技術関連の日記 / (2)
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2.【 オーディオの神様の本 / 8ヶ月更新しない間にこんなことがあった(1) '07/03/13 】 [拡大画像あり]
高城氏のリスニングルーム
7月下旬、mixi のトップページの写真を変えた。それまでは国立駅の近くにある飲み屋の看板だったものを、「いまさら大学時代の思い出でもあるまい」と思って頭に浮かんだ図柄をさらさらっと描いてそれに換えたのである。飽きたので模様替えといえばそれまでだが、わざわざイラストを描くなんて高校以来である。そんな気分になったのがとても不思議だった。
またそのころから、音楽をいい音で聞きたくなった。考えてみると20年くらい前からステレオが無い生活をしていた。1年位前に1万円で中古のコンポを買ってみたものの、たまにFMを聞くくらいで、しかも音質がどうこう言えるような代物ではなかった。いままで引越しに付き合ってきた30年以上前のスピーカーはあったのだか、中古のアンプやCDデッキを買い揃えてつないでみたものの、思ったように鳴ってくれない。スピーカーについては古いものだからもう諦めかけていたのだけれど、実際鳴らしてみるとかつて楽しんだ好みの音が、そこそこ再現できた。それでもうひといき、もうひといきと深追いしていくうちに、グラフィックイコライザーまで買って細かな音質調整まで始めてしまった。

実はそのころにはうっすらと、いまさらステレオにはまることになった原因が頭に浮かんでいた。それはステレオにはまる以前に古本屋で買った本のことである。
その日はめずらしく、音楽関係の本が何冊かまとまって店頭に並べてあった。私はこんなときいつも「どなたかの遺品が処分されたんだな」と思ってしまう。井口基成やL.クロイツァーの演奏法の本などの中にイェルク・デームスの本があって、手に取ってみるとところどころページの耳が折り込んだままである。その部分を読んでいくと、調律師がこんな仕事していただとか、ピアノの構造について説明してあるところとか、ちょうど私なんかが面白がるところのページが折り込んであって「いったいどんな人が持っていた本なのだろう」ということが気になりだした。
よく見るとその本には「73.4.19. S.Takajo」というサインがあった。「タカジョウ?」どこかで聞いたことがあるし、確かに知っている名前だがどうしても思い出せない。でも私と同じ興味を持って私の前を歩いて行った人に間違いないのである。とにかくそこに並べてあった本をそのままそっくり買って帰ったのである。 帰宅してネットで検索してみてびっくりした。「S.Takajo」とは、どうもあの「スタインウェイ物語」(ラジオ技術社)という本を書いた「高城重躬(たかじょうしげみ)」氏のことらしいのである。

私なりの解釈だしうまく説明もできないのを許していただくとして、高城氏は自宅の一室でスタインウェイ・グランドピアノの音を録音し、それをステレオセットで再生することを繰り返すことによって「原音に忠実な再生音」の最高の粋に達するシステムをつくりあげたオーディオマニアの神様のような人である。
私がその名を覚えていたのは、調律師を始めた頃にその本を読んだ記憶があるからだ。たしかスタインウェイのフルコンを買ったいきさつや、それが自宅に届いて技術者が調律や調整をしに来たときの様子が書かれていた。特に調整をしに訪れた技術者は真剣に黙々と仕事を続けていたようで、高城氏も話しかけるのをためらった、というような記述があったように覚えている(あとでその技術者を派遣した楽器店について確かめたことだが、そこでは「調律師」の他にピアノ調整専門の「整調師」と呼ばれる技術者がいたとのことであった)。

ある世界で神様と呼ばれた人が手にしていた本をいま自分が手にしているのである。それも手元において執筆の参考にしたであろう大切な本なのである。その本にはまた、自分と同じようなところに興味を持っていた故人の姿が、書き込みや折ったページの耳として残っているのである。古本屋の一冊の本から、先輩が手探りで道を切り開いていった姿を見せつけられた思いである。本当に頭が下がるし、自分の不勉強が恥ずかしい気分にさせられる。この本がちらちら目に入るとそのたびにため息がでてしまいそうなので、本棚の端の目立たないところに隠させていただいた。ごめんなさい、私は勉強は苦手だし嫌いなので必要最小限にしたいほうなのである。でも結局この本がきっかけでステレオが復活し、音楽を聴かないという不真面目な態度を改めることになったのである。
3.【 ハンディ・アナライザー / 8ヶ月更新しない間にこんなことがあった(2) '07/03/13 】 [拡大画像あり]
ハンディー・アナライザー
各人の音の聞こえ方には差があるし、実際のところ同じ一つの音を聞いても、他人にはどんな音で聞こえているのか知ることはできないと思っている(あるピアノ演奏法の本に、音のイメージについてはいくつかの種類しかないように書いてあったが)。

ステレオ機材をそろえる過程で、たまたまネットオークションでハンディ・アナライザーを見つけた。測定用のマイクと分析器が一体になっていて、その場で分析結果が液晶画面で確認できる。どんなものか調べてみると元々はカーオーディオの測定用だったものが、自作スピーカーの測定用としてもよく使われていて、その測定結果もある程度信頼できるので専門家も雑誌に引用しているらしい(もっともパソコンが普及する以前のことであるが)。それならということで「高いなぁ」と思いながらも購入した。周波数的に凸凹のない状態がどんなふうに聞こえるのか確認してみたくなったのである。

測定用の音源CDを操作しながら測定してみると狭い畳の部屋のせいだろう、低音・高音とも思ったよりも吸音されているのでイコライザーで凹んでいる周波数を持ち上げてみる。初回の調整で見違えるほど(聞き違えるほど?)良いバランスになった。ピアノの場合、どうも特定の周波数のちょっとした加減でずいぶんイメージが変るらしい。何回か調整を繰り返して30年前のスピーカーも思ったように鳴ってくれるようになり、昔聞いていた音がよみがえった。

このハンディ・アナライザーはなかなか優れものであった。現在は販売終了なのでネットで買うしかなさそうであるが、値段はちょっと高い。同じことがパソコンと音響分析ソフト・測定マイク・簡単なアンプ(ミキサー)を使ってもできるし、そのほうが厳密な測定ができそうだ。しかも測定データの蓄積も簡単である。パソコン本体を除けば費用も似たようなものである。でも結果的に、私の用途にとってはコンパクトであることがなにより好都合だった。自動車に乗らない私が調律工具以外に携帯するとなるとこれくらいの大きさが限界のような気がするのである。

またステレオを調整しているうちにこうした分析の方法が、ピアノの音質確認に使えるのではないかと思い始めた。まだノウハウも何もないのではなはだ無責任な話だし、もちろん液晶画面をみてどんな音が出ているのかを想像することは全くできないのだが、たとえば「整音」(ハンマーに針を刺して音質を変化させる作業)で、何回も自分の作業をチェックしているうちに、音の変化と針の刺し方の関係をより正確にイメージできるようになるのではないだろうか。

どれぐらいの微妙な記録ができるのか、実際に通常の音とソフトペダルを踏んだ音の両方を記録してみると、はっきりわかる程度に記録できている。また、ソフトペダルを踏んだ音が単純に高いほうの周波数が減ったというようなものではないらしいこともわかった。
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