両端を処理するほうが良い。片方が酸化していればもう片方も酸化していることが多いからだ。webmasterの環境ではこの処理でパソコンモンターに盛大に入っていたノイズが消失する効果が得られた。
処置最後に大きな声では言えないが、HDMIのオス側端子を上下にわずかに潰すとさらに接触が確実になる。ただしわずかである。潰し過ぎると端子が壊れる可能性がある。
以上で基本的な使い方はおおむね理解していただけたと思う。あなたの財布に眠っているレシートと机の引き出しで閑古鳥をかこっている鉛筆はものすごい道具なのである。少ないリソースで最大の効果を上げることが当サイトが主張する風水工学の極地なのである。
検索で見る限り、特殊接点復活剤コンタクトZ(鉛筆)は各方面で定着しているようだ。特殊接点復活剤コンタクトR(感熱紙レシート)はまだ知名度は低いものの、有用性に置いてはコンタクトZに劣らない。
□接触不良USBを救うコンタクトRのナゾ
□コンタクトZ種明かしとオイル相談のナゾ
□特殊接点復活剤コンタクトZのナゾ
このサイトの記述はある程度読者のスキルに期待しているので、細かい使い方までは書かなかったが、最近では電気製品を扱う巧緻性は低下しているようで、今回は分かりやすいチュートリアル編を作ってみた。最初の材料はありがちなヘッドホンプラグ編である
普段使っていないので見事に錆びて白く濁っている。そこでコンタクトRの出番で、図のように折って接点の部分に巻きつけて指でひねって磨くのである。コンタクトRとは感熱紙のレシートであり、母材(炭酸カルシウム)には顕色剤とロイコ色素のマイクロカプセルが分散しており、表面には薄くやはり炭酸カルシウムのオーバーコート層がある。オーバーコートは軽い擦過で発色するのを防ぐのが役目である。
金属を磨くのはオーバーコート層の炭酸カルシウムの微粒子である。色が出る場合は強くこすり過ぎなので、少しズラしてなるべく白い部分でこするのだ。。
かなり酸化層はとれたのでガリ音は減るが、まだ電極表面は凸凹していて接触状況はベストでは無いし、すぐ酸化するので安定性が無い。そこでコンタクトZで表面を研磨するとともに凹部に黒鉛を詰めて接触抵抗をへらし、凸部では黒鉛がジャックとの滑りと接触を改善するのである。また鉛筆には微量の油分も染み込ましてあり、それ自体が潤滑性がある黒鉛と相まって滑りを良くするとともに酸化を防ぐのである。
まずコンタクトRの裏に図のようにコンタクトZを塗る。
塗ったところを電極に巻きつけてひねって磨く。
これで出来上がりだ。粉の着き過ぎはかえって接触抵抗が大きくなるので、黒光するまで磨くのがミソである。撮影の照明条件は同じだが輝きが出てきたためにハレーションが大きくなっている。肉眼で見ると黒光りしている状態だ。
この状態でジャックに挿して少し回してみる。まだガリ音がでるときは、最後の操作を2,3回繰り返せばよい。プラグ表面のコンタクトZがジャックの接点を研磨し滑りをよくすると共に凹部を炭素で埋めてくれる。
次回はUSB端子とHDMI端子のチュートリアルを予定している。
例年確定申告の季節である。ふるさと納税については始めての申告だが、国税庁の申告作成システムにふるさと納税の設定があるので、簡単に作成して税務署のポストに入れてきたところである。いろいろ計算してみると、確かにふるさと納税はお得であることを確認したので今年も試すことにした。
問題はどこに納税してどういうお礼の品をゲットするか、である。昨年のふるさと納税お礼の品については、
□ふるさと納税でやってきた佐賀牛のナゾ
のように佐賀県小城市の佐賀牛4.4kgだったが、A5等級の肉は脂が多すぎてもてあまし気味であった。子供は”今年はいろいろな種類の物を食べたい”とのことである。小城市は納税ランキング17位とかなり上位であり、毎月違うものを送ってくるお礼の品もあるが米が無洗米でないので今回のチョイスから外れた。なお小城市にはブラックモンブランアイスクリーム50本とかなかなか魅力的なチョイスがある。
そうは言ってもやはり肉は欠かせないので、今年はぐっと等級を落として量を重視することにした。肉といえば納税額ランキング第1位は宮崎県都城市で、リターン率では宮崎県と佐賀県が他県を圧倒している。チョイスは、宮崎牛ロース・肩ローススライス(都城産)とした。
納税書類は届いたが現品はまだ届いていない。
次はうなぎが食いたいという。そこで、ランキング第8位の鹿児島県大崎町の鹿児島県産うなぎ長蒲焼大を選んだ。
これは早速到着して食したが、やはりジャポニカ種は肉質が柔らかくうまい。
大崎町からはもう一品、安納イモ5kgも選んだ。
これもドカっとやってきた。調理には電子レンジが便利で、ラップに包んで大きなものは7分、小さいものが6分(500W級)で柔らかく仕上がる。イモはオレンジ色でアンコのように甘い。これも驚くべき速度で消費されてしまった。
次は魚が食べたいという。かといって佐世保や平戸の活魚が来ても困るので、東北震災で大被害を受けた陸前高田を応援する意味で三陸産かつおたたき・ぶり炙りセット(特)とした。
肉厚で量が多く、口のなかで溶けていく感じである。一部はたたきとして、一部は刺し身として、簡単に消費されてしまった。
さて肉、魚とくれば鶏であろう。とすれば当地でも人気のある三瀬鶏が良いのではないか。そこで、佐賀県吉野ケ里町のみつせ鶏うまとろ手羽とチキンバーとした。
現物はやや濃厚すぎる味付けであった。チキンバーも辛く大人向けである。
さて、おかずがそろったらお米がいいだろう。我が家は無洗米をつかっているので、鳥取県倉吉市の無洗米コシヒカリがよさそうである。
これは納税書類は届いたが現品はまだ届いていない。あるいは秋に届くのだろうか。
今年度からは納税額のリミットが倍になっているし、予算まではかなり余裕がある。そこで食品でなく話題の長野県飯山市の液晶モニターはどうだろう。ふるさと納税チョイスサイトで”パソコン”と検索するとパソコンがもらえる市町村は結構あるが、やはり地元にメーカーがなければふるあと納税の恩恵は少ないのではなかろうか?
これもある日ドカーンと届いた。ただし、メーカーは飯山市にあるがモニター自体はMade in Chinaであった。早速HDMIで接続しているが、思ったより横長でビデオに良いが事務用には天地が浅い感じである。市価が18k円程度なので30k円の納税のリターン率は60%に達するので、トクだと思う。
全国のランキングを見たら福岡県久留米市のお礼の品が面白い。ランキング12位とかなりの納税を得ていて、チョイスも肉や魚、酒だけでなく、ラーメン、籃胎漆器、鉢植え、ブリジストンのタイヤや自転車、ゴルフクラブにボール、アサヒ靴、月星靴、テニスラケット、久留米絣になんとPET-CTを含めた人間ドックまである。久留米ならほしい物が見つかる可能性は高いのかも知れない。
いろいろな市町村を眺めているところである。やはり人気上位は肉や魚、米と言った所である。個人的にはサシの入った肉はこりごりだが依然として人気は高いようだ。
Webmasterはふるさとチョイスを利用している。ここで品をチョイスして、支払いはクレジットカードか、Yahoo公金支払いが便利である。このサイトでは所得や納税額から納税のリミット金額が計算できる。
品物は、ふるさとチョイスで直接指名できる場合、納税額からポイント額が決まり、ポイントを使ってネットもしくは郵送で決済する場合とがある。個人的には直接指定するほうが簡単な気がする。
納税すると自治体から寄付金受領証明書が送られてくるので、確定申告の時に証明書を添付するだけである。
本年度からは寄附金税額控除に係る申告特例(ワンストップ特例)なる制度ができて、確定申告せずに控除されるようになったが、事務が煩雑で個人情報が守られるかどうか疑問な仕組みである。
この制度では納税できる自治体が5箇所に限られる。ただし同じ自治体に複数回の納税は可能だ。次に、納税する度に申告特例申請書にマイナンバーを含め記入しなければならない。さらに個人証明として、マイナンバーの個人番号カード表裏のコピー、もしくはマイナンバー通知カードの表+免許証などのコピー、あるいは個人番号が記載された住民票+免許証などのコピーを添えて送らなければいけない。
煩雑な上にマイナンバーが流出する可能性も高くなるので、確定申告の方がはるかに簡単だと思う。Webmasterは確定申告を始めて33年になる。かつては住宅控除や株取引の合算が煩雑だったが、今は国税庁のサイトでこれらを含め簡単に作成できる。データを記録し、それを次年度に入力すれば入力の手間もぐっと減少するので、ふるさと納税を好機として納税者の権利である確定申告を実行されることをお勧めしたい。
これで今年の納税予定額の半分を使ったところなので、まだまだチョイスの楽しみが残っている。さあ何を選ぼうか。
定期整備の間に楽しみにしていた新型プリウスを試乗した。
ブツの色はサーモテクトライムグリーンというらしい。以前乗っていたVITAもライムグリーンと称していたが、この色は黄色の蛍光ペンみたいで雨の日なのに妙に明るく輝いていた。個人的にチョイスは憚られるが、目立つので免許取りたての人や高齢者に是非乗って頂きたい色である。
ボンネットとフロントシールドの間に明確なノッチがあり、プリウス30よりよっぽど普通の車に見える。三角窓の処理はヴィッツに似ている。涙目のヘッドライトは気に入らないが、おそらくマイナーで手直しされるであろう。リアスタイルも明るい所ではさほど突飛には見えないが、夜間見かけた灯火には相当なインパクトがあった。
これで我慢しろ、と言われれば耐えられるデザインだが、できれば買ったその日にヘッドライトと涙目の間に車体色のビニールテープを貼りたいところである。
Webmasterならこうしたいが、凡庸すぎるかも知れない。もともとプリウスはメカが突出しているので、機能に関係無いデザインは凡庸でもいいと思っている。
試乗車はSグレードだが、各種オプションが組んであった。ドアを開けるとスカッフプレートが無いことに気付いた。我が家の安物Lグレードに付いているのが、、、
インパネはセンターメーターで、ナビが運転中見難い低い位置にある。ナビは一番高い位置にあるべきだが、そうするとセンターメーターが見えなくなるのでこんな位置になったのだろう。センターメーターを運転席側に15cm動かせばいいのだが。
インパネ上端の一等地はエアコン吹き出し口とナビの取り合いになるが、現在は画面に多くの情報を表示する都合でナビが上にある設計が多い。ピアノ調の加飾や、ステアリングやシフト周囲の白いトイレ陶器風パネルは意味不明である。白いコンソールも反射が窓に反射して視界に入るので邪魔である。
ドア内装は前方に向かうにつれて高くなりドアミラー周囲の視界が欠けている。インパネとの一体感を演出したいのだろうが、このあたりの視界は気になる。最近はアクア、86とインパネは混迷を深めているが、新型プリウスも問題がある。この陶器調パネルはマイナーチェンジでシルバー調になるような気がする。
座面が65mm低いが、スカットルも60mm低くなっていて前方視界はプリウス30より自然に感じる。ここは評価したい所だが、着座位置が高いプリウス30も渋滞の先が見えるので悪くない。これはSUVやミニバンに乗り続けている人が良く言う理由の一つである。
今回は全高が20mm、最低地上高やサイドシルは10mm低くなっているので、車体上下幅は10mm小さくなっている。そのかわり、サイドシルに対し床面をホンダ車みたいに25mm程度落とし込んであるので、室内高にはあまり変化ない。ただしリアの窓は天地が狭く後席に押し込まれた感覚がある。リアのセンタートンネルは20mmほど高くなっている印象だがさほど気にはならない。
相変わらず斜め後ろの視界は良くないが、リア窓は幅が広くなっている。リア窓はアンテナを避ける微妙な形で、過去のセリカを思わせるスポイラーへの筋と相まってデザイン過剰だが、フロントの涙目ほどは気にならなかった。
トヨタはTNGAなる骨格を宣伝しているが、VWの「MQB」(モジュラー・トランスバース・マトリックス)のパクリである。トヨタはゴルフの剛性とアクセラHVの操縦性にいたくショックを受けたようで、CT200hをベースとしてチューンした様子である。
モジュラーとは少ない構成要素の組み合わせで多くの車種を作る方式らしいが、もともとプリウス30のMCプラットフォームは国外向けカローラからアルファード(の一部)、さらにMIRAIまで使い回していて、既にしてモジュラーと言えないこともない。しかし衝突安全性のための改良でツギハギになっているので、今後のモデル戦略を見越して一新したのだろう。
自動車生産世界一を争う(争っていた)VWの動向が気になるようで、敵がレーザーシームなら、トヨタはより安いコストで同等なプラットフォームを作りましたよ、と世界中に言いたいのだろうが、今回のリアサスはゴルフのデッドコピーである。個人的にはVWなんか気にせずに独自の技術で世界一を目指してもらいたい。
最近の国産車はVWの影響を受けている。VWはマスコミ動員をかけて低排気量ターボ+DCTを宣伝してきた。日本のメーカーは低排気量ターボを古くから軽自動車に積んでいて多くの経験があるが、コストや耐久性の点で大衆車には載せたくないようだ。そもそも低排気量用ターボの大半は日本製である。一方トラブルを克服して完成したCVTは狭い日本に向いており、何かと故障の多いDCTは積みたくない。レーザーシーム溶接も世界で最初に試したのは実はトヨタだったが生産性の問題で採用されなかった。
しかしVWの宣伝は巧みだ。しかもメルセデスやBMWまでもが、同じ設計のエンジンの排気量や過給圧をちょこっと変えて多くのエンジングレードを安価で作り出す商売でうまい汁を吸っている。そこでトヨタもクラウンアスリートやSUVにターボを積んでどの程度売れるのか探っている。
マツダも低排気量ターボには否定的であったが、これまたちょこっと出して反応を探る様子である。ホンダもミニバンなどに積んで反応を見ているところだ。日産も安直にメルセデスの2Lターボを乗せて様子見している。しかし、どのメーカーもにエコカーに向かっている日本市場で本格的に低排気量ターボを拡販する気は無いようだ。
さてエンジンを掛けてみると朝一番で冷えていたのか高めのアイドリングが始まった。ところがエンジン騒音がマスダンパーを仕込んだWebmasterのプリウス30より明らかにウルサイのである。Webmasterのプリウスはフェンダーまわりのドラミング対策に加えオイルを5W-30としていることが、新型プリウスの0W-20より静かな理由であろう。新型は車室の静音化に努力したとあるが大事なところが抜けている。ドア、フロアやリアパネルに対策してもフェンダーパネルの対策が抜けている。
ディーラーから5W-30を指定した理由を聞かれたので”0W-20ではエンジンがガサツでウルサイから”と答えたところ、なるほど、という答えであった。サービスの人間は0W-20を長く交換しない客を恐れている様子である。
個人的には190Eで5W-30を使うとブローバイが目立ったものが5W-50で激減し、スロットルやアイドルコンペンセーターの掃除の頻度も減った経験がある。プリウスはただでさえ遅閉じアトキンソンと大量のEGRでインテーク系が汚れる可能性がある。硬いオイルにしてブローバイを減らすことで長期的にデリケートで高くつくインテーク系のトラブルを予防することも目的である。
今回のプリウスはウォータージャケットスペーサでシリンダ上部を冷やしシリンダ下部を保温している。上部を冷やしてノッキング耐性を高め、下部を保温してフリクションを減らす仕掛けである。良く調べるとこの仕掛は既にV6ではかなり以前から使われていて1%以下ながら燃費が良くなるそうである。
今回はEGRを増やして希薄燃焼とし、タンブル流を増やし、点火パワーを強くし、シリンダー上部を冷やしてノッキング対策しながら燃費を稼いでいる。エンジンの改良による燃費寄与度はわずかに5%だそうだが、熱効率38%を誇るマツダのSKYACTIVEからの影響があった様子である。
細かいところでは冷却系が変わっている。以前はEGRクーラーはルームヒーターの下流にあった。今回はEGRクーラーはヒーターの上流にある。EGR流量が増えたので、その排熱でヒーターも効かせようという考えのようだ。プリウス30は排気ガス回収装置など配管が複雑だったが、今回は大きく2系統に整理されている。
プリウス30で冬季に流れの良い郊外でエコ運転をすると次第に水温が下がってヒーターが効かなくなることがあった。その状態で信号停止すると電池残量低下のためではなく、水温低下のためにエンジンが回転するのである。Webmasterは対策として冬期には下グリルの3/4を塞いでいるが、今回はグリルを自動的に開閉するシャッターが装備されている。これがモード燃費にどれほど関係するかは知らないが、細かいところまでオタクな改良が徹底している。
操作系はSafety Sense P などの操作が増えたためか、ステアリングスイッチが変わっている。プリウス30まではボタンごとに機能が固定してたが、今回はジョイスティック式に機能を選ぶようになっていて、メニューの階層が深く操作は解りにくい。
運転中に階層を渡り歩くのは困難だし、右折待ちなどでステアリングが曲がった状態ではジョイスティックの方向が変わり操作し難い。慣れの問題かも知れないが、個人的にはステアリングにイボイノシシのように多数のボタンが付けるのは誤動作でドライバーがパニックに陥りやすく危険だと思っている。今は高齢者ドライバーがパニックで店に飛び込む時代である、。
乗り出すと、ステアリングはプリウス30よりギア比がクイックになっている。プリウス30はどんな状況でも絶対にスピンさせない決意?が感じられる作りであった。山道で砂がまかれたカーブでフェイントを掛けたがステアリングが勝手にカウンターを当てたのに驚いたことがある。それも慣れてしまうと気楽で安全ではある。
ガスペダルの効きはエコ設定でもプリウス30のノーマル程度に特性が変えられていてレスポンスも良くなっている。エンジンのON-OFfのショックも宣伝どおり軽くなっているが、やはりwebmasterのプリウスよりエンジン音が大きい。フェンダーのパネルが共振している。
今回は雨が降っていて操縦性を云々するほど乗っていないし、リアの段差でのNVHの差も良く解らなかった。それはWebmasterがリアタイヤの空気圧を落としているからかも知れないし、ネジ締結部のペイント強化、ボディ補強にリアゲートストッパー調整などを施しているからかも知れない。ドアの締まる音もドアスタビライザーのせいかあまり差を感じなかった。
今回のプリウス50の改良は微に入り細に入りで、他の車種ではめったに見られないレベルである。米国燃費規格での10%の向上のために費やされた工夫は車全体に渡り、膨大な開発時間とコストがかかっているのは良くわかる。外装もトヨタなりに頑張ったことは認めるが、ここの所不作が続くインパネには初代ヴィッツのように社外デザイナーを採用すべきだった。
現状ではプリウス30と比べて今すぐ欲しいのはToyota Safety Sense Pで、それ以外は日常の渋滞走行でご利益はあまり感じないかも知れない。そもそも世の車の大半はプリウスほど細かい所まで作り込まれていないし、日本の交通事情ではハンドリングを楽しむチャンスも少なく、殆どのユーザーはそもそも操縦性に期待していない。
今どきの弱体化した若い男子はハンドリングに興味を示さない。彼らはむしろSUVやミニバンのように背が高いクルマの方を見ている。一方派手なカッコは男性化した女子に受けるかも知れない。
今回は予想以上に細かい所まで作りが変わっているので、トヨタにしても新型車での些細なトラブルや異音などは出るだろう。Safety Sense Pも不断に改良が進むであろうしフロントの顔も変わると思うので、Webmasterは更新するとしてもマイナーチェンジを待ちたいが、依然としてWRX-S4からの引力も感じているところだ。
プリウス30がやってきて6年が経過した。意外かと思われるがWebmasterは定期整備のプランに加入している。理由は、高価でバイタルな部品が故障したときにゴネるためである。今回は整備の間に新型プリウスに試乗をお願いしてある。
実はその前に若干の細工を加えた。右フェンダーマスダンパーの設置である。
我が家のプリウスは左右三角窓部の接着、前フェンダーのドラミング対策で非常に静かになった。特に冷機時のアイドリングの騒音と振動が激減したのである。何でもっと早く対策しなかったか悔やまれる。
プリウスで安FF車感を感じさせるのが約1800rpmでエンジンの振動が車体に共鳴することだ。これについてはトヨタはラジエーターなどの重量物をゴムで支持すること(マスダンパー化)で消そうとした形跡がある。
その振動はどうやらエンジン右側のハンガー付近からフェンダーやボディーに拡散するようである。とすれば、右フェンダー付近に重量物によるマスダンパーを仕込めばいいのではないか?
実はWebmasterは納車早々にマスダンパー化を行っている。マスダンパーとは実はクーラントのタンクである。これはネジ2箇所と底にゴム1箇所でボディに固定されている。納車の日にヘッドライトHID化した時に邪魔なので一次的にタンクをはずした時の工夫である。
察しの良い方なら、なぜ一箇所がゴムマウントなのか解ると思うが、どうやらトヨタ自体がクーラントタンクをダイナミックダンパーとして使おうと画策した形跡がある。その時はタンクの前後のネジ2箇所にスポンジをはさんで置いたのである。写真でストラットタワーとタンクの間に挟んだスポンジゴムが解るであろうか?新車早々に仕込んだので、設置前後の振動の変化は評価できなかった。
三角窓の振動問題から、もっとマスダンパーを効かせれば振動がさらに小さくなるのでは無いかと思ったのだ。そこでもっと本格的なマスダンパー化に着手することにした。
と言っても、水道のパッキンのゴムをネジの前後に挟むだけである。タンク側は金属のブッシュが入っているので、ネジとの間はグリースで潤滑しゴムで若干の振動を許すのである。締め具合が大事で、強すぎても緩すぎても良くない。揺り動かすと少し動く程度にゴムを効かせておいて、緩み止めにボンドを塗っていおく。たとえこのネジが二本とも抜けてもタンクは底のゴムに嵌っているので踊りだすことは無いし、仮にタンクが破壊してもエンジンが止まることも無い。
さて試乗だが、確かにアイドリングの振動と騒音が小さくなったようだ。プリウスのアイドリングは発電のために高めに設定されていて、結構気になるのだが、これが小さくなった。これまた何でもっと早く対策しなかったか悔やまれる。
さて他にもマスダンパーになるものが無いかと思って探したが、さすがトヨタ、ウインドウォッシャータンクもゴムで支持してある。ただしインバーターは剛性で結合されていて、このあたりマスダンパー化の余地があるが重量物なのでどうするか考えているところである。
今や我が家のプリウスのエンジンは運転席から以前よりずっと距離があるように感じられるのである。新車のころのプリウスの運転席とエンジンとの距離感を30cm、クラウンハイブリッドの場合の距離感を100cmとすると、50cm位までは遠ざかった感じだ。ただしアイドリング音が小さくなると今度は走行音が気になる。やはり一朝一夕にして安普請のプリウスがクラウン並になるハズも無いが、安FF車感はずいぶん減った。
さて、今度試乗する新型プリウスのアイドリング音が我が家のロートルプリウスとどれほど違うか、比べるのが楽しみである。
現在WebmasterのメインのスマホのメインはシャープのSHL25(AU)で仕事の電話がかかってくる端末だ。シャープの経営は予断を許さない状況だが応援という意味で購入した。性能は標準的だがIGZOパネルと3150mAhバッテリーの威力で電池の持ちが良く、メールチェックだけなら充電は週に一回で済む。
サブはフリービットのPANDAのver1で、これも会社を応援する意味で購入した。速度が500kbpsと低いのでyoutubeやロケフリがうまく再生できない場合がある。普段は車載専門としてSaftySightアプリで前方を監視したりGoogleMapを補助ナビとして使っている。玄関先まで案内してストリートビューで景色を見せてくれるGoogleMapに比べると純正ナビは時代遅れである。
他にwillcomが2回線あり、1回線は私用、もう1回線は基本料金やメールが無料なwillcom03で車載している。つまり車専用スマホが2台あるわけだ。
フリービットにはさしたる不満は無いが2年経過したので解約するかどうか迷っている。そこで代替の候補としてのデジモノSIM(so-netの0sim)を入手した。初期手数料が本代だけで月500MBまでは無料というおいしい契約である。
本を購入しSIM(nano-SIM)をアダプターを使いPANDAに入れてみた。PANDAはRAMが500KBと不足気味なので、rootを取り不要なアプリやサービスなどを一掃したのでメモリー不足にはなっていない。
APを設定して再起動するとAndroid標準ブラウザが動作して指定サイトに案内されるが、パスワードを入力してもログインできなかった。どうやらJAVAscriptあたりの機能が不足しているようである。OPERAからログインしなおし個人情報やクレジット情報を入れると動作した。
支払いがクレジットカードのみというのが学生には敷居が高いかもしれないが、事務経費を考えると順当な選択だろう。いつでも課金可能であることと、支払い能力のあるユーザーに制限していることがこの商売が成立するためのミソなのだろう。
SIMはLTE仕様だが3G専門のPANDAやSTREAKでの動作は問題無い。速度は下りで5-10Mbps程度出ておりyoutubeやロケフリでも問題無い。
料金は毎月500MBまではタダで、それ以後は2GBまで100MB毎に100円チャージされる従量制で2GBで1600円に達するが、それ以降は5GBまではチャージは増えものの5GBを超えると速度が200kbpsに低下する。5GB使っても1600円とは安くなったものだ。
使用量はサイトにアクセスすると表示されるが、一日遅れの数字なので注意が必要だ。現在フリービットに1000円払っているので、同額なら1.5GBまで使えることになる。
無駄な通信を減らすにはスマホの掃除が必要だ。アプリが勝手に通信するとそれだけで月500MBは食ってしまう。また現時点ではSMSが契約できないので、LINEを使うにはもう一台携帯が必要になる。SMSが無いとセルスタンバイで電池を浪費する機種があるが、PANDAやSTREAKはユニバーサルモデルのせいか問題は無い。
また電話契約ができないのでIP電話が必要になる。以前から契約している基本料金不要のSMARTalkは動作したが、いつでも着信するようにアプリを稼働させておくと若干電池を消費するようだ。
無駄なアプリやサービスを掃除して通信量をモニターしてみると、500MBはブラウザーやメールだけのユーザーにはちょうど一ヶ月分の通信料となる。問題は動画で、Webmasterがよく使っているロケフリのSlinMediaで実用最低限のレート200kbps強なので一分で1.5MBとなる。仮に500MBすべてを動画に使うと300分になる勘定だ。 現時点での試算では、車載でGoogleMapのナビ機能を使い、SafeSightを稼働し、SlingMediaを使用し速度制限無しにつかっても月1000円前後の見込みである。
この手の格安SIMをすでに使っているユーザーには初期費用がタダという点でメリットがあると思うが、このSIMを最初かつ唯一の端末で使いたいというユーザーにはお勧めし難い。
やはり、ガラ携あるいはYmobile(旧willcom)を使っていて、二代目のネット専用に使うのが適当だろう。動画のヘビーユーザーで5GBを簡単に使っていしまうユーザーには向かないのは当たり前である。
どうしても格安な一台で済ませたい、また子供に持たせたいとすれば、TONE(旧フリービット)がチョイスであろう。IP電話の着呼が確実で電池を消費しない。また子供の閲覧範囲を制限したり、GPSで行動を親がモニターするのに別料金がかからない点などは優れている。
もちろん動画ストリームは苦しいが、自宅ではWiFiを使わせれば良いし動画漬けにならないだろう。どうしても高速な通信が必要な場合は1GBを300円でチャージ可能だ。ただしTONEの新しいLTE端末m15(\29800)は3G端末m14(\19800)より少し高いので、端末代込だと月\2250になる。
月に1000円前後のSIMの僅かな価格差は普通の勤め人では問題にならないであろうが、若者では可処分所得に効いてくるから大問題である。例えば月1000円の差は特売カップラーメン10個に相当するからである。マスを対象とした雑誌にSIMが付いてくる時代にはこのあたりの金銭感覚はマーケットの今後を占うのに重要だと思うので、あえて実物を入手し今度のSIM価格動向を注視している。
今年の年末年始は当直もなく急患もなく平和であった。Webmasterは珍しく3本の映画を見た。
まず「007 スペクター」のスペクターは懐かしい悪の組織である。個人的にダニエル・クレイグは嫌いでないがボンドガールのレア・セドゥがイケてない。「ミッション:インポッシブル」の非道な殺し屋サビーヌ・モローのほうが良かったし、モニカ・ベルッチの扱いも納得が行かない。果たしてダニエル・クレイグは次回作に出るのか出ないのか?
「スターウォーズフォースの覚醒」は悪の帝国ディ◯ニー配給なのが気に入らない。主役のデイジー・リドリーは好感が持てるが、カイロ・レンがダークサイドに落ちた理由が、アナキンがダークサイドに落ちた理由と同様に希薄である。基本的にはスター・ウォーズ第一作のオマージュだが脚本はあまり良くない。ディ◯ニーはこれで数作品とテーマパークで稼ぐつもりか?
最後が「ブリッジオブザスパイ」だが、トム・ハンクスの好演が光るし、実話ベースでリアリティーがあり、アカデミー賞候補と言われるだけのものはある。やはり作り話ではどこかに破綻が来るのと対照的である。
さてWebmasterのプリウスは快調であるものの、何故か冬の間だけ2000rpm付近で右インパネ付近からエンジンの振動に共鳴した音が出る。ピラーカバーなどを外してみたが共鳴が出るところを見ると内装からでは無い。直さなければと思っているうちに気温があがると出なくなるのだ。
ただし右前の三角窓を指で抑えると共鳴音の出具合が変わることには気づいていた。何気なく三角窓付近のフェンダーをたたくとビビリ音が出る。そこで三角窓先端とフェンダーの間にスポンジを挟むと音が消えた。フェンダーがエンジン騒音で振動し三角窓先端と当たることで共鳴音が出ていたのだ。
なぜ冬だけ音が出るのか?それは冬は三角窓周辺のゴムが収縮して固くなると隙間ができて振動するが、暖かくなってゴムに弾力性が回復すると隙間が埋まって音が消える、というのが不思議な共鳴音の発生メカニズムだった。
そこで、三角窓先端とフェンダーの間、またフロントウインドー周辺のゴムとフェンダーの間を接着剤(透明ゴム系)で固定した。図の黄色テープでマスキングしている部位とゴムの間である。
また、エンジンルーム側からフレームとフェンダーの間にスポンジを詰めてフェンダーのドラミングをダンプしている。なおフェンダー中央付近でもフレームとの間にスポンジを詰めた。スポンジは脱落しないようにゴム系接着剤で固定しておいた。
さらにエンジンルームとフロントドア間の隔壁フロントフェンダサイドパネルプロテクタ(隙間だらけだが)とフェンダ間のピン固定部位も接着剤で補強した。音は出ていなかったが左フェンダーにも同様な対策を施した。そうすると、両側フェンダーパネルのどこを叩いても濁った音がしないようになった。
処置後に走行するとエンジン音が小さくなりエンジンON-OFFがさらに解りにくくなっただけでなく、走行音まで小さくなった。今までフェンダーがエンジン振動や走行振動でドラミングを起こしていたのである。これに6年間気付かなかったとはずいぶん損をしたような気がする。もっとも今度はオーディオの上においているwillcom03からのカタカタという音が気になるようになった。異音は退治して静かになると、今度は今まで聞こえなかった異音が聞こえるようになる。異音退治は果てしないのである。
共鳴音が減ってさらに静かになると再度プリウスに愛着が湧いてきた。WRX-S4には引力を感じるが加速感ならNC700Sの方が上だし、現在の交通事情では速いクルマが速く着く訳でも無い。
新型プリウスに興味はあるが、アイポイントが6cmが低い分前方の渋滞や右折車が見えにくいだろう。昔乗っていたRX-7では車高が低いため先の交通事情が見えず損をしていた。スポーツカーの事故率が高いのは車高が低く先の交通事情が見え難いことも理由の一つだと思っている。
不具合や異音をメーカーが認識し解決するまでにはある程度暇がかかるものだ。やはり新型プリウスに更新することになってもマイナーチェンジ後にしたいと考えるのである。