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OVersion May 2000

May 27
 ●ICは脳に迫れるかのナゾ(マイクロ操作編)
May 20
 ●旧式ヨット春のお手入れのナゾ(トラブル山積編)
May 13
 ●続・国産普及自動巻のナゾ(シテゾン編)
May 8
 ●エキスパートとISDNの関係のナゾ
May 1
 ●結晶化した趣味の雑誌のナゾ



OVersion May 2000


May 27
 ●ICは脳に迫れるかのナゾ(マイクロ操作編)

Webmasterは時々このページの逆リンクを辿ることがある。人はそれぞれの小宇宙に暮らしていて、それを他人がどう判断するかは永遠のナゾであるが、逆リンクはそれを知る数少ない手段の一つである。またそれをもって自らの絶対座標を模索するのである。

逆リンクを辿っていくと本ページは時に分類不能のページに含められている事がある。あるいはWebmasterは宇宙人に違い無いと書いてあるページもあった。しかしWebmasterは宇宙人では無い。Webmasterの技術的バックグラウンドは奈辺にあるのか、そしてがどうしてこのような不可思議なページを書くに立ち至ったかについて今回から何回かに分けて書いてみたい。

人の脳は極めて多くの細胞から成っている。そのなかでも小脳の機能は知られていない。運動のプログラミングに関係している事は解っているのだが、そのロジックが不明なのである。

そこでWebmasterたちは10年ちょっと前にニューヨークの某研究所で小脳の神経細胞の働きを解析することになった。運動のプログラミングは三次元空間に定位する肉体を時空間的に制御するしかけである。過去小脳の機能を研究するためにその電気活動を調べた研究があるが、小脳の機能は明らかにできなかった。それは小脳の神経細胞の数に比べ記録できる情報があまりにも小さいからである。

そこでWebmasterたちは生きたネズミの小脳に出来る限り多くの電極を埋めて神経細胞から活動を記録する事とした。小脳のプルキンエ細胞は約30ミクロン間隔で並んでいる。そして一つの細胞は何万というアナログスイッチング素子を持っているわけだが、せめて細胞数の5%以上をサンプルすれば小脳の働きが解るのではないか、と言うワケである。

Webmasterはある時にそのプロジェクトを引き継いだのである。技術に改良をかさね電極の間隔を詰めていった。写真はそれの完成系である。この写真ではネズミの両側の小脳に96本のガラス電極を刺入した。その電極間隔は約120ミクロン。ネズミの小脳皮質の細胞の実に約6%から活動を記録することができた。

写真は電極が96本植わった状態である。網目に見えるのは電子顕微鏡用のチタンメッシュであり、そこに6行8列のガラス電極48本の集団が2個見える。もちろんこの電極の数と密度はその後10年たっても破られていない世界記録である。

それぞれの電極は先端が3ミクロンのガラス微小電極であり、難乾性の特殊な導電性液体とテフロン被覆のプラチナイリジウム電線からなる。それを一本一本植える装置はバーレイ社のピエゾ式モーターによる三軸コントローラーである。一本植えるのにおおむね3分を要する。動物の準備に2時間、96本植え終わるのに10時間、それから10時間記録するという仕事だった。同僚のF先生と二人での忍耐の毎日であった。

記録するハードウェアも特殊であった。96個の高感度アンプとコンパレーターによってサンプリングレート0.25ミリ秒で2値化された活動を$ONY社の16bitPCM録音機の変造品を経てPCM信号としてVHSビデオテープに記録した。解析にはPCMデーターをデコードしてハードディスクに落とした。このシステムは天才的エンジニアのRonが作ってくれた。Webmaterのビデオ関係の知識はこのあたりに由来している。

それを当時最高の性能を誇ったVAX-780で解析するわけだ。基本的に96チャンネル相互のミリ秒単位の時間相関係数を計算するが、その解析は膨大なものになる。その結果を二次元もしくは三次元に視覚化するわけである。言語は主にマクロ、フォートランそして一部は米国らしくパスカルであった。Webmaserは朝から晩までソフトに計算高速化のための変造を重ねてVAXを極限までコキ使ったのである。また他にもデータジェネラルやコントロールデータのシステムを使ったこともあった。Webmasterの電脳の知識はこのあたりに由来している。

当時のグラフィックの出力装置と言えばテクトロやDECのターミナルとHPのプロッターであった。一枚の絵を完成するのにキャラクター列でコマンドを吐き出すので、まさに気が遠くなるような時間がかかった。まして動画を作るとなるとものすごい時間がかかる。ターミナルでもプロッターと同じように点や線を一個づつ書いて行き、できた絵を16mmフィルムに一コマづつ撮影していくのである。Webmasterのグラフィックの知識はこのあたりに由来している。

その仕事は実は10年以上前の話だ。そしてそれを今回某雑誌に投稿するまでにまた10年以上かかった、気の遠くなるような仕事である。結果は小脳に入力には2系統があって、それぞれが時間分解能と空間分解能を受け持つ。そしてプルキンエ細胞では両者の情報から実際の運動の制御を行う、というものだ。

そのために、小脳は脳幹にあるオリーブ核という時間的なズレ(スキュー)をもったクロック群を発生するメカニズムからの投射を受けている、ということであった。例えて言うと、小脳表面の細胞に対する情報の投射は液晶などで言うところのスタティック点灯ではなくダイナミック点灯に似ていることになる。このあたりがWebmatserがクロックタイミングにうるさい原因であろう。やはりスロット型CPUはダメなのである。

当時この研究プロジェクトはミッションインパシブルと呼ばれていた。それが完成したときには米科学アカデミー会員になったばかりの米国人のボスがよろこんで給料を増額してくれたのであった。Webmatserはその研究が一段落したので帰国しようと思った。しかし米国のボスは実はもうひとつミッションインパシブルなプロジェクトがあるので、ぜひそれを完成してくれないか、と言う。Webmasterは迷った。そして日本のボスに打診したところ”新しい仕事が完成してから帰国するように”と指示を受けたのである。

そこでその後手を染めたのが超電導量子干渉装置SQUIDの仕事である。当時米国では人体の脳が発生する微弱な磁気を計測するSQUIDという磁気センサーが発達しつつあった。ジョセフソン結合を持つワッカに磁気の変化があると結合に量子的な電圧を発生する。それを電波で拾いあげるのがSQUIDである。しかしそれを臨床に使えるようにするには大きなカベがあった。

そのひとつは、多くの磁気センサーを束ねると相互に電波干渉を起こしてうまく動作しないのである。そのためには集合ロックアンプのクロックの同期を取ることとノイズ対策の変造する必要があった。もうひとつは、臨床に使えるような解析方法や表示方法が無かった。そのソフトウェアを完成するのが仕事だと言う。今回の電脳は初期のHP-UNIXであった。

それがどうなったかを書くと長くなるので、そのうち機会をあらためて分割して書きたいと思う。どれも雲をつかむようなSF的な話なのだが、実話なのである。事実は小説より奇なりとも言う。

Yamamoto, T., Fukuda, M., and Llinas, R.: Bilaterally synchronous complex spike Purkinje cell activity
 in the mammalian cerebellum.  Eur. J. Neurosci., 327-339,2001.

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May 20
 ●旧式ヨット春のお手入れのナゾ(トラブル山積編)

桜もとうに散った今日この頃、旧式ヨットの手入れをする季節だ。もう15年にもなる古い船ゆえ、この時期に手入れをしておかないと、シーズン中にひどい目に遭う。山積した仕事と庭の雑草を横目にして重い腰をあげることにする。

船自体は歩いて10分ほどの所に止めてあるのだが、腰が重くなるのには理由がある。重い工具やバッテリーが必要なだけでない、遭難しないためにはちょっとした準備と決心がいる。おまけに出航する度に必ず新しいトラブルを発見するので修理計画を立てなければいけなくなる。以前は新入医局員獲得のため頻繁に船を出したのだが、乗せた学生がだれも入局しなかったというトラウマも原因のひとつだ。

書類を片づけて船に向かうと早速トラブルを発見。入口の木の戸が腐り始めている。マホガニー材と違って合板は痛み出すとダメになるのが早いので、早急に手を入れなければならない。幸い内部には雨漏りの形跡は無かった。メインスイッチを入れて冷却水弁を開き、メインイベントのヤンマーディーゼル始動である。

”カチ”

予想通りセルは回らない。もちろんこれを予期して持参したバッテリーをジャンパーでつなぐことにする。デコンプレバーを効かせてセルを回し、勢いが付いたところでデコンプをはなす。

”クーークーークーー”

やばい感じである。そうだった、ディーゼルはすぐにセルを回してはいけないのであった。しばらく待って、

”クーークーークーートン トン”

ちょっと希望が出てきた。そうだった、ディーゼルは回り初めてもセルを切ってはいけないのであった。再度

”クーークーートントントントン......”

やっとかかったようである。しばしアイドリングさせ、その間に他の手入れをする。まず船室の床をはぐって見るとビルジ(廃水)が溜まっている。さっそく手動ポンプで汲み出すが、手応えがおかしい。見るとビルジの配管が痛んでエアを吸っている。これも交換する必要があるだろう。

一番の問題は船体についた海草と貝類だ。昨年の夏は暑くまた暖冬が続いたので汚れかたがひどい。今年もはや水温が上がり始めすでに海草が付き始めている。船に用意した竹竿で喫水線とラダー(梶)を掃除する。さすがにキール(竜骨)の掃除は難しいが、キール前端を竹竿でなでておくだけでずいぶん違う。スクリューは極スローで回しながら竹竿を当てて貝殻をたたき落とす。

というわけで、出航できる状態になったのは手入れを初めて小一時間が経過していた。そして右親指のツメには血がにじみ、左人差し指のツメにはヒビがはいっていた。あまりに疲労を覚えたWebmasterはセイル(帆)をあげることを断念し(いつものことであるが)機走することとした。そう言えば最近ジブセイル(ジェノア)を上げたことはあってもメインセイルは上げない事が多い。

港を出るとさすがに景色が良い。博多湾の真ん中には能古島があり、また東から海の中道と志賀島が博多湾をぐるりと囲む。また西には糸島半島が張り出しており、そこに大きな夕日が沈んでいく。湾内には大型船が多く停泊していて、壱岐や韓国からの高速船がものすごいスピードでつっこんでくる。海上タクシーやプレジャーボートが水上をすっ飛ばしていく。

新しい埋め立て地である百道地区には巨大なチタン製屋根の福岡ドームとホテルシーホークが見える(写真)。その右には福岡タワーが、そしてその左右にはハイテク企業が入居したバブリーなビルが林立している。催し物をやっているのだろうか、遣唐使船を模した船が湾内を回遊している。さらに今日は米軍の艦船も入港しているようだ。

博多湾から見た福岡の市街はとてもフォトジェニックだ。Webmasterは何度もマンハッタンを船上から見たことがあるが、あまりに人工的なビル街を美しいとは思わなかった。もちろん、福岡より立派な町はたくさんあるだろうが、コンパクトな博多湾とその建造物のバランスが取れているのだろう。

バッテリーと工具の準備に気を取られてビールとおつまみをもってこなかったことをWebmasterは後悔したのであった。見上げると空が青いが、黄砂の影響か遠くは少しかすんでいる。そしてマスト先端の風見が壊れていることに気付いた。そう言えば速度計も動いていないが、これはいつものことである。

帰港するあいだ、美しい夕日を見つめながら考えた。まずバッテリーを充電して、船底塗料を塗って、速度計を修理して、船舶検査の準備をして、風見を直して、戸を修理して、ビルジの配管を修理して。。。。完璧に治そうとするとムリがある。かといっていい加減にすますと船が流されてしまう。とかく古い船は扱いにくい。

もしセイリングと船の手入れに興味のある方(マナーの良い方)がおられたらメイルをお待ちしている。

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May 13
 ●続・国産普及自動巻のナゾ(シテゾン編)

最近の自動巻ブームはますます猛威を振るっている。Webmasterは仕事柄いろいろな職種の方と打ち合わせをするが、おしゃれな会社員の左腕には必ずと言っていいほど舶来製自動巻が納まっている。以前猛威を振るったR社B社は減少気味だが、故障が多いので有名なO社は依然多く、デザインの良い新興M社も時々見かける。国産ではヲリエントスターを見かける事が多い。本ページでも、

 ●逆輸入セヰコーファイブの品質のナゾ
 ●国産普及自動巻メカのナゾ

で特に頑迷な某S社からの普及自動巻の発売を心待ちにしているところである。最近、次男坊シテゾンの普及自動巻を念写する機会があった。モノは特別仕様でも何でもなく、ちょっと気の利いた時計屋で上代\13000で入手できる。写真のように、文字盤からテンプ、アンクル、ガンギ車が見えているスケルトン物である。広告の写真では”何て品のないデザイン”と思ったのだが、実物の見栄えはまずまずである。

ブレスレットはセヰコーよりは厚みがあってまずまずの質感だが、プレス製の留め金は同様に薄手で仕上げも良くない。Webmasterが早速紙ヤスリで角を落としたのは言うまでもない。一方ケースはミリタリー調(あるいはヲリス調)でまずまずの仕上がりである。風防は強化ミネラルガラスのようだ。裏スケルトンなのはこの値段として特別ボーナスと言える。ムーブメントは日本製で中国で組まれたとある。

文字盤はあっさりしていてセヰコーほどの品質感は無い。インデックスは植字だがメーカー名は印刷であり、夜光の類は一切無い。針もインデックスもあまり磨かれていない。文字盤の孔から覗くメカの動きはちょっとした左腕のオアシスという感じで、このヤクモノのお陰で安っぽく見えずにすんでいる。

21石のムーブメントは新設計のようだ。 前に登場したセヰコーやヲリエントのムーブは70年代設計の典型的自動巻の常として手巻き機構が無かった。当時は複数の時計を使い分けることは少なかったのだろう。このムーブには手巻き機構がある一方、自動巻機構は片方向巻き上げと割り切っている。残念ながら秒規制装置は無い。構造に少し特徴のあるムーブなので輪列を詳しく見てみよう。

まず3Hz振動のテンプ(T)にはレーザーバランス加工が見える。仕上げの良いルビー2石のアンクル(A)が同様に仕上げの良いガンキ車(G)にからんでいる。4番車(IV)は外側に位置し、中心よりに3番車(III)、そして中央に2番車(II)が位置する。3番車は中央の秒針のカナも駆動している。2番車はゼンマイ(香車、B)のパワーを受け、時刻合わせ時にスリップするカナを経て長針を駆動し、それが文字盤ウラの日の裏車を経て短針を駆動する。

4番車の位置はシテゾンの古い手巻きと同じ位置だ。自動巻では手巻き機構の有無ですべての歯車の配置は有る程度決まってしまう。つまり手巻きのためには竜頭の位置に丸孔車(M)がある必要があり、そうするとゼンマイ(香車、B)はその隣に大きな不動産を占める。とするとテンプは必ずゼンマイと点対称の位置に落ち着く事になる。ゼンマイとテンプは大きいほど良いからである。昔精度のコンクールに臨んだ時計はみんなゼンマイとテンプだけがオーバーサイズになっていた。

というわけで、残りの歯車は丸孔車、ぜんまい、テンプ以外の残った不動産を分割することになる。そのなかで重要なのは4番車の位置である。懐中時計では4番車は竜頭と点対称の位置(6時)にあり、秒針(スモールセコンド)を直接駆動していた。懐中時計の流れを汲むクロノグラフの永久秒針が竜頭と点対称の位置(9時)にあるのはその名残である。その後秒針とともに4番車は腕時計に適した位置(6時)に引っ越す。

近代の時計では秒針はさらに中央に引っ越す。そのために3番車に追加された三番出車が中央の秒針のカナを駆動するようになる。さらに近代的なムーブでは4番車は中央に位置して秒針を直接駆動するものが増えてくる。それに比べると、このムーブの4番車の位置は秒針を駆動するわけでも無いのに変則的である。その理由は自動巻機構とのスペース配分のせいだろう。

自動巻機構だが、中央のローター(画像処理で消している)の回転は切り替え車(K)に伝わる。切り替え車は2枚重ねになっていて、その間に存在するラチェットのため回転は片方向にしか伝わらない。その回転は中間車(C)を経てゼンマイ(B)を巻き上げる。手巻き時には竜頭の回転は丸孔車(M)を経てゼンマイを巻き上げる。ゼンマイのラチェットは中間車に効いているようだ。

自動巻機構は切り替え車が2枚あるETAムーブやマジックレバー式のセヰコーが両方向巻き上げなのに比べ、片方向巻き上げとやや手抜きだが、実用上の効率は問題無いようだ。その代わり全ての歯車が1階建てに収まっていてムーブが比較的に薄く仕上がっている。

Webmasterの見たところ、このムーブは70年代の手巻きムーブからの派生品のように思う。つまり、輪列を竜頭寄りに位置して竜頭と反対側にスペースを稼ぎ、そこに自動巻の切り替え車をもぐり込ませている。ある意味では温故知新ムーブメント(PAT. PEND)と言えないこともない。ムーブには日付機構も組み込み可能だが、この品ではスケルトンのために省かれている。精度は一月に1分弱進む程度と優れており、実用上まったく問題無い。

というわけで、シテゾン自動巻は上代\13000としては極めてシンプルかつ魅力的な温故知新両面スケルトン時計に仕上がっている。一階建てのムーブは今後クロノグラフ機構や凝ったカレンダー機構を追加してもさほど厚くならないようだ。ところで某S社はこの自動巻を見て何を思うのか、知りたいモノである。

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May 8
 ●エクスパートとISDNの関係のナゾ

テレビを見ると"ISDNはじめちゃん”の宣伝をやっている。聞くところによるとISDNを引く度に代理店にはいくばくかのインセンティブがあるとか。ところが、どうもWebmasterの周りにはISDNを引いている人が少ないようである。サンプルを当たってみよう。

サンプル1(男、年齢40台、専門は某外科および生化学、医博、一昨年米国より帰国)

”ISDN?引いてないよ。インターネット?仕事場は常時接続だから、家ではメイルを見るだけで普段は家内が使っている。え、どうして?どうしてったって、どうしてISDNにせにゃならんの?ただでさえ日本の電話代高いし。”

サンプル2(男、年齢40台、専門は某外科および生理学、医博、3年前米国より帰国)

”ISDN?引いてない。インターネットはDIONの電話代コミのやつ。え、どうしてかって?アメリカじゃあISDNなんかだれも使ってないよ。モデムでつなぎっぱなしでも安いから。”

サンプル3(男、年齢30台、専門は某外科および生化学、医博、最近米国より帰国)

”ISDN?引いてない。インターネット?モデムです。え、どうして?どうしてったって、わざわざ高いカネを払ってISDNする必要は無いと思う。”

サンプル4(男、年齢40台、専門は某外科および生理学、医博、数年前帰国)

”ISDN?引いてない。家がホームテレホンなのでISDNに変えにくい。モデムと速度が変わらないし、どうせまたすぐ機械を代えなきゃいけないんでしょ。百倍早くなるんなら考えてもいいけど。

男ばかりのサンプルでは不公平なので、女性にも聞いてみた。

サンプル5(女、年齢30台、専門は某外科および生化学、医博)

”ISDN?引いてません。ノートパソコンのおまけのモデムです。え、どうしてかって?ただでさえ電話代高いのに、これ以上払えません。遅くないかって?仕事場に比べれば、ISDNもモデムも大差無いと思うけど。”

サンプル6(女、年齢20台、専門は某外科、携帯電話のへビーユーザー)

”ISDN?なんですかそれ。どうやってインターネットしてるかって?ヴァイオですよ。モデム?モデムって何ですか?よくわかんないけどヴァイオで画面にあったボタン押したらつながっちゃったので、そのまんま使ってます。なんたってモモちゃんかわしいし。いつも話し中だって?その時は携帯にかけてね。”

というわけで、他にサンプルしたうちにもISDNを引いた人は三世代家庭を除くと殆どいなかった。特に廉価でつなぎっぱなしを経験している帰国組では普及率ゼロであった。もちろん仕事場のマシンが常時接続という事情も一因かもしれないが、どうもWebmaster周辺は実にケチなサンプル地球にやさしいユーザーが局地的に集まっているようである。特に物理レイヤーを超越した最後のサンプルの場合、モデムという概念すら存在しないようで、有る意味ではもっとも先進的なユーザーなのかも知れない。

注意!登場するサンプルはプライバシー保護のため必ずしも実際の言動を反映しているものではありません。

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May 1
 ●結晶化した趣味の雑誌のナゾ

以前に趣味の雑誌の寿命のナゾ(結晶化編)のなかで、こう書いたことがある。

人間には寿命がある。動物にも寿命がある。都市にも、企業にも、国家にも、そして文明にも、さらに天体にも寿命がある。私見によれば、同じように趣味の雑誌にも寿命があるような気がしてきた。

雑誌の幼年期は、パイオニアの時代である。この時期のパイオニアは試練の道である。ヒトは情報を外国に求め、多くの私財をなげうち、多くの失敗を重ねるが、雑誌に登場する人物の表情は明るい。雑誌は薄く情報は断片的であるが、希望が満ちている。広告も断片的でとりとめが無い。しかし雑誌に勢いがあり、発行部数はどんどん伸びている。

雑誌が成年に達するとマスの時代になる。つまり多くのヒトや企業がその趣味に参入してくる。雑誌は毎号毎号厚みを増し、どうかすると雑誌の半分以上が広告になる。

記事は最初はビギナーの趣味の道具揃えの記事が書かれ、成熟が進むにつれてビギナーに差をつける道具揃えの記事に変化する。次第にヒトは階層化され、趣味の差別化、分化が進む。この時期の到来が早く急であるほどこの時期は短い

雑誌のたそがれの時期は結晶の時代である。まず雑誌の厚みが薄くなる。それはマスを相手にしていた企業が撤退し広告が激減するからである。記事は枯れ枝に輝く樹氷のように、 簡潔な記載、一見シンプルな道具に、とつもない努力と工夫、投資が秘められているが、あまりに結晶化された記載はビギナーにはまったく理解できない。

この時期の広告の特徴は、巻末に雑多に配列した白黒広告で、写真や説明は次第に減少し、マニアにしかわからない簡潔な記号や数字が支配的になる。また読者は高齢化し数が激減するが、高齢化した読者で初めて実現する経済的、時間的余裕のため、なかなか廃刊にならない。結晶化が徹底した雑誌ほど少数ながら忠実な読者をキープし、ますます結晶化が進行、徹底していく。

この法則に照らしてみると、CQ誌は丁度結晶の時代を迎えたところだ。無線と実験誌とかステレオ誌は長い間結晶化の時代が続いている。ラジコン技術や鉄道ジャーナルなども同様だ。

パソコン雑誌では、I/O誌が真っ先に結晶化した。ASCII誌もつい最近結晶になった所だ。DOS/Vマガジンはマスの時代後期にさしかかっている。いまはインターネット雑誌がマスの時代を迎えていると考えられる。

この文章については出版関係の方からメイルを多数いただいた。これに比べると、最近のコンテンツは少し冗長になっているかも知れない。わざわざ炭酸ガスを消費してまで再掲したのは、これがWebmasterの一番のお気に入りということもある。

先日”CQ誌”を久しぶりに読んだ。URLが示すようにWebmasterは無線にかなりの思い入れがあるのだが、無線界の現状はあまりにも厳しくコンテンツとして取り上げるのがはばかられたのである。今やVHFやUHFは携帯電話に、そして短波はインターネットにとって変わられた。トンガでさえネットに繋がっている時代に無線の辺境がどれほど意味をもつかはわからない。さらに”電波使用料を払うならやめてやる”と言って無線機を処分した友人もいた。

一方、時間と資金のある高級アマ無線家は健在で活動にますます磨きがかかっている。彼らはインターネットやパケット無線網そして携帯電話やFAXなどハイテク兵器を総動員して情報を収集する。いったん照準が定まれば、屋根の上の巨大八木アンテナと机の下のヘンリーが黙っているはずもなく、猛然と火を吐くのである。それは電波の上でも”ワーーン”と回るファンの音が聞き取れる程だ。万が一DXを逃しても、友人の機械のPCM装置が立派に代役を勤めてくれる場合もあろう。当然子供や孫まで小学生にして上級免許を所持していたりする。

つまり、アマ無線のエクスパートにとっては至福の時なのである。そのためか、CQ誌もついに”雑誌結晶化シフト(PAT PEND)”を取ったようだ。まず初心者向きのコンテンツが一掃された。無線機やアンテナの記事もエクスパート指向を強めており、回路図やチャートはむしろ増えている。さらに無線の相棒として電脳がクローズアップされている。そもそも無線と電脳は非常に相性が良く、結晶の調味料として欠かせない。

かなり前から、無線界ではビギナーとエクスパートの二峰性分布が著しくなっていた。なんとかビギナーを取り込もうとする試みも携帯電話の普及の前に灰燼に帰した。さらに人口の少子化やインターネット、そしてテレビゲエムの普及も追い打ちをかける。もとよりビギナーにおもねった記事はステイタスに欠け、志の高いビギナーやエクスパートをスポイルするものであった。

というわけで、久しぶりに読んだCQ誌は結晶化が徹底し、非常に読み応えのある雑誌に変貌していたのである。そう言えばDOS/V雑誌も結晶化を迎えつつあるが、状況は無線よりさらに深刻である。インターネットによって、雑誌がメシのタネにしていた日本と米国の、そして企業とユーザー間の技術情報の時空間的ギャップが消失したからである。雑誌の時空間的ラグはかつてなく大きくなっており、21世紀の峠を越えられないDOS/V雑誌も現れることだろう。

電脳の家電化で過剰クロックやビデオカードの差し替えが意味を喪失している。”みかか”が情報帯域を自己保身のために制限している以上、窒息した高速CPUの使い道はDVDくらいしか無い。しかしDVDは家電品やゲエムマシンの方がはるかに使いよい。雑誌の予想とは裏腹に、スロット1マシンは本ページの予言通り21世紀を迎える事無くソケット7マシンより先に家電店店頭から姿を消したのである。

DOS/V雑誌の転機となったのは、かのイントルi820チップセットの破綻では無いか。どの雑誌も横並び一斉にイントル発のプレスキットを掲載し、それらが全てコケたのである。いかに鈍な読者であっても、M$やイントルの情報操作の一端に気付いたのではないか。今後はM$だけでなくイントルのこのような不公正な商習慣も司直の興味を引く可能性をここで指摘しておきたい。

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