--- ばーちゃる耳鼻科:症状、診断と治療(ver.2022.9.15) ---
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バーチャルじびか バーチャル耳鼻科 ばーちゃるじびか ばーちゃる耳鼻科 ばーちゃる耳鼻咽喉科
診断と治療 検査 外来診察器具 人工内耳 頭頚部がん(UICC第8版2016) 交通事故 手術後の音声獲得 MEG (SQUID)
外耳道炎、 外耳道湿疹、 外耳道真菌症、 耳悪性腫瘍の可能性、 急性中耳炎、 慢性中耳炎、 真珠腫(しんじゅしゅ)性中耳炎、 良性発作性頭位めまい、 起立性めまい、 騒音性難聴、 滲出性中耳炎、 突発性難聴、 耳鳴り、 メニエール病、 老人性難聴、 耳硬化症、 顎関節症、 耳下腺炎、 流行性耳下腺炎、 先天性耳瘻孔(せんてんせいじろうこう)、 小耳症、
アレルギー性鼻炎、 花粉症、 サイナス スクイーズ(sinus squeeze)、 慢性副鼻腔炎、 鼻出血、 上顎嚢胞(のうほう)(術後性)、 上顎腫瘍の疑い、 鼻骨骨折、 眼窩底吹き抜け骨折、視束管骨折、 嗅覚(きゅうかく)障害、 顔面神経麻痺、
舌小帯短縮症、 アフタ性口内炎、 いびき、睡眠時無呼吸、 扁桃肥大、 慢性扁桃炎、アデノイド(増殖症)、 扁桃癌(中咽頭癌)、 扁桃癌(中咽頭癌)、 扁桃炎周囲膿瘍、 急性喉頭蓋炎、 唾石(だせき)症と急性顎下腺炎、 正中頸嚢胞、 味覚障害、 舌癌の疑い、 舌血管腫の疑い、 ガマ腫(がましゅ)、リンパ管腫、側頸嚢胞などの疑い、 慢性咽喉頭炎、 声帯ポリープ、 声帯結節、 ポリープ様声帯、 気道狭窄、 喉頭癌の疑い、 反回神経麻痺の疑い、 下咽頭癌の疑い、 上咽頭癌の疑い、 耳下腺腫瘍、 甲状腺腫瘍の疑い、 咽喉頭異常感症、 食道異物、 気管、気管支異物、 嚥下(えんげ)障害
●耳たぶをひっぱると痛みが増す
●痛いというよりはかゆい
●痛かゆくて掻きむしってしまう
●耳の痛みが数カ月続き出血がある
●痛みがあり、膿が出たりめまいもある
●風邪をひいたら鼻水が出ていて耳も痛くなった。熱もある
●堅い物を噛むと耳のあたりが痛い。噛む度にコリッと音がする
●耳の前が痛い。食べたあとに腫れてくる
●耳の前に小さなへこみがあり、そこが腫れて膿が出て痛い
●生まれつき、耳たぶが小さい
●聞こえが悪い、長い間騒音のあるところにいた
●耳が山に登ったときみたいに詰まった感じで聞こえが悪い
●急に聞こえが悪くなり、耳が詰まった感じやめまいもある
●疲れたときや睡眠不足が続くとめまいを繰り返し、最近聞こえが悪くなり、耳鳴りも気になる
●年をとってから聞こえが悪くなってきた
●子供の時は聴力は良く中耳炎も無かったが25才を過ぎて次第に聴力が悪くなってきた。雑踏でも大きな音は良く聞こえる。
●長年耳から汁が出て、聞こえも悪い
●痛みがあり、膿が出たりめまいもある
●めまいは無いが一日中セミの鳴くような耳鳴りが気になって夜が眠れない
●疲労や睡眠不足が続くと決まってめまいを起こす。まわりの景色がまわるように感じ、吐き気もある。何度か繰り返しているうちに、聞こえが悪くなり、耳鳴りも気になる
●急に聞こえが悪くなった。耳が詰まった感じやめまいもある。最近疲れていた
●ベッドから起きるときにめまいがする。繰り返すとめまいがしなくなる。普段はあまりめまいを感じない
●急に立ち上がるとめまいが起こる。普段から血圧は低い方である。ゆっくり立ち上がるとめまいはしない
●耳から膿が出て、痛みがあったりめまいもある
●一年中、くしゃみ、水っぽい鼻水、鼻つまりがある
●毎年2月から4月にかけてくしゃみ、水っぽい鼻水、鼻つまりがあり、目もかゆい
●黄色い粘りけのある鼻水がでる。また喉の方にも鼻水が落ちてくる。かんでもかんでも鼻水がでてくる。なんとなく顔面に鈍痛がある
●鼻が詰まっているときに飛行機に乗ったら上顎、歯、眉間に痛み、頭痛がきた
●一年中、くしゃみ、水っぽい鼻水、鼻つまりがある
●毎年2月から4月にかけてくしゃみ、水っぽい鼻水、鼻つまりがあり、目もかゆい
●こどもで、いつも鼻が詰まっていて口で呼吸している。いびきも大きく、急性中耳炎を繰り返し、治ったときは聴力が悪い
●顔面が腫れてきて鈍い痛みがある。視力が低下した。10年以上前に蓄膿(慢性副鼻腔炎)の手術を受けた
●顔面が腫れて、歯に響くような痛みがある。また鼻出血も多い
●鼻の付け根を強打した。腫れていてが鼻がどちらかに寄っている気がする
●顔面の目のまわりを強打したあと、目の動きが悪くなってものが二重に見える
●顔面の上顎を強打したあと、歯の咬み合わせが合わない
●眉毛の外側を強打したあと、視力が悪くなってきた
●最近においを感じなくなった。料理でにおいがわからず焦がしてしまった
●ある日突然顔の筋肉が片側麻痺しているのに気付いた。目が閉じにくい。また飲み物が口角から漏れる。ここのところ疲れていた
●舌の下につっぱりがあって、舌を出しにくい
●口の中に多くのアフタができて、なかなかなおらない。痛くてしみる
●いびきがひどいので、旅行に行くと同室するのをいやがられる。昼間はいつも眠く、すぐいねむりをする
●口をのぞくと、扁桃が白っぽく腫れていて真ん中に大きく張り出している。いびきを大きく鼻も詰まり気味で、中耳炎も良く起こす。年に数回急性扁桃炎を起こす
●口をのぞくと、扁桃が腫れていて一部が潰瘍ができて割れていて、いやな匂いがする。
●いつも風邪を引いた後、発熱して喉が痛くなる。見ると扁桃腺に白いポツポツが見える
●風邪の時に熱がでて痛いが、今度のは症状がきつくてごはんが通らないくらい痛い。扁桃腺が腫れていて真ん中まで張り出している。疲労が激しかった
●風邪を引いた後喉が痛くて、ごはんがのみこみにくく、声が含み声になって息も苦しい。ここのところ忙しくて疲れていた
●顎の下が食事の度に腫れて痛い。何度か高熱と痛みを繰り返している
●子供で顎の下の真ん中ののど仏の上が球状に腫れている。痛みは無い
●最近味覚が低下している。あるいは普段と違った味がする。舌の感じがなんとなく変だ
●舌の横の歯にあたるところに固まりがあって、表面が潰瘍になって痛い
●生まれたときから舌に赤く熱感のある固まりがある。痛みは無い
●舌の下に柔らかい透明な固まりがある。痛みは無い
●乾いた咳がでるが熱は無い。乾いたところで長時間話したりすると咳がとまらなくなる。内科で胸のレントゲンをとってもらったがどうもない。
●大きな声を出したら急に声が悪くなった。声がにごって聞こえる。日によって調子がちがう
●いつも仕事がら大きな声で長く話したり歌ったりする。スポーツで大きなかけ声を出している。幼稚園、小学校、電話交換、歌手などの仕事で、長時間のどを使う
●長年来タバコをすっていて声が低く太くなってきた。息苦しいこともある
●酒、タバコの多い人で、声が乾いた感じ(ヒューヒューと風の音がまじったような)のかれた声になり、息苦しいこともある
●声を出すと空気が抜けて声に力が無く、息が切れる。水を飲むとむせてしまう
●声が嗄れていて息苦しい。以前に気道確保のため気管チューブの挿入(挿管)を受けた事がある
●以前から酒やタバコは多い方だが、飲み込むときにのどにひっかかるような感じがあり、痛みもあり、やせてきた
●脳卒中(脳血管障害)の後、物が飲み込めない。特に水っぽいものがむせて食べられない。
●顎のえらの下のあたりが腫れてきた。最近耳が詰まっており、顔面の頬の部分の感じ方が少ない。眼の動きが悪く、ものが二重に見えてくる。食欲も低下して元気が無い
●耳たぶの下の付け根付近がここ2,3年のうちに腫れてきた。痛みはない
●のどぼとけの下のあたりが腫れてきてネクタイがきつくなった。他人から腫れていると言われる
●異物(魚骨、薬の包装のまま、針、入れ歯を飲んでしまった
●幼児がピーナッツを食べていてせき込んでから呼吸困難になった
●最近のどがつまったような感じがする。癌ができたのではないかと心配になる。最近知人が癌になったときき、ますます心配になる
外耳にある耳たぶ(耳介)で集められた音は外耳道を経て鼓膜を振動させる。耳介や外耳道の大きさや形状は、人間の声の周波数を強調するようにできている。
鼓膜は円錐状をした半透明の丈夫な膜で、ツチ骨が付着している。鼓膜の振動はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨を伝わり、卵円窓を経由して内耳に伝えられる。
内耳の蝸牛(かぎゅう)には音に敏感に振動する有毛細胞があり、振動は有毛細胞で電気信号に変換され、ラセン神経節と第8神経を経て脳幹に伝えられる。
音の情報は、台形核、内側毛帯、下丘、外側膝状体を経て、大脳一次聴覚野に伝えられ言語として理解される。
また内耳には平衡機能を司る耳石器と三半規管がある。耳石器のうち卵形嚢は水平方向、球形嚢は垂直方向の加速度を検知する。また三半規管はXYZの3軸の回転方向の加速度を検知する。
これらの出力は脳幹の前庭神経核や小脳に伝えられ、視覚や深部知覚(手足や筋肉、関節の感覚)からの情報に経験や学習が加味され、体の平衡が保たれる。
頻回の耳掃除、水泳や洗髪後に起こる外耳道の細菌感染。潔癖症の方に多く耳掃除のやりすぎが原因のことが多い。耳たぶ(耳介)をひっぱると痛みがひどくなる時はこれ。
治療は外耳道の清掃と薬剤塗布と抗生剤の内服。すぐ耳鼻咽喉科へ。
多くは耳掃除のやりすぎが原因。かゆいので掻く、掻くと気持ちが良いがますますかゆくなる、の繰り返しで治らない。
治療は外耳道に薬剤を塗布し、かゆみがひどい時は抗アレルギー剤の内服を併用する。
耳掃除の癖があると治りにくい。悪化すると真菌(カビ)の感染を伴ってかゆみがひどく、さらに治りにくくなる。あした耳鼻咽喉科へ。
多くはかゆいので耳掃除をし過ぎで外耳道湿疹が悪化し、それに真菌(カビ)が感染して起こる。
写真のように外耳道にカサブタや酒粕のような耳垢が大量にたまり、右上には一部粉をふいたようなもの(菌糸)も見える。
治療は湿疹用の軟膏とカビ用の軟膏の両方を塗布するが、頻繁に耳掃除する癖や糖尿病などの成人病で体力が低下していると治りにくい。あした耳鼻咽喉科へ。
非常に稀に外耳道に悪性腫瘍ができる。痛みや出血が長く続くことで発見される。進展すると顎関節運動の障害や激しい痛みを伴う。
側頭骨CT(写真)では腫瘍によって外耳道の骨が破壊されている。組織型は扁平上皮癌が多く、周囲へ進展しやすいので注意を要する。すぐ耳鼻咽喉科へ。
風邪などを引いた時に鼻腔の細菌が耳管を経由して中耳に入って起こる。鼓膜は発赤してパンパンに張り、痛みと発熱がある。子供で鼻水が多く熱が出て来て耳が痛いという場合はたいていこれ。さらに進むと鼓膜に穴があき膿が出る。
治療は、鼓膜切開をすると膿が出て急速に症状が改善する。外耳の掃除と抗生剤の内服を行うとすぐ軽快するが、鼻詰まりや鼻水があると再発しやすい。子供では風邪を引いて鼻ばつまりだしたら要注意。繰り返すと穿孔(せんこう)が残り、慢性中耳炎に移行することがある。すぐ耳鼻咽喉科へ。
中耳に慢性炎症があり、鼓膜に穴が開いている。耳管の働きが悪いため幼少時に急性中耳炎を繰り返し、鼓膜に穴(穿孔)が残って慢性中耳炎に移行する。
風邪を引く度に耳から膿が出て、治療すると膿が止まる状態を繰り返す。
聴力検査では最初は伝音性難聴だが、次第に内耳が傷害されて混合性難聴になる。
治療は外耳道の膿を掃除し、抗生物質の外用や内服で膿を止める。鼻やのどに病気があると再発しやすい。
抜本的には鼻や喉の病気があれば治療し、手術で鼓膜の孔をふさぐ(鼓膜形成術、鼓室形成術)手術が必要になる。あした耳鼻咽喉科へ
多くは耳管の働きが悪いため滲出性中耳炎が長く続き、鼓膜が中耳の陰圧で中耳側にはまりこんで、皮膚の固まり(真珠腫(しんじゅしゅ))を作る。まれに皮膚が鼓膜や中耳に先天的に迷入して起こる。写真では鼓膜上部に真珠腫が存在し、一部が穿孔して内容物が見えている。
耳X線検査や側頭骨拡大CT検査では真珠腫(しんじゅしゅ)による骨の欠損が見える。
聴力検査では伝音性難聴だが、真珠腫を通じて音が伝わり一見聴力が良いこともある。
真珠腫(しんじゅしゅ)は耳小骨を壊して伝音性難聴を起こす。内側に進行すると内耳を侵して神経性難聴やめまい、顔面神経麻痺を起こす。上方や後方に進行すると髄膜炎やS字洞静脈血栓を起こすことがある。
きちんとした診察と治療が必要。治療はごく軽いものは外来治療だが、手術が必要な例が極めて多い。すぐ耳鼻咽喉科へ。
内耳(耳石器)の障害で起床時に頭の位置や向きを変えたときにめまいを感じる。繰り返す度にめまいは弱くなり、普段はめまいや難聴などをあまり感じないのが特徴。長期ベッド臥床で起こることがある。三半規管にカルシウムが沈着して起こるという説がある。メニエール病と紛らわしいが聴力が低下しないのが特徴。
症状がメニエール病や脳血管障害などとまぎらしいので、専門医の診断が必要。カルシウム沈着によるものは、特定の体位を取ることにより治るものもある。あした耳鼻咽喉科へ
急に立ち上がった時の血圧調節がうまくいかず、内耳や脳に行く血流が減ってめまいを感じる。若年では自律神経の調節障害が多く、高齢者では椎骨脳底動脈などの動脈硬化が原因のことが多い。
他のめまいの疾患との鑑別が大事なので、専門医の診断が必要。あした耳鼻咽喉科へ
長い間騒音に曝されると主に高い周波数の聴力が低下する。聴力検査では特徴的な4000Hzを中心とした聴力低下(C5dip)を示すが、進行すると高い音全体の聴力が低下する。
進行すると、聴力低下した周波数に近い高さの”ピー”や、セミの声のような耳鳴りが気になる。
騒音によって急に起きた難聴はある程度回復することがあるが、長期間騒音にさらされた場合には回復は困難。最近ではロックコンサートやウォークマン類によるものも見かける。
治療は、,急激に起きた場合は内服と休息で回復することがあるが、長年の騒音で進行したものには良い治療法が無い。あした耳鼻咽喉科へ。
中耳と鼻の奥を結ぶ耳管の働きが不良で、鼓膜内外の圧力の調節がうまくいかないため、中耳が陰圧になって鼓膜が凹んで粘膜から滲み出した液体がたまる。鼓膜は飴色や暗青色になり、時に泡が見える。
耳管軟骨の脆弱化(高齢者)、粘膜の腫れ、鼻の病気(慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎)や腫れ(アデノイド増殖症、扁桃肥大、鼻の腫瘍、上咽頭の腫瘍)や、脳卒中(脳出血や脳梗塞)の高圧酸素治療が原因となる。
ティンパノグラムではピークが平坦(As型)になったり陰圧に移動したり(C型)、あるいは平坦になる。(B型)。
聴力検査では伝音性難聴。
子供では滲出性中耳炎が続いて風邪を引くと急性中耳炎になり、急性中耳炎が治ると滲出性中耳炎になり、、、、、ということ繰り返す例が多い。
治療は通気(鼻から中耳に空気を送る方法)や、原因となる鼻やのどの炎症やアレルギーの治療など。小さなチューブを鼓膜に留置して気圧を調節する治療もある。
小児でアデノイド増殖症や扁桃肥大のため何度も急性中耳炎を繰り返し社会生活に支障がある場合は扁桃摘出やアデノイド切除などの手術も考える。あした耳鼻咽喉科へ
急に聴力が悪くなり、時に耳鳴り、めまいを伴う。多くは片側性ででは低音から中音にかけて高度に低下(聴力像)することが多く、高度な場合は殆ど聞こえなくなる。過労や睡眠不足の時に多い。
治療はステロイドやビタミン投与、星状神経節ブロックなどがあるが、充分な安静休息が必要。左の聴力検査例では初診時に高度の右感音性難聴を示したが、薬剤による治療により改善している。
ごく稀に 聴神経腫瘍(軸位MRI Gd造影画像、 軸位MRI T2強調画像)が原因となるので、MRI診断も考える。
なお、これと紛らわしいものにやはり突然起こる低音障害型難聴があり、これはメニエール病に似ていて、投薬と十分な睡眠と休息で治療で治りやすい。あした耳鼻咽喉科へ
耳鳴りは多くの感音性難聴にともなっておこる。メカニズムは不明だが、内耳から大脳に至る聴覚の伝達が悪く、それを補うために聴覚の増幅度があがるために起こるという説がある。
耳鳴りの気になりかたは、必ずしも難聴の程度と比例せず、騒音性難聴、外傷に伴う難聴やメニエール病などでは耳鳴りが気になることが多い。ストレスや睡眠不足、不安、疲労があると、汐が引いて浅瀬が目立って来るように耳鳴りが気になる。
診断は、まず耳鳴りの原因疾患を調べるために聴力検査や耳X線検査を行う。
治療は、原因疾患の治療。耳鳴りの状況について、充分な問診を行う。
充分な睡眠で疲労を取り、ストレスの解決を計る。不眠には安定剤などを用いることもある。まじめな性格の方で耳鳴りにとらわれが強いと治りにくい。また、ウィスカーという機械が出す雑音によって耳鳴りを止める治療法もある。あした耳鼻咽喉科へ
厚生省の診断基準では、回転性のめまい(景色が回る)を繰り返す経過中に難聴や耳鳴りが良くなったり悪くなったりする事を繰り返すものをいう。基準を満たさない例は”内耳性めまい”と呼んでいる。
聴力検査では低音障害型の感音性難聴を示し、当初は低音から中音にかけて聴力が低下することが多いが、高音も低下することがある(聴力像)。自律神経の失調によって内耳が水ぶくれ(浮腫)になることが原因と言われている。
平衡機能検査では、発作時に障害側向きの急速な目のブレ(眼振、がんしん)を、発作間歇期では障害と逆方向の眼振がある事が多い。起立検査や足踏み検査では、悪い方へ体が偏ったり(偏倚(へんき))転倒することが多い。
ストレス、過労や睡眠不足時に多く、発作を繰り返すうちに不安やうつ傾向が強くなり、不安や耳鳴りのため睡眠不足--めまい発作--ますます不安--耳鳴り、と悪循環になる。
また、めまいが無く低音域の障害だけが出て変動する場合は低音障害型難聴と呼ばれ、メニエールの類似疾患と考えられている。
治療は、内服薬としてはステロイド、抗めまい剤、はきけ止め、精神安定剤、浸透圧利尿剤などでどれも良く効く。不安や不眠の強いときには、安定剤や抗うつ剤が奏功する。
几帳面で仕事の手抜き、さぼり、居眠りの下手な人に多い。従って、めまいがおきてからの治療より、めまいを起こさないように家庭や社会生活を調整して十分な睡眠、ストレスの解決、規則正しい生活をすることが大事。。すぐ耳鼻咽喉科へ。
加齢による内耳の有毛細胞の障害が原因。聴力検査では図のように、高い周波数の聴力から低下する(聴力像)ことが多い。低いモゴモゴした音は聞こえるのに、サシスセソなどの高い音が聞こえないので、話の内容の聞き取り(明瞭度)が悪くなる。またタイマーなどのピーといった高い周波数の電子的な音が聞こえにくくなる。
騒音への暴露、結核治療薬の使用歴(ストレプトマイシン)、糖尿病などがあると聴力が低下しやすい。難聴の進行は家系によって差がある。
治療法として、良い方法がないのが現状。ストレス、過労、睡眠不足や不安があると進行しやすい。過去のアナログ式補聴器ではあまり補聴効果が上がらなかったが、最近のデジタル式補聴器では補聴効果が期待されできることがある。来週耳鼻咽喉科へ。
幼少時に中耳炎や難聴が無いのに思春期以降に聴力が次第に低下する病気に耳硬化症がある。西洋人に多いが日本人にも稀では無い。難聴はアブミ骨の関節が骨化して音が伝わり難くなるため。時に鼓膜を介して充血した中耳が透見できることがある(左写真:シュワルツ徴候)。
聴力検査では1000Hzから200Hz付近が低下した伝音性難聴(Carhartのnotch(聴力像その1)、聴力像その2))となる。ティンパノグラムやアブミ骨筋反射検査で骨の可動性を診断する。治療は手術。
思春期以降に難聴になる病気には耳硬化症以外にも、遺伝性難聴をはじめ多くのものがある。以前は治療法のなかった高度難聴も人工内耳により治療が可能になったので、詳しい検査を受ける意味がある。来週耳鼻咽喉科へ。
下顎骨は頭蓋骨から筋肉(咬筋)で吊られている。下顎骨からは筋肉によって舌、喉頭、気管などがぶらさがり、そこから胸骨、鎖骨、肩甲骨などがぶらさがっている。従って頭から頸、肩までの範囲に何らかのムリな力が加わり、炎症の原因となる。
炎症がひどくなると顎関節が次第に変形する。写真の例(左)は正常(右)と比べ関節の窪み(関節窩)が前後に広くなっており(V印)、下顎の関節の頭の形も球形から不整形に変形している。
十分なストレス対策、鎮痛と休息が取れないと悪循環になり治りにくい。治療はスプリント使用等で、高度の変形には時に手術が必要。あした親切な歯科口腔外科へ。
耳の前下にある唾液腺の炎症。こどもでは、おたふくかぜ(mumps)が多く、時間差をもって両側性が腫れる。通常大人では口腔内の細菌が唾液の管を逆行して感染を起こすことが多いが、時に特殊な免疫系の病気(膠原病やその類似疾患)が隠れていることがある。すぐ耳鼻咽喉科へ。
おたふくかぜ。子どもの病気。ウイルス性で約1週間の発熱、全身倦怠などの前駆期の後に時間差をもって両側の耳下腺が腫れ約1週間続く。無菌性髄膜炎、睾丸炎、膵炎などを伴うことがある。すぐ小児科へ。
耳たぶ(耳介)は、胎児にある鰓孔が集まって作られる。鰓孔が閉じずに残こって瘻孔(ろうこう)になる。
通常は粘液が出るだけだが、これに細菌感染を伴うと写真のように腫れて膿が出て痛い。
治療は局所の清掃と軟膏塗布、抗生物質の内服。
感染を繰り返して治らない時には手術。瘻孔は耳介軟骨や耳下腺を貫いて複雑なトンネルを作っている事があるので慎重な手術が必要。
すぐ耳鼻咽喉科へ。
耳たぶ(耳介)は、胎児にある鰓孔が集まってできるが、成長が阻害されて小耳症となる。時に外耳道の閉鎖(atresia)を伴うことがある。
治療は、もう片方の耳の聴力が良い場合は学童期に肋骨の軟骨を用いて耳介の形成手術を行う。両側とも難聴の場合は、外耳道を作る手術を考慮する。形成外科の進歩により、整った形の耳介を作れるようになった。治療計画には詳しい検査が必要。
来週耳鼻咽喉科へ。
鼻腔には上中下の棚(甲介、こうかい)があり、広い表面積で吸気を暖め加湿して、肺の負担を軽くする。鼻腔の天井の嗅裂(きゅうれつ)には、においのセンサーがある。十分な加温と加湿のため血流が多いので出血しやすい。特にキーゼルバッハ部位は鼻出血を起こしやすいので有名である。
鼻腔周囲には上顎洞、篩骨洞、蝶形洞、前頭洞などの副鼻腔があり、鼻腔の加温や加湿を助け、また頭蓋骨の軽量化にも役立っている。
鼻腔と副鼻腔の複雑な構造のため、鼻腔粘膜の表面積は大きく、炎症やアレルギーで大量の鼻水が出る。
診断は、アレルギーの抗原に対する反応を見る皮内テスト、血液中の抗原に対するIgE抗体を調べるRASTなどを用いて、原因(抗原)を調べる。
治療はまず家の掃除。抗アレルギー剤の内服、点鼻薬。アレルギーの抗原を少量注射、あるいは口内の舌下に投与することによってアレルギーが起き難くする脱感作療法もある。
薬の効きにくい高度な鼻つまりに対してはレーザーよって鼻の通りをよくする手術や鼻汁を支配するビディアン神経切除術などが有効。あした耳鼻咽喉科へ。
アレルギー性鼻炎の中で、花粉が原因のものを花粉症と読んでいる。多くは杉の花粉に対するアレルギーで2月、3月に起こる。
ヒノキは杉より遅れて3月〜4月に起こる。5月〜6月にはカモガヤが原因となり、8月〜10月にかけてはブタクサ、カナムグラ、ヨモギなどが原因となる。
診断と治療はアレルギー性鼻炎とほぼ同じ。最近では免疫両方として抗原の注射や口内投与などによる減感作療法もある。あした耳鼻咽喉科へ。
副鼻腔の慢性の細菌感染のため黄色い粘りけのある鼻水がかんでもかんでも出てくる。また鼻茸というポリープができて鼻がつまる。
長く続くと鼻の奥からのどに鼻水が降りてきて痰が増える。また頭重感、頭痛、上顎部の鈍い痛みも見られる。最近はアレルギー性鼻炎の合併も多い。
鼻腔を覗くと、副鼻腔の入り口(自然口)から膿汁が鼻の奥の方へ流れている。時に慢性気管支炎、気管支拡張症、喘息などの呼吸器疾患の原因になる。まれに真菌(カビの一種)が原因となることがある。
顔面のX線検査では患側の上顎洞に陰影を認める。CT画像では上顎洞(CT写真)や篩骨洞(しこつどう、CT写真)が膿汁やポリープで満たされている。
治療は鼻に薬液を噴霧する鼻処置、副鼻腔の洗浄。内服薬(抗炎症剤、抗生剤、抗アレルギー剤)。
薬剤治療で治らないときは手術も考える。以前は副鼻腔の病的粘膜を除去する根治術が行われたが、最近では内視鏡やレーザーを用いて、副鼻腔と鼻腔の交通を良好にする機能温存手術が主。
時にアスピリンによって喘息が誘発されるアスピリン喘息をもった患者さんでは、炎症ポリープ(鼻茸)が再発し難治性の副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)となることがある。あした耳鼻咽喉科へ。
上顎洞、篩骨洞、蝶型洞は、中鼻道鼻腔と小さな孔(自然口)を介してつながっている。また前頭洞は中鼻洞前部に直径数mmの鼻前頭管でつながっている。
慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎や感冒で粘膜が腫れて自然口が詰まる。飛行機に乗ると副鼻腔と外界に圧力差が生じ痛みを感じる。
治療は原疾患の治療。予防として搭乗前後に鼻つまり用のスプレーを点鼻する。時に上顎の腫瘍などの重大な病気が隠れている場合があるので、専門医の診断と治療を受けることが重要。
鼻腔にはキーゼルバッハ部位という血管が豊富で出血しやすい部位がある。鼻には吸気の加温、加湿のために多量の血液が循環しており、ちょっとした傷からも大出血することがある。
感冒、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎があるとキーゼルバッハ部位がびらんを起こして出血しやすい。部屋が乾燥していると、粘膜が乾燥してびらん--出血--かさぶたで止血--かさぶたが乾燥して割れて出血--かさぶたで止血......を繰り返す。
治療は、鼻の位置を高くして、鼻口に綿球やちりがみを詰めて鼻を左右からつまんで5分圧迫する。鼻の病気があれば治療する。また乾燥を防ぐために鼻の入り口に軟膏を塗ると良い。
治らない場合は専門医を受診する。薬液で出血部位を焼灼する。鼻出血には疲労、血液疾患(血小板減少症、白血病)、肝臓疾患や腎疾患、上顎腫瘍などの病気がかくれていることがある。
年末に多いのはアルコール性肝障害で、接待--ゴルフ--疲労--肝障害--鼻出血というコース。この場合鼻腔の奥から大量出血することがある。
この場合はタンポンを上咽頭に詰めて止血する。すぐ耳鼻咽喉科へ。
昔の慢性副鼻腔炎の手術後に空洞が不均一に埋まると一部が袋状になる。これに粘液がたまったものが上顎嚢胞(のうほう)。手術と関係なく発声する嚢胞(のうほう)もある。篩骨洞(しこつどう)に出来る物は篩骨嚢胞という。
症状は鈍痛や視力低下、複視(ものが二重に見える)など。
診断は、顔面のX線検査やCT画像で嚢胞を観察する。篩骨洞にできると視力が低下する事があるので注意を要する。
治療は嚢胞(のうほう)に窓を開けて鼻腔への交通路を作る。すぐ耳鼻咽喉科へ。
長い間続く鼻出血、上顎の痛みや腫れ、鼻つまりがある場合は上顎腫瘍の疑いがある。時に慢性副鼻腔炎、歯疾患(むし歯)などと間違えられて見つかりにくい。
腫瘍はおもに上顎洞の粘膜から発生するが、腫瘍が上顎洞を充満して周りの骨を破壊するまで症状が無いことが多い。
診断は、顔面のX線検査やCT画像その1、その2で腫瘍の陰影や骨の破壊を観察する。上顎腫瘍の進行度合いはTNM分類で評価する。
治療は、顔面の容貌を保つために手術、放射線療法、化学療法を組み合わせた三者併用療法を行う。腫瘍の組織型を調べるとともに腫瘍を減量する。耳たぶの前の浅側頭動脈からチューブを体の中心向きに挿入し、上顎に分布する動脈に抗腫瘍剤を注入しながら放射線をかける。
照射後、残った腫瘍に余白をつけて手術(上顎全摘もしくは部分切除)を行う。早期では大きな欠損を作らずに治癒するが、進行すると欠損が大きくなるので、形成手術をを行う。早期発見、早期治療と顔面の整容に対する配慮が重要となる。
上顎癌の部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
すぐ耳鼻咽喉科へ。
鼻骨は眉間にある三角屋根の形をしたうすい骨。外鼻の下2/3は軟骨で骨折しにくいが、鼻骨は堅く折れやすい。
スポーツや交通事故、打撲などで骨折し、つぶれたり左右に倒れたりする。鼻がどちらかに曲がって見えるが、る腫れが強い場合は骨折がわかりにくい。
診断はX線による鼻骨撮影やCT撮影で骨折を観察する。鼻骨以外の骨折にも注意する。写真では、鼻骨撮影で鼻骨の骨折部位が観察できる。
治療は、骨折がはっきりしない場合は腫れが引くまで2,3日様子を見る。明らかに骨折して変形している場合は鼻中から整復する。すぐ耳鼻咽喉科へ。
顔面打撲により眼球が圧迫され、眼窩の下壁(眼窩底)の弱い部分が骨折して、眼窩の内容(筋肉と脂肪)が上顎洞の中に落ち込む。眼球を動かす筋肉が骨折部にひっかかり、眼球の上下の動きが悪くなる(下方型)ため、物が二重に見える(複視)。また眼窩下神経を圧迫するために、頬部の知覚マヒが起こる。
あるいは眼窩と篩骨洞(しこつどう)の間の薄い骨が折れ、眼窩の内容が内側の篩骨洞に入り込み眼球の左右の動きが悪くなる(内方型CT像)。
診断は、顔面のX線検査や鼻CT検査で、骨折の状態を把握する。また眼球運動の制限を調べる。眼球の精査や複視のための(赤緑検査)も重要。
治療は、骨折が軽く眼球の動きが良い場合は抗生物質で経過を見る。眼球の動きが悪く、眼球のの位置が左右で違う時は手術。
大至急耳鼻咽喉科へ。
眉毛の外側を強打すると、眼窩の外側の骨を伝わって視神経が通る管(視束管)に力が加わり、視神経の障害が起こることがある。写真は視束管撮影であり、右(R)の視束管が丸いのに対し左(L)の視束管には骨折線が入っていることが解る。
直ちに視束管撮影や鼻CT検査を行い、浮腫を取る薬物(ステロイド)を投与するとともに、視神経の圧迫を取る手術(視束管開放術)を直ちに行う場合がある。
大至急耳鼻咽喉科へ。
顔面に打撲が加わると骨折するが、眼窩の外側壁、下壁、鼻腔の外側壁、後壁のように、構造的に弱い部位があるため、複数の部位が骨折することがある。
診断は、顔面のX線検査や鼻CT検査で、骨折の箇所、眼球や視神経、筋肉動眼筋と骨折の関係や咬み合わせの具合を観察する。
左図の顔面X線では、眼窩外側壁、眼窩下壁、副鼻腔後壁の3カ所が骨折(三脚骨折)し変位している。右のCT検査では骨折で上顎骨が歪んでいる様子がわかる。
ヒビだけで咬み合わせが正常の場合は保存的に治療する。骨折で歪みが大きい場合や眼窩底骨折があって物が二重に見える場合、視力が低下している場合、咬み合わせが悪い場合は、なるべく早く手術して、折れた骨片を正しい位置に戻して固定する。大至急耳鼻咽喉科へ。
嗅覚(きゅうかく)センサーは両目の間の鼻の天井の嗅裂にある。風邪、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎で粘膜腫脹や鼻汁があると、においの素が物理的に届かない。
また、ウイルスや細菌の感染でセンサーが障害されることもある。交通事故で嗅覚を伝える神経が障害されることもある。
診断は、鼻鏡検査や顔面のX線検査で病変の有無を確認する。静脈性嗅覚(きゅうかく)検査やオルファクトメトリーで障害の程度を診断する。
治療はステロイド点鼻(頭を後ろに反らせた状態で点鼻する)、ビタミン剤や抗炎症剤の投与。完全にセンサーがやられていると治療困難だが、少しでも嗅覚が残っている場合は回復する可能性がある。回復には数カ月から数年を要する。進行する場合は鼻CT検査やMRI検査も行う。あした耳鼻咽喉科へ
顔面神経は脳幹の顔面神経核から出て側頭骨(耳の骨)に入り、内耳のすぐ外側から外耳道の後ろを通り、頭蓋骨から出て耳下腺を貫通して、顔面の表情筋を支配する。途中から涙腺の分泌を支配する大錘体神経、耳下線の分泌を支配する小錘体神経が分岐する。
中耳では、大音響時にアブミ骨の動きを押さえるアブミ骨筋神経を分岐する。さらに味覚や舌下腺や顎下腺の分泌を支配する鼓索神経と舌神経を分岐する。味覚は舌神経、鼓索神経を上行し、顔面神経を経由して脳幹孤束核に入力する。
突発的な顔面神経麻痺の多くは側頭骨内を通る部位で起こる。原因はウイルス、循環不全などと言われている。突発性の顔面神経麻痺をベル麻痺と呼ぶが、耳たぶや顔面にヘルペスウイルスによる帯状疱疹(たいじょうほうしん)がある場合はハント症候群と呼ばれる。疲労、ストレス、睡眠不足時に起こることが多い。他には聴神経腫瘍や脳血管障害、重症筋無力症なども原因となる。
顔面神経は上記のような特徴的な枝分かれがあるので、涙、唾液の分泌や、
治療は安静、ステロイド、ビタミンなどだが、ハント症候群では抗ウイルス剤も使用する。頸部の交感神経を遮断して血流を改善する星状神経節ブロックも行なうことがある。
顔面神経は自らの炎症で浮腫になり骨の中で圧迫され障害が進むので、改善が思わしく無い場合は顔面神経の走行に沿って骨を取りのぞく顔面神経開放術を行うことがある。
治療には十分な休息が必要で、忙しいと治らない。回復に1年位を要することもある。稀に顔面神経腫瘍が原因となる事があるのでMRIを撮影する。大至急耳鼻咽喉科へ。
人間の口やのどは、直立歩行をするため、また会話で意志や情報を交換するため、他の動物と構造がかなり異なっている。頭頸部は、味覚をはじめ、呼吸、嚥下、音声などの高度な機能を担当します。また直立歩行のため、のどは90度直角に曲がっている。
呼吸の場合は、主に鼻から吸気された空気は、開いた声帯から器官、肺に入る。一方、発声の場合は、肺の空気が閉鎖した声帯を振動させ、その音が咽頭や口腔、口唇の形や動きによって変化して音声になる。
嚥下の場合は、食物は口腔で細かく砕かれて唾液とまざり、舌によって咽頭に送らる。
咽頭では軟口蓋が中咽頭と上咽頭の間を閉じて、咽頭の筋肉が収縮して食物が食道へ送らる。この時食物が喉頭らないように声帯が閉じ、喉頭が挙上して喉頭蓋と舌根で蓋をされる。
食物が食道に送られるときに、普段は下咽頭と食道との間を収縮して閉鎖している輪状咽頭筋がゆるむ。
このように、嚥下機能は複雑な協調運動からなり、この部の障害の診断と治療には構造や機能を十分理解する必要がある。
舌の下の縦のひだ(舌小帯)が短いため、舌の運動が妨げられ、。無理に舌を出すと先が下方に引きつってハート形になる。短縮がひどい場合には言葉の障害(構音障害)やいびき、呼吸困難などの原因となる。
治療は手術で短縮部を伸ばす。あした耳鼻咽喉科へ。
アフタを伴う口内炎の原因の多くは栄養障害、ビタミン不足、鉄欠乏性貧血といった一般的なもの。しかしアフタのような病変の原因には薬剤の副作用、中毒(毒物、重金属)、感染(ウイルス、細菌、カビ)、体力消耗、睡眠不足、免疫低下、特殊な病気(べーチェット病)、微量金属欠乏などありとあらゆるものがある。
治療は、元の病気の治療以外にも睡眠不足、ストレス、に注意する。
治療は十分な休息、睡眠とビタミンB類内服と軟膏、被覆剤、うがい薬、トローチ、丁寧な歯磨き(小さ目のブラシで見ながら磨く)など。薬品によって焼灼すると治りが早い。あした耳鼻咽喉科へ。
いびきの多くは前口蓋弓から口蓋垂(のどちんこ)の部分が睡眠中の呼吸で振動する。また舌根、咽頭後壁や喉頭が振動するものもある。
肥満していて首が短くあごの小さい人に多い。のどが図のように前後に浅く、後口蓋弓と口蓋垂が大きい人に多い。扁桃肥大、慢性副鼻腔炎などで鼻の通りが悪いと起こりやすい。
診断は、上咽頭高圧側面を臥位で撮影し、口蓋垂や舌根付近での気道を観察する。睡眠中の無呼吸や酸素飽和度などを検査する。
高度な例では、いびきの音が大きくなって、ぱったりやんで、またいびきを繰り返すため熟睡できず(睡眠時無呼吸症候群)、昼間に眠く(ピックウィッキアン症候群 picwickian syndrome)、居眠り運転の危険もある。睡眠時無呼吸は心肺機能や脳にも負担がかかる。
治療は、減量と禁煙で半数は軽快する。鼻の病気があれば治療する。
これでも治らない場合は口蓋形成術(UPPP)を行う。これは扁桃摘出、口蓋弓と口蓋垂の切除、形成的な縫合などを状況に応じて行う。手術には経験を要する。あした耳鼻咽喉科へ。
アデノイドは鼻の突き当たりでのどの天井(上咽頭)にある。アデノイドは鼻から進入した細菌やウイルスを検知して全身に知らせて感染防御を行う組織で、扁桃と同じ働き。
これが腫大すると鼻が詰まる。耳管開口部が詰まって中耳の圧力の調節がうまくいかず滲出性中耳炎を繰り返す。細菌感染が加わると急性中耳炎を繰り返す。
後鼻鏡でアデノイドの腫大が見える。上咽頭高圧側面でアデノイドの大きさがわかる。アレルギー体質の人に多く、扁桃肥大、アトピー性皮膚炎、喘息を合併することがある。
治療は、中耳炎を繰り返して学業に支障あるときに切除術を行うが、扁桃摘出術や鼓膜チューブ手術も同時に行うことがある。あした耳鼻咽喉科へ。
扁桃は口や鼻から進入した細菌やウイルスを検知して全身に免疫反応を起こして感染防御を行う。これが腫大するといびきをかきやすいく、頻繁に炎症を起こす。アデノイドや滲出性中耳炎も合併することがある。
中耳炎を繰り返し、発熱で学校を頻繁に休む場合や、いびきが激しい場合、睡眠時無呼吸がある場合は、扁桃摘出術を行う。アデノイドも同時に切除することがある。あした耳鼻咽喉科へ。
口蓋扁桃(扁桃腺)には陰窩(いんか)という窪みがある。慢性扁桃炎では隠窩に細菌が常在し体力が低下した時に炎症が再燃する。扁桃に白いポツポツが見える。
治療は、頻繁に発熱して仕事を休むようであれば扁桃摘出術を考える。また病巣感染といって、慢性扁桃炎のために全身に異常な免疫反応が起こり、不明熱、リウマチ熱、IgA腎炎、掌蹠膿疱症(掌蹠膿胞症、しょうせきのうほうしょう)、慢性の湿疹、各種免疫疾患の原因となる。
手術では扁桃の被膜に沿って摘出する。摘出するとウイルス等の免疫に影響があると言われているが、最近は否定的。あした耳鼻咽喉科へ。
口蓋扁桃が腫れていて潰瘍ができたり大きく割れている場合は、扁桃腫瘍の可能性があります。扁平上皮癌と悪性リンパ腫があり、いずれもウイルスが関与していることが解っています。比較的治療成績が良好なので、なるべく早く治療しましょう。大至急耳鼻咽喉科へ。
扁桃腫瘍の部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
口蓋扁桃(扁桃腺)の感染が進行して、扁桃の外側に膿がたまって腫れ、扁桃が内側に張り出してくる。痛みや発熱が激しく食事ができず衰弱し、頸部のリンパ節も腫れる。
貯まった膿を切って膿を出すと急速に症状が軽快するが、必ず専門医が行う必要がある。抗生剤点滴で症状が軽快するがぶり返しやすい。頸部に感染が波及すると頸部蜂窩織炎となって致命になることがある。
感冒、過労や糖尿病などが原因となるので、十分な休息をとることが重要。至急耳鼻咽喉科へ。
風邪をこじらせて喉頭蓋に細菌が感染してパンパンに球状に腫れ上がる。これが喉頭の入り口をふさいで呼吸困難になり、命の危険がある。
診断は、喉頭高圧撮影法(症例写真)で球状に腫大した喉頭蓋が見える。特徴ある含み声になり、呼吸音が大きくなる。
治療は、抗生物質とステロイドの点滴と吸入を行う。呼吸困難が進行する場合は気管チューブの挿管が困難なので、気管に穴をあけて気道を確保する(気管切開)。この病気は疲労している場合に起こりやすい。大至急耳鼻咽喉科へ。
両側の顎下部に顎下腺という唾液腺があり、唾液をワルトン管を経て舌の下に分泌する。口腔内の細菌がワルトン管を逆流して感染を起こす。感染を繰り返すうちに細菌や組織の核に石灰が沈着して唾石(だせき)ができ、これが途中で唾液をせき止め細菌感染をおこして激しく痛む。
診断は口腔内から触診する。唾石(だせき)撮影(牟田法)や超音波診断(症例写真)、頚部CT検査で唾石(だせき)を証明する。時に唾石が複数ある。
治療は、唾石が口腔に近い場合は、口腔内からワルトン管を切開し唾石を除去する。顎下腺内に存在する唾石(写真)場合は額下腺ごと摘出する。すぐ耳鼻咽喉科へ。
甲状腺は胎生期には舌の奥にあり、ここから頸部に移動する。その道筋は甲状舌管(thyroglossal duct)と呼ばれ通常閉じるが、残存して内部に液体が貯留したものが正中頸嚢胞である。のど仏(甲状軟骨)上方の舌骨付近に、弾力のある丸い腫瘤を触れる。
診断は、触診と超音波で、超音波では内部が嚢胞(のうほう)状の腫瘤として見える(超音波像)。
治療は手術で、嚢胞を舌骨を一部含めて切除するが、症状が無ければ就学期になるまで待つ。来週耳鼻咽喉科へ。
味覚のセンサー(味蕾、みらい)は舌をはじめ口腔粘膜、咽頭、喉頭にも分布している。味覚は舌の前3分の2は舌神経から鼓索神経と顔面神経を経て脳幹孤束核に入り、大脳の島および弁蓋部で認知される。舌の後ろ3分の1と咽頭の味覚は舌咽神経、迷走神経を経て弧束核(こそくかく)に入力し、その後は同様の経路をたどる。
舌の味覚センサーは味蕾(みらい)とよばれ、約1ヶ月ごとに新しく生まれ変わる。味蕾は体力低下、睡眠不足、貧血、胃腸障害、ウイルスや細菌感染、膠原病、義歯、ビタミンB類不足、鉄欠乏性貧血、大球性貧血、微量金属不足(亜鉛など)、食品添加物、薬剤のなど、多くの原因で障害を受ける。写真は味覚障害のある膠原病(シェーグレン症候群)の患者さんで、舌が高度に萎縮して乾燥している。唾液腺造影検査(症例)すると、腺萎縮して”りんごの木”のような造影剤の貯留像が見られる。
診断は味覚ディスク検査や電気味覚検査で、障害の部位と程度を評価する。舌の部位によって味覚の伝導路が異なるので、障害の部位診断が可能。中枢障害が疑われるときにはCTやMRI検査も必要。
味覚には不安や睡眠不足、神経症やうつ傾向なども大きく影響するので、広い視野で診断と治療を考える。もちろん舌の腫瘍や中枢疾患は最初に除外する。回復に1年2年を要することもある。あした耳鼻咽喉科へ
口腔内の癌のなかでは舌癌が一番多く、虫歯、入れ歯(特に金属)、とがった歯、悪い歯並びなどによる慢性的な刺激が原因となる。若年者にも稀でない。痛みは激しい。
舌と歯との間にできた場合は口腔底癌(写真)と呼ぶ。また、頬粘膜の場合は頬粘膜癌(写真)と呼ぶ。
早期では障害を残さずに治せるが、進行すると頸部に転移し治療成績が悪化し、障害が残る。早期の発見と治療が必要。進行度はTNM分類で評価する。
治療は早期で転移が無い場合は形態と機能を保存するために放射線療法(小線源による治療)も行われる。進行して大きさが4cmを越える物や、頚部リンパ節に転移している場合は放射線療法、化学療法だけでなく手術(舌腫瘍摘出術と頸部郭清術)を行う。
切除した舌は、胸部の皮膚と筋肉(大胸筋皮弁)や腹直筋で再建すことで、音声や嚥下(えんげ)機能を保存することができる。
口腔のがんの部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
大至急耳鼻咽喉科へ血管から生じる良性腫瘍で、舌や口唇に多い。生下時から赤褐色の腫瘤があり、さわると暖かい。極めてゆっくり増大するが、時に急に増大したり小さくなったりする。
治療は冷凍手術(腫瘍を凍らせる手術)が行われる。麻酔や前処置を要せず、痛みも軽いので外来で手術が可能。
冷凍手術1回後の状態(写真)。手術には若干の熟練を要し、数回の手術が必要の場合もある。あした耳鼻咽喉科へ。
舌の下にある唾液を分布する舌下腺から唾液を口の中に分泌する管に出来る貯留嚢胞(ちょりゅうのうほう)の一種といわれる。柔らかく、透き通って見えることが多い。極めてゆっくり増大するが、時に急に増大する。これに良く似た症状を示す疾患としてリンパ管が拡張して嚢胞をつくるリンパ管腫(写真)や、胎生期の鰓列の遺残から発生する側頸嚢胞などがあり、見分けることがが必要。
治療は嚢胞の切除や開窓術や薬品で硬化させる治療もあるが、再発も多い。あした耳鼻咽喉科へ。
咳がでるが痰は出ず熱も無い。乾燥したところで話すと咳が止まらない、胸のレントゲンには影がなく、熱も出ないし細菌も見つからない。いろんな内科で薬をもらったが治らない場合には、これを疑う。
声帯は赤く腫れている。部屋の乾燥、長時間の会話、たばこ、声の酷使などでおこる。
最近は冷暖房の普及で乾燥している。飛行機や汽車の湿度は特に乾燥している。。数千年にわたって高温多湿の環境に慣れた日本人は乾燥に弱い。乾燥すると埃が舞い易く風邪も引きやすく、アレルギーも出やすい。高血圧の薬には咳を誘発するものがある(アンギオテンシン変換酵素阻害剤)。
治療は、薬はあまり効かず加湿(湿度60-70%)と吸入が効果的。エアコンをは止める。マスクをする。あした耳鼻咽喉科へ
声帯の前1/3の片側だけにポリープが出来る。ポリープは声帯の振動で血管が破れてできる”血豆”である。
のどを休めて吸入する。正しい発声方法。治らない物はラリンゴマイクロサージャリー(顕微鏡下の手術)でポリープを切除する。
手術後の音声は良くなるが、大声を出すと再発する。あした耳鼻咽喉科へ
声帯の中央から前方の両側に結節ができる。成因は声帯の酷使でできる”タコ(胼胝)”。日によって声の調子が変わる事が多い。
歌手、幼稚園、小学校の先生、電話交換手などの長時間喉を使う職業に多い
正しい発声方法、会話時間の制限、吸入を行う。治らない場合はラリンゴマイクロサージャリー(顕微鏡下の手術)で結節を切除するが、発声に力(気合)を入れたり、無理に高音を出そうとするなど発声習慣が悪いと再発しやすい。あした耳鼻咽喉科へ
声帯全体が”水腫れ”を起こし、重く厚ぼったくなって声も低く味のある声になる。タバコが原因。女性に多く、時に呼吸困難になる。喘息と誤診されることもある。
診断は、間接喉頭鏡やファイバーで声帯を観察し、病歴を聞くこと。
治療は、禁煙。高度な場合はラリンゴマイクロサージャリー(顕微鏡下手術)で腫れの一部を切除する。あした耳鼻咽喉科へ
呼吸確保のために気管に長期間挿入されたチューブの刺激や、熱傷(やけど)、頸部の打撲、特殊な炎症などで気道が狭窄する。多くは声帯直下の声門下に起こる。運動時に息が切れ声が嗄れる。
診断は、ファイバーで観察すると声門下に狭窄や、ヒダ(Web)を認める。
治療は軽度であれば、レーザーによる切除。高度の場合は気管切開後に狭窄を切除し、皮膚や粘膜を移植してコアモールドと呼ばれる詰め物を留置して気道を形成する。若年者では組織反応が強く再発しやすい。あした耳鼻咽喉科へ
声帯表面は皮膚と同じ丈夫な重層扁平上皮で覆われているが、長年のタバコや音声酷使の刺激によって異常角化(hyperkeratosis)すると、左写真のように表面がザラザラとして白く見える。(白斑症)。
異常角化が進むと喉頭癌(ファイバー写真)になる。声帯が堅くなって振動しにくくなり、固くハスキーな声になる。さらに進行すると声帯の動きが悪くなり、呼吸困難になる。
診断は喉頭鏡やファイバーで腫瘍を観察する。腫瘍の一部を採取して細胞診断と組織診断する。
喉頭高圧撮影法では声帯が腫れ、喉頭室が見えなくなり、声帯運動が消失する。頚部CT検査では声帯外側の脂肪の消失、甲状軟骨の破壊などが見える。進行の状態はTNM分類で評価する。
治療は、初期なら放射線化学療法(FAR療法後ファイバー写真))で声を保存して治すことができる。進行すると喉頭を摘出する手術が必要になる。喉頭を摘出すると発声出来なくなるが、様々な方法で代用音声を獲得する方法がある。
喉頭癌の部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
至急耳鼻科へ声帯の動きは反回神経によって支配される。反回神経は迷走神経から枝別れし、左側は心臓の大動脈を、右側は鎖骨下の動脈を回った後に上に向かい、甲状腺と食道の間を通って喉頭に至り、声帯の動きを支配する。
このため特に走行の長い左側の反回神経は、甲状腺腫瘍、食道腫瘍や縦隔腫瘍、肺がん、心臓の手術などで麻痺することがある。さらに長時間の全身麻酔の気管チューブによる圧迫や、原因不明のウイルス感染も原因になることがある。
診断は、間接喉頭鏡やファイバーで声帯の動きを観察する。写真左は発声時で、左右の声帯の間に隙間があり、左の声帯は萎縮している。呼吸時には麻痺した声帯(ファイバー写真)は動かない。
写真右は吸気時で、左の声帯は麻痺のため広がらない。声は声帯の隙間から空気が抜けるような感じで弱々しく、時に二重の音声に聞こえる。多くの呼気を使用するために息が切れ、発声時間が5秒以下になる。
摂食時に声帯が閉じないために食物が気管に入ってむせる(誤嚥)。とくに水などの液体がむせやすい。両側の神経がマヒすると、呼吸困難になり気管切開が必要になることもある。
治療は、麻痺が軽い場合は内服薬で回復することがあるが、麻痺が高度の場合は回復が難しい。手術により動かない声帯を真ん中付近まで移動し固定する方法や、声帯に脂肪やコラーゲンを注入(ファイバー写真)して声を良くする方法などがある。
上の写真は、細い針で麻痺して萎縮した声帯にコラーゲンを注入しているところで、声帯の容積が増加している。すぐ耳鼻咽喉科へ
下咽頭は喉頭の裏側の食道入り口の部分で、ここに腫瘍が発生しても初期には殆ど症状が無い。大きくなると食べ物の飲み込みが悪くなり違和感や痛みが出る。また体重が減少する。腫瘍が喉頭に及ぶと声が嗄れたり呼吸困難になる。酒やたばこを多く嗜む人に多い。
診断は、喉頭鏡検査、ファイバー検査、食道透視で、腫瘍を観察する。また腫瘍の一部を採取して細胞診断や組織診断で確定する。
喉頭高圧撮影法では梨状陥凹(りじょうかんおう)の陰が無くなり、気管と頚椎間の距離が増大し、頚部CT検査では梨状陥凹(りじょうかんおう)周囲の腫瘍が見える。進行度はTNM分類で評価する。
治療は、早期に発見できれば放射線化学療法(FAR療法)だけで声を保存して治癒する。しかし早期には無症状のため発見されにくく、進行すると咽頭だけでなく喉頭や食道までを摘出し、遊離空腸を用いて咽頭と頸部食道の欠損部を再建する手術が必要になる。
また、食道など消化器の重複癌も多く(4%から10%)、必ず消化管の内視鏡検査や食道透視を行う。
下咽頭がんの部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
すぐ耳鼻咽喉科へ上咽頭とは、鼻のつきあたりでのどの天井の部位で、子供にはアデノイドと呼ぶリンパ組織がある。この部に稀だが悪性腫瘍が発生する。
組織型は扁平上皮癌だが、細胞が未熟でリンパ系の悪性腫瘍との鑑別が困難なことがある。東南アジアから極東にかけて多く、EBウイルスが発症に関係しているとの説がある。
早期には無症状で、進行して頸部(顎の下付近)のリンパ節に転移して見つかる事が多い。また腫瘍が頭蓋底を破って脳の下面に達し三叉神経の麻痺(顔面の違和感や痛み)や、外転神経麻痺(写真下 右の眼球が外側に動かなくなり、物が二重に見える)のような脳神経症状や、滲出性中耳炎(耳管開口部が腫瘍で閉塞するため)、頸部リンパ節転移などで見つかることも多い。
診断は、ファイバーで上咽頭を観察し、腫瘍の一部を切除して細胞診断や組織診断を行い確定する。腫瘍の頭蓋底への進行や頸部転移は頚部CT検査(症例写真)やMRI検査で評価する。進行度はTNM分類で評価する。
いきなり頸部リンパ節転移を手術せずに、まず転移の原因となる病変を見つけることが大事。頸部に腫れものがあったら耳鼻咽喉科の専門医を訪ねることがなによりも重要。
治療は、手術が困難なので放射線療法と化学療法が中心。腫瘍は未分化もしくは低分化(皮膚の細胞が表皮や毛に分化する度合いが低い)である事が多いので、放射線療法や化学療法の効果が高く、これだけで原発病変が治ることが多い。
しかし頸部に転移した腫瘍はこの治療だけでは残ることが多く、これには頸部リンパ節郭清術が必要になる。この腫瘍では免疫機能が低下しているので、免疫療法を併用することも多い。
上咽頭がんの部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
すぐ耳鼻咽喉科へ耳下腺は、耳介の下で下顎のえらの後ろにある唾液腺で、一日に1リットル以上の唾液をステノン管を通じて上顎の臼歯付近に分泌する。耳下腺の中央を顔面神経が貫通しており、これより浅い部分を浅葉、深い部分を深葉と呼ぶ。
耳下腺腫瘍の大半は良性の多形腺腫(pleomorphic adenoma)やワルチン腫瘍(Warthin's tumor)だが、腺がん(adenocarcinoma)、腺様嚢胞(adenoid cystic carcinoma)がんや粘表皮(mucoepidermoid carcinoma)がん、悪性リンパ腫(malignant lymphoma)などの悪性腫瘍も少数ある。
診断は、触診、診断は超音波検査(症例写真)、頚部CT検査(写真)、MRIで腫瘍の形状や位置を観察する。細い針を用いて腫瘍の少量を吸引し細胞を調べる穿刺(せんし)細胞診断によって腫瘍の種類を術前に診断する。悪性の場合の進行度はTNM分類で評価する。
良性でも大きくなると手術が困難になり顔面神経麻痺の可能性が増える。また悪性腫瘍では小さい腫瘍でも顔面神経麻痺を起こすことがあるので、専門医による慎重な診断と治療が必要。
唾液腺癌の部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
あした耳鼻咽喉科へ
甲状腺はのど仏の下にあり、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の支配により、甲状腺ホルモンを分泌する。
甲状腺ホルモンは活動状態を調節する。甲状腺ホルモンが多いと汗をかき活動的になる。ホルモンが低下すると、活動が低下して体に水分がたまり、肌が乾燥し髪の毛が抜け便秘気味となる。
甲状腺の病気は圧倒的に女性に多い。甲状腺の腫れには炎症、過形成、良性腫瘍、悪性腫瘍など多くの種類があり、それぞれ甲状腺機能異常がある場合と無い場合がある。
有名なバセドウ病は免疫反応により甲状腺機能亢進になる。抗甲状腺剤により治療するが、薬で症状が制御できない場合や挙児希望の場合は手術を行う。
橋本病は中年女性に起こる慢性の免疫疾患で、次第に甲状腺機能低下になる。また腫瘍の素地になりやすい。
腫瘍の多くは腺腫様甲状腺腫(adenomatous goitor)やろ胞腺腫(follicular adenoma)などの良性だが、乳頭腺がん(papillary adenoma)やろ胞腺がん(follicular carcinoma)、髄様がん(medullary carcinoma)、未分化がん(undifferentiated carcinoma)などの悪性の物もある。
悪性腫瘍は概して発育が遅いが、稀に急激に増大するものが稀にある。頸部や脊椎、肺に転移したり、反回神経マヒを起こすこともある。若年にも稀れではなく家族性の場合もある。
甲状腺機能や腫瘍の活動度は、遊離甲状腺ホルモン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲腺サイログロブリン検査などで把握する。
診断はまず触診で腫瘍の形状や周囲への癒着を観察する。喉頭高圧撮影法(症例写真)では甲状腺部の気管の狭小化や左右の変位が見られる。また、喉頭低圧撮影法(症例写真)では、特徴的な砂状の石灰化が観察される。
最近は、超音波検査(症例写真)、細い針を腫瘍に刺し微量の材料から診断する穿刺(せんし)細胞診断、頚部CT検査、甲状腺シンチグラム検査などの進歩により術前の診断が正確になっている。進行度はTNM分類で評価する。
良性と診断されたものでも、大きいものは呼吸や摂食に影響が出るようであれば手術を考える。悪性のものは手術するが、全身状態が悪い場合や高齢の場合は甲状腺ホルモン投与による抑制治療も考える。
甲状腺癌の部位分類、病期分類、治療の詳細については、こちらを参照ください。
あした耳鼻咽喉科へ
咽頭、喉頭、甲状腺、頚部食道などに病気が無いのに、のどに何かがひっかかったような感じがする場合にこの病名がつく。頭頸部の病気はタバコや酒を嗜む成人男性に多いが、これは女性に多い。
喉頭高圧撮影法や食道透視で、腫瘍を除外することが重要。また必ず甲状腺の触診と超音波検査を行う。
逆流性食道炎によって異常感を訴える場合もある。性風俗の変化に伴うSTD(Sexually Transmitted Disease)、なかでもクラミジア感染症が咽喉頭異常感を示すことがある。血液検査で抗体価を調べる。
専門医による検査と診断が必要。あした耳鼻咽喉科へ
子供ではお金、碁石、おもちゃ、画鋲(写真)、装身具(写真)(X線撮影正面、X線撮影側面)など、成人では魚骨(写真)、薬(プラスティック包装(PTP)のまま,X線写真)、入れ歯、針などが異物となる。高齢者では義歯などによる咽頭異物(写真)も見られる。
多くは第一狭窄部(食道入口部)と第二狭窄部(大動脈弓部)の間にひっかかり、第三狭窄部(噴門部)は稀。頸部低圧X線検査やファイバー検査で見つかりにくい魚骨もCT検査(症例写真)でははっきりする事がある。
小さなものはファイバースコープで摘出するが、大きな物や尖った物は硬性直達内視鏡で摘出する。硬貨や碁石は胃内に落下すれば便とともに出てくることが多い。大至急耳鼻咽喉科へ
子供では、断然ピーナッツ(実物写真)やおもちゃ、文房具、成人では釘、機械部品、入れ歯の断片などが原因となる。 幼児にピーナッツは絶対に与えてはいけない。時には致命的となる。
胸部X線では息を吸った時には異物の無い側の肺が膨らむため縦隔が異物のある側に移動し(写真右)、息を吐く時には異物のある肺が膨らんだままなので縦隔が異物の無い側に移動する(写真左)ホルツクネヒト兆候(Holzknecht's sign X線)が観察される。
写真は1才幼児のピーナッツ異物。ピーナッツは左気管支に2個存在した。ファイバーで異物を観察した様子(185kB)(再生にはRealPlayer、Gomplayer もしくはVLCメディアプレーヤー等が必要)。ピーナッツは全身麻酔下に硬性気管支鏡を左気管支に挿入して摘出した。
幼児では気管支が極めて細く、ファイバースコープによる摘出は不可能で硬性直達内視が必要。成人では小さな物はファイバースコープ、尖った物や大きなものは直達気管支鏡で摘出する。いずれにしても極めて難しい手術となる。大至急耳鼻咽喉科へ
第1相は口腔期と呼ばれる主に随意的な運動で、食塊が口のなかで咀嚼され、舌の動きによって咽頭に送られる。
第2相は咽頭期と呼ばれる半不随意的な運動で、軟口蓋が咽頭後壁に密着し咽頭と鼻腔を分離する。舌根が上昇し声帯が閉鎖する。咽頭の筋肉群が収縮し咽頭の圧力が上昇する共に、食道入口部を閉鎖している輪状咽頭筋がゆるみ、食塊が食道に送られる。
第3相は食道期と呼ばれる不随意的な運動であり、食道に投入された食塊が食道の蠕動(ぜんどう)運動によって胃に運ばれる。
正常な嚥下には、食物や圧力を感じる知覚機能、舌や咽頭、喉頭の筋肉の運動、そしてそれを支配する嚥下中枢の機能が重要である。口腔、咽頭、喉頭、食道が協調してタイミング良く働かないと、食物が気管に入り込み(誤嚥)、肺炎になり、時に致命的となる。
原因としては口腔、咽頭、喉頭、食道の腫瘍の他に、脳血管障害(脳出血や脳梗塞など)、加齢などである。神経筋疾患(ALS、側索硬化症、多発性筋炎など)も原因となり、主に嚥下第2相が障害される。時に頸椎の変形が嚥下障害の原因(フォレスティア病)となることがある
診断は食道透視を行って嚥下運動のどの相が障害されているかを調べる。
この嚥下第2相障害例(ビデオ)では、咽頭の収縮が十分でなく、また輪状咽頭筋の開きも悪いため、食物が食道に移動せず、誤嚥を起こしている様子が観察される。(再生にはRealPlayer、Gomplayer もしくはVLCメディアプレーヤー等が必要)。
治療は、リハビリと手術が中心になる。喉頭の挙上と閉鎖が不良の場合は喉頭挙上術によって喉頭の挙上を助けて誤嚥を防止する。また食道の開きが不良の場合は輪状咽頭筋切断術を行って食物が食道へ移動し易くする。しかし誤嚥が高度の場合は喉頭摘出を要することもある。現在は嚥下リハビリが行われている。
正しい摂食機能は生命活動の維持に重要なだけでなく、生活の質 QOL(Quality Of Life)の維持に重要である。このため、嚥下障害の診断と治療に大きな努力がはらわれている。あした耳鼻咽喉科へ
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