今日の必ずトクする一言
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●風水別館 Annex version 2006

瀕死ハードディスクサルベージのナゾ
奥の深いヘッドホンチューンのナゾ
閑古鳥クルーザー浸水のナゾ
グレードダウンした風呂給湯器のナゾ
あやしげなトゥールビヨンのナゾ
延期された連休恒例メンテのナゾ
嗚呼、ヒトの耳は歪んでいるのか!!のナゾ
つましいPHSモバイル環境最適化のナゾ
家庭用お天気予報時計故障のナゾ
落下を防ぐ風水ノートパソコン金具のナゾ


瀕死ハードディスクサルベージのナゾ

それは一瞬のできごとだった。電源コードがひっかかったノートパソコンは水平に回転しながら床に落下した。

カッタン カッタン カッタン

ブートしてみるとHDD(MK6011MAT)はしばらく不気味な音を立てるが、その後使い物にならないと判断されBIOSのリストから消えてしまって立ち上がらない。通常で言えばお釈迦であるが、できればリカバリーしたいファイルがある。

最初はヘッドがHDDのブートエリアに移動するが情報が読めず、リトライしていると考えた。しかしBIOSのリストに見えないHDDは読む方法が無いので、意を決して蓋をあけてみることにした。読めないHDDはたとえサルベージできなかったとしても失うものは何も無い。かわりに、少なくともヘッド駆動用の上等な磁石を回収できる

ここからの内容を読んだ結果発生したいかなる損害も本ページは担保しません。

蓋を開けたままブートしてみると、ヘッドがパークする樹脂部品(写真中央下の白いもの、ディスクは既に回転している)から脱出できずにシークすらできない状態であることがわかった。どうやらこのHDDは衝撃で多くのシークエラーを起こすと緊急にヘッドをパークさせようとしたのだが、ヘッドが揺れてパークの樹脂にくい込んだようである。少なくともディスクの表面には傷は見当たらない。

そこで物理的にヘッドをディスク側に動かすとブートが可能となった。何とwindowsまでも立ち上がるでは無いか。どうやら落下の瞬間にヘッドが存在したエリアは重要なシステム領域ではなかったようである。早々に蓋をしてデータをサルベージすることにした。意外なことにHDDの健康状態を見張っているSMARTの警告は無かった。

その後DOSからFAT32からフォーマットをかけてみると、ものすごく時間がかかったが一晩放置すると無事終了した。現在はバックアップから書き戻して現用中である。HDDについては、地上をジャンボジェットが飛んでいて、、、、とか書かれるが実際にはディスク表面はかなり丈夫である。ヒットで発生したダストもその多くは回転で発生する気流によってフィルターに回収されるが、撒かれたダストによってバッドセクターが増え続けるようであればそのディスクは使えない。

目視ではっきりしなくてもヘッドがヒットした部分はバッドセクターとなって回復は難しい。windowsのツールは5992Mbytesの容量と1.9Mbytesのバッドセクターをレポートしている。このHDDの命運はバッドセクターが増えるかどうかなのだが、今のところ増加しないですんでいる。

もうひとつの興味は、HDDの健康状態を示すSMART(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)がブート時に何も警告しないことである。あるいはBIOSがSMARTによるチェックをサポートしていないのだろうか。

そこでいくつかあるSMARTのユーティリティーを走らせて見ると、”HDDは健康です”と言う。詳細をみると”代替セクターの残りは95%で当分OK”とのことである。これはどういうことだろうか。間違いなくこのHDDは落下によってバッドセクターを抱えた問題の品なのに、、、である。

これはSMARTの仕組みからすれば不思議では無い。HDDには規格の容量を確保するための予備のセクターがあり、インテリジェントなコントローラーが障害セクターを予備セクターと自動的に代替する。代替セクターの残りが5%以下になればBIOSで警告されるし、代替の発生頻度からいつごろHDDがダメになるかを予測することができる。

しかしHDDはOSにも二重に管理されており、OSがバッドセクターと判断した部分は読み書きから除外されるので、OSが使用可能と認識された領域に新たなバッドセクターが発生しない限りSMARTは警告を発しないのである。SMARTは万能ではなく、あくまでも障害を予期する機能の一つに過ぎないのである。

そうこうするうちに、何と同じような障害を発生したノートパソコンがもう一台預けられた。なんでも使用中にパームレストに手をついたら”ガリガリ”と音を発して立ち上がらなくなったという。

パソコンを預かりブートすると、HDD(DJSA-210)のディスクは回転すらしない。さすがにこれはサルベージ不能だと思ったが、とにかく開けてみることにした。内部は写真のようで、メーカーが違うのに内部は部品配置に至るまで非常に似ている。最適化を進めるとここまで酷似するのだろう。

今回もヘッドがパーク用の樹脂に食い込んでいた。ヘッドのアームが歪んだ状態でパークしようとしたために、アームの一部がディスクに接触し回転できない状態になったようである。ヘッドをいったんディスク側に戻すことで再度ブートするようになった。今回も幸いヘッドがヒットした部分はシステム領域では無かったようだ。目視でも表面の傷ははっきりしない。

データをリカバリー後にDOSでFAT32フォーマットをかけると、今回のバッドセクターは15MBytesと大きめである。SMARTの代替セクターの残りは83%と余裕がある。このHDDも通常なら間違いなくお釈迦だが、今後バッドセクターが急増しないかぎり経験値に頼るSMARTにもひっかからず使用されるであろう。

以上のことから、どう考えても使用不能と判断されるHDDからもデータをリカバリーできる可能性がある、ということだ。特にモバイルが前提の2.5インチは設計自体が3.5インチよりかなりショックに強い。

これは、スピンアップすらしないHDDからもデータは漏洩可能、ということでもある。HDDが一旦起動すれば意味の無いデータでHDDを埋めることは可能である。そして、起動しなくても大事なデータが残っている場合は、ドリルで穴を開けるなりしてから廃棄すべきであろう。

そうこうするうちに、またまた起動不能のノートパソコンが持ち込まれた。ネットをブルウズする途中でハングし、その後何度か起動したがその後は二度と起動しないという。電源を入れるとメーカーのロゴが見えるが、その後だんまりである。BIOSで”起動パラメーターを表示する”、を設定すると、起動チェックのあとにSMARTの警告が出た。

警告は英語で、”このHDDはもうすぐ寿命に達するので交換せよ、起動したいならF1を押せ!”とのことである。どうやら代替トラックの残りが5%を切ったか、あるいはエラーカウントが規定回数に達したようで、新しいHDDと交換すべきなのだが、SMARTの能力は経験的なので診断が正しいとは限らない。

というのは、その後ユーザーはバックアップをとったあと、起動時に毎回出るSMARTの警告をF1でバイパスしながら使用しているが、その後HDDは快調とのことである。可能性として、OSの遅延書き込みに関するエラーがバースト状に多数発生し、一気にSMARTのエラーカウンターを進めた可能性がある。

要するに、SMARTは有用な機能ではあるが絶対では無いということだ。

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奥の深いヘッドホンチューンのナゾ

オーディオの世界で最も音への影響が強いのはスピーカーの選択だろう。あなたがショップに行ってセレクターを 変えて行くと、どれ一つとして同じ音はしないことに気づくだろう。ということは、どの音も正しくないということだ。要するにトランスデューサーというよりは楽器に留まっているのである。設置条件の影響も大きいので、視聴で良くても自宅でびっくり、 ということもあるだろう。

同じようにヘッドホンの音の違いも大きい。幸い、ヘッドホンはユニットが小さく、振動板の変位も非常に少ないため、ユニットの歪、分割振動などは小さく済むが、耳介や外耳道の個人差の影響が大きい。

多くのユーザーが狭い空間を共有しながら都市騒音と戦っている現状では、遮音の良いキャナル(キャナル)タイプが人気である。他聞に漏れずWebmasterもこの手のタイプを使っているが、その中でも期待を上回ったのはKO$$社のThe Plugと呼ばれる安物であり、期待を大幅に下回ったのは$ONYのノイズキャンセラー付のものである。

もちろん、ノイズキャンセラーを動作させた状態の音質を期待するほうが間違っている。しかしキャンセラーをOFFとした状態では$ONYのロゴにはふさわしくないプアな音である。低音がまったく出ないわりにシャリシャリなのである。この製品にも現在の$ONYの問題が凝縮しているように感じる。

多くの革新を成し遂げてきた$ONYの製品には、こと音質についての毀誉褒貶がつきまとう。個人的にも$ONYの製品を解析し、分解し、文献を当たっていくと、このメーカーがまじめに技術の革新に取り組んできたことは認めよう。

たとえば、CDプレーヤーについて本ページでも取り上げてきたピックアップの振動がもたらすジッタの輪廻についても、いち早く対処したのは$ONYである。中でもピックアップ固定式プレーヤーなどは白眉というべきものであろう。そして、それぞれの世代に標準機と呼ばれる製品を出してきた。

しかし、である。その標準機の音質が業界最高であったかというと、さにあらず。また標準機と呼ばれるものは改良を加えながら長く販売してこそ意味があると思うのだが、あっさりと廃番になってしまう。

スピーカーについても同じで、あのULMスピーカーの磁気回路の技術には目からウロコが落ちたものだが、その音はサッパリであった。一時SS-G7で高い評価を受けたにもかかわらず、その後は再度さっぱりである。ビデオなどの回転系機器も、一番古くから作っているにもかかわらずなぜか他社よりメカ的な故障が多い。

ところで、KO$$の製品にもいろいろ学ぶところがあった。この製品は潤沢な低音がウリなのであるが、この値段で高級スピーカーかスーパーウーハーでないと再生不可能な50Hz以下の低音(たとえばThe phantom of the operaのベースのウォーキングトーン)を味合うことができる。と言うよりは低音は少し出すぎで、巷では低音を抑える改造がはやっている。低音を出す改造が多いなかで、ちょっと異様ではある。

そこで、KO$$の製品を下敷きとして$ONY機に手を入れれてみることにしよう。

1)イヤーピースの遮音

KOSSの特徴は遮音性の高い低発泡性ウレタンのイヤーピース(耳当て)である。これで振動板から鼓膜に至る空間を完全に密閉する。低音を損なう大きな原因はイヤービースの遮音が足らないことである。振動板の内側と外側の音は逆位相なので、両方が混じると低音が干渉して弱くなるのである。

$ONYの場合、どうしたことか(おそらく大量生産の都合で)耳側パッキンの一部が外耳道側に開いていている。この部で干渉が起きている可能性があるので、あっさり木工用ボンドあたりで埋めることとする。$ONYの高級器EXシリーズでは、振動板のパッキンをやけに強調しているということは、パッキンが十分で無い製品を作っていたと言うことになる。

2)イコライザー

チューブ開口部は複雑な形状になっていて、これは一種のイコライザーであると思われる。振動板より内側の空気室は絞られてチューブにつながっているが、ここも共鳴器を形成することになる。共鳴は中高音で響くピークを作り、時間分解能や定位を損なうので、これを防ぐためにチューブの開口に細工がなされている。

細工は高度なもので、開口部を多段で絞ることでピークを分散させ、その下の半月状のへこみは共鳴腔としてディップを形成し、特定のピークを打ち消す働きをするものようだ。

効率のためにはこの部分を削り落としたいところだが、別メーカーの製品で削り落としたところ強いピークが出て、それを消すのに多めスポンジを詰めることを要した経験から、お勧めしない。$ONYの高級器EXシリーズでは太いチューブとする代わりに多め目のスポンジを詰めている。

今回はピーク消すというよりはシャリシャリを落とすためにこの丸い穴にごくごく少量のスポンジを詰めた。昔から補聴器などでピークをダンプさせるために、毛糸やスポンジを詰めることがある。スポンジの効果が一番強いが、同時に高音レベル全体も落ちるので調節が必要だ。チューブを完全に塞がない程度の細いスポンジや毛糸も悪くない。

振動板とチューブの間には耳垢よけのスクリーンがある。これも空気室を前後に分割するために、中音域にディップを作るので取り外したいのだが、バラす必要もあり手をつけなかった。$ONYのEXシリーズではスクリーンをチューブ出口に移し、内部のスクリーンは中高音を落とすフィルターとしている。このあたり、不特定多数を対象とすると耳垢スクリーンをはずせないのはメーカーの限界ではある。

大雑把そうな外観からの印象に反して、KO$$には高度なイコライザーが仕込まれている。形状は空気室のスロート面積を穏やかに絞るために、ホーンツイーターなどに見られる砲弾型となっており、その周囲には中高音域のレベルとピークを抑えるためのスポンジが入っている。

さらに細工が細かいのは、チューブ開口部に段がついていることだ。これはチューブの共鳴周波数を散らせる作用がある。特筆すべきは、これらのイコライジングが最小限のダンプ材で能率低下を伴わずに耳障りなピークをうまく消していることである。

3)振動板より外側の空気室

振動板の外側にある小さな空気室の特性は振動板より内側の音響特性に大きな影響を与える。良く見ると小さな穴が開いているが、その一つの働きは単純に振動板の背圧を抜くという作用、もう一つは振動室外側の空気室の容積と絡んで共鳴させる作用である。

ヘルムホルツの式によると、空気室の容積が一定の場合、穴が小さいほど共鳴周波数は下がるが、$ONY機では共鳴よりも背圧を抜く作用が大きいようなので、内部に切子を入れないように注意しながら倍の大きさに拡大した。内部を覗いてもダンプ材らしきものが見えないので、ごく少量のスポンジを緩く挿入した。

KOSSは空気室を大きめとして共鳴周波数を下げるとともに、主に中高音に効果のあるスポンジのダンプ材を詰めている。低音についてはダンプ材の効果は低く、むしろ外装に開けた穴で背圧を抜くことでレベル低下を抑える考え方のようだ。

穴はこの手のヘッドホンとしてはかなり大きめで、やはり背圧を意識しているようだ。ためしにこの穴をテープで塞ぐと低音が抑えられるので、低音が出すぎの場合はテープで調節できる。KO$$に比べると、EXシリーズでは耳側のダンプを重視している割に空気室のサイズが小さい気がする。また大口径ユニットを使った割にチューブが長く、そのピークを消すダンプ材を多用したためか能率が良くない。

細工は以上である。真鍮もチタンもアルミも出てこないので申し訳ないが、余計な孔が開いているとか、必要な孔が開いていないとか材質以前の低次元な問題が多いので、皆様が期待されたようなファンシーなことは何もない。個人的にはプラスティックの方が内部損失の無い金属よりむしろ良いと考えている。

以上の細工で、安物ヘッドホンも低音が増え同時にシャリシャリ感が抑えらて、ようやく常用に耐える程度になった。細工によってノイズキャンセラー作用はむしろ強力になったように思われる。危惧した能率も低下しておらず、これは密閉度向上と背圧低下が効いているように思う。Webmasterの場合、これに加え、イヤーピースはイヤーウィスパーと呼ばれるスポンジ耳栓を半分に切ったものに代えている。

このヘッドホンにはノイズキャンセラー用のマイクが仕込まれていて、その重みのためか外れやすい。スポンジの摩擦があるとかなり外れにくくなるし、遮音も改善してさらに低音レベルが改善する。汚れやすく見栄えが悪いので写真に上げなかったが、見えない部分なのでこれもお勧めしたい。

今回ターゲットとしたKO$$のPLUGは\2000以下の安物にもかかわらず、学ぶべき高度なエンジニアリングが施されていることがわかった。特徴あるイヤーピースはユーザー(の耳孔)を選ぶものの、お買い得感は非常に高い。しかも効率は大口径ユニットを強調するEXシリーズより6dBも高い。能率が高いということはポータブルオーディオの電池も長く持つということでもある。もっとも、このせいでいろいろな機器のベースのノイズが聞こえてしまうこともあるが。

さて、一方の$ONYはどうだろうか。オーディオに関して$ONYが開発し蓄積してきたノウハウは膨大なもので、世界中のメーカーから尊敬され、模倣されてきた歴史がある。上記の問題も、開発者は誰よりも十分に認識しているはずだが、それが製品として反映させる際の見切りレベルというか、コストをかけずに製品化するシステムがPナソニックに比べて甘くなっており、それがブランド力の低下につながっているように思う。

個人的には、高級品よりはむしろコストの制約が厳しい安物の大量生産品ほど、メーカーの実力が現れると思う。今後は$ONYのロゴを付ける前に、某メーカーのように耳の肥えたスクリーナーが最低限のチェックを施してから出荷するようにしてもらいところである。別の高級なブランドをでっちあげるよりも、底辺の製品のレベルを上げるか、いっそコストに見合う品質が確保できない製品は切ってしまった方が名誉挽回に重要な気がするのである。

やはりAイワでなく$ONYのロゴが付いている製品には、最低限の音質を期待してしまうのは、Webmasterの考え方が古いのだろうか。

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閑古鳥クルーザー浸水のナゾ

Webmasterの連休の恒例行事として、草むしりと船の手入れがあるのだが、今年は5月の連休に強制労働させられたおかげで、その後の日程が狂ってしまった。そろそろ冬支度という今ごろに、春夏できなかった手入れをしなくてはいけない。

とはいえ、船の手入れは半分喜びでもあり、半分恐怖でもある。毎日日光にジリジリと焼かれ、台風来襲時には木の葉のように翻弄される船体には、毎回必ず何かしらの不具合が見つかるからである。不具合を見れば、頭のなかでチーンと計算機が動いて修理代を算出する。しかし今回の不具合では計算機は完全に停止してしまった。

日焼けしたシート(ロープ)をまとめながらキャビンを開けると、景色が違う。そう、キャビンがくるぶし付近まで浸水しているのだ。

”浸水、浸水”と、頭が真っ白になるが、この程度の浸水は過去何回かの経験がある。はて、どこから水が入ったのだろうか。以前の記憶を呼び戻すと、窓から雨水?あるいは船底につながる配管?それともスターンチューブ?、、、、そうやはりスターンチューブがあやしい。

船の床下にはビルジと呼ばれるドブがあり、下水が溜まるようになっている。船には手動のビルジポンプがあり、それで床板のところまで排水したところがこの写真である。結構な作業量で手にマメができてしまった。電動ポンプならよかったのであるが、電動は電気が無いと動かないし、たいてい数年でダメになるものである。

さて原因を探さなければならない。まず点検すべきはスターンチューブである。この船のエンジンは船内にあり、エンジンルーム(左写真の突き当たり)から回転軸が船底を貫通してスクリューにつながっている。貫通する部分には浸水しないように油浸した天然繊維のロープが駆動軸にまかれていて、それを前後から鉄板で圧迫して防水するようになっている。圧迫の具合はネジで締めて調節できるのうになっているが、設計の前提からして潤滑のために少し漏れるようにできている。

船が港を出るにはエンジンをたかなければならない。パッキングが磨耗しないように少量の水が潤滑のために絶えず船内に漏れるのである。イメージとしては、走っているときにポタ、ポタ、ポタ、係留時には1分に数滴ポタと漏れるのがベストなのだ。

横着して長くエンジンで走ると、走った後にしばらく漏れが大きくなるが、そのうち漏れは小さくなる。そのあたりを、パッキングを締めるねじの加減で調節するのである。

いいかげんな設計ではあるが、軸受でわずかに漏れることで潤滑と密閉を保つのは、エンジンのピストンリングもオイルシールも、冷却水ポンプやエアコンコンプレッサーの軸のグラファイトシールも全て同じ考え方なのである。最近はフッ素が入った上質な合成ゴムが開発されたので、スターンチューブも特殊ゴムパッキンにすこしづつ置換されているところだ。

漁船では、毎日出港前にビルジの量を点検して排水し、また帰港したら再度ビルジを点検してポンプを作動させるのがあたりまえなのである。つまり、プレジャーボートの使われ方が設計の前提に合っていないのある。

さっそくエンジンルームのカバーをはずし、スターンチューブのねじを締めるのだが、スパナが合わないので車の工具を降ろして調節した。見ると、滴るあたりには緑青を含んだ塩のツララが成長していた。すでに述べたように、なかなか調節はトリッキーである。締めすぎると焼き付くし、緩いと浸水である。

指が汚れてツメが割れた頃に一段落しての試運転である。台風一過の博多湾は気持ちが良い。

そうこうすると、子供用ディンギーの一団がカルガモの親子のように港を出てきた。最後の方は小学生低学年らしく迎え風に四苦八苦しているようで、モーターボートがやってきてひっぱりはじめた。どうやらベソ顔であるが、なるほど自立心を養うのにはよいスポーツである。

寄港して床板をはいで見ると、ビルジが増えている。まだスターンチューブから漏っているのか?しかしその様子は無い。とすると、ヘッド(トイレ)の配管か?冷却水の配管か?あるいはキッチンシンクの配管から漏っているのだろうか。

とキッチンシンクのコックのふたをあけると、そこに水がたまっていた。これが試運転の揺れで出てきたようである。ポンプで排水して、やっと本日の点検はおしまいである。

と、ここまで書いて不思議に思ったあなたは賢い。例え一分間に数滴でも長時間には相当な量になって、その内に船が沈むのではないか?

答えはイエスでもあり、ノーでもある。というのは夏季には毎分数滴の水は蒸発する量とほぼイーブンで、ビルジはあまり増えない。しかし、冬季は着実にたまって行く。とすると水船になりそうだが、そうなる船もあるし、そうならない船もある。

この船の場合、前部のベッドや後部のトランク、左右のベッドの下は空洞になっていて、その部が大きな浮力を発生している。したがって、浸水してもだいたいくるぶし程度までで浮力とつりあってくるぶしの高さで浸水が止まることになる。しかし、このような区画が無い古い木造船ではそのまま水船になってしまうこともある。

もちろん、この船でも椅子の高さを超えるような大量の浸水があれば急速に浮力が失われ、船底につけた鉄製キールの重みで沈んでしまう。過去の事故の記録を見ると、多くは追い風の時に後ろから波をかぶり、それがキャビンに入って沈してしまうようである。

沈しやすいかどうかは船型にもよる。この船は1980年頃のモデルなので、コクピットと船尾の間には大きい中空なトランクがついていて、後ろからの波をかぶりにくい。一方、最近のクルーザーで速度を重視するものはディンギーのような上下に薄い船型になっており、船尾はディンギーのようにさしたる敷居もなく後ろに開いている。

これは少しでも船の長さ(水線長)をのばして速度を出すのに有利であるし、また風上に向かって走っている時はコクピットへの浸水は自動的に排水されるが、追い風でピッチングしているときに後ろから大波を受けると沈してしまうのである。

このように、船型はどんどん変化している。この船のインテリアは杢目調かつ間仕切りの多いデザインで、ちょっと前のマンションのように古臭い。新型の船は明るい色調で間仕切りが少なく開放的になっている。キッチンもカップ麺やレトルト食品が進歩した現代ではレンジは不要かも知れない。

というわけで、やっと整備が終わってクルーズの準備が完成したのであるが、これから冬に向かって気温はどんどん低下してシーズンオフとなる。そうなるとクルージングも急速に不人気となり、春までお預けになってしまうのである。そして、その頃には、また新しい不具合が見つかるのである。

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グレードダウンした風呂給湯器のナゾ

新築当時から我が家の風呂給湯器にはいろいろと問題があり、webmasterは絶望的な戦いを続けてきた。今回は給湯器を交換して、トラブル根絶をたくらんだのである。それには何より風呂給湯機の選択が重要だ。

最近では高度に電脳化したガス風呂給湯器が普及しており、それらは正確には3種類に分類される。

一番普及しているのは、ガス風呂給湯器と呼ばれるものである。これは一つの筐体にお湯を供給する給湯器と、追炊き用の風呂釜の2系統が内蔵された日本独自の製品である。さらに追炊き用の釜には、浴室に隣接設置されお湯を自然対流で循環させる隣接設置形と、ポンプで強制的に循環させる設置フリー型とがある。

隣接設置形は最もオーソドックスなもので、浴槽に自然対流の穴が2つ開いているヤツであるが、浴室のすぐ外側に設置する必要がある。一方、設置フリー型はポンプでお湯を循環させるため、一つのアタッチメントに小さな穴が2つ組み込まれている。日本の厳しい土地事情やマンションへの対応の点で、最近は場所を選ばない設置フリー型が増えている。

もうひとつは、高温水供給タイプと呼ばれるもので、追炊きの変わりに80-90度の湯を”さし湯”として供給するもので、正確には風呂釜ではない。給湯器は1系統とシンプルであり、落とし込み弁を介して自動お湯張りや”さし湯”を供給するようになっている。

我が家の風呂釜は、隣接設置形と呼ばれるものであるが、個人的にはこれは欠陥品といわないまでもかなり問題のある製品と認識している。その理由は、

1)風呂釜に湯ドロがたまりやすい。
2)保温性が極めて悪い。

ことである。毎日念入りに風呂釜を洗い、ときどき風呂釜洗浄剤を使っていても、夏季には何となくクサイのである。理由は簡単で、お湯張りは給湯器から行われ、夏季には追炊き釜は殆ど使われないので釜が高温になって殺菌されることがなく、また湯を落としても湯が残留するので、釜の中に湯ドロが発生するのである。

もうひとつの問題は、構造上保温性が非常に悪いことである。お湯は上の穴から風呂釜に入り、そこで効率よく冷却されて重くなり、下の穴から出てくる。それに対してWebmasterは過去

□Jan. 22:黄昏の24時間風呂のナゾ(泡風呂編)
□Feb. 29:百式循環風呂保温装置のナゾ(ガス消費編)
□Jan. 9:九九式循環風呂保温装置のナゾ
□Jan. 19:CD-ROMで風水学的省エネのナゾ(風呂保温装置編)

などで、絶望的な戦いを続けてきた。特にCD-ROMは冬季の保温については効果的ではあるが、残った湯が湯ドロになる問題は解決困難である。

それだけでは無い。自然対流用の直径5cm、長さ約50cmの配管2本と風呂釜は盲腸のように常時ムダなお湯を浪費するのである。計算では約数リットルのお湯が常時ムダになり、風呂洗いにはその数倍の水を浪費するので、風呂一回分の水量の約5%がムダになる勘定なのである。

ポンプを使用する設置フリー型も同様に湯ドロ汚染の問題があり、その複雑な構造とポンプは故障の原因となる。湯ドロ防止として設置フリー形、隣接設置形とも水道水で循環路を洗浄する機能を持つ高級機種もあるが、毎回の洗浄の水はムダであるし、それを廃棄する余計な配管が必要になる。熟考したWebmasterの結論は、

風呂にそもそも追炊き機能は不要である!

ということである。というのは、Webmasterが過去住んでいたマンションの給湯器は高温水供給タイプだったが、それで困ったことは無かった。シンプルな給湯器は故障の可能性も低いし、浴槽に余計な配管が無いので保温力が高い。ものすごく冷えてしまった場合はシャワーを使えばいい。そもそも、寒い欧米でも追炊き機能のついた風呂はジャグジーを除けば殆ど存在しない。

というわけで、Webmsterは近所のホームセンターに赴いて見積もりを頼んだ。何と、給湯器は定価の30%-40%と、ガス会社のショップよりかなり安かった。どうやら工務店は工事費で利潤を確保するようである。価格はタイプが違っていても殆ど同じで、基本部分の給湯器の号数で決まるようだ。

しかし、ホームセンターの担当は、”本当に高温水供給タイプでいいんですか?”と何度も念をおす。見積もりに来た業者も同じ質問を繰り返す。

そういえば、ホームセンターにあった業者向けカタログには、”前の給湯器より機能や能力がアップしたものを勧めないと後々トラブルになりやすい”と書いてあった。

Webmasterは”家に皮膚が弱い者がいるので、お湯が循環しない清潔なタイプにしたい。選択については家族全員が納得済みである”との約束で、やっと引き受けてもらえた。

工事自体は半日で終了した。古い給湯機を撤去し、自然対流用のパイプ2本抜き、穴のひとつを塞ぎ、もうひとつをサーミスター付さし湯アダプターに交換、前の配線を生かしてリモコン2台を交換し、水道とガスの配管を延長した。

給湯器は見積もりでは20号だったが、実際には特に断りも無く同価格ながら24号が設置されていた。Webmasterの家では新築早々に水漏れ事故があり、多くの住宅機器を交換した。その時の業者によれば、キッチンや水周り機器の納入価格は3割程度であり、業者の力関係、型遅れ品、不良在庫などの事情でさらに安くなることがあると言う。まるで中近東のバザールのようである。

交換後の効果は期待以上であった。まず小型化して壁掛け型になった給湯器の能力は50%増となり、お湯張りが早くなった。浴槽には循環路が無いので清潔であるし、掃除も簡単で水もムダにならない。配管による熱のロスが無くなって格段に保温力が改善したので、高温さし湯でも十分対応できそうである。浴室もクサくないし、残り湯を使う洗濯機まで清潔になった。

ひそかに期待していたサンドイッチ現象(お湯を出すと途中で冷水が出て再度お湯が出る)の解消は期待した程ではなかった。サンドイッチ現象が無い変わりにお湯が出るのがやけに遅いのである。お湯を循環させる仕掛けは無いので、給湯機の能力とバイパスする冷水量とを調節して、湯温をゆっくり上げる制御に過ぎないからである。

風呂の温度は、高温さし湯口についたサーミスタが常時に監視している。自動保温も可能だが、寒冷地でなければその必要性は薄いように思う。以前の給湯器の高温さし湯はかなり唐突に出てきて、足で熱水をかき混ぜる必要があったが、今度のは電脳制御のせいか、”お邪魔します”という感じで楚々と出てくるのが芸の細かいところである。

というわけで、今回の工事は給湯器はグレードダウンしたものの、実用性能としてははるかに大きな改善になったと思う。そこで、改めてWebmasterは再度お尋ねする。

本当に追炊き機能は必要ですか?追炊き機能のための水とガスのロスとニオイを正当化できますか?

と。

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新型ちゃんぽん製造法のナゾ

Webmaseterは長崎ちゃんぽんが大好きである。もちろん、ラーメンも好きなのだが、野菜の量が少ないなど栄養的に問題が多い。その点、ちゃんぽんはキャベツなどの野菜が入っているので、食塩と麺の鹹水(かんすい)だけに注意すれば良い。

というわけで、学生時代は毎日ちゃんぽんを喰っていたこともある。ひとつには24時間営業だったせいもあるが、そうなると、店員から”いつものですね”とか言われるようになる。

ただ、ちゃんぽんは基本的にスローフードであり、オーダーして食事に供するまでの時間が長い。これに対し、フランチャイズによっては回転鍋で別途に炒め物を準備する方法をとっていたが、それでも調理時間はあまり短縮されていなかった。

ところが、である。webmasterの近所のフランチャイズでは、ちゃんぽんが5分強で供されるようになった。ただし、以前と違って一人分ずつ出てくる。そこで、webmasterが独自調査を行ったところ、新製法は下図のようになっていることが解った。

まず従来の製法だが、中華鍋に野菜や肉、エビなどを入れて炒める。同時に生麺を別の釜で茹で始める。炒めが終了すると、これにスープを入れて短時間煮て、最後にドンブリで麺と合体させる。これは古典的な製法と同じである。

この製法では野菜などを炒めるのに時間が掛かるのが難点だが、逆に数人分を同時にサーブできるのが利点である。

ところが、新方法では一人前ごとに調理される。麺も生麺ではなく、一度茹でられたものが冷凍で供給され、具も加熱処理済みのものが用意されている。

最初から平底のパンにトッピング以外の殆どの材料が投入され、自動加熱装置にかけられる。

これはIH調理装置を仕込んだ鉄板の上のヨークが横に移動し、鉄板上のパンを一定の時間で出口方向に移動させるのである。

その後ヨークは後方に退いた後に入り口方向に横に移動し、再度前方に移動して元の位置に復帰する。これを繰り返すたびに、一人前ごとに調理済みのものが出口に出てくるので、これをドンブリに移してトッピングを載せることで完成するのである。

この装置が導入された当初は、店内に見掛けない人間がいたので、フランクに問題点を聞いてみた。まず、生麺と冷凍麺のコシの差だが、

”あーよくお気づきになりましたね。弊社で徹底的に調理済みの時点で同じになるように調整されています。調理法の差より、従来の方法での調理人のバラツキが大きいようです。”

確かに、前には生煮えの具や麺に出会ったことがあった。次に聞いたのは、家族分が同時にサーブされないデメリットである。

”これについては、現在も一人前ずつ運ぶ手間と調理時間のかねあいを見ているところです。ですから、全ての店舗にこの機械が導入されるわけではありません。”

とのことである。家族分が一度に来ない点については、調理法が高速化されたギョウザや、セルフのジュース類があることで、大きな苦情にはならないようである。ただ、他の郊外店ではこの製法を見掛けないことから、まだテストの段階なのだろう。

webmaster的には、従来より出来上がりがより均一になったように思う。もともと煮物である麺についてはまずまずだが、炒め物については油でソテーされた香ばしい感覚は乏しいように思う。これは、味より匂いや見掛けに関係する部分が大きいので、携帯を操作しながら食すると気づかないかも知れない。

店にとっては、速度向上だけでなくオール電化となり、空調や清掃の負荷が減るなどの利点も多いようだ。従来の方式では調理担当者の腕にはヤケドの跡が熟練を示す勲章のように見えたものだが、今後はそれも見られなくなるのだろうか。

この手の店のなかでは唯一のスローフードであったチャンポンがファストフードになった点には一抹の寂しさも感じたのである。なお、デフレが終わり資源価格が上昇したことから、近日中に値上げされるそうだが、安いファミレスとの価格差が小さくなることから、今回の事が客足にどう響くのかは予断を許さない。

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怪しげなトゥールビヨンのナゾ

先日知人の腕をみると、見慣れぬ時計があった。よく見ると、まごうことなきトゥールビヨンである。しかしウラスケの機械には刻印が無く、なんとなく由来が怪しい。そこで、webmasterの珍品との交換を条件に借用して調べることにした。

トゥールビヨンについては、こちらに国産S社の特許文書からおこした構造図を書いたことがある。S社のムーブは、ブランド名を飾った大型のケージに天輪、アンクル、ガンギ車を納めており、ガンギ車から伸びるカナが内歯の固定歯車に絡むものであった。また輪列にはケージのカナではなくケージ自体の外歯から連なっていた。

通常のトゥールビヨンは途中で90度曲がったイングリッシュレバーと呼ばれるアンクルを使ってガンギ車を内側に引き込んでケージを小型化しているが、S社のものは通常のストレートアンクルを使っている。これは通常の天輪やアンクルを使って生産性とメンテ性を向上させるためだろう。そのかわり大きめになったケージを薄く納めるために固定歯車を内歯として厚みを抑えている。

しかしながら、S社はこれを実用化せずにAGSとかスプリングドライブとかのニッチかつヲタクな設計にご執心なのだが、あまり売れていない。一方、S社の高級機械式時計は量産ムーブを念入りに調整して上等な外装に納めた物なので、舶来の複雑時計を見慣れたユーザーには魅力的に見えない。

そんな中で、登場したのがアジア製とおぼしきトゥールビヨンである。外観は、ダイヤル面にケージの支点を持たない点で、過去のプログレスウォッチ社製(現STT社)フライングトゥールビヨンに酷似している。プログレス社のムーブはダイヤル面にケージの支点を持たず、代わりにボールベアリングを用いた片持ち式となっていた。その構造は図のようである。

プログレス社のムーブには、天輪がケージ中心から偏心したものと、イングリッシュレバーを用いてケージが天輪と同軸のものの2種があった。見場としては天輪が偏心したもののほうがハデであるが天輪が小さくなる。一方同軸のものは大きな天輪が使えるがダイヤル面のインパクトは小さい。ただダイヤル面の支点のバーがトゥールビヨンの記号の一つでもあるので、フライングトゥールビヨンは好みは分かれるところである。

さて、借用してみると、大きくwebmasterの予想を裏切ったことが2点あった。

最初に、日差10秒以内と精度が予想以上に良いことだ。そもそもトゥールビヨンは重力による姿勢差を消すためにブレゲによって考案された方法だが、構造が複雑で加工が難しいこと、ケージが重いこと、調節が難しいことなどのため、通常の時計より必ずしも精度が良く無いのだが、少なくともこの個体の精度は日常使用に耐える。

次に驚いたのは、ゼンマイを巻き始めると天輪がすぐに動き始めたことである。そんなことは当たり前と言われればそれまでであるが、機械的な抵抗が大きい複雑時計では当たり前のことが当たり前とは限らない。これはボールベアリングを含めたケージ回りの抵抗が小さいことを意味する。

過去webmasterは、某販売店にてクロノスイス社製のトゥールビヨンを手にとって見たことがあった。それは天輪が同軸にあるプログレスウォッチ社製ムーブのものであったが、なんと手巻きのゼンマイを全て巻き上げても肝心のトゥールビヨンが動きださない。店員が”この手の複雑時計は機構が重いので往々にして。。。。”と揺すると、弱々しく動き始め、元気が良くなるのに若干の時間を要した。

この個体を見ても、ケージは面取りされているしヒゲゼンマイも調整はなされているようだ。何より、部品精度がシンガポール製セイコーファイブより高いレベルであることに驚かされる。ということは、今や得体の知れない時計の加工技術が、CADやNC加工機械の発展により、かつての標準的な国産機械式時計を越えていることを認めざるを得ないのである。

とすると、である。とすると、このような複雑時計がグローバルかつ安価に出回る時代には、S社には、外装が豪華な宝飾時計としてしか生きる道が無いのであろうか?あるいは純国産ということにこだわる少数のユーザーを相手に商売をするしか無いのだろうか?あるいは、彼らが注力するAGSやスプリングドライブに純粋な機械式時計に卓る魅力と耐久性があるのだろうか?

以前原付のスクーターをボアアップしたときに、アジアの名もない工場から流れてきたシリンダーやピストンの加工精度が高いことに驚いたことがあるが、今回は得体の知れない時計の加工精度に再度驚かされた。

この先、日本はどうやってメシを喰っていけばいいのか、しばしブルーな気分のwebmasterなのであった。

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延期された連休恒例メンテのナゾ

Webmasterがいろいろな所に出没するたびに言われる言葉、そしていろいろな方からメールを頂くたびに書いてある言葉は、

”更新が滞っているが、どうなっているのだ??”

ということである。Webmasterとしては、黄金週間の恒例として家族サービス以外に、

1.家のメンテ。(主に草むしり、風呂のカビとりなど)
2.車のメンテ。(オイル、ATF交換など)
3.船のメンテ。(ビルジ、船底掃除、ロープ保守など)
4.人間のメンテ。(ピアノ練習、身辺整理など)

などが、過去の記事にも書かれている通りデューティーなのであるが、今年は始まらなかった。それは連休に働いていたからである。私達の職業には基本的に絶対的なオフというものはなく、深夜も休日も基本的にオンコールなのであるが、連休に当直以外の通常日勤が入ったのは初めてである。ついに医療もここまで来たのか、と感慨が深い。

というわけで、疲れ果てたwebmasterは連休後半に寝たきりだったのだが、父親の権威を保つためにも一輪車のパンクを直せという要求にはファーストプライオリティーで応じなければいけない。我が家では、どんな故障でも父親が当然治すべきだと考えられているからだ。

作業は自転車よりブレーキとチェーンが無いだけ簡単である。車軸はヘキサで止まっている。中のチューブを取り外しDIYショップにコドモと赴くのだが、職業訓練としてチューブのサイズを自分でメモさせ、また店でも探させた。来るべき世界大消耗経済戦争に対して我々はタフでなければいけない。

いつも思うことだが、パンクの修理は奥が深い。特にタイヤビードにチューブを噛まない無いことが大事であるが、今回は意外とてこずった。それはリムが金属ではなくファイバー混プラスティクで厚みがあるため、なかなか落ち着かないのである。

一輪車の修理で重い腰を上げたついでに車を整備することにした。190Eは基本的には維持しやすい車だが、その寿命を決めるのは出費のかかる故障、例えばエンジンブロー、エアコン故障、AT故障などである。これで出費する位なら、と新車に更新されてしまうのである。だから整備によって致命的な故障を防止しなければいけない。

電脳化が進んだ現代の車では整備に特殊機器が必要で、頻発する不可解な故障には日本支社やヤ○セでさえ骨を折る始末であり、とてもwebmasterの技術で手に負え無い。その点190Eは実物大おもちゃとしては良い題材なのだ。部品も整備情報も潤沢であり、車体の防錆もしっかりしてから、手をかける価値があるのだ。

エアコンに関してはコンプレッサーもエバポレーターも交換したので好調である。エンジンブローの原因となるガスケット腐食の予防に対して純正クーラントは防錆力が不足しているので、ト○タ純正クーラントを毎年交換することで対処している。

もう一つの弱点ATについては、ト○タ純正のデキシロンII規格ATFを毎年交換することで対処している。車上で交換できるのは全量の約2/3だが、毎年交換することで、抜いたATFも鮮やかな赤色が残っている。

実はもう一つATFを交換しなければいけない理由がある。それは、”庭のペール缶がジャマだからなんとかせよ”との家族からの苦情だ。このペール缶が無くなるころには車も寿命になるハズだったのだが、10万キロで行った重整備が奏功したのか、この先の寿命がいよいよ読めなくなってきた。

家族や友人の肯定的な意見としては、

”あと2,3年がんばれば立派なアンティークになるから、それまで頑張れ!”

というものがあった。一方、否定的な意見としては、

”内装デザインが古くさくて貧乏たらしいから変えたら?”

というのがあった。知り合いの英国J車に比べると質素なデザインであるが、長距離で疲れない乗り心地と椅子は捨てがたい。

今は当ラボのマーケット部門の努力により、かなり多くの車がチョイス視野に入る状態だが、やはり気になる車は独逸B車と英国J車である。個人的にはかつて635CSiが好みだったので現行B車のデザインはなじめず、選ぶとすれば旧型しかない。J車はXJ、Sともデザインは納得できるものの、ハードに不安がある。国産L車は信頼性が高いものの、座席の出来が良くない。

本来は安全パイとして独逸MB車のEシリーズが登場しなければいけないのだが、ブレーキなどの重要な機構が歴代最悪の信頼性とのことで、通常ブレーキに戻らない限りチョイスには入らない。もちろん、いずれを選んでも自分でメンテは楽しめないから、心情的に”実物大おもちゃ”として長く満足できるかどうか疑問であり、そもそも何のために自宅車庫にエンジンを吊るための鉄骨まで組んだのか、解らない。

以上を総合すると、結局、”長くつきあえるデザイン”と、”整備する喜び” の両方を満足する車はなかなか見あたらないということだ。旧車を選ぶとすれば、品質の点でW201/W124に卓るチョイスは少ないし、サバイバル性の点でも、ECUが停止しても燃圧があって点火さえ飛べば帰宅できるKEジェトロをしのぐ信頼性は今の車には無い。

とすれば、今後車が変わるとすれば、とんでもない気まぐれしかないということであろう。刹那的かつ圧倒的なパワーに身をまかせるという、地球にやさしくないチョイスも可能だ。例えば内外のスポーツカーとか、家族と環境の怨嗟さえ無視すれば、楽しい車もあるのだが、何より風水ポリシーに反するところが問題なのである。

さて、メンテの課題としてはまだ船が残っている。これについては次回にでもご報告することとしたい。

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嗚呼、ヒトの耳は歪んでいるのか!!のナゾ

Webmasterはハイエンドオーディオと呼ばれるカテゴリーは幻だと考えているのだが、それにはいくつか理由がある。

Webmasterが小学生だったころは、”子供の科学”や”初歩のラジオ”のような雑誌が売れており、ラジオやアンプを作るのは電気少年にとっての通過儀礼であった。Webmasterの最初の作品は6GW8Aを使ったモノラル電蓄であった。

中学生の頃には自宅にアカイのデッキがあったので、自分でピアノを弾いては生録をやっていたが、既にしてダイナミックレンジやノイズの問題に直面していた。4トラック19cmではレベルを上げれば飽和し、下げればピアニシモがノイズに埋もれてしまうのである。

高校の頃には高級オーディオショップに出入りして、当時の舶来高級スピーカーを試聴する機会があったのだが、この時もオーディオ技術の天井の低さを感じざるを得なかった。この手の再生機器では永遠に原音再生は不可能であると確信したのである。そのせいか、Webmasterの技術的興味はバイクと無線に移ってしまった。

その後はほどほどの再生機能をもつオーディオ機器を手元に置いていたが、決して大枚をかけたものでは無かった。レコードがCDになってノイズは劇的に減ったが、依然として原音と再生音とは音質も臨場感(音場)も全く別物に思えたからである。

過去電流を帰還させるアンプの試作や山本式定位検出差動マイクなどは、この幻滅に対するトライの一つである。科学技術の進んだ現代において、もっとも重要な出力装置であるスピーカーの制御が、一本の糸でフラフラと操られる凧のように不安定かつ低次元な技術に終止しているのである。

しかし、その後にもう一段の大きな幻滅と開眼の機会を迎えることになる。それは近年の人間の聴覚の研究における大発見とされる”耳音響放射(OAE:OtoAcoustic Emissions、David Kemp、1978)”である。

人間の聴覚センサーである内耳には有毛細胞があり、この毛に伝わる振動が電気信号となって内耳神経を経て脳に伝わる。しかし有毛細胞と神経の接続を調べると、不思議な事に脳に向かう神経線維より脳からやって来る神経線維の方が3倍も多い

当時は、脳から来る神経は有毛細胞の感度を調節していると考える研究者が多かった。ちょうどラジオのAGC(Automatic Gain Control)のような仕掛けだと考えていたのである。しかしKemp博士は、脳からの情報は有毛細胞を外からの音と同じ周波数でダイナミックに振動させる、と言うのだ。これにより、センサーとしての内耳が消費する音エネルギーを事実上ゼロとすることができる。

機械で言えばパワーステアリングのような仕掛けである。ステアリングの軸の一部に撓みやすい軸を置き、その軸の上下にセクター状の切り欠きを持つ円盤を置けば、撓みによって切り欠きが重なる面積が変化する。ここに油圧を掛ければ操作力に比例する流量が発生し、ステアリングの操作を助けるサーボを形成する。

電気回路で言えば、図のようなオペアンプを使ったボルテージフォロワー回路と等価と考えられる。オペアンプの出力がそのまま負帰還されているので、ゲインは1となり、入力インピーダンスが無限大に近くなる。さらに入力端子の回りをガード電極として囲むことにより、入力端子と接地間の物理的な絶縁抵抗も見掛け上無限大となる。

人間の内耳では、鼓膜の振動が内耳の内側の有毛細胞に伝わるが、その情報は脳幹の下オリーブ核を経て内耳に戻ってきて外側の有毛細胞を駆動し、この駆動力と制動力(ゲイン)を調節することで100dBを遙かに越えるダイナミックレンジを実現するのである。まさに極限のメカトロサーボなのである

ただし、サーボ機構には特有な動作の遅れ(オツリ)が生じる。音刺激を瞬間的に切ると、耳からわずかに音が聞こえるのである。この音を計る事により被験者が寝ていても聴力検査ができる。しかし、これでは断続を繰り返して加算解析する必要があり、検査効率が悪い(誘発耳音響放射 TEOAE:Transiently Evoked OAE)。

そこで頭の良いKemp博士は内耳の有毛細胞の非直線性による歪成分耳音響放射(DPOAE:Distortion Product OAE)を発見した。これは内耳にf1とf2の二つの周波数を加えると、これらが混変調を起こしてm*f1+-n*F2(m,nは整数)なる新しい周波数の音が耳から出てくるのである。

従って、f1とf2の刺激を加えながら、刺激と異なる混変調の周波数をフィルタリングして測定すれば連続的に聴力検査ができる。これにより飛躍的に聴力検査の効率が向上し、現在の機器では30秒ほどの時間で幅広い周波数の聴力検査が可能である。

これは検査の結果を示したモノである。左の数値は二つの周波数から予想される混変調の周波数(2*f1-f2 in KHz)であり、右の点は放射音の大きさから換算した聴力値である。

この結果はWebmasterの耳のデータだが、2KHzから6KHzの聴力は正常であることが分かる。左側の小さなブロックは外来ノイズを示しているが、これらより耳から放射される音響の方が有意に大きいことがわかる。

実に素晴らしい発見である。しかし、しかし、内耳は歪んでいるのか? とすれば、いままで歪みを減らすことが主眼であったオーディオ機器はどうなる?まったく意味が無いのか?

Webmasterはこの事実を知ったときに動揺した。とすれば、オーディオ業界はその目標を失ってしまうのか? しかし、思考を深めていくと、この内耳の特性は必ずしも有害でなく、あるいは人間のコミュニケーションに役立っているのでは無いか、と考えるようになってきた。

WebmasterはSQUID(超伝導干渉装置)を用いて聴覚の研究1),2)をやっていたが、友人のヨーロッパのグループが音声情報の一部を欠落させた場合の音声の認知の研究をやっていた。人間の言葉は複数の周波数の帯(フォルマント)からなっていて、それが時間的に変化することによって言葉が認知される。そのパターン(声紋)は個人によって異なることは良く知られている。

しかしそのフォルマントの一部を抜いてもちゃんと言葉として認識されるのである。SQUIDによれば刺激音の周波数と、それを認知する大脳聴覚野の位置はミリ単位で同定できるのだが、存在しないはずの反応が検出される。また人工内耳の電気刺激は聴覚的には不完全なのだが、訓練すれば正常人と近い会話が可能になる。

ということは、情報の欠落が内耳から大脳のどこかで捏造された情報により補間されていることになる。このような機能があるからこそ、携帯電話のcodecやMP3のような手抜き圧縮技術が成り立つのであるが、その補間ないし捏造のメカニズムについてはまだ良く解っていない。個人的にもこのあたりは研究し残した部分なので心残りではある。

Webmasterの考えでは、このメカニズムに関する研究はSQUIDのような大がかりな装置を使わなくても研究は可能なのでは無いかと考えている。

というのは、音響放射を発見したKemp教授はノーベル賞を受賞すると予想されているが、彼の実験装置はヘッドホンとマイク、それに音源とオシロだけであった。今の技術なら、ノートパソコン一台で全て間に合う規模の研究装置である。

左右の脳機能の違いを証明しノーベル賞(1981年)を受賞したSperryの研究は、ロータリー式のスライドプロジェクター2台と、手術によって脳梁を切断した患者さん数名のみで行われたものである。

動く遺伝子トランスポゾンを証明しノーベル賞(1983年)を受賞したBarbara Macclintockの研究は、まだDNAが遺伝子の本態であることが証明される以前の1940年代に、トウモロコシの実の色を解析したものであった。

つまり、大がかりな装置が無くても創造的な研究は可能なのである。大がかりな装置を使うほど装置に頼りがちなのだが、やはりアイデアは人間の脳からしか出て来ない。

聴覚についても、歪みを発生する内耳の性質は悲しむべきものではなく、言語の認知には合目的的なのかも知れない。ぜひそのことを最低のリソースでいつか証明してみたいと考えている今日このごろなのである。

1)Yamamoto T; Williamson SJ; Kaufman L; Nicholson C; Llinas R "Magnetic localization of neuronal activity in the human brain" Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 1988 Nov;85(22):8732-8736

2)Yamamoto T; Uemura T; Llinas RR Tonotopic organization of human auditory^cortex revealed by mutlichannel SQUID system. Europian Journal of Neroscience 13(2):327-339

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つましいPHSモバイル環境最適化のナゾ

最近Webmasterが低速PHSモバイル環境に呻吟していることは、こちらに書いた。これについては、最近のホームページで汎用されるマクロメディアフラッシュを止めることで若干の改善を見た。

かつて我々が有線モデムのダイアルアップでネット接続していたころも低速ではあったが、我慢できないほどではなかった。当時はサイトがモデムやISDNを前提に構築されていたからである。しかしブロードバンドを前提にホームページが重装備となった現在では、たとえフラッシュの表示を止めても32kbpsでのブラウジングは苦痛である。

最近のホームページで目に付くのは宣伝の多さである。主要サイトのソースを見ると、表からは見えない複雑なテーブル組に加え、JAVAscript、マクロメディアフラッシュなどの記述量が増えている。また、クリックすることで収入が発生するアフィリエイト広告配信が普及したため、商業サイトならずとも個人サイトにも大量の広告が貼り付けられている。

これらを排除できれば、低速環境でのブラウジングは快適になるのではないか。前回のようにフラッシュなどを一律止めれば速くはなるが、銀行や証券会社などの有用なポップアップが表示されず不便である。とすれば、プロキシを組み込んで、不要な情報のみを除外すれば良いのではないか。

そこでいくつかのフリーのプロキシを試してみたが、もっとも便利なものは、proxomitronであった。日本語の説明はproxomitron-jである。 これをダウンロードしてインストールするが、自動的にはスタートしないので、Proxomitron.exeのショートカットをプログラムメニューのスタートアップにコピーする必要がある。使用法自体はWin9X族でもWinNT族(2000,XP)でも同じだ。

ブラウザー側の設定は、NetscapeやFirefoxであればEdit→Preference→Advanced→Proxiesのパネルでlocalhostのポート番号8080を設定する。インターネットエクスプローラーであれば、ツール→インターネットオプション→接続→ダイヤルアップ設定で設定ボタンクリック→プロキシサーバー(使用にクリック)→詳細ボタンクリックである。

もしこの部分に既にプロキシがセットされている場合は、Use Remote Proxyをクリックし、URLとポート番号をProzomitornのProxyボタンクリックで出現するProxy selectorにAddする。b-mobileの画像圧縮アクセラレーターもここで設定するが、多段プロキシおよびその順序も設定可能である。

さっそくアクセスしてみよう。不要な広告のかなりが排除されていると思うが、残っている広告もあるだろう。もし広告がJPEGやGIFであれば、そのソースの置かれているサーバーのURLをProzomitron上の右クリックで出現するパネルの Add to Blockfile→AddListに追加すれば良い。なるべく広告のみが置かれているURLを指定する必要がある。アバター画像もアバター専用サーバーのURLさえ解れば消すことができる。

しつこく出現するフラッシュの退治はやっかいである。フラッシュのソースのURLが固定していればそれをソースファイルで検索し、AddListに追加する。しかしアフィリエイトで飛び先がランダムな場合はソースを読んで仕掛けを解析するしか無い。

なかにはソースを解析してアクセスをブロックするこの手のプロキシに対して手の込んだプロテクトが仕込まれていることもある。例えば文字列の組み合わせがスクリプト実行時に解釈される場合は、単なるソースの解釈だけでは対応できない。いきなり動き出すフラッシュは画像と違って一律に止められないので、ユーザーに優しくない仕組みである。

これでPHS経由のアクセス速度は劇的に改善するが、副作用も発生する。まず、銀行や証券会社のサイトで繁用されるJavaScript+JAVAもしくはActive-Xのポップアウトが出現しなくなることだ。この解決は簡単で、ProxomitronのBypassボタンをクリックして一時的にプロキシをトランスペアレント(透明)にすれば良い。

解決に難があるのは、b-mobileの接続ソフト(bアクセス)の画像圧縮アクセラレーターの設定が毎回IEのプロキシ設定を上書きしてしまうことである。これには、bアクセスが作成するダイヤルアップ接続設定(BMAUTODL)のダイヤル番号に32kBPSであれば##61、128kbpsであれば##64を追加して明示的に接続モードを指定し、ダイヤルアップ接続を実行すれば良い。

この解決法の問題は、契約残り時間が表示されないことであるが、使い放題の契約の場合は問題無いだろう。逆に期待以上の効果もある。Webmasterのモバイルパソコンのモバイルセレロン366MHz(TDP:9W)は冷却ファンが殆ど回らないほど小食の代わりに非力なので、WindowsMEを風水変造して使っているが、それでも窓を多数開くとリソースが払底して不安定になる。

ところが、広告の画像やフラッシュを除外するとリソースの消費が抑えられ、より多数の窓を安定して開くことができるし、ウイルスを拾ったり危険なサイトに飛ばされる可能性も減る。Webmasterの環境では、このプロキシによって、例えばYahooの掲示板などは自宅のADSL接続マシンと遜色無い速度でブラウズできるから驚きである。

当初懸念した副作用もBypassボタン一発で解決できるなど最小限であることから、PHS接続で低速ブラウズに呻吟している諸兄、あるいはPHSに限らず速度に不満の諸兄には、ぜひお勧めしたいプロキシである。

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家庭用お天気予報時計故障のナゾ

Webmasterは天気予報をあまり信用していない。雪が積もらない九州で大事なのは、何と言っても台風の進路予想だろう。もちろん進路予想が難しいことは良く解るのだが、そろそろ上陸かという重要な局面で、位置や進路に関する公的な情報が時間的にどんどん遅れていくのである。

衛星画像からすると、そろそろ台風の目かなと思われ、実際にも雲間に青空が見えていても、気象庁の情報ではまだ届いていない、と言う。台風が通り過ぎてしばらくしてから、予想と異なる煮え切らない台風の軌跡が発表される。時には米軍や外国発表の軌跡と大きく異なることがある。

実はこのことについて、本職の方に聞いたことがある。彼がモゴモゴ言うには、

”気象庁は役所であって、何より指揮命令系統および情報の一貫性が重要視される。従って長期予報が短期予報に、先任の予報官が後任の予報官に、そして先に発表した予報が後で発表する予報に影響するのは避けられない”

のだそうである。

もう一つ大事なのは、これから数時間に天気がどうなるか、という短期予報である。気象庁発表の衛星情報や天気図はどうしても情報が古くなる。これに備えてリアルタイムのレーダー・降水ナウキャストを発表しているが、ネットでしか見ることができない。

というわけで、我が家には2台の天気予報装置がある。2台ともまったく同じ機械であり、2台あることでどれくらいマジな予報なのか?判断しているのだが、最近片方が逆の予報を示すようになった。

分解して中身を見ることになるのだが、かのアインシュタインは、部下が”分解しましょう”と言ったのを制して”水を飲む平和鳥”の仕組みを解き明かそうとしたそうである。それにあやかって、webmasterは中身を開ける前に、シカケを妄想したのである。。。。。

−−−−−−−−−−−−− 妄想 −−−−−−−−−−−−−−−

装置の後ろに標高を設定するネジがあるところから、天気予報には気圧変動を見ているのだろう。

おそらくアネロイド気圧計に体重計のようなストレーンゲージが貼ってあり、ホイーストンブリッジの電圧変化をAD変換し、時間微分して得られた気圧変動から予報をたてるのだろう。気圧のゼロ点設定は長期間のデータを積分しているかも知れない。”

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

実際2台を開けてみたのが写真である。予想通り、アネロイド気圧計が入っている。これは内部が真空の金属製蛇腹が気圧変動によって伸び縮みすることを利用して気圧を測定するのである。

これの精度はあまり高く無いが、水銀式にくらべると丈夫で可搬性があることから今でも広く使われている。

しかし、電線を追っていくとアネロイド気圧計には3本の電線しか繋がっていない。これで気圧変動をどうやって知るのだろうか。

webmasterは気圧の時間微分は電脳が計算するのかも思っていたのだが、どうやら機械的に解決しているようである。

他には音声時計(時刻と天気予報を英語で読み上げる)とLEDがあるだけだ。これは当時、秋月で格安で売られていたものだが、日本製でプリント基板はガラスエポキシであるなど、どうやらちゃんとした計器メーカーの作品のようで、値段以上のコストが掛かっている。

さて、その心臓部を拡大したのが下図である。金属蛇腹の伸び縮みはテコの仕組みで図の金属鎖を動かす。これによって針のついた滑車が回転するところは、通常のアネロイド気圧計とまったく同じだ。

確かに、気圧が高ければ天気は良く、気圧が低ければ天気は悪い。しかし、これから天気が良くなるのか、悪くなるのかを予報するのが大事であって、それには気圧の絶対値ではなく時間微分値が必要である。

シカケをさらによく見ると、針の左右のストロークは極めて小さくなっている。例えば、気圧が上昇して鎖が右に引っ張られると、針は時計回りに回転するが、すぐに左の電気接点に当たって止まり、それ以上鎖が引かれると鎖は滑車の表面を滑るのである。

次に気圧が最高値を過ぎると針は反時計方向に回りはじめ、右の接点に当たる。気圧が最低になるまで滑車と鎖は滑りながら針は維持され、次に気圧が上がり始めるとまた針は時計方向に回るのである。

つまり、針が左の接点に当たっていれば気圧が上昇しつつあり、右の接点に当たっていれば気圧が下降しつつある。この滑り機構によって気圧のゼロ値調節も不要であり、純粋に気圧変動のみがわかるのである。これらの情報を元に天気予報を表示するのがこの時計の原理なのである。

この微細なシカケは単なるアネロイド気圧計とは異なり、古くからアネロイド晴雨計と呼ばれていたようだ。もっとも、最新の天気予報時計にはwebmasterが予想したような気圧センサーと電脳を組み合わせたものもある。

そして、調子が悪い原因はありふれた接点の接触不良であった。修理は金メッキの針が当たる接点をコンタクトZで数回擦るだけで正常な動作となった。先を尖らしたコンタクトZはこの用途にぴったりである。

今回のシカケを見ると、先人の苦労が忍ばれる。アネロイド晴雨計は船舶などでは昔から使われていて、まったくの電気を使うこと無しにリアルタイムの気圧変動を教えてくれる。ある意味、webmasterが当初予想したAD変換や電脳による天気解析は、エコの観点からするとずっと見劣りするのかも知れない。現在では電脳の力を借りることが容易になったため、発想が固定化して乏しくなっている面も否定できない。

Webmasterは過去SQUID(超伝導量子干渉装置)の仕事をしていて、気象関係の方々が発表する電脳関係の研究会に呼ばれたことがある。彼らは、対象となる土地に格子点を設定し、各点における温度、湿度、気圧、地形データーなどのパラメーターを入力することにより、局地気象のシミュレーションを行っていた。

彼らによれば、格子点がより細かく、各点のパラメータがより多ければ、微分偏微分によって気象を計算できる。もし地球全体を網羅する格子点が計算できれば、地上の気象はすべて計算可能である、と言う。その発想の極限がスパコンを用いて世界各国で争っている地球シミュレーターなのだが、何となくその発想の単純さが気になる。

こういった格子点の呪縛は、用いられる微分偏微分とともに天才的科学者ピエール=シモン・ラプラスの言うところのラプラスの悪魔の延長線に過ぎない。ラプラスの悪魔は因果律そのものでもあるが、その後発展した量子力学では因果律では解決できない現象が見えてきた。

個人的には、もし今、ラプラスと同じような天才が出現すれば、格子点の呪縛を超越するまったくメタな発想で気象の計算をシンプルに解決してくれるのでは無かろうか、と思う。

Webmasterは格子点の呪縛を単純な滑り機構で解決したアネロイドの晴雨計を見ながら、そう思ったのである。

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落下を防ぐ風水ノートパソコン金具のナゾ

新年あけましておめでとうございます。

さて、使い放題のPHSカードと契約したお陰で、移動時は睡眠を原則とするwebmasterもノートパソコンを持ち歩くことになった。ノートパソコンを持ち歩く上で怖いのは落下や圧迫による液晶の破損であろう。

webmasterの周囲で液晶画面が破損した個体を見ると、設計にムリがあるものが多い。その筆頭はシャー○社の製品で、液晶が売りなのは良いが、パネルが薄すぎるし液晶周囲の余白が少なすぎる。

次に見かけるのはリンゴ社のものだ。これもデザイン重視のために強度が低いようだ。液晶だけでなくヒンジやコネクタ類が弱いのもシリーズを通じてである。一方大和事務機器社の液晶破損はあまり見掛けないが、逆にマザーボード不良(エラー0175)がけっこう多い。

個人的に壊したことがあるのは、エ○ソン社のノートパソコンのPCMCIAカードスロットである。出っ張りの大きい無線LANカードを差したまま落下してスロットを直撃したのである。最近はUSBの周辺機器が多いので、なんとか廃棄とはならず現用中である。

というわけで、個人的には落下を防ぐためにノートパソコンに取っ手が欲しい。以前所有していたコンパック社の製品には丈夫な取っ手が付いていて重宝した。最近の製品に取っ手が無いのは、取っ手があることで逆に扱いが荒くなり破損することを恐れて、故意にそうしているのだと思われる。

そこでWebmasterは持ち歩くノートには手ヒモの金具を付けている。モノは紙挟みの金具で、写真を見てもらえば使用法を説明する必要もなかろう。ノートの孔は本来盗難防止の金具を付けるためのもので、内部に鉄板が仕込まれていて、それなりの荷重に耐えることができる。

もちろん、これを付けたからといってノートを振り回せば金具がはずれる可能性があるが、腕にヒモを通しておけば落下の可能性は減るだろう。写真のノートは約1kgと軽量なのでこのサイズで十分だが、重いフルサイズのノートには一回りサイズの大きい金具を使って欲しい。

もちろん盗難予防にも一定の効力があることは言うまでも無い。100円ショップの自転車用チェーンを通せば金具が広がって工具が無いとはずれない。市販の防犯金具は数千円するが、これだと格安である。

新年劈頭のトピとしてはちょっと迫力不足ではあるが、十分な御利益はあると思う。お問い合わせメールへのお答えとしてアップした。

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