ピアノ技術 / (6)
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14.【 2号製作 - アクション(2) '02/11/14 】
 次に製作するのは音源になるアルミパイプをたたくハンマーにあたる部品です。これも前回の部品同様、専用の治具(C、D)を使って材料となる板を何枚かトランプのように重ねて一度に整形します。
< バイスに固定した治具 >
バイスに固定した治具
加工中は右の写真のように重ねた材料を治具ごとバイスにはさんで固定します。また固定するときには加工する面に合わせて治具の底面の角度を選び、治具をはさみ直しながら何回かに分けて加工します。この方法では一度にできあがる部品の数はバイスを最大に開いてその間にはさみ込める、材料となる板の枚数に限定されます。
今回の部品材料となる板は前回の部品の材料の板より薄いため、前回一度に13枚しかバイスにはさめなかったのに対して今回は21枚はさめます。したがって一度に整形できる部品数も、13個から21個に増えるため、一台分・37個の部品を作るのに前回の部品の場合は最低3回、今回の部品では2回で済みます。
< 写真1 >
写真1
写真1は、実際に中にはさんだ材料を削り終え、整形した後にバイスから取り外した治具Cです。
< 写真2 >
写真2
さらに治具から材料を外すと、次の写真2のようになります。 写真2では、重なっている板がぴったり同じ大きさなのでブロックのように固まって見えますが、実際は21枚の板に分かれています。
< 写真3 >
写真3
次に材料の板をこのブロック状のまま、写真2で右になっている面を上にして治具Dにはさみなおします(写真3)。
< 写真4 >
写真4
さらに加工を続け、加工後に材料を治具Dから外すと写真4のようになります。

この部品の最終的な形は写真4の治具の下に見える図面のようになりますが、この段階ではまだ完全に整形が終わっていなくて、材料に一部切り取られていない部分が残っています。
これは残っている角の部分が、この部品の加工の基準(寸法を測る元になる点)になっているためで、この後もこの基準に従って行なう、穴あけなどいくつかの加工が残っているためです。
< 写真5 >
写真5
その他に木材から製作した部品として前回製作した部品のためのフレンジという部品があります。

右側の写真5の一番上に前回製作した部品が直立した状態で写っていますが、その台になっている部分をフレンジと呼んでいます。右の写真のような状態で前回の部品の下端をそのすき間にはさみ込んで、自由に回転できるように横から軸となる細いピンを通すための部品です。

この部品は板材から製作するのが難しかったので、断面が一辺10mmの正方形の棒を必要な長さに短く切った物を数十個用意し、それを一つずつ加工しました。この部品は前回製作した部品と組み合わせた時、すき間ができないようにすることと、前回の部品を垂直に立たせることができるようにすることが一番大事なので、この部分はミーリングマシンでバラツキがでないように注意しながら加工しました。

木材の場合、どうしても木目の影響で加工してから寸法が変化する、つまり一部を切り取ってしまうとバランスが崩れてねじれたり、反ったりしてしまうものなのですが、まあまあ満足のいくものができあがりました。

さて金属はそういった変化の起きる心配のない材料ですが、カンナやノミといった刃物を受けつけないので、木材に比べるとその点ではちょっと加工に手間が掛かったりします。その金属、アルミで製作する部品が今回のアクション部品の中には二つあります。その一つが以下の部品で、見た目は単純な形ですがとても大事な役目を果たすことになるので、それについて簡単に説明します。

・ ウイーン式アクションとイギリス式アクション
今回製作している方式のアクション(音源を打つ機構)も、現在普及している方式のアクションも同じ位古くから、起源としてはピアノの創世記からあったものです。実際の起源となる場所というより、それぞれの方式を採用した有力なピアノメーカーの所在地が名前になったといった方が良いと思われますが、前者はウィーン式、後者はイギリス式と呼ばれていました。
現在普及している方式のアクションはイギリス式が元になっていてウィーン式は全く姿を消してしまいましたが、かつてウィーン式にはイギリス式よりも高い評価を得ていた時期(19世紀前半)がありました。しかしその世紀半ばを過ぎるとその支持もオーストリア・ウィーン周辺だけになり、19世紀末にはそのウィーンの有力なピアノメーカーでさえその生産を終了したという経過をたどっています。
その一方でイギリス式アクションには、1821〜40年頃にかけて画期的な改良が加えられました。その改良の結果、一度打ち下ろした鍵を一番はじめの高さ、つまり手を触れないで静止している鍵の高さまで戻さなくても、ある程度の高さまで戻せば連打、または再び鍵を打って音を出すことが可能になりました。この改良がウィーン式には加えられなかった、それがウィーン式の急激な衰退の一番の原因だったと推測されます。

話をアルミの部品に戻します。この部品にはそのときのリベンジがかかっている、というと大げさに聞こえるかもしれませんが、そのときのイギリス式の改良に等しい効果を今回製作中のアクション(ウィーン式)に与える部品だといっても過言ではなく、そう表現すればこの部品の重要さがわかって頂けると思います。
< 写真6 >
写真6
左写真6の一番上は完成した部品で、その下は元になった図面です。作り方は上から順を追って写真を並べてあります。

最初にチャンネルと呼ばれる、断面がコの字型をしたアルミのレールの一方の端に二つの穴をあけます。

次に定規を使って部品の形を細い油性ペンで書きこみます。

油性ペンの線にしたがって金属用ノコギリ、ヤスリで形を整えます。

油性ペンの線を落とします。たまたま指を突っ込むとマニキュアが落とせるという便利グッズがあったので大いに役立って頂きました。一瞬で落ちます。

細かいところの仕上がりを確認し、修正します。

小さな部品なので(写真横の長さが32mm)うまく細工できるかどうか心配でしたが、長いレールのまま一方の端を加工し、形を作ってから切り落とすという方法で思ったより楽に作ることができました。
まだ一台分に満たない数しかできあがっていない部品もありますが、ある程度の数をまとめて確実に作る方法が見つかったことで少しほっとしています。

追記 :現在楽器の製作は中止しています。新しい楽器を一日も早く紹介したいと思っています。'08/10/20
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