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●風水別館 Annex version 2010

ショパンコンクールの宴の後のナゾ(スコア解説とブレハッチとの関係編)
近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ(ショパンコンクール編)
アドレスV100のレゾンデートルのナゾ
プリウス6ヶ月平均燃費のナゾ
近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ(CFX実物編)
近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ(F308試弾編)
こんにちは!プリウスLグレードのナゾ
さようなら190E!のナゾ
新春変造40Wサークラインよ、さようならのナゾ


ショパンコンクールの宴の後のナゾ(スコア解説とブレハッチとの関係編)

ショパンコンクールが終わり、優勝したユリアンナ(Yulianna Avdeeva)はYAMAHAのCFXを今年はNHKホールで、また来年は各地で演奏すると予想される。しかしながら、巷では彼女の優勝を意外視する向きもあるようである。

Webmasterは当初から彼女に注目し前回のトピックで名指しで評価していた。また末席ながら好みとかいたデュモン(Francois Dumont)も入賞した。ユリアンナを名指ししたサイトは検索した範囲では他に見当たらなかった。

なぜそう書いたかは単純に好みの問題であるが、その後ブレハッチの生演奏を聞くチャンスがあり、また今回は審査員のスコアも見る事ができた。

従って、審査員がどう考えたのか、また自分の感性とどのくらいズレがあったのか、またその原因は何なのかを書くことにした。比較基準としてはショパコン後に生で聴いたブレハッチの演奏をベンチマークとした。蛇足ながら彼のコンサートはオールショパンだったがドビュッシーやラベルも聞きたかった。

蓋を開けてみると、ユリアンナのスコアは一次、二次、三次、決勝が12-12-12--1stと圧倒的であった。巷がどう言おうが彼女はトップを走りつづけて優勝したのである。巷では審査員にとって意外であったかのように伝える人もいるが、発表のビデオを見ても審査員の笑顔に不審はない。

彼女はピアニッシモでは小指を鍵盤の上を滑らして音量を絞り、またフォルッテッシモは体全体の動きを加えることで驚くほどのダイナミックレンジを生み出していた。また3楽章では左手オクターブで今までWebmasterが気づいていなかった明確なバスのメロディーを刻み、右手小指は常に有効に響いて華麗さを加えていた。細かいミスはあったが総合力ではやはり一番の出来だったと思う。

次に末席のデュモンであるがスコアからは11-7-7-5thとギリギリである。最後のコンチェルトを聞いても正直テクニック的にはどうかと思う。しかし予選の例えば舟歌や子守唄は絶品で、このあたりが生き残った理由であろう。

名指ししたユリアンナであるが、Webmasterは優勝を確信していたわけではない。個人的に一番良いと思ったが、審査員が求める2010年における最もショパンらしい演奏と自分の好みが合う確信はなかったが巷の評判は何となく違うと感じていた。

端的に書けば、情報過多に踊らされる聴衆はポーランド出身のショパン像を求めるが、審査員はコスモポリタンなショパン像を求めたということだろう。このあたり、ブレハッチが優勝した2005年から世界が大きく多極化し価値観が変化したことと無縁では無いように思う。

webmasterは中学生、高校生の時は多くのショパンの曲を手がけたが、あまりにも高く険しいショパンアルプス山中で路頭に迷い遭難していた。遭難と言うにはあまりにも甘美な経験で一生ショパンアルプス山中で彷徨しピアノ人生を終わってもかまわないと思わせるものがあった。

ピアノを再開するにあたって一旦時代的にショパンを超えてドビュッシーからラフマニノフやラベルを垣間見したあとエチュードやバラード、スケルッツオに戻ってみると、単に前期ロマン派との認識では尽くせないディテールに気づいたからである。ペダルの踏み方も煩雑な踏み変えからハーフペダルの多用に激変した。

もっとも指が早く動かないので何とか曲想だけでも、と思う気持ちがあるのは事実だが。ところで、上位男性陣について

バランスの次元が高いEvgeni Bozhanov(11-12-12=35+4th)、端整だが醒めたところのあるMiroslav Kultyshev(11-11-8=30)、抑揚が胸を打つIngolf Wunder(11-11-10=32+2nd)、荒削りだがパワーを感じるDaniil Trifonov(11-11-10=32+3th)、女性に大人気で若いのに熟達したNikolay Khozyainov(11-11-8=30)、なんとなく暗いLukas Geniusas(11-11-12=34+2nd)、地元民なのにリズムを揺らすPawet Wakarecy(9-8-7=24)、その上位は突出していない分誰が入賞してもおかしくない。

と書いた。これは一次、二次、三次の予選の過去のショパコン評価指標で評価したものである。カッコ内は審査員のスコアと入選順を加えたものだ。個人的にはアジア勢が全滅した段階で評価軸が変わったのではないかと思ったので、その評価軸と単なる自分の好みと併記したのである。予選の点数はおおむねwebmasterの予想に見合っていると思うが、コンチェルトの結果には予想外の点もあった。

まず予選合計2位のBozhanovはなぜかコンチェルトの評価が低く5位となった。確かにミスはあったが審査員に嫌われた可能性としてはビルトーゾ的な演奏態度だろうか。次に醒めたところがある、と書いたKultyshevはコンチェルトで本当に醒めて番外となった。過去チャイコン1位なし2位の彼としては接戦のファイナルでモチベーションが下がったのだろう。ただし予選の演奏はどれもミスがなく端整かつみずみずしく、ファイナルの失速は残念であった。

Geniusasについては正確ではあるが抑揚を欠いたダイナミックレンジの狭い演奏で下を向いたままなので優勝者には不向きと思った。ショパンコン入賞者にはそれらしい”華”が要求されると思ったからである。Wakarecyのルバートはポーランド人ながらマズルカにもポロネーゼには不向きで問題外だと思った。ただレベルの高いファイナリストのことだから今回のコンクールの評価軸は彼らのスタイルに影響していくものと思う。

さて審査の後に入賞者の演奏会があったのだがBozhanovはキャンセルしている。都合ありとのことだがやはり評価に不満があったのだろう。GeniusasについてはBozhanovに比べ採点が甘いと思う。Khozyainovは女性陣のお気に入りだが曲想はかなり見劣りした。Trifonovは順当な順位だと思うが、さらなる上達の余地というか大化けする可能性があると思った。

さて問題はWunderである。コンチェルトは確かにミスが少なく上位のものと思ったが、終わる前に観衆がブラボーを叫び出したのは興ざめであった。コンチェルトはブレハッチに似て正確でパワーも十分だが、新時代のショパンにしては曲想が寂しいと思った。

どうもポーランドの聴衆にはポーランド人のみがショパンを理解できるかのセンチメンタリズムがあるようだが、彼の父はフランス人であり珠玉の作品の多くはウィーン滞在の後のフランスで書かれた。彼の時代のパリは亡命者の都で雑多な文化の流入にフランス特有のエスプリやサロン的要素に満ちていた。そして在住中は嫌っていた華麗なるウィーンの影響も間違いなくある。

ポーランドに郷愁をおぼえポーランド舞踊のリズムを左手バスで刻みつつその上に構築された世界は亡命者都市パリのごとくコスモポリタンなものであり、今回のコンテストではその観点での曲想に配点されたと解するべきであろう。

入賞者コンサートは非常にすばらしいもので、特に本選のコンチェルトではところどころミスのあったユリアンナが女王の風格で最高の出来でコンサートを締めくくった。あとで彼女の経歴を追うと、むしろラフマニノフなどの近世の作品を得意としていた彼女がショパンを最初から学びなおした筋道が見える。

さて今回ユリアンナがCFXを選んだのは正解であった。彼女は深いバスを刻みつつ十分にルバートを効かせながら右手高音を輝かせた。フォルテッシモは日本人男性を超える音量であるが、CFXの音量は彼女に有利に働いたと思う。

高音の輝きにはスタインウェイより厚みがあり中音は豊かで金属質な響きがなくバスのサステインが非常に長い。ショパコンのCFXはダイナミックレンジが広い優れた個体であり、今後のコンテストにおけるピアノの選択はこの時点から大きく変わるのは間違い無い。

一方損したのはTrifonovだと思う。アルペジオなどのスピードに関しては入賞者中でも最高クラスだが、FAZIOLIの最高音域の輝きが不足するために卓越したパワーが空回りした印象がある。WebmasterもF308を弾いて感じたようにソロでは広いダイナミックの範囲で音色を崩さずに美しく歌うがコンチェルトでは最高音付近の音量が苦しいところがある。

予選ではFAZIOLIを選び曲想を最大限に発揮したデュモンはコンチェルトではあっさりスタインウェイを選んだ。硬質な音は確かにコンチェルトでやや精彩を欠く演奏を十分に補いはしたが、予選の良さには乏しかった。辛くも入選できたのは予選での評価が高かったからだろう。一度硬質な音が気になりだすと耳につくのである。

というわけで、今回はパワーと精緻さ、そして豊かな曲想という総合点でユリアンナが圧倒したのだが、そこには日本のショパン一辺倒の教育の問題点も見え隠れする。ショパンより近代の曲を経験してこそ省みてショパンの素晴らしさが見えてくるのではなかろうか。

また素直に日本製ピアノCFXが世界の頂点にたったことは単純に喜ぶべきことだろう。メーカーにはこれに慢心せずに全ラインにレベルの高い最終調整を施していただきたいと思う。現時点では鍵盤錘りや整音などに今少しの努力が期待される。さてデフレにどっぷり漬かり先の見えない日本であるが、もう少し日本の技術レベルに自信を持ってもいいのではなかろうか。

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近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ(ショパンコンクール編)

相変わらずピアノの練習は遅遅として進まないWebmasterであるが、やっとBallde#1に光明がみえてきたところだ。さすがにDebussyやRachmaninovとは違ってScherzo#2と同様プレゼンテーションレベルにはなかなか到達しないと思われるが、老化防止に再開したピアノなのであまり多くは望めないところである。

さて恒例のショパン国際コンクール2010が現在進行中で、10月18日からは10名のファイナリストがピアノ協奏曲に挑むことでウィナーが決定される。このコンクールはピアノに関しては最も権威があるもので、審査員も以前の各国のコンサーバトリー教授という古典的なチョイスからショパンコンクール優勝者などのコンサートピアニストに移行しており、日本人としては小山実稚恵氏が選ばれている。以前より徒弟制度の影響は少なくなっていて会場も一箇所であり、過程がストリーミング配信されることでより選考の透明性が増している。

人気のあるコンクールのため選考は長期かつ大規模であり、まず4月に行われたpreliminariesと称する予予選で346名が選ばれ、そのうち本選1次予選に進んだのは80名弱、2次予選に進んだのが40名、3次予選に進んだのが20名、そして決勝に進むのが10名と毎回半分が落とされていることになる。残念ながら今年は3次までに残った日系のピアニストはいなかった。

選曲はショパンコンクールなので当然ながらオールショパンであり、基本としてEtudes、Nocturne、Waltz、Mazurkas、Polonaise、Barcarolle、Balladeなどであるが、3次予選ではFantasyとSonataを含めることになっている。ファイナルに臨むには25曲から50曲程度を演奏することになりフロックはありえないし、疑問の残る選考はストリーミング配信のある現代では許されないだろう。過去中村紘子氏の著述にあったコンクールの闇は大きく改善されていると思われる。

さて今回選ばれた10名はすでに多くの国際コンクールで入賞歴を持つピアニストばかりであるが、一人一人持ち味がまったく違うところが面白い。ショパンというと、彼が歩んだ経歴のとおり、ポーランドの土俗的ともいえるリズムを基本としたエスニックな要素、ウィーン時代の華麗な宮廷音楽の要素、そして長くすごしたパリのエスプリに富んだサロン風要素が複雑に融合しているのが特徴だ。

これに対しロシア東欧のピアニストは大仰とも言えるダイナミックレンジの大きい演奏で、またラテン系のピアニストはルバートと繊細なピアニッシモを伴う演奏で、またアジア系のピアニストは精緻な演奏で挑むわけだが、過去の優勝者はやはりテクニックだけではなく大音量で会場を圧倒する能力が求められていたようで、体力のある男性もしくは大柄かつパワフルな女性が多かったように思う。

それに微妙な問題ながらポーランドをめぐる地政学的要素、ようするにロシアに対する微妙なセンチメントが絡んでいる。また模範的な演奏ばかり選んでは進歩が望めないとする過去のトラブルのせいか変化球的なピアニストも本選に含めようとする意思も感じられる。今回の変化球はPawet WakarecyとAndrew Tysonと思われるがいずれも左手でポーランド的なリズムを刻むのが原則のショパンには向いていないと思った。

協奏曲の出来によってはファイナリストすべてに優勝の可能性があるし、選考はかなり微妙なものとなるだろう。やはり上位は強靭なパワーを持った男性陣になると思うが、日系が落選した今となってはラテン系やエスニックな東欧系にも上位に入っていただきたいと願っている。バランスの次元が高いEvgeni Bozhanov、端整だが醒めたところのあるMiroslav Kultyshev、抑揚が胸を打つIngolf Wunder、荒削りだがパワーを感じるDaniil Trifonov、女性に大人気で若いのに熟達したNikolay Khozyainov、なんとなく暗いLukas Geniusas、地元民なのにリズムを揺らすPawet Wakarecy、その上位は突出していない分誰が入賞してもおかしくない。

順位は別として、個人的な好みでCDを買うとしたら、CFXをフルに使いきるテクニックと草食系男子を凌ぐパワーをもつYulianna Avdeevaである。もう一人、Francois Dumontのように繊細に弾ければいいなあと思った。

さて今回のファイナルの特徴としては、過去100年続いたスタインウェイの圧倒的な支配力がついに失われたことがあるだろう。もちろんメーカーの営業努力もあるのだろうが、10名のうちS&SとYAMAHAを選んだピアニストが4名と互角でありFAZIOLIを選んだピアニストが2名だった。

あくまでもストリーミング配信の印象にすぎないが、1時間真剣にF308を弾いた経験では巷の話と異なり音質は意外や凡庸だ。大きさを利してピアニッシモからフォルテッシモまでの広いダイナミックレンジで均一な音質が保たれるが、最高音部の輝きが乏しい。これはピアノが組みあがったときの箱としての締まり具合(残留応力)にS&Sと差が在るからではないか。

S&SはやはりS&Sであり、常に繊細でダイアモンドのごとき最高音部の輝きに若干の金属的な響きが混じるものである。それがつねにピアニストの右手小指のよきパートナーなのだが、疲れているときには金属音が気になる

そして大躍進を遂げたYAMAHAのCFXであるがピアニッシモの表現をサステインのきいた深く強力なバスがそれを補完する。最高音部の輝きはS&Sより基音成分が多く厚みがある。今まで露出せずに煮詰めてきた成果を一気にこのコンテストで爆発させる作戦だったのだろう。初陣としては望外の出来である。S&Sを超えるのに100年かかったということか。

さてファイナリストはピアノ協奏曲に挑むこととなる。ソロではピアニッシモの表現力とフォルテッシモでの音量が重要になる。しかしピアノの協奏曲はオケが終始伴奏に回る他の楽器の協奏曲と違ってピアノとオーケストラがイーブンに戦う場面がある。最大音量が求められながらカデンツアでは繊細な表現も求められる。ぜひピアノ協奏曲op.11の第二楽章に注目したい。

S&S独占時代が終了した今となっては、どのメーカーの調律師も過去無かったほどのストレスにさらされており、各ファイナリストの希望に応じた調整を徹夜で行っていることだろう。今までのソロでは3メーカーとも総合力において拮抗しているが、協奏曲での評価がどうなるのか、今後のファイナルの結果がピアノ業界の将来の方向を決めるといっても過言ではない。

ストリーミング配信がもっとも強力なメディアとなった新時代のショパンコンクールはピアニストだけでなくピアノのコンクールでもあるわけで、それを目の当たりにできるわれわれはかつての王侯貴族よりはるかに恵まれているのである。(10月18日)

蛇足

ファイナルの結果は

1 3 Ms Yulianna Avdeeva Russia yamaha
2 14 Mr Lukas Geniu?as Russia/Lithuania Steinway
2 79 Mr Ingolf Wunder Austria Steinway
3 72 Mr Daniil Trifonov Russia Fazioli
4 5 Mr Evgeni Bozhanov Bulgaria YAMAHA
5 9 Mr Fran?ois Dumont France Fazioli

であった。一番押しのYulianna Avdeeva と日本製ピアノの組み合わせが優勝して非常にハッピーである。今回急遽トピックを挙げた理由は、あまりにもWebmaterの印象とネットでの風評に乖離があり、どうしても納得がいかないので敢えてピアニストを名指ししたのである。絶妙な緩急、音量などの歌いかたは今webmasterが目指している要素である。

しかも彼女のコンチェルトではあろうことか第一楽章のカデンツァ(12分あたり)でステージ照明がちらついたあと26秒間停電するというハプニングがあったが、まったく動ぜずに弾ききった。何事にも動じず自分の音楽を弾ききるタフさこそがウィナーに求められるものであろう。ネットの風評はどうしてもリスト的、あるいはラフマニノフ的ビルトーゾ的演奏に傾くのだが、ショパンはやはりショパンなのである。

ところで今回のコンチェルトのAntoni Wit とThe Warsaw National Philharmonic Orchestraの演奏もすばらしいものであった。特にピアニストの曲想に最大限に答えようとするアイコンタクト時の慈父のごとき心遣いには感銘をうけた。盲目のファイナリストを置き去りにして走り出したどこかの指揮者とは懐の深さまったく違う。来年に来日するとのことでファイナリストともどもオケの生演奏も楽しみである。

スタインウェイを超えるピアノが出現した以上、今後は草食系の日本人にもパワーでなく表現力で上位入賞のチャンスが出てきた、と考えたい。以上の記述はこのまま凍結しておきたいと思う。

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アドレスV100のレゾンデートルのナゾ

Webmasterも今後の生活設計のために日々身の回りのジャンク整理を迫られている。190Eが去って以来、多くの保守部品やSSTをネットで処分したところ予想を越える金額で引き取っていただいた。ありがたいと思うとともに、依然としてメルセデスの旧車と戦っておられる方が多くおられることを実感した。申し訳ないことにWebmasterは脱落者となったのである。

嘗ては4台ものバイク部隊が存在していたが、今はアドレスV100の1台だけが残っている。その主な用途は買い物や散歩であるが、燃費についてはプリウスの出現でレゾンデートルが厳しく問われる事態となった。巡航時こそリッター30kmとまずまずだが、2ストらしい爽快な加速を味わうとプリウスより燃費は悪いのだ。もちろん、風を全身に受けて走る爽快感、燃焼したオイルの香りは何事にも変えがたい。

それと100ccながら2ストの不規則な鼓動も捨てがたい。原付1種に近い小さ目の車体に100cc2ストを乗せたためか、あるいはマウントの設計がまずいのか、V100はかなりの振動を感じる。メインスタンドを立てて軽くレーシングすると振動で横にずって行くほどである。振動も劣悪な交通事情のなかで若者が単気筒スカバイクを好む理由のひとつだろう。

動態を保つために意識して走行しているが、最近前ブレーキのストロークが次第に増えてきた。パッドが減ったのか目視するとまだ2mmは残っている。ブレーキフルイドが不足しているか確認するとまだラインを割っていない。いずれにせよ重要部品だけに整備する必要はある。

まずブレーキパッドが必要だ。以前スーパーディオのボアアップでお世話になったK〇企画のサイトを漁るとYAMASHIDAなる怪しいパッドが送料とも¥1400である。あまりの安さがかえって不安だが、ネットの評判では純正並で可も不可も無いとのことで手当てした。

例によって純正整備マニュアルをチェックし、ネットの情報にも一通り目を通したところ、キャリパーは特に特殊なものでは無いようである。ただし、V100のフロント周りにはちょっとしたシカケ(アンチノーズダイブ)がある。

写真のようにキャリパーは前輪左側についており、サスはトレーリング式である。面白いのはサスはリンク類が平行四角形を構成し、キャリパーは後ろ側のリンクについている。ブレーキが効くとキャリパーがディスクに引きずられて後ろ側のリンクが左側に回転し(垂直に立ち上がり)サスを伸ばすシカケである。

軽快なV100ながらトレーリングサスが場違いにオジン臭いが、意外に乗り心地が良くアンチダイブも効いている。しかしリンク類の横剛性が乏しくアンチノーズダイブも微妙な挙動を示すのでコーナリングには向かない。そういえばV100の原型が設計された頃は熱病のようにアンチノーズダイブが大流行していたが、あれは今どうなったのだろう。

キャリパーをはずしたところ、パッドは僅かに残っていたがそれ以前にピンやピストンがサビサビであり整備が必要なタイミングだった。

パッドはクリップをはずしてパッドピンを上方に抜くはずれる。パッドにはアンチスクイーズシムがついている。

次の写真はピンやピストンを磨き、摺動部にブレーキグリースを塗ってパッドを組んだところである。パッドは片減りしていないところを見るとサビサビながら摺動部はそれなりに動作が保たれていたようだが、細かい手入れでタッチは変わるのは確かだ。フルイドも大方交換しニップルにキャップをしておいた。

パッド交換したばかりではアタリがついておらず本来の制動力は出ていないが、それでも交換前よりタッチも効き目も良くなった。パッドは12000kmにして始めての交換らしく純正品がついていた。ディスクにも段付きが無いところを見ると、ディスクが薄目でもともとパッドを使い切れない設計のようだ。

というわけで、アドレスV100は機関好調(最高速度よわ+km/h)、タイヤ8部山とあと数年は行けそうである。街でも多くのV100が過走行でV125に更新されたようだが、残ったV100は依然として元気に爆走している。このV100もあるいは宿敵プリウスより長生きするかもしれないが、その前に排気対策で命脈を絶たれるのかも知れない。

近い内にサビが目立つ塗装も手入れしたいと思っている。あとは、一番あやしいのはWebmasterの体力である。冬は寒いし夏は脱水に注意しなければいけないが、何より一番重要なのはバイクと同様にいかに体重を軽く保つことができるか、である。

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プリウス6ヶ月平均燃費のナゾ

依然としてピアノに注力しているWebmasterだがまだBallade#1は仕上がっていない。Webmasterがソナタアルバムに入ったのが11才、指の動きのピークが15才ごろ、その後ウン十年のブランクを経て再開して約2年たったが、老化を考えればこれ以上の向上は望めない。

今後は方向をテクニックからアンチエージング(ボケ予防とも言う)に向けたいと思っている。そしてフランスおよびロシア方面の叙情的(クサいとも言う)な曲を巡りたいと思っている。

さて、プリウスは納車から半年たって距離も5000Kmを越えた。ペースは190Eのころより5割は余計に走っている。ガソリン代が観念から消え去り、今は己の欲する所に従って遠出することも多く、駐車場代と有料道路代の方が気になるようになった。

電脳を多用した新型車でバグ必須であろうとの考えで3年間のサービスプランに出費したが、今のところ故障もゼロでメンテという概念も観念から奔逸している。このままでは緊張が無くなりボケてしまいそうだ。

というわけで、ボケ予防をかねて在庫パーツの取り付けを行った。最初はHIDで中華製で異様に安かったのが不安で取り付けをためらっていた代物である。まあ両側が一度に切れることは無かろうし、プラグオンなので切れたら出先でスペアのハロゲンに交換すればいいのだ。

スペース的に左側はバラストのスペースがあるが右側はかなり厳しく、ウォッシャータンクの外側フェンダーに付けている。色は6000Kなので白色というよりは黄緑がかっている。格段に明るいが光束が水平にばっさり切れて上方にもれる光が無いので意外に見えにくい

次にエアダム下部にリップをつけた。これで地上高は3cmのマイナスであるが、今の所激しくぶつかった形跡は無い。効果としては高速での直進の座りが良くなった印象があるがプラセーボかも知れない。危惧したのは燃費低下で、この手のリップで燃費が良くなることも悪くなることもあるが、今の所誤差範囲内である。

さらにタコメーターを付けてみた。最初はpivot社のプリウス対応のPT6HXを候補としたがちょっと高価である。pivot社の通常モデルはエンジン停止でイグニッション信号が途切れる度にウェルカム動作(フルスケールになって戻る)をやらかすらしく、PT6HXはこれが無いそうである。

しかし、これってバグというか設計ミスじゃないのか? ウェルカム動作は電源ON時だけで十分なハズである。初代プリウスは1997年発売だしアイドルストップのついた車はもっと以前から存在したから、こんなにマヌケな設計をする会社は信用できない。

ネットをあさるとAutogauge社のタコメーターSM-60φが格安だったのでゲットした。これは1気筒から(プリウス30の信号は1気筒相当)設定可能であるし、ウェルカム動作はあたりまえに電源ON時に一回のみである。

プリウス20まではサービスコネクタにイグニッション信号が出力されているが、プリウス30ではECMでなくパワーマネジメントコンピューターPMCから信号を引っ張る必要がある。

タコメーターをステアリング前方に設置するので、右から左にインパネ深部のハーネスに沿って取りまわした。PMCはハイブリッドのキモなので丁寧に配線処理する必要がある。表示は電源ONまでは真っ黒で見えず、ONで表示される。ディマー設定しないと昼間でも眩しいほどなので最初からディマー設定にしているが、昼間でもかなり明るい。

回転数はアイドリングは約1100rpm、エコ領域に留まる加速では2000rpmを超えず、早い流れに乗る時のパワー領域でやっと2000rpmを超える程度だ。高速でも100Km巡航では1500rpm弱、よほど加速しない限り2000rpmを超えず、かなりエンジンが止まっている時間がある。写真をとる準備をしてもいつも止まった写真しか取れない。

針は下の方に留まるので9時をゼロ位置としている。高速で激しく加速すると3000rpmとなりそれなりエンジン音が聞こえてくるが、日本の合法速度の範囲ではどうやっても最高回転数5200rpmまで達しないようである。

エンジン音からは予想できたが、時にプリウスはエンジンが作動しているのに作動していないかのような表示をすることがある(ワザとだろうか)ので、それなりの有用性はある。プリウスはドットマトリックスを持つので、次モデルからはタコメーター表示も標準で欲しいところだ。

確かにエンジン動作状態が分かってみるとタコメーターへの興味もなくなり、エンジンが回っているときに赤ランプが点くだけでも十分だが、それが不要であると納得するまではタコメーター表示が欲しいのが人情である。見たいかどうか、と有用かどうかは別の問題なのだ。最初からタコメーター表示を用意しておれば、ユーザーは安心して普段はエコメーター表示にするのであろう。

そして燃費だが5000Km時点で平均23.1Kmである。冬季は暖機時間が長く燃費が低下するが遠出が多かったのでやはり23Kmであった。春期は燃費が改善したが、当地では梅雨時からエアコンを入れるので24Km程度、夏季はエアコンを入れるので22Km、それらの平均が23Kmである。

ディーラによると新車より23Kmという数字は平均より良いが、郊外で長距離走るユーザーにはもっと良い場合があると言う。10/15モード38Kmもその非現実的な走行パターンを知れば荒唐無稽では無い。

一方15km以下で燃費が悪いとクレームを言うユーザーもいるそうだ。Webmasterの経験では暖機時を除くとある程度の時間平均が15Kmを割ることはない。運転は流れに沿って平衡する速度+2、3キロまで加速し、アクセルをオフにして止まるまで流れに合わせるだけである。高速はメーター上ぬわやKm(7%過大)で維持し、それより遅い車は抜き、早い車には譲るだけである。

webmasterにも超燃費の悪い運転をする友人がある。見ていると加速もオーバーシュートしブレーキを踏む回数が多い。また一定の速度でもアクセルを周期的に煽る癖がある。プリウスで15Km以下の燃費のユーザーは運転方法を省みる必要があるだろう。

ところでメディアを見ると、高級車や高性能車を専門とする自動車専門家はプリウスを面白くない車であると攻撃している。Webmasterも遅い車だと思っていたが、実際にはモーターがアシストする発進や中間加速は驚くほど早い(数秒間ではあるが)。ただしテールを振り出す運転操作を試してみても何も起こらないか、ただ失速するだけである。

彼らの攻撃が異様なほど激しいのは、プリウス程度の燃費が当たり前という社会的なセンチメントになると高性能車が売り難くなることを恐れているのだろう。なぜかホンダのインサイトに対する攻撃はプリウスに対する攻撃より穏やかに思える。

これは、過去ホンダとトヨタがどのようにレース界に貢献してきたか、に対する情緒的な評価が関係していると思う。しかし、連日35度を越える温暖化の現状が今までの車のあり方を許すはずも無いし、欧州車での際限ない馬力競争が続けられるハズも無い。欧州の自動車界には少し知性が不足しているとしか思えない。

伝えられるところによるとトヨタはラリーに再エントリーするとらしいが、今回こそ大人の対応で不祥事が無いように願いたいものだ。そして、入賞を目指さないラリー仕様のプリウスをエントリーさせて馬力バブルにまみれた欧州のメーカーを教育するくらいの度量が必要である。

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近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ(CFX実物編)

引き続きピアノにハマっているWebmasterである。先日Rachmaninovのprelude op. 23 No.2を人前で弾く機会があったのだがグダグダな演奏になってしまった。暗譜してプレゼンテーションレベルに達したつもりだったが十分でなかった。

敗因はマイクを使うセッティングがリハ時と違っていて自分の演奏が良く聞こえなかったことだ。その代わりにミスは皆に筒抜けだったのである。やはり目をつぶって弾ける程仕上がっていないといけない。Scherzo #2も人前では怪しいしBallade #1はヒマがかかりそうである。このままでは職場公式座興ピアニストの地位も危ない。

さて、ルイサダの演奏会に行ったのだが目的は2つである。まずルイサダのBalladeを聞くこと、そして例のヤマハCFXの実物を拝むことである。

演奏会は恐れていたとおりであった。まず入手したチケットがステージにむかって右側、つまり鍵盤が見えない席だった。やはり電脳エージェントまかせの購入がまずかった。席の埋まりは90%と意外に空席が残っていた。

演奏はWebmasterの好みとしてはルバート過剰と思った。Ballade #1は練習中なので装飾音符ひとつひとつまで譜面が目に浮かぶのだが、ミスタッチだけでなく小節単位の脱落が耳に響いた。演奏にはいろいろ好みもあろうが、どんな演奏にも少なくとも左ペダルの踏み方など学ぶべき点は確かにあるものだ。

許せないのは、Ballade#4が割愛されたことだ。感じとしては第9が合唱付き第4楽章の直前で終わったようなものだ。先入観をなくすために敢えてネットの評判を見ずに出かけたのだが、#1の仕上がりからすると#4は割愛されたのがよかったのかも知れない。あとで検索すると他の会場でも割愛されていたようだ。次の予定はBlechaczのなので、テクニック的にも解釈的にもルイサダより遥かに安心して聞けるのではないかと期待している。

ただしピアノ自体は予想以上であった。まずバスが深くサステインが長い。これはあまり聞いた事が無いほどであった。

中音域、次高音域はムラ無く十分な音量で鳴っていた。高音域はS$Sのような金属音も感じられず最高音まで十二分な響きがあった。音質には好みがあるであろうが、小音量、中音量では過去のCFシリーズよりソフトな音で、大音量になるに従ってゆるやかに硬質な音に変化するようである。

S&Sと同時比較したわけではないが、ホールが大きいことを考えると標準的なD-274に比べてもダイナミックレンジは上回っていると思われた。

しかしS&Sのように限界を超えて雑音を伴いながらジャラジャラキシンキシン鳴る領域はルイサダの腕力では味わえなかった。Horowitzは急逝直前のポロネーズでもバリバリ鳴らしていたので、彼ならどのように鳴らすのかは興味がある。

CFXについては下部構造を詳細に見ることができたが、前のトピックのように大幅に強化されていた。まず鍵盤棚の下を見ると、左右の脚を結ぶ梁が極限まで太くなり、ピアニストの膝に当たる部分が斜めに削られている。

このためリラ基部は厚みが薄くなっている。今回リラ支柱の形状が変更されたのは薄くなったリラ基部でも剛性を保つためかもしれない。ただし、リラの柱に左足をたてかけて右足をふんばる癖のピアニストがかなり存在するので、デザイン変更は迷惑かも知れない。、

鍵盤棚下部で口字形に組まれた梁が強化され、前後に走る梁は後ろ框まで届いている。これで鍵盤棚の変形は一切許さないぞ、という印象である。

奥框は太くなりほぼ鍵盤棚後端とツライチになっている。S&Sで見られる支柱と奥框を結ぶ細い補強材は無い様子だ。黒く塗られたサウンドベルの形状はS&Sと良く似ている。

支柱の基本的なデザインはCFやS&Sと同様であるが、CFIIIsまでは直支柱はカマボコ板(一番奥の脚持ち)よりかなり前で上下サイズを減じながらカマボコ板の上を通ってリムに達していた。CFXではカマボコ板の中央が前方に突出し太いままの直支柱の切り込みと結合している。これらの工夫は縦方向の剛性を向上しつつ側板の振動を殺さないためであろう。

ヤマハはS&Sをどのメーカーよりも深く研究してきたが、それはその製法に良く現れている。ピアノの製法にはS&Sとそれ以外の2つの流れに大きく分けられる。

S&Sは一体成形したインナーリム+アウターリムに框や支柱、ピン板や前框、奥框などダボを多用して強固に結合し、ピアノの箱を完成後に響板を貼る。前框はピン板と一体となってダボと接着でケースに固定されているので、すべての面が閉じた箱となる。

他のメーカーはインナーリムに奥框や支柱を組み合わせ下部構造を作り響板を貼り駒高を決めた後にアウターリムを貼って箱を完成させるのである。多く場合、前框はあまり強度に寄与せず、完成したあとも調律や張弦のために前框が外せるピアノも多い。

ヤマハの製法は基本的にS&Sの製法を近代化したものだがインナーリム(曲げ練り支柱)とアウターリムを一体形成しない点が異なる。いずれも箱としてのピアノを先に作るところがミソだ。車で言えばS&Sやヤマハの構造はフレーム付きのモノコック構造に近い。

この点が多くのメーカーがS&Sの構造を模倣してもS&Sの音量と軽量を実現できなかった理由である。一方この製法ではケースに響板を組み込む際の誤差管理が重要で、ヤマハの普及品ではケースと響板の間にスキマがあったりする。古典的な製法では響板の耳(下部構造よりおおきな部分)をインナーリムにそって切り落とした後にアウターリムを貼るので隙間がない。

製法の違いは古典的なドイツピアノ製法を残しているカワイのクリスタルピアノを見ればよくわかる。クリスタルピアノではインナーリム、框、支柱からなる下部構造に響板と鍵盤棚を張り、ピン板を支持するアングル材と金属フレームを乗せてピアノとして成立させている。アウターリムや前框はネジで着脱可能であり、外した状態でも演奏可能だが、これらが剛性に寄与しないので調律の安定性は低く音量も小さくなる。

S&Sやヤマハの高級品の製法では、箱が完成した後にフレームを乗せ駒の高さを確認してから駒を削ってピンを打ち、再度フレームを載せて調弦するのでアウターリムが作業の邪魔になる。高級品ほど手を掛けられないヤマハの普及品では、響板のクラウン+駒の高さの出来上がり寸で管理し、フレームにピン板を抱かせた状態でリムに結合し、その後前框を貼っている。

クラウンを作るには響板をスーパードライ(水分含有率4%)とし平衡湿度(10%)以上とした響棒とクラウンの型に入れて貼り合わせる。その後平衡湿度に戻すと響板が吸湿して伸び、これが伸びない響棒に拘束されてクラウンが形成維持される。しかし高度な工業製品のピアノで唯一クラウンのデキには個体差が大きく経時変化も予測困難である。

クラウンに駒を乗せた出来上がり寸が一定でも、クラウンが低い響板では駒が高く、クラウンが高い響板では駒が低くなる。クラウンが低い響板はバネ定数が高く、クラウンが高い響板はバネ定数が低い。つまり駒の高さが一定でもバネ定数はさまざまになる。

さらにダウンベアリングが加わった後のクラウンの沈下と弦圧は経年で変化していく。弦のエネルギーを最大限響板に伝えるには弦の出力インピーダンスと響板の入力インピーダンスがマッチングする必要があり、伝導効率は響板のバネ定数によって変わりうる。これが同時期に製造されたピアノ数台を並べても一台一台すべて音量や音質が異なる理由の一つである。

もちろんクラウンを作ったあとにシーズニングを行い、安定した時点でフレームを乗せて駒の高さを決めれば少なくとも経時的変化を減らすことはできる。しかし仕掛け率が高く投資効率が悪くなるので高級品のみでしか行われない。

これに前トピで触れたように、響板を予め曲率を持った響棒と組み合わせることによって同じクラウンでもバネ定数の低い、つまり柔らかく大きな振幅を許容する響板を作ることができる。この場合低音域の弦の大きな振幅に適正な弦圧をもって追随し弦のエネルギーを能率よく響板に伝導できることから大音量と長いサステインを実現できるのだ。

もちろん響板の低音の大きな振幅をしっかり受け止めるケース剛性も重要である。その剛性を利して高音域では弦の振動をケース全体に響かせることができる。それには箱としてのピアノが響板を締め上げる残留応力を秘めたまま組み上がる必要がある。そんな成り立ちがCFXの基本メカニズムと考えられる。

とすれば、普及品のピアノでも、数年経過後にオーバーホールし適切な弦圧となるように駒とフレームの高さを調整し、ケースに有効な補強し、念入りに整調、整音を行えば若干は上等なピアノになることになる。ヤマハの普及品は整調や整音などの出庫調整は十分でないが、素材としてケースの剛性はかなり高いのである。

なぜWebmasterがCFXの改良点にこだわるか、と言うと、わが家における家具との地政学的場所取り合戦に敗北しサイズダウンを強いられたグランドから最大限の低音とサステインを引き出すために、構造的に弱いと思われる部分の強化してきたからである。このために年出会った内外のグランドはすべて下部構造を子細に観察させていただいた。

ピアノを工学的に箱として見た場合、ピン板とリム、奥框とリムおよび鍵盤棚、響板と引き回し、直支柱とカマボコ板などの結合、などの普及品の弱点と思われる部位に強化を施してある程度の効果を実感している。

従ってCFXの強化ポイントがよく理解できる。一方ヤマハは木質の劣る普及品であっても箱の剛性はS&Sに次ぐレベルに達しているが、当然ながら人手がかかる鍵盤錘調節と整音にはコスト的な制約が残っているので、この部分を手当すればよいピアノになると思われる。まさにカワイはSKシリーズで人手のかかるところに集中してコストをかけている。

また山本式ピアノマスクは開口を調節することによってクラスを超えた低音を出すことも見いだした。これは響板とピアノマスクの間の空間が適切なスリットを持ったバスレフ箱として働らくことでサイズを超えた低音を出せることも解った。これらについてはPAT PENDであるが、そのうち紹介したいと考えている。

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近頃話題のフルコンサートピアノのナゾ

相変わらずピアノにハマっているWebmasterである。本来ならBallade # 1(Op.23)が仕上がっているハズだが、Scherzo#2に手間取ったことやRachmaninovのprelude op. 23 No. 2などが割り込んで計画がどんどん遅れている。

まあ、計画なんかどうでもいいのだ。最近はロシア東欧の楽譜が簡単に手に入るのでつい横道に入ってしまう。Rachmaninovは式典で弾くはずだったが完成度に自信がなく、目をつぶっていも弾けるはずのDebussyに差し替えたところ間違ってしまった。やはりプログラムは少々問題があっても死守すべきなのだ。今の所はまだ80%程度の完成度(微妙に間違っているのが解るだろうか)しか無いが、完成したら再度アップロウドしたい。

さてピアノ界の話題と言えば、次々に来日する超一流アーチスト(Zimmerman、Yundi Li、Pogorelic?、Luisada)だろうか。Webmasterは何度も急用で演奏会に行けなかった経験があり、かぶりつきでペダリングを拝見できるコンサート以外は腰が重くなっているが(Youtubeのせいもある)、親切な友人がサイン入り楽譜を前に熱く語ってくれるのがありがたい。

おもしろそうな曲があればネットで探した楽譜を見ながら動画を見れば難易度がわかる。実際に弾いてみて指使いに迷う時は動画を見る。例えばアルペジオをどう左右に割るか、どう手をくぐらせるかがわかる。このあたりはコンサートでもかぶりつきでない限り解らないのである。

一方ハード面でのピアノの話題と言えばイタリア製のF308とヤマハの新フルコンCFXであろう。

当然ながら5月新発売のCFXは弾いたことが無いが、不思議なことにYoutubeには発売前の3月から解説ビデオが登場していた。

ヤマハによればCFXのポイントは美しい音と比類無き響き(音量)とのことである。さて美しい音とは人によって違うと思うが雑音が少ないことは大事な要素であろう。これについては最近人気が出てきたF308がターゲットではなかろうか。一方定番のスタインウェイD-274ではかなりの雑音を感じ、その原因のひとつのアリコートについては

ピアノにみる音質グローバライゼーションのナゾ(その2 アリコート解析編)

で解析している。D-274の雑音はダイヤの輝きと評される音と表裏一体で、大ホールの後ろまで「遠鳴りが効く」ことの源泉である。過去ヤマハCFシリーズの遠鳴りはD-274に肉薄したが越えておらず、BechsteinやBoesendorferは遠く及ばなかった。

高音の響きは整音や調律である程度変えられるし、ハンマーや弦は同じものが入手できるから各メーカートップの調律師の技術レベルが近いと仮定すれば、最終的にはピアノ本体に依存することになる。D-274の評価が高いのはやはり優れた構造によるものだろう。

タッチについてはアクションは調節の幅も広く好みも多様なので判断が難しいが、ヤマハのアルミレールが堅いのに対しD-274は金属管にブヒンガを詰めて若干の「しなり」を許容する。

最近の流行は「しなり」を許容する方向である。工学的には「しなり」によりハンマーの接触時間が長くなりエネルギーの受け渡しに幅が出る。

例えばブランコの人間を押すのにはゆっくり押す必要がある。低音ではたわみにより接触時間が延びる方がエネルギー効率が高い。高音ではバレーのトスのように素早い接触が必要となる。F308は剛性よりもしなりを考え敢えて古典的な木製レールを使っている。

さてCFXはどうやって遠鳴りと音質の両立をを目指したのであろうか?

資料では支柱や奥框の強度を高めたとある。低音では大振幅に耐える強度が、高音は強固な箱が必要で相反する面もある。

Webmasterの知る限り強度は60年代のヤマハで最大限に追求された点で、その後は生産技術と経済性のためにルーズになった気配がある。ヤマハがデジタル技術に傾倒している間にEXやF308は改良を進めヤマハのリードはかなり減った感じがする。強度アップだけでD-274を凌駕するのは難しいだろう。

響棒の製法は「響板の湾曲に沿った響棒を貼り込み」とある。通常スーパードライとした響板を中央が凹の型に置いて響棒を接着し、その後響板が吸湿して延びることでクラウンが維持される。従来は真っ直ぐな響棒がアーチ状に変形するように力を加えて接着するので、真っ直ぐに戻ろうとする応力が残り、それが伸びようとする響板との間で緊張が残留して響板の動きが堅くなる。

古くから響棒を最初からアーチ型に成形して響板に張る手法がある。そのメリットは響棒がまっすぐ戻ろうとする応力が残らないため響板の動きが柔らかく(インピーダンスが低い=アドミッタンスが高い)クラウンも長く保たれる。響棒の工夫はCF初期に間隔や角度がいろいろ模索されて以来である。

工学的には弦のエネルギーは駒というインターフェースを経て響板に伝わる。物理的には弦の出力インピーダンスと響板のインピーダンス(アドミッタンスの逆数)が等しいとき最大のエネルギーが伝達される

問題は弦が駒から離れないように駒を下向きに押す数百キロの力(ダウンベアリング)が必要なことだ。響板はダウンベアリングと響棒の残留応力からクラウンを維持するために堅くなり、エネルギー伝達効率が低下する。

響棒の残留応力が減れば響板に柔らかく大きな振幅を持たせる事が可能となり、より大きな音を出るとともに低い弦圧で弦の振動に追随できるようになるためクラウンも永く維持できる、というシナリオである。

このシナリオに沿って、低音駒に(控え目ながら)丸穴が追加されていることがホームページの写真で確認できる。これは欧州ピアノで使われている手法で、駒の剛性を下げて響板を柔軟にし、また中音駒から響板全体への振動伝達を妨げにくくなる。

柔らかい響板と弱いダウンベアリングで効率を上げる工夫の歴史は古く、クラウンが無い響板と弦を拘束する駒アグラフを持ったピアノは前世紀からある。クラウンが必要なければガラスやカーボンファイバーを使うこともでき、駒アグラフでダウンベアリングを減らすことでより大きな音とサステインが可能となる。この手のピアノはシュタイングレーバーなどから販売されている。

ただし木材以外の響板では減衰率が不足するためBoomyやMuddyと表現される音になり、長すぎるサステインも不自然な印象がある。やはり適度なヤング率と減衰率を持つ木材が響板には最適であり、最近流行のチレザ製はバイオリンには適してもピアノには堅すぎるとする意見がある。

スタインウェイも前世紀からこの問題を認識しており、十分なクラウンを持ちながらテーパーリングによりインピーダンスを下げた響板は、低張力なスケーリング、弦圧をコントロールする工夫、強固な筐体と支柱、集中コレクターなどからなるスタインウェイシステムの一部を占めている。

ところでヤマハでは響棒とインナーリムの接合方法の改善もポイントだろう。欧州のピアノでは響棒と結合するインナーリムの切り欠きや角度を工夫したものも多い。

いずれにせよ、低い音を柔軟で振幅が大きくとれる材料で受け、高音を緻密で堅い材料で受けることが基本である。

ハンマーや弦の改良も挙げているが、既知の材料を使う限り他メーカーを出し抜くことは難しい。これからはアルキド線維や炭素繊維の混紡を試すべきであろう。基本は小さな音から強大音まで打鍵力とその変形がプログレッシブとなるデザインである。

今回の資料であまり触れられていないのが金属フレームの形状変更だ。ピアノの音域は縦フレームによって低音、中音、次高音、高音域の4つに分けられる。88鍵を4分割すると各1オクターブ半になるが中音域のみ3オクターブ弱とられている。

弦のエネルギーは弦の重量x周波数^2x振幅である。低音では周波数が低いので振幅と重量でエネルギーを稼ぐことになる。ピアニストの腕力、アクションストローク、弦ハンマー間の距離は一定なので、フルコンでは弦の長さと広く柔軟な響板で音量を稼ぐ。

今まで3mを越えるピアノも多く製造されたが、重くなる割に空気抵抗のため低音の音量が増えず、また高音とのバランスも悪くなるため名作と言えるピアノは少なかった。同じフルコンでは遠鳴りが効くD-274は圧倒的に軽く、いかにエネルギー効率が良いかわかる。

さて高音は周波数の自乗でエネルギーを稼ぐことになるが、フルコンとベビーグランドを比べても弦の長さは大差無いので高音が不足する。このためスタインウェイは高音を補強するためにカポダストバーとアリコート、サウンドベルなどを考案した。

カポダストバーは弦の振動を同じ音域の他の弦に共鳴させて音量を稼ぐ。アリコートは弦の有効長より前方と後方の弦を基本波の高調波に共鳴させて音量を稼ぐ。サウンドベルはフレームの高音を筐体に伝えるとともに、金属フレームの高さを規制して弦圧を適性化する。

しかしカポダストバーで広い音域の音が混ざると雑音となる。そこでカポダストバーを縦方向に走るフレームで区切ることで共鳴雑音を減らしている。全てのエネルギー(一部は雑音を含む)を木質という高音フィルターを経由してムダなく空間に放射するのがD-274の基本である。

ところで共鳴雑音は弦のインハーモ ニシティと関連する。弦では基本周波数の整数倍の高調波が発生するが、弦の両端は堅く曲がりにくいため有効長が短くなり周波数が高くなる。そのズレは高調波の次数が高くなるほど大きい。

従って低音域の高い次数の高調波が中音域の基本波とまざるとビート(うなり)が発生し共鳴雑音となるが、これを縦のフレームで遮断し、ピン板をはじめ木質でダンピングさせる設計になっている。また低域ではその高調波が中音域と干渉しないように低くストレッチされ、中音域の高調波が高音と干渉しないように高音域は高くストレッチされる。

長い歴史で高音と次高音域の音は次数が小さいので縦フレームを超えて混ざってもさほど耳触りではないが、低音域の高調波が次高音、高音の音とフレームの振動を通じて混ざるとと不快な雑音となることが100年以上前に知られていた。

このため次高音域のカポダストバーを低音側で次第に太くすることで低中音域と遮断している。左右をつなぐフレームは弦中央部を避けピン板寄りとし、中音低音域はカーブさせるか、アグラフとの境界で段違いとして剛性を落としている。

フルコンでは中音域は3オクターブ近くを担当するので縦フレーム間隔が開いて強度が不足する。しかし中音域の中央に縦フレームを追加すると共鳴雑音が増えることが知られている。

そこでスタインウェイは中音域に斜めのダイアゴナルバーをネジで結合する方法を考案した。これで強度を稼ぐが振動はネジで緩和する妥協案だ。これとアリコート、カポダストバーと剛性の高い筐体で最大の音量を許容範囲の雑音でもっとも軽量で実現するシステムを100年前に発明したのである。

つまり響板だけでなくフレームに伝わったエネルギー(一部は雑音)を筐体の木質という高音フィルターを経由して耳障りな雑音を減らしながらムダなく空間に放射するのがスタインウェイシステムの基本であり、そのためエネルギーを吸収するフェルティングも最小限なのである。

さて、ヤマハのFCはBechisteinの影響で中音域が狭いので、左右のバーを中音域と次高音域で段違いとして雑音を逃れていた。しかしCFで中音域が広くなるとともに音量が増えると共鳴雑音が問題となったはずである。かといってスタインウェイのダイアゴナルバーを使うのはプライドが許さない。黒い無個性なピアノで金色に輝くフレームのデザインはピアノの個性だからだ。

当初のCFでは低音中音域境界の集中コレクター結合部から斜めにダイアゴナルバーを中音域のベルの中間に固定した。バーを次高音域から距離を置くことで遮断を図ったのであろう。それでも中広域のバックはD-274より広くフェルティングされている。

マイナーチェンジ後は、細いバーを低音中音域境界の縦フレームのヒッチ前方に結合している。低音域と次高音域の遮断を進めたと思われるが強度に不安を感じる。

二度目のマイナーチェンジではベル部の孔のサイズ変更している。これはベル下部の響板からの音のヌケを良くすると共に左右方向の剛性を調節したと思われる。

CF-IIIへのフルモデルチェンジ(公式にはCF-IIは無い)ではベル部の孔を欧州ピアノのように拡大し響板が大きく見えるようになった。音の抜けを良くするとともにベル部の剛性を落としたものと推測される。

CF-IIISへのフルモデルチェンジではベル部の孔が再度丸い小さなものになっている。ベル部での位相干渉を減らすとともに、ベルの厚さを高音側へ連続的にコントロールすることで剛性を調節している様子だ。

今回のCFXではフレーム形状がCF初期と似たものに戻っていて興味深い。ただダイアゴナルバーはより細く、ベルのキュポラは大きく深く低音駒の開口も大きくなっている。

たびたびデザインが変わる部分は何らかの問題があることを示している。他にも響板、響棒、支柱、除響板、補強材、アリコート形状など過去多くのバリエーションがある。スタインウェイが苦しんだように雑音と音量の妥協点を長年模索してきたのだと思う。

CFXが初代CFのフレームデザインに戻ったのは、厚みなど鋳造技術の進化で最適な剛性分布が実現できたので、強度に有利なデザインに戻して軽量化し、そのゲインを木質構造の強化にまわしたと推測される。

さて木質構造は支柱、奥框、各接合部が強化されている。特に奥框、カマボコ板、鍵盤棚が補強された。カマボコ板が拡大した反面、側板の振動を生かすためか左右方向の補強材は減っている。これらは響板や弦の選択と同様にXAシリーズやF308でも見られる手法だ。

新しいCFXはかつて初代CFルを生み出したプロセスを21世紀的手法で再現した感がある。かつてはD-274に並ぶため、今回はそれを越えるためである。さてCFXはD-274やF308との競争をリードできるだろうか?

ヤマハは十分勝てると信じているようだ。Webmasterは強気な価格設定に懐疑的であったが、圧縮動画ながら清水和音氏のTchaikovskyのピアノ協奏曲1番を聞いた限りD-274より前に音が出ているし雑音も少ないように思った。

この協奏曲はオケのffから始まり、ピアノにはオケに負けない音量が求められる。第一楽章のfff(2分40秒あたり)がオケより前に出ているかが判断材料になる。この曲とラフマニノフを聴け音量に関しての限界性能が解る。

大幅にアップした価格もピアニストが気にいれば正当化されるし、評価されなければ単に「高すぎる」ということになる。新興のF308が短期間で評価されたことを考えれば、出荷された個体に実力があれば実績あるメーカーなので評価されるはずである。近々音を聞けるチャンスがあるので楽しみである。

ところで、某所某日にご好意でF308(Tコンペの個体)を小一時間弾く機会があった。月並みながら弾くのが気持ちいいピアノである。巷では明るい音質と言われているがさほど個性的では無く、スカルラッティからラフマニノフまでジャンルを選ばないようである。

”鐘のような高音”にしてはおとなしく、”地中海のプリマドンナに抱かれるかのような中低音”にしては淡白である。チレザの響板から神話的な音が出ると響板神話を信じている方々もおられるが、スタインウェイは「音質は響板の産地よりシステムとしてのピアノの作り方で決まる」とその手の神話を前世紀に否定している。

かつてタローネは”宇宙のようなff”、”空のようなpp”、”神のような音”と言ったそうである。1台のサンプルから神のような音なのか解らないが、日本人的には吟醸酒のような音質が広いダイナミックレンジで保たれていると表現すべきであろうか。つまり音質を云々する間もなく演奏に熱中できるのだ。

アクションは軽く均一で、量産品で指がもつれるパッセージが苦もなく弾ける。黒鍵の形が良いので左右のパートが入り組んだ曲も弾きやすい。意外や敷居が低くフレンドリーなのである。

sffffを試すと低音はジャラ付きも少なく高音も割れずに素直に出るが、D-274のような最高音のキラメキは弱いのが唯一気になる。308cmの長さをより広いダイナミックレンジで良い音質に保つことに割り振った感じだ。

一方のD-274は小音量からわずかな雑音を伴いながら最大音量に達し、その後も大きな雑音を伴い軋みながらさらに音量が上がる。ダイナミックレンジで終止美しい音が保たれるピアノと、無理が利くが一貫して雑音を感じるピアノ。

これは優劣で無くてポリシーの差と言うべきで、F308も音量を稼ぐことは可能だろうが魅力が損なわれるだろう。小ホール、大ホールに関係なくピアノソロはオールマイティーであるが、大編成オーケストラとの協奏曲ではD-274の緊急出力に一歩ゆずる。個人的にはホロビッツが効果的に使ったような強大音で雑音がないのが寂しい?気もする。

木質の構造も高級家具の仕上げで、裏側が美しいのは日本人に受ける要素だろう。意外に鍵盤棚と大型化したカマボコ板の造りは筋肉質である。初期の習作はタローネの影響を受けているがその後は骨太方向に進化したようである。

当然ながら第4ペダルも試してみた。これはアップライトと同様にハンマーストロークを減らして音量を絞る原理だ。鍵盤のバックレストを総上げするもので、スクエアピアノやシュタイングレーバーでも見られる仕掛けである。踏み具合もアクションを強制移動させるウナコルダより圧倒的に軽い。

これでウナコルダに比べ高音の輝きを保ったまま連続的に音量を下げることが可能になる。一方普通の左ペダル(ウナコルダ)は弦の本数が音域で違うため踏み具合で音質が複雑に変化する。かつてミケランジェリは踏み具合を微妙にコントロールしていたと言われる。またその効き具合はハンマーの状態によって個体差が大きい。

第4ペダルを踏み込むと連続的に音量が低下しチェレスタのような小さく輝く音も可能で曲目によっては強力な武器となり得る。ただしペダルの踏み始めにぐっと鍵盤が沈み込むので、意識して深く弾かないとカラ打ちになってしまう。

これを使うならここだろう、とドビュッシーの月の光で試したところ、”うまく使ってますね”、とボスは喜んでくれたが、彼が薦めるように第3と第4のペダルの両方踏みもしくは踏み分けするのはちょっと難しい。

たとえ踏み分けをマスターしたところで、圧倒的多数のピアノでそのスキルは役に立たない。ただでさえ、半ば無意識に踏んでいる右ペダルと比べ、上級ピアニストでさえ左ペダルを使うには心と体の準備が必要だ。

第4ペダルのメカせいか、ダンパーの掛かりはやや深目でそのあと急に効きだす感じがあり、ハーフペダルは丁寧に踏む必要がある。その他詳細は書けないが、響板厚さやテーパリング法、各音域での駒やピンの材質などいろいろ話を伺うことができた。興味のある方は直に確認して欲しい。

狙いはBoesendorferの低音、Bechsteinの中音、Steinwayの高音の輝きと音量、との欲張っているが、かなりの達成されており、今後も熟成が進むだろう。自宅に置くような小さなモデルもフルコンと同じ手作りであることや稀少価値を考えれば決して高価で無く、特にF212あたりは格安と思った。

さて、ヤマハCFXはD-274はもちろんF308をも凌駕すべき新時代のライバルとして宿命づけられている。ある程度目的を達成しているようだがあの価格で成功するだろうか。

商売としては実力が浸透してじわじわとシェアが取れていくような発展が望ましい。トヨタのリコール問題のように、急にシェアが急増したりするとよろしくない。製造数を低く設定し、十二分の仕上げを施して出荷することが望まれる。現時点では中音域のフェルティングに工夫の余地があるのではなかろうか。

ヤマハには材質が良く手作り部分が多いSシリーズがあるが、弾いてみて状態が良いCシリーズとどれほどの差があるか?と言われるとわからない。アクションが軽快でCシリーズで弾けないフレーズがSシリーズなら弾ける、、、という訳では無いのだ。素材が良いのに鍵盤が重く感じられる印象なのだ。

一方カワイのSKはどの個体も弾き易さにおいてRXとは格段の差がある。SKの音質や素材がRXより良いのか?Sシリーズほど良いのか?はたまた良い状態が永く続くのか?は解らないが、新品を目隠しして弾き比べればSKを選ぶ人は多いと思う。素材よりは整調整音、特に鍵盤錘などの細かい仕上げが効いているのである。

現在ピアノの製造技術はかなりのレベルに達しているが、唯一響板のクラウンや柔軟性がどう仕上がるか、それが弦圧を受けてどのように経時変化して行くかには不確定要素がある。急ぎ頭数を揃えてもそれを見極めるには十分なシーズニングが必要である。

Webmasterはかつて選定用C3とC3XAの合計8台を弾き比べた事がある。モデル間の傾向があったものの個体差の方が大きく、製造されて間もないのか、弾く内に音質も調律もどんどん甘くなっていく個体があった。果たして新品の時点での選定にどれほどの意味があるのか?同一の条件でもある程度の時間(1−3年くらいか)を経ないとピアノの運命は度し難いと思った。

CFXのデキ具合はピアノの歴史において一台エポックとなる可能性があるが、どんなに良いピアノでも最初に出会うピアニストと調律師の印象は永く残るものだ。CFXの全数に十分なシーズニングとコンペレベルの仕上げを施して出荷すれば、飢餓感と共に評価は自ずと定まるとWebmasterは思っている。

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こんにちは!プリウスLグレードのナゾ

プリウスがやってきた

チョイスしたLグレードは10・15モード38キロを絞り出す燃費スペシャルである。もちろん打倒インサイトと営業車用途を念頭においた廉価グレードでもある。

Webmasterはプリウス20Gグレードに乗ったことがある。音もなく発進する走行感に感銘を受けたものの、上級グレードながらヴィッツような内装とザワザワとしたタイヤからの透過音にも驚いた。

トヨタといえば、大衆車からレクサスまでの使い回し部品、外車に追随するだけのデザイン、表面だけ豪華な内装、スペックほど吹けないエンジン、ゆるゆるブッシュのサス、路面状況を伝えず曲がらないステアリング、ハーネスと生産の都合による不要な抱き合わせオプション、レギュレーションをズルするレースの歴史、と印象は良いとは言えない。もちろん高度な(というかバランスがとれた)品質管理は高く評価しているが。

プリウスはそんなトヨタにとって異質なモデルである。独創的なハイブリッド機構、軽量化のためのアルミ製バンパー、ボンネット、リアゲート、ハブ、ブレーキキャリパー、豪華さを追わない内装、空力ボディー、ユーザーインプレッションを受け入れる姿勢など、全てが異例である。

個人的にはインサイトを購入するつもりだったが、ホンダより先に来たセールスマンの良い対応とVSCなどの安全装備に変節したのである。購入資金でホンダの株を買っていたにもかかわらず、である。

試乗し、知れば知るほどプリウスは非トヨタ的かつサンプルする価値が高いと認識した。オーダーを入れたのは6月28日、納車が1月末、そしてグレードは当然ながら最もプリウス的なLである。製造はトヨタ車体富士松工場、車台番号5112xxx、奇しくも誕生日はWebmasterと同じである。

色はコストが高そうな氷山マイカメタリックがLグレードに設定されていたのでチョイスしたが、ブツけると修理が難しそうである。保険はプリウス割引で僅かな追金で限定車両保険に格上げとなった。

ハッチバックスタイルに抵抗はなかった。高齢化日本ではいつ何時車椅子や介護物品を満載することになるのか解らないので、この点でセダンは不利だ。

ハッチバックだと高速移動中に荷室から物を出し入れできるのも便利だし、後窓からの直射日光も軽い。一方車庫入れで後窓の視界が気になるが、自宅には車止めを置いているので問題無い。

Lグレードの本質

Lグレードはモード燃費の等価重量1310kgを死守するためのモデルである。Sモデルからどうやって40キロ軽量化し、どう空力を改善したか興味がある。極めてラフな見積りでは(信頼度ゼロ)、

タイヤ195→185化 3キロ
リアワイパーレス化 3キロ
リア床下トレー 2キロ
オーディオレス、スピーカ2個減、ハーネス類節約3キロ
前ダンパー軸中空化 1キロ
後ろダンパー小径化 0.5キロ
ボンネット、カウルパネル、ダッシュ下、屋根裏インシュレーター 1.5キロ
シート上下アジャスター 1.5キロ
小型コンソール+リアセンターアームレスト 2キロ
フロントフォグランプ+ハーネス 1.5キロ

あたりか?、中には前ダンパーのようにむしろコスト高のものもあるし仕様を作り分ける事自体がコストの増加になる。しかし40キロにはさらに20キロ減量が必要だが?

一方Lグレードにしかない装備もある。フロアアンダーカバー、リアタイヤハウスライナー、リアバンパースポイラー一体型リアバンパーなどである。これらはS,Gグレードには装備されず、リアタイヤハウスライナーはどのモデルにも装備されない空力パーツで高速燃費を稼ぐことができるが数キロの増加要因にもなるが?

逆に空力パーツで重量を減らすこともできる。SやGで剥き出しの車体下面に必要な耐チップ塗装やアスファルト遮音が不要になるからだ。ST,GTグレードが装備の割に軽量なのは同様にフロアアンダーカバーによってアンダーコートを省略しているからだ。これらに比べるととS、Gグレードの床下は寂しい。トヨタはライン途中で細かくアンダーコートの範囲をコントロールする設備を持っている。

通常レース車作りは耐チップ材や遮音材の剥ぎ取りから始まる。車を冷やしてタガネで削る疲れる作業だ。これをメーカーが処理してくれる上に遮音と防錆を兼ねた空力パーツがオマケなのである

つまりLグレードは設定、Cx=0.25のために風洞実験などに要したエンジニアリングコストと生産コストから考えると最も儲けが少ないと想像される。もしLグレードのコストが安いなら、Lに装備を追加していくグレード体系のはずだがそうなっていない。

しかも整備資料にはLグレード特有の記載が乏しく、後で追加されたグレードであることが解る。コストを喰った分は上級グレードのユーザーに負担していただく作戦だろう。Lグレードの軽量化にはエンジニアが侃々諤々議論と実験を繰り返したのだろう。大変な仕事だったろうが燃費38キロを達成できた時は一同溜飲がさがったのではなかろうか?Webmaserもそのおこぼれにあずかるわけだ。

Lグレード選択のセンチメント

Lモデルには制約もある。安価な割にコストが掛かったLグレードばかり売れるとトヨタは困るのでユーザーの優越感劣等感に訴えるように装備が選ばれている。

まずシートリフターが無い。Webmasterは日本人標準体型曲線に乗っているらしく着座位置が高いこと以外は許容範囲である。スカットルが高くボンネットも前傾しているので、着座位置が高くないと前が見えないのだ。幸いヘッドクリアランスは十分でステアリングのチルト、テレスコがついているので問題ない。

STモデルにも試乗したが、シートリフターをどう合わせても座面中央が低く窮屈な一方ランバーサポートが弱い印象でフィットしなかった。その理由はメカニズムにある。

シートリフターは前後のリンクで座面上下させるが、座面を下げると座面とシートバック全体が後傾する。そこでユーザーはシートバックをアップライト気味にする。

ところが座面前端はアンチサブマリーンのため高く堅く、後傾すると大腿を裏から圧迫する。さらにシートバックをアップライトにすると座面の前後有効長が短くなり窮屈に感じる一方、シートバックがアップライトになってランバーサポートが弱くなる。

一方、小柄なユーザーが座面を上げると座面は水平に近づきシートバックがアップライト気味になる。このためユーザーはシートバックを後傾させると、見かけの座面が小柄のユーザーには長くなり、ランバーサポートが強くなる反面肩が浮く。

つまり、シートリフターがあっても座面の大きさと堅さ分布が一定なので、どんなユーザーにとってもフィットするのは調整範囲の中間付近に限られる

シートは小柄なユーザーを念頭に設計された雰囲気があり、調節機構が役立つ場合も多いだろうが、単なる座布団より悪いこともある。Lグレードは座った瞬間にポジションが決まりランバーサポートもしっかりしていたが、それは最大公約数的に最適な形に固定されていたからであろう。

シートは初期型より座面が堅くランバーサポートも強くなっているようだが、座面はもう少し前後に長く堅い方が良いと思う。シートがどうしても合わない場合はあっさり社外品に変えてしまう方が早いだろう。

日本車のシートは欧米車に劣ると言われるが輸出仕様はかなり上等である。それは国内向けは小柄軽量なユーザーのために座面が短く柔らかいからである。しかし輸入車に小柄なユーザーが乗ってもあまり苦情が無いので、もう少し大きめでも良いように思う。

シートリフターがあっても調節範囲が限られる理由にスカットルが高いデザインがある。デザインの前提が走行速度が高く大柄な欧米のようで、ハイブリッドがオーリスのように見切りの良い車に搭載されれば高速燃費は不利になるもののシート調節の制約は減るだろう。しかしどうしても前方視界とシートポジションの関係が許せないというユーザーもいるかも知れない

次に遮音だが、Lグレードで省略されているボンネットインシュレーターは部品として購入して装備した。カウルトップパネルにはフェルトを貼った。写真は納車直後でインセットが遮音処理後である。車庫にはエンジンを吊る整備のためにH形鋼材を渡してある。

グレードによってはカウルトップパネルにガラス繊維板があるが遮音効果は低い。このパネルは左右のストラットタワー、スカットル、マスタシリンダ、ワイパー、インパネ構造材を結合するタワーバーの機能を兼用した構造部品なので、これらの作動音がパネルを経由してインパネに伝わる。

従ってカウルには吸音材を浮かして付けるのではなく拘束性のある遮音材が必要なのであって吸音材のチョイスに疑問がある。フェルト接着により叩いてカンカンと響いていたパネルがコンコンという音になり、ワイパーやブレーキシリンダの作動音も小さくなった。

屋根裏にはバニティーミラーライトと車室灯の穴からポリエステル綿をまんべんなく充填した(所用10分)ので、PET綿が部分的にケチくさく使ってある仕様より遮音は効いている。もっともベンツは最新のものでもここには吸音材が入っていないので無視も可である。

両側インパネアンダーカバーはスキマが多く遮音効果は無い。また衝突時にインパネ下端との接合がはずれて突出し膝下をヒットするリスクが見てとれる。本来は樹脂でなくカーペット材を使うべきだろう。無い方が良い部品だが、どうやらこれは国外向けニーエアバッグの入れ物の残骸(兼エントリーライト支持)のようである。

リアワイパーあり仕様ではモーター収容の分だけ後窓が狭くアームとブレードが邪魔し、一番重要な左後端の視界がケラれる。ワイパーの払拭も狭く有効性も低いので、視界のためにブレードを外すユーザーも出るだろう。これも実車を比べないと解らないことである。

スピーカーは前2wayの4スピーカーだが、190Eでのリアパッケージトレイのスピーカーは耳に近く不評だった。インパネ前端のスコーカーの音が後席まで届くので不要と判断した。そもそも重低音は16cmのスピーカー追加やデッドニングでは無理だから別途手当する必要がある。

リアセンターアームレストは過去装備された車で使った事が無いので不要と判断した。薄い可倒式のシートバックにアームレストがあるとクッションが不連続となり中央の人間に迷惑である。飲み物ホルダーはコンソール後端に設置した。

フォグは過去3台の車で使ったことが無いし脆弱な補助バッテリーの負担となるので不要と判断した。視覚的にセンチメントを傷つける不愉快な蓋はシルバー塗装した。ハロゲンヘッドランプは暗いとの評判でHIDを用意したが、初期型STのLEDヘッドランプより明るいので装着を猶予している。これは暗いという苦情に対して仕様変更があったのかも知れない。というのはハロゲン車ではLEDやHIDをMOPでもDOPで選べないからである。

遮音のポイント

まずガラス窓内外の下端隅の隙間をスポンジで埋めた。この部分が直接耳に近いからである。ファイヤーウォールはゴムブッシュを通るハーネスの隙間を低粘度コーキングで埋めた。また、エンジンカムカバー樹脂の裏面にフェルト材を貼ったのでカム音は聞こえない。重量増を招く低音透過対策は無視した。

アルミを多用してまで軽量化したプリウスでは、中高音の遮音は隙間塞ぎ、樹脂パネルと吸音材で対策するが、低音遮音のアスファルト系拘束材の使用は最小とする方針が見てとれる。拘束材は重量の割に効果が乏しく、アイドリングでエンジンが停止し高回転しないハイブリッド車では費用対効果が低いからだろう。

HS250hやSAIでは拘束材が増えてるが、重量増のため圧倒的な燃費とはなっていない。もちろんHS250hやSAIでも拘束材の使用は最低限で、内装の隙間塞ぎにスポンジ材が手仕事で貼ってある。遮音はユーザーの財布との相談で決まるのが原則だったが、エコな時代では高級車であっても重量増はタブーなのだ。

アクセサリーの選択ポリシー

せっかくメーカーがコストをかけて軽量化した車をしょうも無いアクセサリーで重くしてはいけない。重量はペイロードにのみ許されるのが原則だが、最低限の装備は必要だ。

オーディオはAUX端子に依存するポリシーとした。普段種種の音源を持ち歩くので、車に音源を固定する必要は無い。オーディオはパネルがはずせるのでステアリング前に設置したいところだ。これで1キロ増。

純正スピーカーには低音を期待せず、デッドニングもしなかった。重低音は助手席下のアクティブウーハーTS-WX11Aに任せたが、しょぼい純正スピーカーも意外と低音が出ている。これがハーネス込みで3.5キロ増と一番の贅沢かも。

ナビ(ゴリラ)は旧式だが地域版が入っているので情報量は十分だ。ETC、セキュリティー、レーダーは旧車から引っ越しでトータル1キロ増。工具は車輪どめ(なぜかオプション)、三角表示、190ファーストエイドキットで3キロ増の贅沢。

しめて8.5キロ増である。なお電源はオーディオハーネスからバッテリー直とACCをワンタッチ式端子板に出力してあるので、いちいちギボシを作る必要もなく変更も簡単である。

情報機器にはUSB電源とAC100Vインバーターを装備し、Willcom03を一台プリウス専用とした。携帯で地図や周辺情報をダウンロードできる時代に単脳重装備ナビは時代遅れだ。

脆弱な補助バッテリー

190Eの補助金廃車の代車のプリウスSTで原因不明の補助バッテリー(容量20AH)あがりを経験した。プリウスにはライト類のオートオフ機能があるのに、である。

翌々朝には電磁ロックも開かずシステム起動しないほど補助バッテリーが弱っていた。おかげでジャンパーによる起動の練習ができたが、常時かなりの電流を食う社外ナビが原因のようだ。システムが起動すれば高圧から充電されるので、僻地ではバイク用密閉バッテリーをバックアップとして用意したいところだ。

アメニティー機能を栄養する補助バッテリーは高圧から自動的に充電されるが、放電するとシステムが起動しない。そのヒューズボックスは前車輪より前のクラッシュゾーンにあるので、、非常時にトラブル通知機能が役に立つかどうかわからない

事故に遭遇した場合には独立電源で防滴性をもつ携帯の方がタフだろう。高圧系統を持つプリウスは冠水等に備えて多重シャットダウン機能があるため、クラッシュや水没ではまっさきに電源がカットアウトされるだろう。

プリウスでは室内灯やパワーウインドーの動作までそれぞれのコントローラー間の通信で制御されている。室内灯は点滅でプリウスの意志を代弁するが、18Wも消費するのでLEDと交換した。ポジションや番号灯もLEDに交換したが、デューティーも低く費用効果が低いウィンカーをLEDにする予定は無い。

コスメを少々

チープなインパネに木目パネルを華美にならない程度に貼っている。MOPで皮革ステアリングとトノカバーをオーダーし、小型コンソール上にはクッションを置いている。変速レバーには皮革を巻いた。キズが目立ちやすい樹脂にはガラス繊維系コーティングしたのでマット面に見える。

ウレタン製フロントスポイラーも用意したがエアダムが低いので様子見とした。かつてRX-7では頻繁にエアダムを車輪止めにぶつけるので紙ヤスリとペイントスプレーを常備していたことを思い出した。アプローチアングルも小さくスパッツがあるなど標準でフルエアロ並なので地上高に要注意である。

タイヤの悩み

GT3のグリップがひどいとのことで17インチタイヤホイールを用意したが、技術が進歩したのかウワサよりまともで、かつてのコンチエココンタクトよりグリップもはるかにマシである。純正ホイールカバーのリム部を塗装することで見栄えが良くなったので、これが減るまで17インチは保留とした。

タイヤのリム上端は走行と同じ速度で逆に動くので、ここの平滑性が高速燃費にパーセントオーダーで効くらしい。ダマシ絵的塗装は燃費とデザインの妥協の産物である。

用意したユーロハートはキャストとしては軽いがタイヤ込み4輪で18キロもの重量増となる。それでも純正の17インチホイールより計4キロも軽いのだが。

メディアによれば乗り心地が悪いとあるが、乗り心地のの悪い車ばかりだったWebmaseterにとって、不快では無い。上級プラットフォームを使い左右ストラットをカウルトップパネルで結合しているせいか、前輪まわりの剛性は高い。後輪のフロアまわりはしっかりしているがハッチバックあたりはヤワな印象があるものの、トヨタ車としては望外の剛性ではなかろうか。

17インチタイヤのSTにも試乗したが、妙に柔らかい乗り心地と段差でドタバタ踊る重いタイヤ、一定舵角を保って旋回中にダイアゴナルにヒコヒコ揺れるのが気になった。なぜツーリング仕様なのに不安定なのだろうか?

これには理由がある。まずツーリング仕様は前輪サスが分離入力のためダンパーブッシュが緩く微少ストロークではダンピングが効かない。前輪ダンパーの減衰力は15インチ仕様とほぼ同じで、後輪ダンパーは15インチ仕様より減衰力が弱いという驚きの設定である。

普通はツーリング仕様の方が足周りが堅いと考えるが、トヨタは17インチでも低速での乗り心地を15インチと同等にすべきと考えているらしい

17インチではコーナリングパワーが高い分だけダンパーが弱いと収束が悪くなるが、プリウスにコーナリングを期待するのが間違いという考えなのだろか?。ここの所はメディアも敢えて書いていない。17インチはコスメ仕様にすぎないのであろう。高度なハイブリッド車を実現する技術力がありながら、何故サスが緩いのか納得がいかない

ホイールデザインはオイルショック以後はディッシュばかりだったが、その後大径スポークがトレンドになった。しかしこの先ガソリンも高くなるので、再度エアロディッシュに回帰するであろう。

実際に大手社外ホイールもスポークが細かく本数が増える傾向がある。またスポーク先端がリムとツライチとなる面積も広くなっており、スポークとディッシュの中間的な形状への変化が予測される

メディアによればステアリングは中立付近が曖昧とのことだが、接地面積が少な目のエコタイヤの特性もあるだろう。実際にはラックの渋さもなく直進の座りもまずまずで、あるいは設定変更があったのかも知れない。

リコール騒動と燃費

この車は一月生産なので、リコール点検はファームウェアのバージョンチェックのみであった。ブレーキは中低速の回生のあと止まる寸前に食いつくような印象があるので、ゆるめを意識する必要がある。しかしこの感覚が許せないというユーザーもいるだろう

快適に動き出したプリウスだが納車以来700キロの平均燃費は冬期の往復12キロ通勤を入れても22km/Lと190Eの3倍にもなる。Lグレードは他グレードより約5%燃費が良いようだ。

写真左端はオドメーター127キロの市内の軽い渋滞、右側は流れの良い国道でのデータで、まだ納車数日でエコ走法をマスターしていない時期でもこの程度の燃費は簡単に出る。

何となく寒い!

問題は寒いことだ。暖機後郊外で調子よく滑走しているとエンジンが停止して寒いのだ。高速でも下り坂が続くとどんどん寒くなる。現在は下グリルを半分程度スポンジで塞いでいるがその効果は確かにある。

さらにニューロ理論を応用したというエアコン様はユーザーの贅沢を許容しない。寒いのでと激しく高温に設定すると、自動的に上からバイレベルの冷たい外気が出て埋めてくれる。このオエアコンはオートモードが点灯していなくても原則的にオートなのだ。

エアコンはユーザー設定が非理性的であれば容赦なくオーバーライドして燃費に理想的な温度として23度あたりを目指すのだ。このためスカートの女性はもちろん男性でも膝掛けが必要である。膝掛けして運転するのは免許とって以来始めてである。

エアコンは次期モデルではプラグインモデルのようにヒートポンプ式が必要だろう。寒冷地仕様には電気ヒーターがつくが、これまた電気を無駄にしないおうにユーザーの自由を許さないシカケになっている。北国のユーザーの苦労が忍ばれる。

この車は禅宗プリウス派とでも呼ぶべきか、ユーザーにもエコ修行を強いる傾向がある。それを許容できないユーザーはプリウスを手放すこともあるだろう。今の所Webmasterは我慢できている。

おすすめのグレードは?

装備に割り切りができ、自分でナビやオーディオの据え付けができ、メーカーのセンチメンタルに責めてくる価格戦略を意に介さないユーザーにはLグレードをお勧めする。グライダーのように軽快で(これは想像だが)いっぱいの風を受けたクルーザーのように軽快な滑走を心いくまで楽しむことができる。プリウスの真骨頂はLグレードにあると思う。

そうで無い方には、SにMOPでフロアアンダーカバー、DOPで皮革ステアリング、部品としてリアタイヤハウスライナーの追加をお勧めしたい。内装は事実上ワングレードでライナーがないとリアタイヤからの透過音を感じるからである。その車の一生の間握るステアリングは皮革がベターだろう。いまどきナビとかオーディオとかは最低限の機能で良いのではないか。

ナビはポータブルナビの方が費用対効果が高い。MOPナビにもハイブリッド状態表示や音声認識、ステアリングリモコンなどのメリットがあるが、走行中操作ができない、視線が遠い、ワンセグがない、機能が古い、そして何よりオーディオ操作にナビ画面から切り替え操作を要するのが問題だ。

個人的には、ナビオーディオ一体機は操作が複雑で車上操作に向かず危険だと思う。HS250hにも試乗したが、エアコンは独自の温度表示を持つ一方オーディオは独自の周波数表示を持たずナビの画面切り替えを要するなど、操作が不統一だった。

システムからの一括処理やステアリングボタンからのオーバーライドを許しながら、それぞれの機能の表示とボタンをわかりやすく並べるのが高級車にふさわしいと思うのだが。コンスーマーズリポーツもパソコン的操作を問題視しているので、この手のUIは近く訴訟に巻き込まれると思う。

ところでこの車につきまとうのが高いスカットルと前傾が強く見切りが悪いデザインである。これは高速で燃費に威力を発揮するが駐車に気を使う。このことだけでプリウスを不可とするユーザーがいても驚かない。

個人的には190Eの廃車補助金や減税などインセンティブがあったが、まだ車が新しいユーザーなら、もっと見切りがよいオーリスやカローラにハイブリッドが設定されるまで待ってもいいのでは無いか? という気がする。電池が潤沢に供給されれば程なく程なく他のモデルにもハイブリッド仕様が設定されると思う。

メンテ契約をどうするか

1年経過しない新型で電子化が進んでいることから、3年のメンテ契約に入った。意外と思われるかも知れないが、複数の目で車を見ることは重要であるし、高度な制御にはバグが着き物だ。

予想通りABSの不具合も発生し、初期型からいくつか仕様変更の形跡があるので、しょうもないオプションに投じるよりメンテ契約に投資と考えた。当然この金額の何割かは値引きが期待できる。

聞けばプリウスに限ってはディーラーの利潤はグレードにかかわらず大差無いそうである。意外なことに装備が少ない下級グレードの方がディーラー取り分は大きいという。マット、バイザーやメンテ契約はディーラーの取り分としては率が良い。

Webmasterはディーラーの取り分を理解している事を前提に交渉をお願いする作戦を好む。ディーラーも人間を抱えている以上、経費と人件費を引いた利潤がゼロであっても仕事量を維持する必要がある。それにオイルやフィルター、ワイパーなどの消耗品も買えばけっこう高い。

Webmasterは今まで同様にプリウスの整備資料を入手したが、知れば知るほど程この車は今までの車とは違う。ライトやウインドーなどの機能もそれぞれが魂をもったコントローラーになっており、通信で繋がることで一括処理をも可能にしている。

以前なら各機器が必要な分だけ電線を引いていたが、インテリジェント化すれば電源と信号線だけですむ。たとえば車後部にはストップランプ、ウインカー、尾灯、ライセンスランプ、ハッチゲート、荷室ランプ、燃料蓋リリース、燃料ポンプ、燃料ゲージ、車高センサーなど多くの電線が来ているが、極論すれば後部通信ハブまで電源一本と差動通信2本あればいいのである。

通信途絶の場合はそれぞれがスタンドアローンで緊急回避動作を行うとともに、コンソールで異常をユーザーに通知すればいいのである。もちろんフェイルセーフの観点からは複数の系統を持つ方が信頼性があり、高級車ほど冗長度が許されるハズだが、某ドイツ車では冗長性が低い(危ない)構成がリコールで露呈している。

プリウスの販売がマルチチャンネルなのは、この車の整備を通じて販売店網の新技術に対するスキルアップを狙っているようにも見える。これからはプリウスはすべての整備の前提となるのだろう。

点検には専用端末TaSCANが必要であり、整備モードに入らない限りブレーキパッド交換すら不具合やエラーコードが残る仕掛けだ(裏技はある)。もっともハイブリッド車はパッドも減らないし整備するポイントも少ない

今後は青歯を使って自宅のパソコンを通じて定期点検を受ける時代になるかも知れない。それは便利には違いないが、それはそれでディーラーが確保した高価な土地、装備と人材をどうするのかトヨタ自身も困るかも知れない

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さようなら190E!のナゾ

ついにその時はやってきた。10年おつき合いした190E(W201、91年12月登録92年式)であるが、ついにプリウスの納車がきまり、お別れの時が来たのである。

この車は前車オペルビータと物々交換である初冬にやってきた。車検証には膨大な整備と部品の伝票がはさまってきた。前オーナーは愛情深く維持されていたが、ヤ○セのエアコンオーバーホールの100万円に近い見積もりで交換を決心されたのである。

といっても、ヤ○セで働いていた友人の整備士はエバポとコンプレッサー(デンソー)は入手可能で、さほど金額は要さないのでは無いかとの意見であった。時期が初冬でコンプレッサーは回転していたので、夏までに修理をする積もりで190Eは我が家にやってきたのである。

ヤ○セへの膨大なお布施と9年で5万キロという過小走行のせいで、エアコン以外に大きな問題はなかった。冷却ホース類、水ポンプ、サーモスタット、ステアリングのアイドルアームブッシュなどは交換されていた。最初の夏はリーク防止剤とガスチャージで凌ぎ次の冬に抜本的なエアコン修理を計画したのである。

まずエバポ+エクスパンションバルブは純正OEM先のものを3万円以下で輸入することができた。この際に多くの消耗部品を同時に輸入した。コンプレッサーは運のいいことにヤフオクで純正新品を4万で入手できた。W201かW124のオーナーが放出されたのだろう。

ベンツのエバポ交換はインパネ全部をはぎ取る大仕事で有名だが、190Eに限っては旧ミディアムクラスと同様にエンジンルームからエバポが交換可能である。車検時に電装品が得意な整備士によってエバポ、コンプレッサー、ドライタンク、高圧スイッチを交換することでエアコンは完治したのである。

その後は今回の廃車まで2回のガス補充したのみである。ベンツのエアコン配管に多数存在する継ぎ手のOリングから微量にロスは初回のシール剤が効いたようである。

W201とW124はバブル期に多数販売され、熱心なオーナーがネットで情報を提供している。またF&Fのwebmasterからも整備資料をいただいたせいで、不具合と修理はすべて想定内で済み、予期せぬエンコは後述する1回だけだった。

7万キロの間、部品交換はエアコン関係、ジョイントディスク、タイロッド片側、ミッションマウント以外は自宅で行っている。

交換部品

エバポ(個人輸入 OEM品3万)
エクスパンションバルブ(個人輸入 OEM品0.5万)
エアコンコンプレッサー(純正ネット 4万)
エアコンドライヤー(車検時 1万)
エアコン高圧スイッチ(車検時 1万)
前後オイルダンパー(後純正ネット2万、前モンロー3万)
タイロッドジョイントラバーブーツ(純正品 1万)
サスアッパーマウント(OEM品 2万)
ディスビキャップ(個人輸入BOSCH 0.5万)
オーバーボルテージリレー(ネット社外品 0.8万)
ブレーキパッド前(タクティ社外品 1万)
ヒーターバルブ(純正 2万!高い)
ラジエーター(純正新古品 2万)
ジョイントディスク(車検時 社外品1.5万)
ミッションマウント(個人輸入OEM品 0.5万)
ヒューズ類(純正 0.3万)
ATリンケージブッシュ(純正 0.5万)
エンジンフードインシュレーター(社外 0.3万)

分解修理補修

ルーフコンソール内張のフックはがれ(補修)
両バイザー基部樹脂割れ(補修)
パノラマワイパー(伸縮機構キャンセル)
パワーウインドモーター水没(分解注油)

改造変造

エアコン加速時カット(水銀スイッチ)
オーディオAUX端子増設(カセット機構とりはずし)
本木製ATノブ交換
本チーク材インパネトリム追加
カウルパネル遮音処理(隙間塞ぎ)

廃車2ヶ月前に初めて路上エンコでヤ○セまでレッカー車移動となった。原因は電動燃料ポンプ故障だった。通常は止まる前に異音が出るとのウワサだが、前触れもなく止まることがあるらしい。

自宅には純正と同じBOSCH製ポンプと燃料フィルターを在庫していたので部品は持っていると言ったところ、建前として持ち込み修理はできないが料金は勉強するとのことだった。

整備状態が良いとのことで、ヤ○セへのお布施は奇跡的に部品第込み諭吉5枚で済んだ。エンジンルームの状態で工賃は変わることがあるものだ。といっても無精なWebmaterはエアクリーナー、カムカバー、コーションプレート表面のホコリを拭いただけ(1分の作業)だが、諭吉数枚の効果があるので整備に出す前にお勧めしたい。

支払い後に、この車がちかじかプリウスに更新されることを告げると整備士は寂しそうであった。何でもクラスレスのプリウスに高級車の客を取られるケースがあると言う。

当然ながら経年のうちにオイル、フィルター、ATF、クーラント、バッテリーなどは交換している。オイルは10W-30と20W-50を半量混ぜていた。こうするとエンジン音も小さくブローバイも激減した。水温と油温が高い190Eにはメーカー指定の南国向け固めのオイル指定を守るべきである。

またクーラントは毎年交換とした。これはベンツで多いヘッドガスケット腐食対策である。純正クーラントは防錆力が弱いのでトヨタ純正を使った。ATFはWAKO'sのデキシロンIIを毎年交換した。残る重大故障の可能性はエンジンとAT本体であり、これを避けるために新油新湯を潤沢に交換した。

このあたりはタクシー整備を参考にした。タクシーではクーラントとATFを毎年交換することで30万キロ水ポンプやATを交換しない例があるという。メーカーは廃棄物減少が義務なのでインターバルを伸ばしているが、少量の廃棄物増加でも最大の廃棄物である車両の寿命が延びることで相殺できると思う。

以上のようにエアコン大修理以後は国産車と同等以上の信頼性、メンテ性、経済性があった。特筆すべきはシートと車体剛性、塗装の耐久性である。

シートは19年12万キロを経てもヘタリが無く助手席と殆ど差が無かった。表皮のウール100%にも全くすり切れがなく、調節機構も堅いままであった。このシートだけでもプリウスに持っていきたいところである。

車体剛性は極めて高く、少々の段差ではミシリとも言わなかった。塗装も厚く、錆びは左ドア下端の縁石に摺ったところとウインドウォッシャータンク周辺だけにうっすら見られただけだった。

サスのブッシュ類がベンツの弱点と言われるが、190Eのブッシュ類はスグリが無いソリッドなもので、太いタイヤを履かない限りは強い。後期型は車重のあるW124と部品が共通化されおり、車重が軽い190Eでは無交換で済んだ。逆に基本設計が同じEクラスではブッシュは車重のために痛みやすいようだ。

タイヤは当初純正のコンチエココンタクト(185/65/15)だったが、耐摩耗性が高い代わりにウェットグリップが最低で何度か怖い思いをした。その後の横浜のAspec(195/65/15)は耐摩耗性もグリップも標準的で悪い印象は無かった。

もともと6気筒のエンジンベイに4気筒を後ろ寄りに収容しているので整備は容易だった。エンジンが軽いために回頭性が良く、リアマルチリンクはアライメントを終始トーインにコントロールするので、初代RX−7のような突然のブレークは起こりにくかった。

馬力は無いものの、僅かなフェイントや重心変動で安定したテールスライドに持ち込むことも可能で、タイトコーナでは頭を中心にリアをキレイに回すことができたが、大きめのステアリングの操作は忙しかった。

結論としては長持ちするには、設計にムリがなく、馬力や重量に対して車体に余裕があり、塗装も厚く整備情報も豊富で、補修部品が潤沢に供給される事が重要である。また油脂やクーラント類は贅沢に交換すべきであろう。

一方、余計なアクセサリーや重量増加、必要の無い改造は避けるべきである。この車はジムカーナにも出場したが、タイヤなどの重量物を降ろした後の走行は驚くほど軽快で小さな車を振り回しているようだった。やはり動くものは須らく軽くあらねばならないのである。グレードは不要な電子装備が少な目の売れ筋かその一つ下を狙い、常に重量が増えないように目を配ることは人間と同じである。

この方針から、オーダーしたプリウスは当然ながら燃費と軽量化のスペシャルモデルのLグレードである。史上最も電子化が進んだ車である点が不安材料ではある。

当初Webmasterは一生190Eを維持する積もりだったし、作りの良さや部品の供給状況からしても荒唐無稽な話では無いが、時代は流れハイブリッド車という過去に無かったメカが登場し、世の中のルールが変わったのである。ある意味傑作車である190Eの代替は革新的なプリウス以外あり得ないとも言える。

190Eは補助金25万との引き替えに家族と記念写真撮影後にドナドナされて行った。さて次なるプリウスはどういう運命をたどるのだろうか?190Eのような長寿を全うできるだろうか?それともさらに厳しい技術変革の中で短い製品寿命で終わるのだろうか、あるいは予想外に長い寿命を持つのだろうか。請うご期待である。

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新春変造40Wサークラインよ、さようならのナゾ

新春と言っても睦月も後半となった。あいかわらず更新もサボってピアノを弾いているWebmasterである。

新年からBallade1番の譜読みに入ったが身が入らず、受けの良いScherzo2番の仕上げに苦心している。思うように指が動かないだけでなく、長いこの曲のフォルテッシモ続くコーダの部分でくたびれてしまうのだ。あるピアニストが難曲のためにランニングしていると語っていたが、Webmasterも最近はエレベーターを使わないようにしている。

一方で、浅田真央さんが使っているRachmaninovの鐘Prelude Op. 3 No. 2やPrelude Op. 23 No. 5Скрябин(Scriabine Etude Op 8 No 12)もつまみ食いしたいのである。個人的に東欧やロシアのエΘニックかつ中近東のかほりが漂う曲が好きである。

ピアノを弾いていて気になるのが蛍光灯の安定器(バラスト)の音である。我が家には30W/40Wのサークライン(某メーカー商品名)が2台あるが、どちらもバラストがジージー鳴ってうるさい。そして鳴るのはかならず40W側である。

さらに規格上は同等のはずの40W管の寿命は明らかに30W管より短い。そもそもサークライン管の寿命は直管の寿命約12000時間(標準スターター仕様)に比べ半分と短い上に全光束が低く、価格もボッタクリ的に高い。店頭では主として30W/40Wの抱き合わせで販売されるが、40W管の寿命が短いので手元には未使用の30W管ばかり余っている

40W管は30W管より放電条件が厳しいために寿命が短く、バラストの負担も重いようだ。この問題から逃れるためには、二度とサークラインの40W球を買わないことである。

電気屋ではバラスト式より高能率なインバーター式が売られていて、触手が出そうになるが、写真のように周囲に木製(フェイク)風飾りのあるデザイン物は理不尽に高い。

この際、抱き合わせ販売から脱却し、しかも廃棄物を出さないためには現在の筐体を生かし、サークラインを電球型蛍光灯に換装するのが良いのでは無いか?

そう決まれば作業は簡単だ。まず配線だが、管球のソケット側から追うのがわかりやすい。管球端子のうちグロー球に行く2本は無視してカットし、残りの2本の出所を追って片方は直接ACへ、片方はバラストをバイパスしたポイント、つまりACからスイッチを経由した所に接続すれば良い。バラストの片側に3本ターミナルがあるが、うち2本は単なる中継端子で、一本だけが本物だ。

バラスト式の40W球の効率は低く、明るさは一般的な12W電球型蛍光灯の約2本分強に過ぎない。もちろん明るさが必要であれば何本でも並列につなげばよい。

注意を要するのは電球型蛍光灯のチョイスで、管球にガラスがかぶさっているものは効率が10%ほど低く寿命も短い上に、点灯直後が暗い傾向がある。これは管球が高温になるためにそれをカバーするためのアマルガムが多く、安定するのに時間がかかるのである。やはりハダカのものが良い。

管球もまるべく周囲に大きな面積で露出しているものがいい。電球型を模した巻きの径が複雑なものより均一で、口金からの距離が長めのものが効率が高い。カバー内が高温になると管球もインバーターも寿命が短くなるので有る程度の換気が必要だ。この機器の場合は、カバーが密着するところに隙間テープを2箇所貼って隙間を空けてある。

電球型蛍光灯のソケットは40W球の支持板にタイラップと接着剤で固定した。このあたりのアレンジは好みに応じて工夫して欲しい。

この変造によって事実上は無音となった。30W球は従来どおり残してあるが、こちらは以前から殆ど無音なのでとくに影響はないし、スペアも余っている。副次的な効果としてピアノのフォルテッシモで管球支持部が共鳴していた雑音も消失した。

どうやらメーカーはインクジェットプリンターみたいに、機器を安価で提供してカルテル的な価格システムの交換用管球、特に寿命が短いサークラインで儲けるストラテジーのようである。そのためか、ヘンテコなサイズや細い管球を増やしているが、その手の変化球商売にうかうか乗っていはいけない

かつてはそういうデザイン物の管球にもそれなりの存在価値はあったのだが、今はさまざまな電球型蛍光灯でいかようにもデザイン可能だから、存在価値は乏しくなったのである。

かつてWebmasterはマンハッタンのカナルストリートに照明機器の買出しに出かけたことがある。そこには新品からアンティークまで驚くほど多彩な照明器具が売られていたが多くは電球用であった。そもそも欧米では蛍光灯は洗面所かトイレ、通路や倉庫など、人間が居住しない部分で使うもので、リビングルームでは使わないのだ。

さらに、連中はシーリングという天井に密着して直接人間を照らすような機器をリビングルームでは使わない。かなり暗目の部屋で、必要なところに上向きに照明するスタンドかペンダントタイプ、机の上は緑ガラスの傘を持つ読書灯を使うのである。

当然ながら、蛍光灯も直管と30Wのサークラインしか見かけなかった。要するに変化球商売は日本に特有なカルテルシステムで、光度も必要以上に明るすぎるのである。さらにカタログ規格の寿命時間は品種やメーカー間で横並びだが、厳然として寿命には差がありこの手の情報は信用できないことも強調しておきたい。

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