Traffic accident-- 交通事故について

Traffic accident-- 交通事故について


耳鼻咽喉科、頭頚部外科では多くの交通外傷を扱います。ここでは、最近目立つ対物、対車両への事故を中心に、話を進めます。

1.顔面外傷

顔面を、ステアリング、ダッシュボード,ウインドシールドにぶつけることによります。ステアリングやダッシュボードの場合は、顔面打撲が主となりますが、顔面がウインドシールドに突入しますと、多くの外傷を負います。

最近の車ではウインドシールドはあわせガラスになっていますので、比較的軽度の衝突では顔面、頭部に無数の小ガラス小片の陥入が見られます。あわせガラスでも衝撃が強い場合、また旧式の強化ガラスの場合は、頭部がガラス中に突入し、多くは無数の水平方向の弁状の損傷を受けます。これは、形成的に縫合しても傷跡がめだちやすい特徴があります。これが眼球の部位ですと、眼球破裂などの高度な障害を受ける可能性があります。

2.頭蓋、顔面骨折

衝撃が強いと骨折を引き起こします。骨折を起こしやすいものは、鼻骨、上顎骨、下顎骨などです。鼻骨の場合は比較的修復が容易ですが、上顎骨折を起こすと、上顎が変位し、歯のかみ合わせが悪くなることがあります。

特殊なものとして、眼窩吹き抜け骨折があります。これは眼球に圧力が加わると、眼窩の主に底面もしくは内側の骨が骨折し、眼窩内容物が眼窩から出てしまいます。主な症状は複視といって、左右の目の画像がずれて見えるものです。

下顎の骨折では同様に歯のかみ合わせが悪くなりますし、高度の場合は気道を圧迫し、呼吸困難を起こすことがあります。頭蓋骨折も多く見られます。頭部の皮膚の損傷と骨折が同時に起こると、脳自体の損傷や、髄液漏、感染、異物なども問題が生じやすく重篤な状態となります。また、表面には骨折がはっきりしないが、頭蓋底骨折を起こしていることがあります。この場合、外耳からの出血や髄液漏が見られたり、鼻部から髄液漏が見られることがあります。また難聴、顔面神経麻痺、眼球麻痺などの脳神経症状を伴います。

3.脳震盪

上記のような症状が無くても、脳に衝撃が加わることにより、脳震盪を起こすことがあります。また、衝撃により脳に損傷を受けますが、かならずしも打撲した場所ではなく、その反対側に損傷を受けることがあります。また、脳内の血管から出血し、頭蓋内血腫が生じることがあります。

4.頚部損傷

ステアリングなどで頚部を打撲すると、甲状軟骨、輪状軟骨、気管などの打撲、骨折、解放創傷などが見られます。症状は、声が枯れる、呼吸困難などです。また、頚部の進展により、頚椎にも損傷を受け、脊髄や腕神経の麻痺、しびれなどがおこることがあります。注意が必要なものは、サブマリン現象です。これは座席にねそべった状態でベルトをしめると、衝突の衝撃で体がベルトの下をくぐり抜けて前に出てしまい、逆にベルトにより、頭部や頚部を圧迫損傷することです。

5.胸部損傷

肋骨、鎖骨の骨折が見られます。この損傷が肺におよぶと、気胸、血胸などがみられます。さらに大きな衝撃が加わると、胸壁の解放性の損傷や心臓に対する圧迫、心臓タンポナーゼなどが見られます。

6.腹部の損傷

肝臓や脾臓などが圧迫により損傷を受けることがあります。この場合、外部に大きな傷がないのに腹部に内出血があり、また発見が遅れることがあります。腹部を打撲した場合は、超音波やCTなどで検査しておくことが重要です。

7.四肢の損傷

多くは膝をダッシュボードに打撲することにより生じます。また、ちょっとしたダッシュボードの凹凸により、大きな骨折、解放損傷を負うことがあります。


予防

1.まず安全運転。

2.ベルト着用。まず、座席の背を比較的起こして、腰を深く座り込むことが必要です。ハンドルを持つ手にも、ペダルを踏む足にも余裕が必要です。下ベルトは腹部より下で腰骨にかかるようにし、上ベルトは、首に直接ふれないように位置を調節します。

3.ダッシュボード上のものをかたずけましょう。オーディオ、テレビ、そのほかの突起物のために思わぬ怪我をする可能性があります。

4.多くの研究で、シートベルトが一番経済的で効果が高いことが証明されています。しかし、次のような装備が望ましい。


装備

1。十分な操縦特性

明るいライト。ウェットグリップの良いほどほどの太さのタイヤ。視界のよい窓。

2.正しく設計された車体

突起の無いバンパーやボンネット(カンガルーバーとかアニマルバーなどもってのほか。外国であれば、アニマルバーによって歩行者が障害を受けた場合、PL法によって、メーカーに懲罰的な対応がなされる可能性がある。アニマルバーの危険が十分予見でき、また証明されうるのに、車種によってアニマルバーを標準装備し、またユーザーにアニマルバーの危険性について十分な説明を行っていないという事実により)。オフセット衝突、側方衝突でも衝撃を吸収し、生存空間を十分確保できる車体。正しく設計されたドア内の補強材と、衝撃吸収物質。

3.ABS

4.正しく設計されたシート

体が潜り込まないアンチサブマリン構造。

5正しく設計されたベルト

シートテンションリデューサーなどは不要。できれば、シートベルトプリテンショナーが望ましい。

6.エアバッグ

できればサイズが大きめで、前2席装備。

以上の装備は、輸入車ではかなり安い車種にも装備されていますが、国産車では装備が遅れているようです。国産車の安全装備の充実が望まれます。また、アニマルバーの装備などは、今日からでもやめてもらいたいものです。


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