Version September 1999
September 27●儚くなったニッカド電池のナゾ(喝を入れて現世に引き戻す編)
で現世に呼び戻したバッテリーも再度旅立ってしまったようだ。再度喝を入れたが蘇生しなかった。このハンディーカムはH立のOEMによるKセラの製品で、いろいろ探したがこの形のバッテリーがどうしても見つからない。
こういうときは空蝉(うつせみ)電池術を使うしか無い。空蝉とは元の電池の抜け殻を使う方法だ。
まずモナカの接着面に時計用のコジリを慎重にいれて分離する。案の定セルのひとつが塩を吹いており、電圧ゼロで重症のようだ。そこで入手しやすいコードレス電話の補修用電池(3セルx2組)と入れ替えることにした。
細工は簡単だが、発熱することを考えてハンダ付けは強度に余裕を持たせ、線材の要所要所はホットメルトで止めておく。最後にモナカをボンドで合体させておしまいである。
これで一安心と思ったらコードレス電話がすぐ切れるとの苦情あり。この電話は2年前に数分で切れるようになり喝を入れて蘇生したが、再度冥土に旅立ってしまった。
慎重にヒートシュリンクを剥ぐが、ニッカドセルは4本とも塩を吹いていない。電話本体を充電器に置くと絶えずトリクル充電されるので、内部が干からびて寿命を迎えたのだろう。
この電話器はインターフォン専業メーカーのもので、スペア電池が入手難だ。さらにホームテレホンとも連動していてタチが悪い。そこで同じ仕様のセル(4本)を細工して使うことにする。
セルを繋ぐニッケル板を切って空蝉(元のヒートシュリンク)に納め、コネクター加工をする。ニッカド電池で線材がショートすると火事になるので丁寧に絶縁する。間違ってもどっかのビデオのような細工は禁物だ。これでこの電話も21世紀を迎える事ができるだろう。
現在の電器製品はなんでもかんでも充電式になっている。しかし電池が寿命を迎え補修部品が入手できないと本体まで強制的に寿命となる。従って空蝉(うつせみ)電池術で輪廻転生をはかり炭酸ガスの排出を抑制すべきである。
ところでニッカド系とニッケル水素系セルは充電方法に幅があるので、同一容量のセルで補修すれば充電にさほど問題は生じない。しかしリチウム系は完全に同一仕様のセルが入手できない限り補修は難しい。
September 20
●端末名にみるアドミンの趣味性のナゾ
かわりに増えたのがgwとかproxyと数字の組み合わせの面白くない名前である。おそらくセキュリティーとIP不足のためファイヤーウォールを構築する場合が増えているからだろう。しかし中には気の利いた名前がある。そこで本ページの膨大なログから面白い端末名(多くはgatewayだが)を拾ってみた。セキュリティーの観点から会社名は明かさないが、どうしてもバレてしまう会社もある。
端末名で圧倒的に多いのが星座やギリシャ神話の類である。
mercury K電電
atlas C時計
orion M総研
neptune S精密
rigel D電電
gemini K大学
perseus 某プロバイダー
sirius T織機
aquarius O大学
これならネタが星の数ほどあるので、当分困ることはなかろう。
chopin D通大
mozart O大学
debussy 某プロバイダー
walz 某プロバイダー
これも使える手だ。おもしろいものとしては、
lovelovefire Cソフトウェア(コギャル風)
komachi Mカメラ
bambi T大学
gorilla Cカメラ
kingkong Y製薬
celery T印刷
kilimanjaro Sコンピューター
会社で一貫したシリーズで名前をつけている所もある。
sapphire, emerald, amethyst, pearl... M下電器
california, tennessee, oregon, wyoming.. 大和事務機器
M下にこんなに洒落っ気があるとは知らなかった。なかには随分古風な物もあり、ドメイン主の趣味が偲ばれる。
hosho S建設
mondo 某プロバイダー
torii 某プロバイダー
hikesi T医歯大
monban T建設機械
まだ見かけないが、匿名サーバーninjaとかも使えるかもしれない。さてWebmasterが気に入った端末名ベスト5の第5位は、
sesame Hソフトウェア
開けゴマということか。セキュリティーが堅そうだ。第4位、
novita 某プロバイダー
おそらく過負荷で落ちてばかりいるのだろう。続いて第3位、
mebius 某プロバイダー
ルーティングがうまく動いていない感じか。本来はSャープが使うべきかも。第2位、
cosmo Mツダ
以前ロータリー車を持っていたWebmasterはどうしても点が甘い。そして栄えある第一位、
akadama Sントリー
これも説明を要しない。というか、他のメーカーには使えない名前だ。決してWebmasterの好みの会社では無いが、さすがとしか言いようが無い。
通常のユーザーには見えてこない端末名だが、命名したアドミンの趣味と会社の動脈硬化度が偲ばれて実に趣が深い。Webmasterも端末名にもっと工夫すれば良かったと後悔している。
P.S.
端末の命名法についてはrfc1178に記載があるとか。内容は半分冗談のノリである。gooで検索して見て欲しい。
September 13
●大古テスター復活のナゾ・その2(スーパーフラックスZ編)
そこでこの断線をハンダで繋ごうとしたがハンダがうまく乗らない。抵抗線がNiやCrを含んだ特殊合金でできているからだろう。しかしよく見ると抵抗線は可変抵抗器の端子にハンダ付けされている。と言うことは断線部はハンダ付けできるのでは無いか。
ハンダ付けにはまず表面をキレイにする必要がある。断線付近をWebmaster愛用のファイバーブラシで磨く。これはグラスファイバーを束にしたもので、デコボコした部品のサビ落としやパターン磨きに便利だ。製品名は”ELIMINATOR”、メーカーは”PRO MOTORCAR PRD INC USA"であり自動車板金部品屋で手に入る。ただし削り粉が肌に付くとチカチカするので注意が必要だ。
次に市販のステンレス用フラックスを使ってハンダ付けを試みる。成分は書いてないがリン酸系か。この手のハンダ付けには酸化を防ぐためにフラックスを少し多めにつけ、容量のあるハンダコテで一気にハンダを乗せるのがコツだ。しかしうまく行かない。”ステンレスフラックス破れたり”。しばし策を練る。
そうだ!!当B級テクノラボが長年の研究により開発に成功した”山本式特殊スーパーフラックスZ”を試すことにしよう。同様に多めに使用して一気にハンダを盛ると今度はうまく行った。その仕上がりの様子が写真である。断線した抵抗線が見えるだろうか。どっかの電気メーカーのハンダ付けよりは上手に仕上がったと思う。
さてテスターに電池を入れると抵抗レンジも動き始めた。これで大古テスターが完全に復活したわけだ。性能は2kΩ/Vとたいしたことは無いが、フェノール樹脂と鉄製裏蓋による重厚さ、そして節度の良いスイッチは昨今の安普請な測定器にはとんとご無沙汰なフィーリングである。ところで前回のテスター復活の記事についてはいくつかお手紙をいただいた。
”記事を読んで感激で涙が出ました。ぜひ完全復活させて上げてください”
とのこと。約束が果たせて感無量である。
ところで、”スーパーフラックスZ”とは何かだって?どうしても聞きたい?それはどこの家のトイレにもあるサンポールである。なおサンポールには塩酸が含まれているので、取り扱いには注意して欲しい。また余剰のフラックスは腐食を防ぐために十分に洗浄除去する必要がある。
それは某ラジヲメーカーがアマチュア無線に参入したときの50MHzのトランシーバーの回路であった。
まずAを見て欲しい。専門で無いヒトには少しつらいかもしれないが、これは50MHz帯のAM-FMトランシーバーの受信機のアタマの回路(フロントエンド)である。フロントエンドは感度、S/N、安定性や妨害を除去する能力を決める。
図AではまずFETで信号を増幅する。FETは入力インピーダンスが高くこの手の用途にもってこいである。ところがカスケード接続で信号を受ける2段目はなぜかトランジスターという珍回路である。おそらくこの素子の組み合わせは日本の無線機の中でこの機械だけだろう。
標準的なフロントエンドは図Bのようになっている。これは当時アマ無線機では業務機顔負の高級な設計だったI電気製IC-21(144MHzFM)のフロントエンドである。多段ヘリカルリゾネーターが実に立派である。図Aとよく似ているが1段目も2段目もFETになっている標準的な回路だ。とすると図Aは何でこうなったのだろう。
当時FETはトランジスターより\200も高かった。最初はおそらく図Bのようになっていたのだろう。設計者は厳しいコストダウンの要求に対して性能を確保するために2段目をトランジスターに置換した珍回路を考案したのだろう。AGC(自動利得調節)回路も相応の珍回路になっている。
さらにおもしろいのは図Cである。これは高い受信波の周波数を低い周波数に変換するミキサーという回路である。ミキサーも動作条件で感度やS/Nが大きく変わるので重要な回路である。
なんと図Cではミキサー自体が水晶発振器も兼ねている。左から来た受信は水晶発振の周波数と混ぜられ、その差が右に伝えられる。自励式の局部発振とミキサーとの組み合わせは何ら珍しくないが、水晶式の局部発振回路とミキサーの兼用はあまり見たことが無い。
で図Dだが、これまた比較的高級な設計のI電気製のミキサーである。下の水晶式局部発振回路の出力が上のFETミキサー回路に注入されている。この注入の強度は無線機の感度を決定する重要な要素であるが、図Cではそれは調節する事は到底できそうにない。
図Cの回路でいくら節約できるかというとおそらく\200程度だと思う。さらに図Cの無線機ではやたらコイルが多い。フィルターを多用すると高く付くが、コイルだと1個使っても\5という所か。当時某社はコイルを自製していたので安かったのだろう。
実際にはコイルの調節に人手を喰うのでトータルのコストの差はさらに小さくなると思う。他にも回路を見渡すと多くの部品が巧みに省略されており、コストダウンもここまで来ると実に立派だ。もちろん性能は図B、D式の方が優れるが実用上大差ない所が見事である。
思ったように回路を作れる図B、Dの設計者は幸せであるが、コストダウンのため苦労している図A、Cの設計者の苦労は大変なもので、完成しても晩酌の味は今一つだったろう。家電メーカーと無線機メーカーの設計ポリシーの差が如実に現れている回路である。
次にお下がりの部品で6GW8Aシングルのステレオメインアンプを作る頃、兄は6BM8プッシュプルのステレオプリメインアンプを作っていた。それはプリアンプが6BM8のカソード電流で直流点火するシロモノだった。で、Webmasterが6BM8プッシュプルのステレオメインアンプを失敗した頃、兄は7189プッシュプルのトーンコントロール付きプリメインアンプを作っていた。兄のトランスは山水のスーパーワイドシリーズでボリュームはアルプスの特注品だった。当然は民生品より良い物が簡単に作れた時代であった。また中学生の特注にメーカーが応じてくれた時代でもあった。
二人してスピーカーはなぜかダブルコーンのシングルだった。私が6A7で兄はSRシリーズの後はベータとか言うイコライザーが尖ったものを使っていた。そして兄弟とも高校生になるとオーディオは早くも廃人道に入ってしまった。当時自宅にはパイオニアのマルチシステムにアカイのデッキがあったので興味が録音の方へ移ったのである。趣味というものは早く頂点に達するほど早く廃人道へ落ちる。
そんな時代にオシロがあるハズも無く、もっぱらテスターが頼りだった。何度か兄のテスター(SP-6)を焼いて怒られていたWebmasterがお年玉で買ったのがS社の改良品SP-6Dである。当時S社以外にもヒオキなどがあった。性能やデザインはむしろヒオキの製品の方が優れていたのだが、スイッチの節度が良く頑丈なS社の製品を買ったのである。値段は2000円ちょっとだったと思う。
時は巡りデジタルの時代になったので、何事にもオシロが無いと始まらない。しかし接地から完全に浮いているテスターも依然として有用だ。数あるテスターの中でも、やはり最初に手が伸びるのは電池の要らないアナログテスターである。宝物のSP-6Dははるばる旅をしていたのだが、ついにWebmasterの手元に戻って来たのである。 でフタを開けるとタイムカプセルの如くフェノールが焼けるニオイがした。間違いなくWebmasterが小学生の時にレンジを間違えて抵抗を焼いたときのニオイであった。メーターはダイオードで保護されるので、間違えたレンジによって焼ける抵抗が決まっている。S社は親切な会社で、当時から所定の額の切手(何十円という単位)で部品を小分けしてくれたのである。
さて戻ってきたテスターだが、電池と鉄製覆いは液漏れで完全に腐食していた。電池の外装が鉄かどうかで指示に差が出ないように電池ケースは鉄製の覆いが付いていたのである。これは後で直すとしてもう一台のテスターで調べると、メーターが故障している。
メーターをバラすと端子の裏のハンダ付けが取れていただけだった。メーターが振れ出すと交流電圧は測定されるようになった。ご存じのように自己回復能力のあるセレン(亜酸化銅?)整流器は永遠の命を持つのである。スイッチの節度は買ったときと寸分変わりなく一級品である。
ところが交流が測れるのに直流電圧と電流がダメである。たかがテスターと思って回路を辿るが、故障の箇所が解らない。何度か調べて解らずフタをしたが直さないと気分が悪い。最後に”まさか”と思って調べたレオスタット(可変巻線抵抗)が2カ所断線していた。ハンダ付けしようと思ったが金属が特殊らしくハンダが乗らない。
そこで、一縷の望みをかけてメーカーにE-mailを送ってみた。程なく来た返事には”可変巻線抵抗のストックは無いが通常の巻線抵抗ならある。それで取りあえず動作するであろう”との事。しかも切手で部品を譲って下さるとのこと。数日して値段不相応に立派な包装で巻線抵抗がやって来た。それをハンダ付けすると、テスターの直流電圧と電流は精度はともかく息を吹き返したのである。
もちろん可変巻線抵抗では無いので抵抗測定は動いていない。この部分もリストアしようと思って策を練っているところである。無情の風が吹くデジタル時代でこのような商売が存続していたことに驚いた。その後S社はバルボル(死語か)を越える超高感度テスターを売っており、これはサンプルしなかったことが悔やまれる。そのかわりFETを使用した最初の電子テスターは手元で元気に動いている。
そこで、お礼といっては何だが21世紀をにらんでWebmasterはS社のアナログテスターをもう一台買い増した。作りはSP-6Dより安手になっていたが、おそらく末永く動いてくれる事だろう。思わずエコを忘れて物欲に走ったWebmasterだが、30年使えば地球も許してくれるか。久しぶりに計測器メーカーの意地というものを感じた経験であった。