今日の必ずトクする一言
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OVersion December 1999

December 22
 ●あやしいクロノグラフのナゾ(メカを解明する)
December 15
 ●世紀末時計売場のナゾ
December 8
 ●スイス製時計ムーブメントのナゾ
December 1
 ●続・腕時計関係妄想のナゾ(レスポンス編)

OVersion December 1999


December 22
 ●あやしいクロノグラフのナゾ

最近は乗用車にすらクロノグラフを模したインパネがついてくる時代である。行き交うヒトの腕にも、そして量販店の店頭にもクロノグラフがあふれている。一時は隆盛を極めていたデジタル表示は今やGショック以外には見かけないし、それも落ち目である。ところでWebmasterの手元にはクロノグラフは無い。

これは茶道具の蒐集を強く戒めている家訓と無縁ではなかろう。欧米に茶道具は無かろうと思うが、風水的には茶道はアンティーク全般と同意語と思われる。また亡父が”針のたくさん付いた時計は壊れ易いから買うな”と言っていたので、それも守っていたのである。

ただクロノグラフの機構自体には興味があった。クロノグラフについては時計猿の小部屋にすばらしい写真がある。好事家の好みは手巻きのValjoux Cal.23系あたりらしい。これはRolexの初期のDaytonaにも搭載された美しいムーブメントの系譜である。しかしValjouxの系譜はCal.72で途絶え、次のCal.7733はValjouxの名こそ引き継いでいるがVenusのCal.188に近いと言う。これはクォーツの衝撃で殆どのスイスのムーブメント会社が国策会社ETA社に収束した歴史が絡んでいる。

いずれにせよクロノグラフのメカの研究には手巻きのムーブメントが向いている。しかしそれらは極めて高価で入手しがたい。幸いなことにValjoux Cal.7733のデッドコピー(ライセンスという話もある)であるロシア製Plojot Cal.3133を念写する機会があった。Cal.7733はクロノグラフの制御をカムで行っている。制御をピラーホイールで行うCal.23の方が節度感が優れ高級とされるが、動作原理は同一でメカ的にはカム式の方が簡素である。

Cal.3133の仕上げはValjoux Cal.23のデッドストックを整備して載せている高級品に比べるとかなり落ちるが、粗悪品との予想を大きく裏切って工作精度は良好であった。某国産S社の高級クロノグラフですら工作精度の不具合を聞くことを考えると、この国の時計の工作精度も侮りがたい。考えてみれば原産地ではつい最近までパイロットや船乗りはみんなこの時計に命を託していたのだった。

でCal.3133である。竜頭を巻くと丸孔車(a)が回転し、角丸車(b、一部しか見えていない)によってその下の香車のゼンマイが巻き上げられる。香車からは分針を駆動する2番車(c)、3番車(d)、文字盤で常に動作している永久秒針を駆動する4番車(e)、ガンギ車(f)、アンクル(g)、テンプの天輪(h)という順に伝わる。見えている4番車は正確には4番出車であり、真の4番車は4番出車の奥にある。竜頭と4番車が対角線となる配置は、12時に竜頭があって6時にスモールセコンド針のある懐中時計と同じであり、半世紀以上昔のメカが未だ生き残っていることがわかる。

計時中は、文字盤の9時にある永久秒針を駆動する4番出車(e)の回転はトランスミッションホイール(i)を経由して中央のクロノグラフランナー(j)に伝えられる。これの軸は文字盤中央のクロノグラフ針を駆動する。この歯車にはハート型をしたカムが付いていて、ハンマー(k)で叩かれてゼロに帰針する。

クロノグラフランナー(J)には一カ所突起があり、それが1分に一回ミニッツレコーディングインターメディエイトホイール(L)に噛み合って歯一つ分進める。これが文字盤の3時にある積算分針を駆動するミニッツレコーディングホイール(mr)を一歯分回す。この歯車にもハートカムがついていて、ハンマー(k)に叩かれて帰針する。

さて計時していない時(上の写真)では4番出車(e)に付いている永久秒針とそれに常時噛み合っているクラッチアーム(q)のトランスミッションホイール(i)は回転しているが、それは中央のクロノグラフランナー(J)には伝わっていない。

スタートボタン(m)を押すと(下の写真)アーム(n)が右に動き、カム(o)を左に回転させる。カムの山(p)とクラッチアーム(q)のピンの噛み合いがはずれ、バネ(r)によってガンギ車(f)のすぐ右に支点を持つクラッチアーム(q)が右回転(左へ移動)し、トランスミッションホイール(i)がクロノグラフランナー(J)と接触して回転が伝達される。

同時にカム(o)の山(s)とスライディングギアのアーム(t)の噛み合いがはずれ、スライディングギアは中央の支点を中心に右に回転(上方へ移動)し、ミニッツレコーディングインターメディエイトホイール(L)がクロノグラフランナーの突起と1分に一回噛み合う。この回転がミニッツレコーディングホイール(mr)にも伝わり積算分針が駆動される。

ここでスタートボタン(m)が再度押されると計時が中断する。その時カム(o)はアーム(n)によって僅かに右に回転し、カムの山(p)がクラッチアームのピン(q)を押し、またカムの山(s)がスライディングギアのアーム(t)を押して、歯車群が止まる。このときのカム(o)の角度は上の写真と下の写真の丁度中間にある。

この時点がクロノグラフの一番不安定な状態である。クロノグラフホイール(J)にはスライディングギアとバネで繋がっているブレーキアームアーム(下図の右側のハンマーkの下)が、またミニッツレコーディングホイール(mr)にはバネが接触してブレーキを掛けているが、この状態で強く叩くと針が飛ぶ。かといってブレーキを強くかけると計時開始時にトルクが不足して時計が止まってしまうので、調節の兼ね合いが難しい。

ここでリセットボタン(u)を押すとそれはアーム(v)を介してアーム(n)を右に動かし、カム(o)がバネの働きで急速に右回転してハンマー(k)がクロノグラフランナー(J)とミニッツレコーディングホイール(mr)のハートカムを叩き、どちらもゼロに帰針して計時が終了する。

これでめでたしという所だが、一つ不思議な事がある。4番出車(e)の軸(真)は文字盤を貫通して永久秒針を常に駆動している。これは4番車と文字盤の間にジャマなモノが無いのでこれは理解できる。

問題はミニッツレコーディングホイール(mr)である。この軸は文字盤を貫通して積算分針を駆動するが、その裏にはゼンマイ巻き用の丸孔車(a)があり、その軸はレコーディングホイールと同軸でなく微妙にズレている。さらに文字盤裏には竜頭の軸(巻き真)や時刻合わせ用の小鉄車もあるハズだ。これらと干渉せずにどうやって積算分針の軸が貫通できるのだろうか??

この部分の仕掛けを知ったときは若干の感動を覚えた。写真では解りにくいが丸孔車(a)は輪になっていて、中心の固定部分の周りを回転する。そしてミニッツレコーディングホイール(mr)の軸は丸孔車(1)の特に大きなの固定部分を貫通し、さらに文字盤裏の小鉄車の中央をも同様に貫通していて積算分針に繋がっていたのである。

この部分はWebmasterにとって数年来のナゾであったが、今回シカケが解って実に嬉しかった。と同時に半世紀以上前の時計技術者の匠のワザに感銘を受けたのである。マイコンや多モーターのエレキに頼れば何なく解決できる仕掛けであるが、それを機械仕掛けで成し遂げるには柔軟なアイデアと加工技術が必要だ。

それと同時にクロノグラフを構成する5つの歯車の配列、丸孔車の配置、そして小鉄車の配置には黄金配置と呼ぶべき解がたった一つしかないことに気付く。そして5つの歯車はオリンピックの5輪とまったく同一の美しく絶妙の配置になっている。永久秒針が9時にあるのは懐中時計の構造を未だ引き継いでいる証拠だが、メカ的にはやはりこの位置がもっとも自然であり、これらの要素がヒトの遺伝子に組み込まれた美意識と呼応するのであろう。

この解析を理解すると、ZenithのEl Primeroがなぜ今世紀最高の自動巻クロノグラフムーブメントと呼ばれるかも理解できる。香車からガンギ車に至る輪列はすべて特大で大きく弧を描くように配列している。写真11時の4番出車から始まるオリンピック的配置のクロノグラフ機構とピラーホイールによる制御は古典的なValjoux Cal.23系と同一で伝達効率の良さが伺える。嵩張る自動巻機構は5時から8時あたりのテンプとゼンマイ巻き上げ機構のスキマに逃がしてムーブメントが嵩高になるのを防いでいる。

と言うわけで、機械式時計解析のシリーズは一応の区切りを迎えた。これでいままでWebmasterの手元で不運な最後を遂げた多くの時計が迷わず成仏することを祈りたい。なおクロノグラフの動作解析を時々物欲系雑誌で見かけるがパソコン雑誌同様間違いが非常に多いので注意を要する。

追加

現在スイス製の多くのクロノグラフに搭載されているValjoux Cal.7750はトランッスミッションホイールの代わりにティルティンピニオンを使用している。その解説はTime Zone Watch Schoolにある。またため息が出るほど美しいPiagetのクロノグラフの解説はこちらにある。睡眠不足が必至であろう。

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December 15
 ●世紀末時計売場のナゾ

久しぶりの休みの日にやっと家の冬支度を始めた。今年は特に暖かったせいか、この季節にも雑草が伸びている。冬物と灯油の買い出しの帰りにディスカウントショップの時計売場を覗いてみよう。

店には名も無い時計からロレックスやカルチェあたりまで溢れる程の時計が置いてあある。これでは街の時計店も経営がさぞ難しかろうと思う。昔と違って大手2社と電卓1社、その廉売ブランド以外にも多種多様な時計が出現している。

大手2社はエコロジー指向を強めており、かなりのプライスをつけた発電器や太陽電池内蔵時計をメインに据えているが、あまり売れていないようだ。ポップなデザインの時計各種も並んでいるが、流行の周期が短いので投資の回収も難しかろうと思う。

ケースの端には、聞いたこともないブランドの時計が1万円以下で並んでいる。その多くはクロノグラフ仕様で、電池は10年の寿命だったり太陽電池だったりする。おまけにケースはチタン製だったりして、文字盤やブレスレットの仕上げも良かったりする。なんと風防までサファイア製だったりする。ムーブメントも国産の多モーターの精度の良いものだったりする。

これではいかに○ドールが外装に凝ろうとも所詮クォーツであるかぎり高い値段をチャージすることは難しい。未だそれが可能なのはカルチェなど一部の宝飾ブランドだけではなかろうか。また10年電池や太陽電池は街の時計屋の将来の電池交換の仕事すら食いつぶす可能性がある。

この先クォーツ時計では儲からない事にやっと気づいたのか、あるいはY2Kが怖いのか、あるいはエコロジー指向が広まったのか、はたまた流行の回帰なのか、一時は死に絶えていた機械式時計がショーケースに復活している。値段が一桁違う舶来高級時計を除くと、懐かしいO社の製品が目に入った。ものはパワーリザーブのついたノスタルジック風と分厚いクロノ風である。

次に目に付いたのはイリノイと称するノスタルジックな自動巻であった。イリノイと言えば懐中時計で一世を風靡しその後ハミルトンに吸収されたハズだが同じ物だろうか?ロレックス似のエルジン製自動巻もあったが魅力的には見えなかった。あと十把一絡げで吊ってあるQブランドの安物の中に、高級なO社の21石自動巻が\3980で紛れ込んでいた。おそらく在庫処分なのだろうが、このあたりも注意して見ると拾い物が見つかるかも知れない。

クォーツを実用化したS社も機械式に傾斜中である。やはりクォーツではいかに外装に凝ろうともプライスを正当化できないからだろう。海外で電池を入手し難い地域では、依然S社の自動巻は人気が高く、国内に逆輸入された1万円台の自動巻は大人気である。しかしなぜかS社は国内でそれを正式に販売していない。もし機械式時計に注力すれば、数年後には街の時計屋で膨大な分解掃除の需要が創出されるだろう。

精度でクォーツに到底かなわない機械式時計の取り柄はムーブメントの見場である。その点、高級品から廉価版に至るまで第一級の精度を誇ったS社のムーブメントは昔から見場が良いとは言えない。多くの自動巻は懐中時計用を小型化したムーブメントに自動巻モジュールを載せた二階建て構造になっているが、S社の多くのムーブメントはやはり腰高な印象がある。(写真はS社からのリンク)

特にクロノグラフ系ムーブメントの見せ場は多数の歯車とカムの動きである。残念ながら6S78では不細工なブリッジが歯車を隠しており、構造が類似するバルジュー7750よりも見場が悪い。さらに自動巻ながら歯車の配置が美しいZenithのEl Primeroあたりとは比べるべくも無い。これがS社の真の実力とはとても思えないのである。(写真はZenith社からのリンク)

○レドールはS社の国内だけで販売されている大吟醸シリーズであり、価格に応じたそれなりの見場も期待される。従って不細工な三倍増醸クロノグラフムーブメントは○レドールに相応しくない。地板からクロノグラフ専用のムーブメントを新規開発すべきであろう。そしてシリーズには品評会用大吟醸としてトゥールビヨン脱進機付き時計が望まれる。

それは精度のために必要なのではなくて、メーカーの国外におけるレゾンデートルのために必要なのである。あるいは社員のために必要とも言える。機械式時計をいかにエレキで修飾してもそれは永遠の命を持つ品評会用大吟醸とは成り得ない。エレキであるかぎり寿命は20年を越えることは無いであろう。

時計にはいろいろな価値観がある。キネティックもスプリングドライブも一つの方向性だが、正確な時間が欲しければ携帯電話を見れば良いのである。高いカネを出すお客は時計に何を求めているのだろうか?世界一の時計製造技術を持つS社にこそトゥールビヨン付き手巻き時計を手がけて貰いたいものである。(写真はBreguetからのリンク)

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December 8
 ●スイス製時計ムーブメントのナゾ(レスポンス編)

時々時計の話題が出るせいか、Webmasterの事を時計マニアとかコレクターと見なすムキもあるらしいが、それは違う。そもそもB級ハイテクをベースとしてエコと物欲の高次元の調和を追求するページのポリシーに反する。ひとつには茶道具の蒐集を強く戒めた家訓のせいもある。手元にある時計は比較的新しい自動巻、20年以上前のS社ファイブアクタス、15年前のC社チタン製ダイバー、そして以前登場した12年前の冠婚葬祭用時計のみである。

もちろん数度の電池交換の末に朽ち果てたクォーツが幾つかあるが、これは手洗いの多い業務故仕方がない。また旅行目覚まし用のクォーツが鞄に一個入っている。他のクォーツは時計を大量に消費?する家族に流れ数度の電池交換の後に朽ち果てていった。

しかしどうしても勉強に必要な自動巻があった。SwatchのBody and Soulという安物両面スケルトン自動巻である。理由は写真を見れば解るだろう。思えばWebmasterは子供の時に多くの時計を壊してきたが未だメカニズムを完全に理解していなかった。大学生のころは文字盤をプラスティック板にして自家製スケルトン変造するなど随分無体な事をやった記憶がある。この際物故した時計達を成仏させるためにこの時計でメカニズムを勉強しなおすことにする。お付き合い願いたい。

このムーブメントはETA-2841-1(21石)で、アンクル全体が青い合成宝石(写真)で出来ている。製品にはETA-2842と呼ばれるルビーがアンクルにラックで固定され緩急目盛りの無いムブメントも混在している。中央の赤い石はテンプの孔石で、衝撃吸収のためのインカブロックと呼ぶ金色のバネで支持されている。時計の作りは21石自動巻としては標準的で、いわゆるピンレバーウォッチでは無い。当初は専用安普請ムーブメントだと思っていたが調べてみるとそうでは無かった。

まずオモテ側(時計学的にはウラ)だが地板と3本の針(剣)が見える。地板の周囲が二重に丸く凹んでいるのは本来日付と曜日環が収まる部分で、これはETA-2841に最も近いETA2846-3を見ると様子が解る。中央の大きな歯車はかざりで、本来はここに日付曜日駆動用の歯車がはまるハズである。秒針はスキャンのため曲がり、テンプにはノイズが乗っている。

輪列は5時の位置がゼンマイ(香車 a)、7時が2番車その1(b)、地板のカゲで見えないが3番車、中央に戻って4番車(秒真)、9時から10時の楕円のアナから見えるガンギ車(c)とアンクル(d)、そして一番上がテンプ(e)である。隠れている4番車は手巻きのETA-2801で見ることができる。

3番車のカナは2番車その1だけでなく日の裏押さえの下に隠れている中央の2番車その2(ドライビングホイール)に繋がりクラッチを経てそのツツカナ車(長剣車)から日の裏車(f)、短剣車に繋がる。秒針は4番車の真がツツカナ車と短剣車を貫いて同軸になっている。時間を合わせるときは、竜頭を回した力は巻き真から鼓車、小鉄車(g)、日の裏車(f)に伝えられるが、その力はドライビングホイールのクラッチが滑って2番車その2には伝わらず、輪列を壊さないようになっている。

テンプが12時にあるのは、そのサイズを稼ぐためと下方にクロノグラフ機構などにスペースを提供しやすいためだろう。なお3時の位置に巻き芯とオシドリ、カンヌキ、ネジ巻きのための吉車、その中央寄りに小鉄車と日の裏車が見える。

ウラ(時計学的にはオモテ)は画像を合成してローターを消している。左(3時のウラ)に丸孔車(h)、5時ウラに角孔車(i 角孔は無いが)、6時ウラにオート1番車(j)、7時ウラにオート2番車(k)、9時ウラにオート3番車(l)、11時ウラにオート4番車(m)がある。オート3番車、オート4番車はローターの根本の歯車(ツカ)と咬み合っているが、上下に2枚重になっていてラチェットによってどちらかの歯車が伝達して一定の方向に香車のゼンマイネジを巻くしかけになっている。エテルナマティックと称しているがRolexのものと原理は同一である。

これでETA-2841-1の輪列の解析は終わりである。なぜしつこくこのムーブメントにこだわったのだろうか?それはこのムーブメントとまったく同じメカがスイス製自動巻時計の半分近くを占めるからである。スイスの時計産業は日本の伝統工芸と同様で部品の分業が古くより進んでおり、全ての部品を自製するメーカーは高級品を中心として少数にすぎず、ムーブメントの殆どは国策会社の一つであるETA社から供給されている。

そして、そのムーブメントはユニタスの流れを汲む手巻き懐中時計用ムーブメント系、7750系のクロノグラフムブメントを除くと、たった2系統しか無い。それがETA-2824系とETA-2892(A-2)系で、これらでスイス製自動巻時計の約80%以上も占める。2824系の基本メカは手巻きのETA-2801である。

2892系は1975年に完成した薄型ムーブメントで比較的高級な時計に使われている。2824系は2892系の原型となったもので、エテルナ系のムーブメントの特徴を引き継いでいる。特徴は中央付近に効率の良い自動巻機構をコンパクトにまとめて全体の厚みを減らしている点だ。

2824系のムーブメントは$25程度(ベース仕様)と推定されるが、このムーブメントを使用した時計が2892系より安価とは限らない。それは2824系はクロノグラフやパワーインジケーター、変形カレンダーなどの機構を付加しやすい(輪列の受けが丈夫なために上部構造を追加しやすい。より高級で薄さを追求した2892系は受けが貧弱で二階建てにしにくい)。このため\300000近い(複雑)時計でも2824系が使われていることがある。

昨今は多数の針がついたクロノグラフがハヤリであるが、その起源はかなり古い。当初は4番車からの秒針は文字盤の9時付近から出ていた。秒針が中心から出るようになったのはかなり後の事である。4番出車から中央のクロノ針の歯車へ可動式歯車で駆動をかけたり止めたりすればクロノグラフに成る。クロノ針歯車のハート型のカムをハンマーでたたいて戻せばリセットになる。このため古い手巻きクロノグラフの方は2824系や2892系の上に構築されたクロノグラフよりメカ的に遙かに洗練されている。

今回の\13500の時計のムーブメント2841-1は正真正銘の2824系であり、飾りや緩急調節ネジを省きテンプが4Hzから3Hzに落としたETA-2846からさらに日付と曜日を外したシロモノである。それに出血大サービスとして地板、ブリッジやカバー、歯車、香箱にスケルトン加工してあり、むしろコストがかかっている。従ってスイス製ムーブメントの勉強にはこれほどお誂えの時計は無い。

追加

その後、Time Zone HolorogiumにもスケルトンのSWATCHの記事を発見した。あまたの高級時計を所有する作者が最後に”In fact, it's virtually irresistible.”と書いている。Webmasterもまったく同感である。

参考にさせていただいたリンクを挙げる。

  ○ウオッチユーザーズリサーチ(全般)
  ○スイス時計協会(リンク豊富)
  ○時計猿の小部屋(クロノグラフ)
  ○Aoのガラ研究所(オリエントの謎とムーブメント)
  ○Atelier de Ohtake(トゥールビヨンを作る)
  ○ザ・懐中野郎(懐中時計)
  ○時計職人(解説)
  ○まいポケ(懐中時計とETA-2801分解)
  ○ETA(ムーブメント)
  ○Time Zone(解説の工具)

いずれも濃厚なサイトで読み出すと朝になってしまうこと保証します。

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December 1
 ●続・腕時計関係妄想のナゾ(レスポンス編)

このページの内容については各方面から多くのレスポンスをいただく。そのなかでも,

   ●腕時計関係妄想のナゾ
   ●水晶腕時計は永遠の命を得るか?(ペイしないプロジェクト編)

については業界の方から多くの指摘をいただいたので、紹介しないとフェアで無いと思う。あくまでも個人的なメイルとのことで原文をご紹介するわけには行かないので、表現を変えてある事をお許し願いたい。

スペーサーの仕上げについて

仕上げの良くない緑色のスペーサーは、○ルバから○レドールまで遍く使われており、成形性、耐衝撃性にすぐれた材質(ナイロン)である。成形や仕上げが悪いのはケースとムーブメントの組み合わせによりスペーサーの金型の種類も膨大な数なので、仕上げまで手が回らなかったのだろう。

なるほどスペーサーの品質が他の部品と全くマッチしていないが、この事をユーザーが気にする時代になっていることを認識した。思えば今は裏側がスケルトンの機械式高級時計が飛ぶように売れていることを考えれば当然なのかもしれない。

ムーブメントについて

クォーツムーブメントはどんどん小さく薄くなっている。ムーブが小さく薄いとデザインや用途の自由度が広がるだけでなく、歯車も薄く駆動トルクも小さくてすむ。そうするとステップモーターも電池も小さくて長持ちする。従って大きなケースの紳士用でも驚くほど小さなムーブメントが使われることがある。だからこのムーブが婦人用とは限らない。このムーブは金メッキも厚く精度的にも世界第一級だそうである。

この製品について

スペーサーはともかく、ケースやカドの丸いサファイヤ風防や文字盤や針の仕上げは外国製の高価な時計よりコストのかかった優れたものだと言う。

Webmasterが使っている時計の殆どは10年以上手元にある。この時計もご指摘を得て再度価値を認識できたので、他の時計同様末永く大切に使っていきたいと思うが、今後中身は見ないこととしたい。

追加

その後Time Zoneに同じような内容の文章(It's a DUNHILL - sort of)を発見したので、ぜひご覧ください。

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