移動局50Wの免許を持つ私としては、小ゾーン式PHSには疑問があり、携帯端末もあるのであまり興味が無かったが、端末も加入料もロハで良いとのことで研究用にA171を入手した。
ちょうど文書の電子化での問題点(文書を持ち歩けない)が認識されていたので、構内PHSでモーバイル電子文書が可能かどうかのトライアルを始めた。うまく行けばSQLサーバーのCGI連携WWWサーバーの文書と画像を、通常のWWWブラウザーで参照可能になる。またサーバー上の情報もプレゼンテーションレイヤーがhtmlであれば参照可能になる。そんな訳でPHSを用いたインターネット接続をトライした。結果は右図のごとくモーバイル端末で画像データベースの参照が可能になった。
1.PHS電話機。ここではD社のPS-501(Kセラ製)もしくはA社のA171(T芝製)。受信音量は最小。モデム通信設定があればON。
2.セルラーケーブル。IB*社製セルラーケーブルキット(ID#07G3319)は市価約6000円と高いが価値がある。JATE認定シールと日本語Procommと3270PCのライブラリーソフト付きの業務用。A171の電界強度を見るとケーブルのPHS近くにノイズフィルターを入れた方が良いようだ。
3.カードモデム(PCMCIA)。Megaher* XJ2144-81(14.4kbps)。14.4kbps以上は不要なのでこれでOK。後述するが、かなり製品を選ぶようだ。MegaHerz社が評判良い。
4.Windows95が走るノートパソコン。ここではDE*社製のHinote-Ultr*。基本的にはWin3.1でもMacも可のはず
5.プロバイダーの口座。ここではBekkoame福岡
手順としては有線電話でのBBSへの接続が成功したら、有線でのダイヤルアップPPPの接続を設定。次にPHSを通じてBBSに接続が成功したら、最後にPHSを通じてダイヤルアップPPPを設定する。Good Luck!!!
2.Win95のハイパーターミナルで、モデムを有線で適当なBBSに接続できることを確かめておく。Win95が良い理由はPCMCIA設定が簡単なこと。Win3.1やMacではPCMCIA関係はやっかい。
4.マイコンピューター、ダイヤルアップネットワークフォルダー、新しい接続をダブルクリック。接続の名前をつけ、モデムの選択で正しいモデムが選ばれているかを確認。次、でダイヤルアップPPPの電話番号、国番号(日本)を指定。次、でいったん完了。
5.作成した接続を右マウスクリック。プロパティーで再度電話番号、国、モデムを確認して、サーバーの種類をクリック。
6.サーバーの種類が"PPP;Windows95 WindowsNT インターネット"であることを確認。詳細オプションでチェックするのは、ソフトウェア圧縮をする、TCP/IPの2つだけ(雑誌の説明はよく間違っている、動くが時間を無駄にする)のみ。
7.TCP/IP設定をクリック。福岡Bekkoam*の場合、サーバーが割り当てたIPアドレスをクリック。次にネームサーバーアドレスを指定をクリックし、DNSサーバーアドレスを入力。IPヘッダー圧縮を使用,とリモートネットワークでデフォルトのゲートウェイを使用,をチェック。
8.これで有線でダイヤルアップPPPでの接続を確認しておく。そうそう、作成した接続を始動する時にダイヤルのプロパティーをクリックし、ダイヤル方法をトーンかパルスか正しく設定しておく。もしうまく行かないときはここを参照して下さい。
1.モデムの説明書を見てダイヤルトーン(受話器をとったときのツーという音。PHSでは通常出ない)とビジートーン(お話中のプー、プーという音。PHSでは設定によりこれに似た音を出す端末があり、モデムがお話中と勘違いして切れてしまう)を無視するコマンドを調べる。このモデムではATX1。
通信速度を9600bps以下に指定。このモデムではATF8。さらに、オートモード解除(通信速度はこちらのモデムにあわせる)の指定のATN0。これらを合成してATX1F8N0を、コントロールパネルのモデムのプロパティー、接続、詳細設定の追加設定に追加する。また、シークエンスを耳で確認するためモデム音量を最大にしておく。
2.Win95のハイパーターミナルを始動。適当な接続名をつけてBBSの電話番号を入れ、接続。このときにPHSには電話番号を入力しておく。ダイヤルする音が聞こえた後にすばやくPHSの通話ボタンを押す。ターミナルでconnectと出ればつながっている。あとは通常の有線のBBSと同じ。この絵は、Bekkoam*の有線BBSにつないだ所。
2.作成したダイヤルアップ接続のプロパティーを開き、電話番号は(シャープのPHS以外では役にたたないが)設定しておく。これはPHSの通話ボタンを押すのタイミングを見るため。
3.接続のタブをクリック。接続の形式は標準のまま(8bitパリティー無し、1stop bit)で、接続オプションでトーンを待ってダイヤルするのチェックをはずす。ダイヤル時の接続タイムアウトのチェックもはずしておく。
4.次に詳細設定をクリック。エラー制御を使う、データの圧縮、フロー制御を使う、ハードウェア(RTS/CTS)をクリック。ここでの追加設定が重要。
ダイヤルトーンを無視、ビジートーンを無視するためにATX1。通信速度を9600bpsに指定するためにATF8。さらにオートモード解除(通信速度はこちらのモデムにあわせる)の指定のためにATN0、で追加設定の所に、ATX1F8N0、と指定。この部分はモデムによって変わる。セルラープロトコール(MNP10)を使う、をクリックしたくなるがプロバイダー側モデムがサポートしていないらしくうまくいかないので、クリックしない。追加設定は、コントロールパネルのモデムの追加設定と独立しているので、再度設定し確認しておく。
接続のプロパティーの設定のオプションで、モデムの状態を表示、をクリックしておくとWin95のタスクバーにモデムの送受信のランプが表示されるので、インジケーターの無いカードモデムでは便利。
接続
5.さて接続。作成した接続をダブルクリック。ユーザーネーム、パスワードを記入。PHSの方は、PPPの電話番号を入力しておく。Windows95側の接続をクリックした後、モデムが送るダイヤルトーン(ピポパ、DTMF)がすんだらPHSの通話ボタンを押す。
6.電波状況とタイミングさえ良ければ、ダイヤル中、認証、9600bps(CCITT V.32)で接続となるはず。つながらないときはタイミングをチェック。モデムがダイヤルトーン(ピポパ)を送ったら、すぐにPHSの通話ボタンを押す。ATX0で話中の音を検出しない設定にしているのでお話中に注意。プロバイダーのモデムに接続し、ピーというアンサートーンがして、ピーシャーとネゴシエーション(お互いのモデム通信速度の調停)が始まる。次に一定のシャーという音になったらconnectしてモニター音は消える。
ダイヤローグがダイヤル中からユーザー認証に移る。connect後、モデムの送受信インジケーターがチカチカしていればプロバイダーの認証までは来ている。そして、**bpsで接続、と出る。うまく行かなかったら、上のシークエンスをチェック。Macでも同様にモデム設定と、モニター音を参考にして通話ボタンを押せばうまくいくと思うが試していない。下記リンクを参照して下さい。
Win95のtcp/ip転送速度表示で、文字では1.8kbyte/sec(圧縮1.86倍)、画像で1.2kbyte/sec(1.25倍)出ている。tcp/ip転送速度計はWin95のCD-ROMにおまけでついてくるが標準ではインストールされない。インストール方法はここを参照のこと。
14.4kbpsでも、エラーのためtcp/ipやCCITTのエラー訂正プロトコール(ITU-TV.42やMNPclass4)で再送していればトータルの接続速度で損をする。本当に14400bpsの速度が出ているかどうか、tcp/ip転送速度を計った。
文字データではピークは2.5kbyte/sec(圧縮1.73倍)。画像データ(gif)ではコンスタントに1.8kbyte/sec(圧縮1.25倍)で、安定した転送速度が得られ、1時間以上の連続接続が可能。9600bps時と日時、トラフィックが違うので単純に比べられないが、14.4kbpsの性能が出ている。14.4kbpsには電界強度は縦棒3本欲しい。
次に自宅から14400bpsを試してみた。PS-501の表示は縦棒2本で不安があったが、これも一発で接続された。このときのモデムはMicrocomV.34ES2だったので追加命令は、ATX1+MS=11 1 300 14400となった。グラフはニュースを読んだときの物で文字データが主体。
tcp/ip転送速度は、文字データでピークは4.5kbyte/sec(圧縮3.15倍)。画像データ(gif)は1.8kbyte/sec程度で、1時間以上安定して接続が可能であった。ピークが高いのは単純にネットワークのトラフィックの問題であろう。
世間では14.4kbpsの専用PHSと専用カードが発売されたようだが、14.4kbpsなら専用モデルは必要ない。PS-501 縦棒3本、IB*社セルラーケーブル(これがミソ)にMegaHerzの組み合わせであれば安定している。おそらく送出レベル、減衰量、インピーダンスマッチング、周波数特性、ノイズ特性とノートパソコンのノイズ分布などの相性がいいのだろう。どれか一つでも条件が変わるとうまく行かないかもしれない。D社経由のPS-501は14.4kbpsは楽勝であるが、A社経由のA171は電波状態によって不安定であった。概してアンテナがプアで感度が悪く会話品質の悪い端末は、インターネットには向いてない。
PソニックのCF-JMD101では各種設定をいじったが有線ではOK、PHSではダメで、MegaHerzのXJ-4336J-Pではいとも簡単にうまくいったという報告があった。うまく行かないときは手持ちの他のモデムを試すのも手である。おそらく細かい設定や送出レベルの問題だろうが、送出レベルに関してはユーザーがいじると法規に触れる。何度も書くが、モデムは仕様が同じでも性能は様々である。少々高くても実績のある物をビギナーには勧めたい。
またプロバイダーによっては、ダイヤルアップスクリプトが必要。そのときはここを参照。
もしモデムの速度が仕様通り出ない場合は、電波強度を見る。次にPHSでホストにかけてみて自分の耳で通話品質を確かめる。その次にノイズを疑う。まずPHSとパソコンをなるべく離す。ケーブルは液晶パネルから離す。デジタル的には問題なくても、PHSやモデムのアナログ回路はノイズに大変敏感である。
セルラーケーブルにフィルターを入て場所を動かし、電界強度(無ければ縦棒の数)を観察するのも良い。周波数が1.9GHzなので、1ターンせずにただ通すだけで十分効果ある。高周波的にはケーブルはイヤホンジャックからPHSのアース(GND)を引くので、カウンターポイズとして働く。ケーブルの取り回しやフィルター位置により、PHSの高周波的条件がコロコロ変わる。
PHSが供給する偽の電話線はインピーダンスが本物より高くノイズを引きやすい。パソコンからのノイズがモデムを介してPHSに行く。また液晶パネルやキーボードからもノイズが行く。細かいノイズ対策の有無で仕様性能は同じでもつながるPHSとそうでないPHSが出て来る。モデムとノイズについてはここを参照。
7.あとはNetscap*やMSインターネットエクスプローラー(MSIEJ20.EXEは一枚のフロッピーに収まるので便利)を動作させるだけ。我々のホームページを表示している所。PHSを携帯電話と思うとストレスだが、インターネットには料金も安く最高。これでホテルからでもインターネットが出来る!! PHSなら出力が10mW(時間平均値)と微弱なので医療機器やペースメーカーには殆ど影響無い。)
職場と自宅付近にCSあれば大儲け。無ければまったく無用。もしPHSを考えるなら行動範囲の電柱、電話ボックス、建物の屋上などにCSがあるかチェックする必要あり。
また待ち受けの信頼性は低く、ビジネスにはポケットベルの併用が必要か(両方のお金で携帯にしたほうが良い?)。良いニュースとしては、留守番電話サービスが一部で開始され、携帯電話との相互通話が可能になったことがあるが、料金が高い。
商業ビル、地下街にはさらに小型アンテナ(下向き2本や小型白色灰皿型で表面平面で、止めねじが無い)あり。最近はホームアンテナ(一種の中継器)があり、窓際が圏内だったらこれで家中使える。最近の端末の傾向(小型化のあまり基本性能が...)に若干の危惧。
高出力と高利得アンテナでカバー範囲は広く、見通しなら500m以上をカバーし郊外に強い。一方、ビル内にCS少なく携帯電話的なエリアの印象。CSのエリアは広いが収容回線数には限りがある。今後は小出力の小型CSを整備するとか。留守電などの付加サービスが始まったが、携帯より使い心地は悪いようだ。CS設置の独自の哲学には脱帽。全国シェア50%。
繁華街、大通りはまずまずだが、ひとつ通りに入ると弱い。住宅地では電柱の近くのみ圏内。今後は高出力CS設置の方針とか。とにかくアンテナがプアで低い。関西A社のように長いアンテナを高所に設置すれば改善するはず。全国シェア約23%。
なおロハの端末の場合、3ヶ月ないし6ヶ月間は解約できない条件が付く事あり。それ以後解約しても端末は手元に残り、その端末でほかの業者と契約可能だが、新たにロハで新しい端末をもらったほうが安かったりする。あまった端末は親機を買うとコードレスホンやトランシーバーとしても使えるが、メーカー間の互換性低い(この点はリンク参照)。
携帯電話に比べるとPHS(特にN社とA社)はストレス。N社とA社のエリアマップは楽観的でマップ内に無数の圏外地点があり、マップ外はまったくかからない。D社はエリアでは断然有利で都市部なら携帯に匹敵するが、駅前などで回線不足の様子。見通しならマップ外でかかる所がある反面マップ内に穴もある。
PHSのメリットは通話料が安くて、通話時間が長い(約5時間)こと。もっともPHSの基本料金\2700/月分で携帯電話で夜間なら1時間以上話せるから、よっぽどの長電話かインターネット接続でなければ携帯に追加する意味は無い。郡部ではPHSは苦しい。
PHSの音質は良い。デジタル携帯より自然でエコーや時間差も少ない。アナログ携帯は音質は自然だが雑音が入る。デジタル携帯は雑音こそ無いが、時間差(約100-200ms位話が遅れる)やエコーがありかなり不自然。
2.まだ携帯電話を持っていない場合。
携帯の便利さを知らなければ、PHSは悪くない。繁華街や大通りではどの業者もそこそこ使えるので、自宅や職場周辺で使えるかどうかが重要。
繁華街内に住むならN社、郊外に住むならD社、JR利用が多ければA社。D社はエリアが広い。私はA社に加入していたが、エリアと技術面の不安で解約した。
A171は入手時には何て安っぽい端末かと思ったが、詳しく知るほど結構いい端末であることがわかった。個人的には厚みさえ薄くなればちょうど良いサイズだと思う。 私のA171のアンテナは心もち外側に傾むけている(頭の陰から少しでも電波を掴むため)。電界強度測定モードには終了と電話帳を押しながら電源ON。次にカナ/英、2、1、保留。写真は地下鉄のCS直下で80dB以上を示している所。通常に戻すには上記で2、1、のかわりに2、0、と入力。
業者がロハで持参したが、まず自宅が圏外。例のCSのエリアは木造住宅地で100m以下。見通しで200mと狭い。繁華街と大通りはおおむね圏内だが裏通りは穴が多い。
福岡県内の鹿児島本線の駅と福岡市地下鉄駅すべて圏内。しかし長崎や熊本はJR駅でも圏外多し。高速道路は全く圏外。東京では羽田圏内、モノレール駅のみ圏内、JR駅圏内、私鉄圏外と穴多数で福岡と大差無い印象。千葉県柏市は、大通り圏内、がんセンター東病院玄関のみ圏内だった。毎日JRと地下鉄で移動するならかろうじて可だが、積極的に選ぶ根拠が薄い。
次のサンプルはD社のPS-501(Kセラ)。端末はロハだが加入料は有料。約200m先にCSがあり、木造モルタル塗りで1階は窓際で、2階は部屋中圏内と良好。自宅付近、通勤経路、地下鉄もすべて圏内。福岡市内は殆ど圏内(通話できるとは限らない)。自動車からも市内はけっこう使えるし、高速も短時間なら可のこともあり。
モトローラのマイクロタックを模した素朴な外観、引き伸ばし式アンテナ、大きく薄い本体と大音量スピーカーとフリッパー付きで、待ち200時間、通話5時間、リチウムイオン電池にイヤホンジャックと、騒音にも強く基本性能重視だが、登録が10件で液晶表示がセグメントと見栄えしない。せめて登録が50件で番号を表示するくらいはファームウェアの改善のみで可能だと思う。プラスティックの質感低い(Kセラの特徴?)。インターネットには向くが電話帳機能を多用する若いユーザーにはまったく受けない。
上の画像はA171は圏外だが、PS-501は縦圏内。PS-501はトイレ内でも圏内
個人的にはある程度の長さ(あるいはフリッパー)と幅があって薄く、受話器のへこみが大きく騒音に強い端末が好み。日本製は店頭効果や若いユーザーへのアピールを重視している感じ。短い固定式アンテナは頭で隠れて不利で、正しく設計された引き伸ばし式とはエリア周辺では大差。おそらく小さくてアンテナの突出が短くて見栄えが(シャンパンゴールド?)良くて安い端末の要求が強いのだろうが、公共の場所での音声のマナーが問題になっているので、大声をださないと使用できない端末はどうかと思う。
端末のカタログのサイズは。”突起部をのぞく”でアンテナや操作部のでっぱりなどは計算に入っていないのは要注意。
日本製はABS樹脂に極薄メタリック風塗装だが、PS-501はABSの無塗装。ちなみにマイクロタックはポリカーボネイトの無塗装。マイクロタックのマイク穴は前後にあり、騒音はマイクダイヤフラムに逆相で届き騒音をキャンセルするしかけ(マイクユニットの前後に穴があいているだけ)。コストゼロなのだからPHSにも工夫が欲しい。
どのPHSもやわな印象なので、個人的はヘビーデューティー風モデルでとにかく落下、落水、衝撃、騒音、振動に強い物希望。PHSはエリアが狭いがトランシーバーにもなるという利点がある。親機無しで登録できればもっとよい。充電は無接触、アンテナは引き出し式、色は濃緑で限定数量迷彩色に塗ってあったら定価でも是非欲しい。どの最新モデルも人気のS社端末に似て来るのが悲しい。
アナログ携帯の欠点は、FM受信機があれば出力の強い基地局からのダウンリンクは簡単に傍聴されてしまう事。また通話中は1組の送受信の周波数をずっと占有する。近くの基地局どうしでは制御の周波数が重ならないように調整しなければいけないので、使える周波数の数にますます限りがある。
無線機の側からみると、FM波は電波が強ければ音質が良いが、電波が弱ければザーザー雑音が入る。また端末は受け(着呼)のために常に制御信号を聞いてなければならない。電池を節約するための間欠受信(受信時に電気を入れたり消したりして節約する)するが、あまり受信を間引くと制御信号を聞き漏らしてしまう。このため電池の持ちが悪い。圏外だとより制御信号を熱心に受信するため、ますます電池が持たない。さらに通話中は送受信の周波数が固定されているので、会話中に他の周波数にある制御信号を覗きに行くというズルができない。
電話の音声の周波数帯域は300-3400Hz。これをデジタル化(AD変換、PCM、Pulse Code Modulation)するにはサンプリング周波数8KHzで12bit(4096段階)が必要。ただ小さな音は増幅し大きな音は圧縮する対数圧縮(log-PCM)にすると、8KHzの8bit(256段階の音量)=64kbpsで充分。
これにADPCM(Adaptive Differntial PCM)を併用。Adaptiveとは音量の段階(きざみ)を小さな音の場合は小さく、大きな音の場合は大きくして常に256段階をフルに使う。Differentialとは、直前の音量と現在の音量の差をPCM化する。さらに次の音量を予測し予測値と実測値の差をPCM化する方法もある。これらで64kbpsの情報量を32kbpsに圧縮する。PHSはADPCM32kbpsである。
さらに音声のデジタル化(codec)には人間の発声に注目した方法LPC(Linear Prediction Coder)がある。音声を声帯つまり音源と、声道の伝達特性(一種のフィルター)、の2つのパラメータの積として考える。音源は周波数情報(pitched)に基づVoiced成分(例えばアーーという声)と、ランダムノイズに近い空気力学に基づくUnvoiced成分(例えばシーー)がある。Voiced成分とUnvoiced成分を切り替えながらゲインを調節し、フィルターをかけると声に戻るのが原理である。しかしそれではいかにも金属のような声になる。例えばカ行、タ行、パ行の音は発生の初めにトランジェントな成分が多いので、それを補う必要がある。
このため、予測される音声と実際の音声の差をExcitation情報として伝送するが種々の方法がある。これらを比較的低い周波数(50Hz程度)の時間枠に分割し、次の時間枠の情報は前の時間枠の情報からは急激に変化しないことから予測値と差分値に注目する。この場合は音声そのものではなくて、声のパラメータとその変化分のみを転送すれば良いので圧縮効率が良いが、音質が良くない。
これはこの方法があくまでも特徴抽出、予測と差分に基づいて新たに合成するものであるから、複雑な音声の位相成分、ゆらぎ、や”こぶし”の情報が欠落し人間判別性が良くない。また予測の誤りにより声に妙なビブラートがかったりして個人的にはあまり好きではない。また処理が複雑になるほど会話が遅延し、会話がかみ合わなくていらいらする。早いDSP素子を使えばいいが電池が持たない。ADPCMとLPCの関係は例えばゲーム音源でいえばデジタル音源とFM音源の関係のようなもので、それがPHSで用いられなかった理由の一つであろう。個人的にはMPEGなどと同様にフレーム相関などの圧縮技術が発展すれば再度ADPCMが盛り返すこともあると思う。
LPCには
LPC-10(Linear Prediction Coder 2400 or 4800bps)
RELP(Residual excited linear prediction coder
LPCにLPC的code化されたexcitation情報を加える)
CELP(Code Excited Linear Prediction
4800bps、excitationにCodeBook(look up table)を用いる)
MPE-LPC(Multi-Pulse Excited Linear Prediction
excitationに複数のパルス系列を用いる)
RPE/LTP(Regular Pulse Excitation with Long-Term Prediction
13kbits/s
RELPとMPEを用いる)
VSELP(Vector Sum Excited Linear Prediction
CELPの一種でCode Bookをベクトル化することにより計算と検索を高速化したモトローラの方式)
PSI-CELP(Pitch Synchronous Innovation CELP、Unvoiced成分をpitch成分に同期させ、さらにVoicecd成分に過渡成分を加える)
などがある。
ヨーロッパの規格GSMではPRE/LTPが使用されるが、詳細はhttp://ccnga.uwaterloo.ca/~jscouria/GSM/gsmreport.htmlに詳しい。日本のデジタル携帯にはVSELP(約10kbps)が、ハーフレイトにはにPSI-CELPが使用されている。
新しい物ほど特徴抽出、excitation、予測や差分の技術が念入りになっている。これについてはこちらが丁寧に説明している。また、各国のデジタル携帯規格の比較についてはこちらがわかり易い。
種々のLPCの音声認識評価についてはこちらがわかりやすい。これによると32kbpsADPCM(4.1点)に匹敵するのは14.4kbpsQCELP(4.2点)であり、通常のCELPは皆3点台であった。またほとんどのLPC群はアナログ携帯より評価が低かった。
データを受信して元に戻す時にデータから同期周波数を抽出するので1や0が偏ると復調できない。このためスクランブルという方法で1と0が均一に分布になるように入れ替える。何回かスクランブルするとデジタルデータはランダムに近くなるので、スクランブル方法が判らないかぎり音声への復調が困難で秘話性が高い。解読は出現頻度の高いUniqueWordがあるため不可能ではない。このためデジタル無線は古くから桜田門関係の通信に使われている。
次にその数字列をNRZ(Non-Return-to-Zero、通常の数字列)からNRZI(Non-Rreturn-to-Zero-Inverted、0が来る度に反転する)に変換する。こうすると後に述べる受信のときにデータの極性がひっくり返っても同じ情報が得られる(詳細略)。
つぎにこの数字列を電波に乗せる。デジタル無線機で良く使われるのはQPSK(Quadrate Phase Shift Keying 4相位相変調)。これは0度、90度、180度、270度と正弦波からの位相をズラた4つの状態(2bit)を一度に送れる。変調にはさらに位相をもっと細かい角度で分ける多相PSKや、変調波の大きさも同時に変える(AM、AmpilitudeModulation)方法を組み合わせるQAM方式もあり、一度の多くの情報を送れるがノイズに弱くなる。QPSKは後述する直交検波器で安定した復調が可能なため、デジタル無線ではもっともポピュラー。衛星デジタルテレビのパーフェクTVも帯域数十MHzのQPSKを用いている。
普通の電話用モデムは周波数帯域が300-3400Hzと狭い範囲に詰め込むため、極めて複雑な変調方法になっている。例えば通9600bpsで全二重では32QAMという一度に32の状態(5bit)送る形式が必要。
PHSの周波数帯域が240kHzと約70倍広いので、シンプルなQPSKで多くのデータを送れる。通信容量にはシャノンの定理(C=Wlog2(1+(S/N))、ここでCは情報量、Wは帯域)がありる。/N=30dBとすると電話回線で34kbpsとなり現状では33.6kbpsのモデムが理論限界に近い。PHSではS/N=20dBとしてもまだかなり余裕がある。
QPSK信号を電波に乗せるが、ここにもFM変調とAM変調がある。FM変調は必要帯域が広いが、増幅にC級増幅器が使えるので能率が良い。AM変調は周波数帯域が狭いが、信号の振幅(包絡線)が変化する変調方式の場合、増幅にA級リニアアンプが必要になるので能率が悪くなる。さらにリニアアンプの場合、電力を絞った時にもある程度バイアス電流を消費するために、著しく電力効率が低下する。デジタル通信といっても送信機はアナログだ。
このように電波に直接QPSKを乗せる方法以外にも副搬送波(サブキャリアー)を用いる方法もある。アマ無線のパケット通信がこれだ。既存のFM無線機を使えるが伝送速度に限界がある。
受信は送信と逆の事を行う。直交検波器で電波に乗せたアナログ信号から2値化情報を取り出す。この情報から同期周波数を検出し、PLL(Phase-Lock-Loop)発信器で同期周波数を作り出す。この周波数のタイミングで2値化情報を読みとり、1と0との数字列に戻す。これはNRZIだからNRZに戻し、さらにデスクランブラーで1と0をもとの順番に戻す。これを組み立ててCRCや冗長度を除いて8bitごとに切り出し、8KHzのサンプル周波数でDegital-Analog変換すれば、もとの音声に戻る。
以上がデジタル無線機のあらましだが、デジタル無線では一つの周波数を時間的に分割し、それぞれの枠内に情報を送るTDMA(Time Division Multiple(x) Access)が可能になり、多くの無線機が一つの周波数を共用できる。枠の数と分け方が固定化しているのがCyclicTDMでデジタル携帯に使われる。適当なタイミングで枠がやってくるのがPacket方式でEthernetなどの構内無線LANにも使われる。
最近はスペクトラム拡散方式という通信方式がある。これは情報を広い周波数の範囲に薄く広くばらまく。方法としては直接拡散方式と周波数ホッピング方式があるが、実用化されているのは直接拡散方式である。少々混信や雑音があっても時空間的な広がりでカバーする方法で、CDMA(IS-95)ですでに世界で約100万人のユーザーがいる。
国内ではN社がIS-95とは別にワイドバンドCDMAとして、周波数帯域約5MHzで、基地間同期を取らず、スライディング相関器ではなくマッチドフィルターを用いた方式を開発中であり、ITUの2000年次世代携帯端末の世界規格に提案する予定であったが、最近のN経新聞の報道によると提案を断念したらしい。またN社は、国内でもIS-95を拡張した規格を次世代端末で採用する予定らしい。
IS-95の場合、上述した音声Codecの9600bpsの信号に128bitのPn(Pseudo-noise)信号を拡散信号として乗算して帯域幅約1.23MHzの信号として送出する。受信側では送信側と同じ拡散信号を用いて復調し、音声Codecを得た後、音声に復調する。
IS-95のミソは、3系統の受信信号から、マルチパスによるタイミングを制御して復調するRake回路と、不必要な電力を低減して、S/Nを改善して混信状態下の復調を改善するとともに、電池の節約を図るところらしい。
CDMAについては、今日の一言の
Jan.1,1997 (Wed.)
スペクトラム拡散通信CDMA
Jan. 12,1997 (Sun.)
続スペクトラム拡散通信(CDMA)
も参照して下さい。
周波数共用には、送受信の周波数を分けるFDM(Frequency Division Multiplex)と、一つの周波数を送信と受信に時分割するTDD(TimeDivisionDulex)がある。デジタル携帯はFDMでPHSはTDDである。時間の枠内にデータを送るためには、データをきまった大きさに区切って認識番号をつけ、さらにエラー検出のためにCRC(CyclicRedundancyCheck)法で計算した結果をデータの終端につけておく。受け取ったデータからCRCの値を計算し、送ってきたCRCの値と照合すれば、データの欠落があったかどうかがわかる。
移動中のデジタル携帯では伝搬状況やノイズのためにデータ欠落が起こる。これを補完する方法が誤り制御方式。デジタル携帯に使われているのはFEC(ForwardErrorCorrction)と呼ばれ、送られてきたデータを元に誤りを訂正する。一方インターネットで使われるのはARQ(AutomaticRepeatRequest)という方式で、誤りが検出されたら再度情報を送ることを要求する。
EEC方式にはハミング法、BCH法、(スーパー)リードソロモン法(音楽CDや衛星通信に使われている)などがあり、ある程度の誤りまでを補完できるが、その分だけ余計な情報(冗長性)をつける必要がある。少しでも変化しては困るデジタルデータと違い、音声の場合は補完不能な程度のデータ欠落があったら、前後のデータからその間を適当に計算して埋めることも可能。フェージング等で一つの時間枠が完全に欠落すると具合が悪い。この場合は複数の時間枠に情報を分割(block interleaving)することにより、すべてを失う可能性が減り、補完しやすくできる。
さらにデジタル通信にはマルチパス対策も容易になる。マルチパスとは、相手局の電波がいろいろな伝搬経路で到着した電波の干渉によって通信が阻害されることを言う。干渉によって電波の振動面(偏波)の方向も変わる。その影響は周波数、時間的、空間的に刻々変化する。例えばテレビのゴーストは到達時間の異なる複数の電波で起こる。また短波帯のフェーシングもマルチパスの一種である。デジタル通信でマルチパスがあると信号が歪み、信号強度があるにもかかわらず信号を復調できないという不可解なことが起こる。
最近の試みは、送信時間枠の中にTraining信号を挿入する。この信号がどのように変化するかを伝達関数として決定し、その伝達関数の逆関数をデータに適用することにより軽減する。最近はゴースト対策のテレビがあるが、これもTraininng情報を用いている。テレビと違って移動体の場合は刻一刻マルチパスも変化するので、頻繁にTrainingを行う事が必要になるが、それでも十分でない。あとは後述するダイバーシティー技術に依存することになる。
さらにCDMA方式では、複数の受信系統からの信号を 前述したRake回路によって分離復調し、マルチパスの改善を行う。同様の機構で複数基地局も補足できる。
以上がデジタル携帯としてのあらましである。実際のPCM化から変調、復調までのシークエンスは、デジタル信号処理(電話、モデム、衛星、CD-ROM、LANから音楽CD、フロッピーディスクやハードディスクの読み書き etc)で良く使われる方法。最近はこの手の処理をDSP(Digital Signal Processor アナログ信号のデジタル処理に最適化したCPUのこと)で行うので、ソフトの入れ替えで対応できる。デジタル携帯のCODECのDSPは数10MIPSの能力がある。
デジタル端末の制御という面から見ると、周波数を時間的枠に分割(TDA)して、複数の端末がひとつの周波数を共有できるので周波数利用効率が数倍良い。端末も基地局の制御電波に同期して一定の時間枠内だけ電波を受信すれば良いので、電池が節約できる。
電波が弱いとアナログ携帯ではザーザー雑音があってもなんとか会話が可能だが、デジタル的には復調できない。そのためデジタル端末の出力はアナログ端末の0.6Wより少し高い0.8W。一方、デジタルではある時間枠内だけ送受信すれば良いので、その点では電池を節約できる。また基地局付近では送信電力を削り、話している時だけ出力を上げる。そういったワザがいろいろ重なって、デジタル端末の通話時間はトータルではアナログ端末と大差無いが、待ち受けは圧倒的に長い。
いっぽう特に小ゾーン式では莫大な数のCSの設置が必要。通話や制御が不確実でエリアがせまく、都市部でのみ成立するシステム。世界的にはアナログ携帯はM社TACS方式(AMPS)、デジタル携帯はD-AMPS、GSM CDMA?、衛星携帯はIr方式と、外来の制御方式がメジャー。唯一PHSの類のみ日本方式が有力なので(他にDECTがあるが)、世界的売り込みに力が入る。PHSの国際戦略については、http://www.phsi.com/index.htmlに詳しい。
電波資源が有効に使え、基地局、端末とも投資が少なくて済む、というメリットを強調しているが、必ずしも日本での投資額は小さくなく、さらに人口密度の低い国で成立するのかどうか疑問を持つ向きもある。もっともPHSが32kbpsADPCMだったことに感謝しよう。これがもしVSELPだったら取り柄が無いところだった。
4分の1波長のホイップアンテナ(垂直型アンテナ)では、電波は主に水平方向にドーナツ上に輻射する。すべての方向へ輻射される電波の総エネルギーは一定なので、水平方向には2.1dBi(約1.2倍)の電界強度で輻射される。
これらを何段も縦に積み重ねていくと(多段垂直コリニア)利得は増大し、水平方向への指向性が強くなる。周波数1.9GHzでは波長16cmなので、アンテナ長が1.5mだと15段で、利得は約15dBi程度となる計算。実際には法規もあり一本の上限11dBiらしい。アンテナ直下に見える小さな箱はヘッドアンプだろうか?
複数のアンテナを組み合わせて受信を安定化させる技術をダイバーシティーと呼ぶ。これには単純にアンテナ出力を加算する方法、アンテナと受信機を複数用意し単純に良い方を選ぶ切り替え方式、S/N(信号雑音比)が良い物を多く混ぜる最大比合成方法などがある。今後は動的なダイバーシティーを実現する方向。D社は4本一組のアンテナで他社よりダイバーシティーを重視している。
2本ダイバーシティーも4本ダイバーシティーも大した能力差は無いという意見もあるが、N社がD社のアンテナをそっくりパクった所を見ると、その差はかなり大きいようだ。
PHSのCSのダイバーシティは切り替え方式で、CSは送信時にも一番受信が良かったアンテナを使う送信ダイバーシティーを行っている。
ダイバーシティの評価は難しい。個人的には単なる静的な利得で動的な利得を評価するのは困難だと考える。波長が短い高い周波数で反射が中心の伝播状態でのフェージングの谷が埋められれば、それは高い実効利得を持つのと同値とも言える。特にPHSでは周波数が高い上に特定の時間枠しか送受信していない。特に端末からのアップリンクが脆弱だ。その時間枠がすっぽりフェージングで欠落するとアナログ無線より損害が大きい。
ダイバーシティーでは各受信系統が時空間的に離れている方が有利。D社のスパンが大きいのはそのためだろう。個人的な試算によれば電力比を別としてD社の4本組アンテナとダイバーシティはN社高出力CSの数倍、A社CSの10倍以上の利得を持っているのだろう。
D社はとにかく高い所にアンテナを上げている。輻射が上向きなので高所設置することに抵抗がある向きもあるようだが、高いと言うことは見通しの可能性が高くなるから有利だ。10mWの特定小電力トランシーバーでも見通しなら数km飛ぶ。1Wなら阿蘇山頂から背振山頂まで届く。
アンテナの細工と高さだけでなく、高周波増幅のゲイン、デジタルの変調、復調にも細工があるらしく、我が道を行くD社の哲学を感じる。最近ではD社の標準的なCSに加え、アンテナエレメントの短いCSを見かけた。見通しの良い地形で近くに標準型CSがあるのでゲインを配分しているのであろうか。
一方小ゾーン中心の業者のエリアは本当に苦しい。N社は設計哲学を変更し、中出力高出力ではD社のマネをやっている。A社は電柱の地の利でCSを置いているが、アンテナがプアで低いのでエリアが伸びない。そのプアなCSを大増量中だがどうなるものか。私は解約した。
Aステル九州に高出力CSが登場しているが、短いアンテナが4本組で低い所についているCSではエリアの改善は見込めない。PHS端末と高出力CSの出力比は10倍〜20倍で、特に端末からCSへのアップリンクが苦しい。しかしA社の短いアンテナの利得はたとえ4本でも数dB程度で低く、電線の錯綜するあたりに位置しており、アップリンクの改善は2ないし3dB程度に止まるのではないか。
CSから端末へのダウンリンクの改善は劇的で12ないし13dB程度と見積もられる。アステルCS直下で65dB程度が見通し300mで約15dBに低下するので、ダウンリンクでは概算50ないし100mのエリアの拡大が見込めるが、端末からのアップリンクは20ないし30mの改善しか見込めない計算になる。
肝心のアップリンクの改善がほとんど無いので、エリアも安定性もほとんど改善しないだろう。各地からのレポートもこのことを裏付けている。おそらくD社が出力500mWよりもアンテナやモデムの受信性能に注力していることへの理解が足らないようだ。あるいはCMのステートメント効果か。対策としては高周波増幅のゲインを上げることだが、干渉に注意する必要が出てくる。
例えば同じ利得の30cmと1mのエレメントがあっても、電柱上の錯綜した電線や障害物のため短いアンテナはかなりブロックされてしまうが、長いアンテナは端末に対して少しでも見通しとして露出する確率が増える。N社も設置状況が許す限りより長いエレメントを使うようになっているのも(上記CS写真参照)もアンテナを重視しているからだろう。アンテナにはゲインや指向性という単純な要素だけでは説明しれない問題がたくさんある。
このページにプアなアンテナを長くするだけでもずいぶん良くなるだろう、と書いたからではなかろうが、アンテナだけちょっと長くしたCSがH9年2月頃からあらわれた。低出力のようだがアンテナは約2.5倍に伸びている。A社の標準的CS(右)と比べて欲しい。ニュースリリースによると九州中のCSアンテナ1万本を長い方に交換するそうだ。気付くのが遅くはないか?
以前小ゾーン式CSの場合アンテナの長さはエリアの大小には関係しないハズと誤解しているエンジニアがいるようだが、結果が証明しているようにやっぱり関係するのである。
全国各地でN社の高出力CSの設置が相次いでいるようだ。ここ福岡でも目を凝らしていると、あったあった。細部が違う。
他の地方のエレメント8本と違って4本である。各エレメントからかなり細い同軸4本がCS本体に直結れている。CSにはNパとはっきり記載されている。エレメント間隔はD社のものより狭く、ブーム、マスト、ケーブルも貧弱。D社CSはアンテナ直下にアンプが入っている??箱があるようだが、これには無い。こちらの情報のよればCSの箱は100mWと同じとのことで、100mWの4本ダイバシティー版CSかもしれない。
世界最大の通信会社にして最高水準の有線無線コンピューター技術を有するN社がD社をパクって造ったCSだからよもやD社のCSより性能が劣ることはなかろう.......設置場所は福岡市西区豊浜公園付近である。
端末も同じで、アンテナの感度は長さに比例する(正しい設計の場合)。なのにメーカーが短い固定式を使うのはユーザー調査の結果とか。そもそもアンテナをデザイン上から無くせという声もあるとか。中にはダミーアンテナやプリントパターンアンテナの機種もあるとか。特にCSと端末の間に頭が入る向きだと不利だ。構内PHSならともかくエリアの厳しいPHSではいいアンテナが欲しい。
エンジニアによっては、一見短いアンテナでも2分の1波長型がベースなので、4分の1波長ベースのものより性能が良いと考えているようだが、これはきわめて初歩的なあやまりである。
4分の1波長の垂直型アンテナが目的周波数に共振していれば、アンテナのインピーダンスZはほぼ純抵抗50オームである。アンテナは純抵抗分を示す実数部分の抵抗Rと、コンデンサーやコイルに起因する虚数部分のリアクタンスXcとXlに分かれる。インピーダンスは
Z=√((RxR)+(Xc-Xl)(Xc-Xl))
で表される。共振時はリアクタンス分(Xc-Xl)がゼロで、インピーダンスは純抵抗Rのみ。ところでRはアンテナの空中に露出する長さと太さに関係する放射抵抗に依存する。アンテナを短くするとRが減り、アンテナに直列にXc分が増える。これを共振させるにはアンテナに直列にコイルXlを入れる。その場合の送信機から見たインピーダンスはコイルやコンデンサを適当に細工し、送信機の出力インピーダンスの50オームにマッチングできる。
しかし共振してインピーダンスが合っていても、実際空間に電波を出力する能力はRに依存する。コイルやコンデンサーは電波を輻射せず、ほとんどが熱になる。だからある一定の長さのアンテナがあれば、それが4分の1波長型がベースであろうが、2分の1波長型がベースであろうが、放射抵抗が大差無いかぎり利得は大差無い。
もちろんこれは障害物が無い場合である。マッチング回路のロスが避けられないし、アンテナに頭(食塩水に等しい)が近づけば、共振もインピーダンスも輻射パターンもめちゃくちゃになる。従って良心的な端末は、頭からなるべく遠い所に頭を越す長いアンテナをつけている。
メーカーはコストコスト言うが、セルラーとPHSの親会社(K社)の製品は携帯にもPHSにもちゃんとしたアンテナがついているのが何よりの証拠。また通信機メーカーのKW社、J社、KS社の端末はおおむねアンテナが立派である(N社はどうした)。世界最小モトローラのスタータックにもちゃんと引き出し式アンテナがついている。何でもユーザーの声だから、ということはもし希望があればシートベルトやタイヤ、エンジンの無い車も作ってしまいそうな論理である。
PHS端末のアンテナについては、今日の一言の
Jan.10,1997 (Fri.)
PHSのアンテナ考
も参照して下さい。
PS-501は基本性能は良いが、質素で電話帳がプア。PS-601にイヤホンジャックがあれば良いのだが。どの端末も何かしら機能や装備が抜けているがコストのせいか。
デザインで重要なのは受話器の穴。この部は耳に密着するようにある程度凹んでいる必要がある。ここが変なデザインの端末は騒音下の受話性能を重視していない。
受信音量操作もいろいろ。騒音下ではこまめに音量調節が必要だが、音量調節ボタンが左側面に上下あるのがベスト。極薄のスタータックもノキアも音量ボタンとメニューボタンが左側面にある。しかし多くの日本製端末は前面パネルにある。モナカを作り易いのだろうが音量操作の度にいったん耳から離すことになる。P社のように液晶下部にあると操作困難。どうしても前面なら端末最下端が良い。S社端末は左側面にロータリエンコーダを仕込んで人気らしいので本流回帰の気配を感じる。
音量を複数のボタンの組み合わせや、兼用ボタンで行うのは不便。A261はリダイヤル兼用と左右矢印兼用で音量調節する上にダイヤルライトも無い。ポケットベルや留守電の*や#を多用する操作と音量調整との切り替えが煩雑で夜間は操作困難。この社には数字キーを一列に並べた端末や、そのあまりの評判の悪さに配列を改良(改悪)良くわからない配列の端末もあるが、人間工学の専門家は腰を抜かすであろう。この社は目の悪い人のことはまったく考えていないようだ。
端末が長めストレートかフリッパー付きで耳と口にフィットして騒音に強く、上等な引き伸ばし式アンテナついた端末という私の好みは、ひとりよがりで市場調査の結果マイナーだしコスト高なので作る理由が無いと考えているエンジニアもいるらしい。エンジニアがコストの制約下にいることは理解したが、現に評判の良いPS-601はそうなっていないか?送受話性能を追うと薄く長い端末になる。持ち運びに不便なので半分に折る。その目でスタータックを見ると合理的なデザインで伸ばすと長さは150mm以上ある。
米国M社は、スタータックのデザインにいたく自信を持っているらしい。何でもCDMAで有名なQアルコム社の端末がスタータックに似ているとのことで裁判になり結局M社が勝訴したもようだ。
他にリンガー音の出口は端末上面に欲しい。なぜか大半の日本製端末は後面にある。作り易いからだろうが、鞄の中でブロックされやすい。モトローラ端末はリンガー穴は上面にあり、アンテナ突起に隠れて穴がブロックされ難くなっている。
日本の端末は待ち受け時間が長いのが自慢だが、基本性能軽視の印象がある。エンジニアによっては、小さければ少々の操作性の問題は無視できると考えているようだ。その点外国製端末は送受話、アンテナ、操作はしごくまじめ。もっとも待ち受け時間が短いが、外人はあまり気にしないらしい。毎日帰ったら充電器に差せば済む、という考え方か。
日本人なら待ち時間が短いと出張に困ると言うが、米国ではレンタカーとセットで借りれるそうだ。飛行機には各席に電話がついてたりする。もっとも日本製デジタル携帯の待ち時間は、受信を間引いたり、基地局に近い所でパワーを落としたりで、常に額面通りとは限らない。特にエリア周辺や圏外、頻繁な移動ではズルが効かないのでカタログ数値を大きく下回る。そういう最悪な場合の待ち時間もちゃんとカタログに書いて欲しい。
もっとも最新のKX-PH12ZPHSは音量ボタンとメニューボタンが左側面にあり、アンテナも後ろに移動して突出し、さらに無接触充電でイヤホンジャック付き、受話器のへこみも大きく、フリッパー付きな所を見るとこれは必勝モデルのようだ。同時にPHSオタックス(FAX、PHS付き留守電)という最終兵器も登場。何だわかっていて今まで作らなかったわけだ。P社はこれで根こそぎさらうつもりか。端末だけで商売しているメーカーは、オタックスと勝負できない。
それに比べるとT社は迷走している。巷では古いA171の方がフル装備で評判が良い。201TはT社の携帯で良く見られる羽子板風で長さ127mmと短い。個人的には135mm(A171)は最低必要だと思う。もっともA271は音量ボタンが左側面に引っ越しているから、この会社も確信犯である。
N社は逆走している。デザインはまるで201PとA171の短所をあわせたみたいで音量キーが左側面に無く、技術に定評のある通信メーカーらしくない。ただアンテナだけは迷ったらしく固定式なのに激しく外にせり出している。
K社の端末は携帯もPHSもアンテナを重視している。モトローラの良い点も見ている。その反面特にプラスティックの質感は概して悪い(PS601は良いが)。困ったことに最近はP社を追っているようだが、外装の質感以外はP社をまねないで欲しい。と書いたら201Pを意識したPS701は見事にコケた。
ここに至って端末の国民性を感じる。最初コストに振っていて機能に戻ってきたメーカーと、最初機能に振っていてコスト重視になってきたメーカーがある。日本製は小さく電池が長持ちしかっこいいが、大事な基本性能を落としている。操作のボタンも同一メーカーでも機種によって様々。ロータリエンコーダ付き端末の人気を見るに、聡い向きは既に気付いている。車でも一時狭いセダンがはやったが客は結局RVに逃げた教訓がある。敵は次は衛星電話でやって来る気配でハイテク端末も一晩にして竹槍となる可能性もゼロとしない。
PHS端末の内部については、今日の一言の
Jan.3,1997 (Wed.)
お年玉巨編(笑) 初夢(機械の中を見る夢)
を参照して下さい。
また液晶画面にキズが付くと困る。巷には液晶画面に貼る種々の製品があるが、PLUSのFラベルN0.15という透明保護フィルム付きラベルのフィルムが便利。エアが入らないように貼る。それにはまず液晶の左端を貼る。そこからエアを上下に押し出しながら右側のほうへ貼る。フィルムの表面はかなり丈夫で通常の使用では3ヶ月から半年は透明度が保たれる。このページの端末には全て貼ってあるが透明度が高いので写真ではわからない。友人の端末にもたくさん貼ってあるが好評である。コストは一枚10円以下である。
問題は落水である。PHSの場合は内部が浸水しなければ問題ない。しかし携帯端末は底面のコネクターが浸水してしまう。真水であれば蒸留水で洗って乾かすことになるが、海水の場合は何をやってもダメ。端末内には浸水の証拠を残す仕掛け(濾紙の半分に水溶性インクが塗ってあり、浸水すると紙全体が赤染する)が貼ってあるのでばれる。かといってT社のようにコネクタが端末裏面にあると車載ケーブルの納まりが悪いのでやっぱりここしか無い。
おもしろいのはここのページで、米国M社の端末のサバイバル話が載っている。M社の端末はフリッパーが操作部を完全にカバーし、露出した表示部は液晶でなくLEDで丈夫な上に、電池は衝撃で脱落するしかけ。さらにポリカーボネート製のモナカの後半は内部に金属蒸着された隔壁があり、これと可動性の接触子で内部回路を分割シールドすると同時に補強リブとして働く。材質と構造は”ゾウが踏んでもこわれない筆箱”に限りなく近い。初期不良(笑)さえ越せばなかなか壊れない構造で一見の価値がある。
端末によっては呼び出し音が一番小さな音に設定しても、音量が大きすぎて周囲の冷たい視線を集めることがある。この時は呼び出し音の穴にセロテープを貼って調節できる。
長く携帯を使っているので電話を短く終わる癖がついている。10秒以内で切ると実はPHSの方が高くつくことがある(携帯は秒単位の課金だが、PHSは最初からは20円取られる)。だからPHSの時は長電話を心がけよう?。もし運良く自宅が圏内なら、初期費用の高い有線はどうなるか。もっともパーフェクTVでは困るかも?
3業者のCSの数は全国では膨大な数(計約30万)に上る。もし3つの業者が協力すれば投資は1/3ですむか、あるいはエリアが3倍になるか。CSはN社のISDN回線に依存し(一部地方のアステルをのぞく)、結局一部が利益をあげるしかけ。是非D社とA社は他に依存しないシステムを作って欲しい。
低出力小ゾーン式CSを全国津々浦々まで設置するのは苦しい。同じお金を携帯のCSにかければ一部に依存しないシステムで、現行の携帯よりもっと低出力(50-100mW、時間平均値)で電池が長く持つ携帯電話を低料金で提供できるかも。
しかしそれぞれの業者の出資企業を見ると事情が見える。全国津々浦々の利用頻度が低い地域の小ゾーンCSの電波資源と設置保守コストはどうなるのか気になる。小ゾーンはそもそも構内用だと思う。近い将来ひょっとして不*債権と心配になるが、利便性が定着すれば納得してもらえるか。これについては
Feb. 3,1997 (Mon.)
PHSに見る地政学
を参照ください。
もっとも以前のよう端末まですべて一部に依存するよりは良いし、こうやって各業者と各端末メーカーの苦しい営業のおかげで、どこでもインターネットが安くできるのは助かる。我々はいいとこだけ利用するに限る。
PHSがどのくらい使い物になるかサンプルを一晩貸せばいいと思う。そのサンプルは市内通話しかかからなくて良い。そうしないとエリアがわからないし大量キャンセル(東京A社は公称4-5%というが本当はどうだろう)が発生すると番号資源が無駄になる。等身大のビジネス期待。
PHSも当初はインセンティブがほとんどない状態だったそうだが、今は基本料金プラス通話料の*年分とのうわさ。さらに通話料と台数達成のマージンがあるとか。従って契約には最低3ないし6ヶ月継続というしばりがある。
しかし携帯電話のインセンティブは上記と似たような計算らしいが、基本料金と通話料が高い分だけ高額とか。先日東京湾でヘドロの浚渫をしたら多数の携帯電話が出て来たとか、3ヶ月だけ使用できる変な端末が流通しているとか、うわさも絶えない。最近では電車内忘れ物の上位に携帯電話があるらしいが、持ち主がすぐ判明するのに、取りに来る人は少ないそうである。最近の報道によると、不正な携帯電話による未収金は*00億円にのぼるという。
何か以前見たような状態である。つまりバブルだ。バブルで難しいのは、バブルの終焉にいかにビジネスをうまく整理できるかである。つまり縮小均衡である。車の販売数と同じように、電話の販売数にも限りがある。へんなインセンティブや3ヶ月毎に新型に交換する契約とかでは、あの住専の二の舞になるかもしれない。
帰って説明書を読むが留守電とローミングはけっこう難解。やはり親切な代理店の方がよかったのだろうか。ただし更新ではインセンティブが出ないから、代理店も迷惑かもしれない。
HD-30Kは性能良好で音量ボタンも左側面についているが、仕上げがの質感が悪い(。シャンペンゴールドの美しいP社の端末と見比べると考えてしまう。