更新をサボってしまったWebmasterである。土日に何をしていたかというと、不良債権で有名な宮崎の某ホテルで泳いでいた。といっても有名なオーシャンドームでは無くて、コテッジのプールサイドで焼き肉を喰っていたら、悪童どもに着衣のまま投げ込まれたのである。しかし実に気持ちが良かった。
その後は期限を過ぎた依頼原稿2編に呻吟していた。日中は雑務があるので書き物はジャマの入らない平日の深夜か土日になってしまう。期限までにマテリアルはどんどん溜まっているのだが、着手するのは期限を過ぎて数日というところである。
Webmasterの業界では期限を守る人間はマレらしく、出版社の言う期限は相当な余裕を見込んである。単行本の場合はともかく月刊誌の場合は期限がタイトで、期限前2週間に”お知らせ”のハガキが、そして期限後1週間に督促の電話があり、さらに遅れると人間がやってきて目の前で原稿をかかせるのである。
困った事に、最近は”電子メイルで原稿を送れ”という督促の電話が増えている。単に郵送の時間が節約できるだけでなく、そのまま電子編集できるので都合が良いからである。しかし、こちらにしてはソバ屋のように”今出ました”と答えておいて、そそくさと書き上げるというごまかしもやりにくくなっている。
さて、本ページではオブジェクトに住み着くノイズやボトルネックを解析し、最小限のリソースで解決することをポリシーとしている。そして、ページの成り立ちは極めて原始的なWWWの作法を踏襲している。
本ページを紙のメディアとしても読みたいとするご希望は各方面から戴いている。Webmasterとしては、なるべくそのままの形態で紙にしたいと思っていた。しかし実際に原稿を作成してみると、予想以上の分量になり、そのままでは地球のリソースをムダに消費することになりかねない。また、インターネットに比べ紙のメディアは検索、リンクやデータベースなどの機能が極めて弱いのである。
一方、紙のメディアには多くの利点がある。電気や通信手段の無い場所でも読むことはできるし、イメージの解像度もS/N比も非常に高い。また斜め読み、パラパラめくり、というブラウジング能力が優れている。さらにしおりと呼ぶ時空間を超越したオブジェクトによって、いつでも途中からブラウジングを再開することができる。ブラウザーにもbookmark機能があるが単にURLを記憶するだけである。webmasterの意見では、ブラウザーにも、”ここまで読んだよ”と印を付ける機能が必要だと考えている。
基本的に本ページでは過去の記載に手を入れないことを原則としてきた。しかし、日々追加していく文章はどうしても散文調で冗長になる。そこで趣旨を変えない範囲で、大幅に記述をダイエットした。バイト数にすれば半分以下に凝縮されていて、かなり読みやすくなっていると思う。またwebmasterのポリシーに反して忸怩たるところだが、大きく3つ位のジャンルに分割することにした。
出来上がりつつある紙のオブジェクトは、どうやら過去あまり見たことが無い非常にヘンテコなシロモノになるようだ。出版はトラ技の会社からになる。
今、日本は大変な技術立国的スランプに陥っている。国営放送の番組プロジェクトXも、そのメッセージは技術立国である日本を再び見つめ直せ、ということだろう。例えばCPUの周波数を高めることも立派な技術ではあるが、そのベクトルは非常に単純なものである。本ページが一貫して主張しているように、われわれがパソコンに依存しているプロセスを見つめ直せば、CPUの周波数だけが答えで無いことが解ると思う。
西洋の唯物史観にすればパソコンは狩猟のための武器なのかも知れない。しかしWebmasterには、知識とスキルを育む田畑あるいは漁場に見える。Wintelはより速く、より大きく、そしてより電気を喰って炭酸ガスをまき散らすソリューションに向かいかねない性癖を持っている。しかし、処理が速くなることで節約できる以上の地球リソースを喰ってしまうのでは、進歩とは言えない。残念ながら、Webmasterが警戒したPentium-IIでの高電力消費=高付加価値戦略は、今またPentium-IV(消費電力75W)の姿でゾンビのようによみがえっている。
幸いに、日本には最小限リソースの美学がある。最高級の材料と技術を、ご飯に梅干しとみそ汁、という簡素な料理にそそぎ込んで、その価値を愛でることができる。Webmasterは、来るべき技術立国のキーはエコロジーにあると思っている。限りある地球リソースを節約しながら所定の性能を達成する技術こそが、極限の付加価値となり、そして雇用の源泉になると考える。つまり、リソースを喰うモノではなくてリソースを減らすプロセスに付加価値を発生させなければならないのである。
この論にそえば、いったん紙のメディアを発生する以上、それで消費した以上の地球リソースの節約効果を提供できなければ、Webmasterの戦略は破綻することになる。そうならないようにWebmasterは努力するつもりだが、果たせるだろうか。
最近の電脳ウイルス来襲は熾烈であった。SIRCAM.Aとcode redである。これらはウイルスではなくてトロイの木馬やワームだと言う人もいるが、悪質な攻撃性からすると立派な電脳病原菌と言えるだろう。
SIRCAM.Aの来襲は7月の中旬からだったが、下旬に大量に来襲し、まだパラパラとつづいていて、総数は50を越えている。多くは個人からの単発的なものだったが、我が国トップクラスの放送局と電話会社から数日に亘って大量の来襲が来たのには閉口した。もっとも、放送局からのものはサーバで無毒化されていた。
今までのウイルスはOutlook族のアドレス帳に従って感染メールを送りつけていたが、このウイルスはInternet Explorerのキャッシュから送り先のアドレスを抽出する点が新しい。これが本ページに見知らぬ人から大量にウイルス添付メールが来た理由だろう。また、メイラーのIDは全て
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X-MIMEOLE: Produced By Microsoft MimeOLE V5.50.4133.2400
X-Mailer: Microsoft Outlook Express 5.50.4133.2400
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だった。これが偶然なのか、ウイルスがメイラーを騙ったものかは不明だが、常に同じディレクトリーに同じようにインストールされるM$標準メイラーの方がウイルスにとって都合が良いのだろう。Webmasterは以前からNetscapeをメイラーとして使っている。なお、SIRCAM.A情報とSIRCAM.Aの駆除法を参照されたい。
さて、もう一つのウイルスはcode redである。感染NT族サーバーからのアクセスは8月1日から猛然と始まり、そのピークには1時間に数回アクセスがあった。その後次第に頻度が低下し、WWWサーバーのログに残った最後の足跡がコレである。
------------------------------------------------------------------ 08/16/01 01:24:27 ERROR! IP.IP.IP.IP:default.ida ?NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN 090858bd3801090858bd3801090858bd3801090090190160 ------------------------------------------------------------------情報の通り、その後はきっちりと冬眠に入った模様である。9月1日から再度活動するとのことで、ネットの渋滞を覚悟した方が良さそうだ。プログラムの手順は非常に複雑で、冬眠までプログラムに組み込むなど、極めて悪質である。情報と駆除法はこちらである。
追加
掲示板の情報によると、以下の"X"のパディングを持つものがcode red IIだそうである。Code redIIは冬眠せずに24/48時間後にシステムをリブートし効力を失う。しかしリブートすると再感染を受け、再度パケットをばらまく可能性がある。10月1日以降は無効になるが、しかけられたセキュリティホール (BackDoor)は残る。詳しくは、駆除ソフトはこちら。ログ にあったCodeRedIIの足跡はコレである。
------------------------------------------------------------------ 08/16/01 03:08:21 ERROR! IP.IP.IP.IP:default.ida ?XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX 090858bd3801090858bd3801090858bd38010900901900 ------------------------------------------------------------------しかし電脳ハザードはウイルスだけでは無い。Webmasterに寄せられた情報によると、攻撃性の高い宗教団体のネット浸透が再度活発になっていると言う。以前はパソコンや健康食品、インスタント食品などの物品に重点があったが、最近はソフトウェアに重点が移行していると言う。デフレによってハードウェア商売のうま味が減ったからだろう。
特に注意を要するのは有料/無料のレンタルサーバー、無料ドメインネーム取得、無料掲示板、ホームページ作成、ソフトウェア開発などであり、ポピュラーな巨大掲示板群にも関係が噂されているものがあるという。
関係の深いページは、色使いやフォントが独特で、特定のランキング/ポータルサイトのバナーが貼られている場合が多いという。大手の信販や電話会社、広告会社には情報が蓄積されていて、バナー広告の契約に慎重であると言う。特に見かけないバナーが貼られている場合は注意を要するという。また多くの場合責任者の名前、所在、電話、メイルアドレスなどもはっきりしない。
どちらさまも電脳ハザードにはくれぐれもご注意願いたい。
Webmasterは10年以上前にNYのパークアベニュー沿い(37th)に住んでいた。10階の大きな窓のあるステューディオだったので目の前には絶好のエンパイアヴューが楽しめたが、夏は直射日光のためかなり暑かった。
もちろんエアコンはあった。米国で一般的なエアコンは、昔日本にもあった大型のウインドゥタイプだが、Webmasterの部屋のそれはブイブイ唸る割に一向に冷えなかった。そのくせ外からは道路めがけて盛大にドレイン水が落ちていた。あまりの暑さにWebmasterは意を決してエアコンを整備することにした。
腰が抜けそうに重いエアコンを室内側に動かして中身を見ると、構造は実に簡単だった。まず室内面にエバポレーター、室外面にラジエーターがあって、その中間に位置する一個のモーターから両側に軸が伸びて、室内と室外のファンを駆動していた。室内外の気流は隔絶されているが、10cm四方の小さな窓があって、そこから換気できるようになっていた。単純な冷房サイクルとサーモスタットが装置の全てであった。
面白いのはドレイン水の処理である。室外側のファンには丸い枠があって、これがドレイン溜の水をハネあげてラジエーターにかけ、これが蒸発して気流と共に排出されるシカケである。件のエアコンからドレイン水が大量に出ていたのはエアコンの設置が尻上がりになっていてファンがうまくドレイン水を引っかけていなかったからである。本来、この手のエアコンは少し尻下がりに設置しなければならない。
内部を清掃して設置の角度を尻下がりに調節すると冷房能力も回復し、ドレイン水も殆ど出なくなった。さすがアメリカ製でドレイン水溜は厚い鉄板で作られているが、かなりサビても鉄板が厚いので穴が開かないのである。設計が古く冷凍機の効率も悪そうだが、機械としては非常にタフに出来ている。
一方、日本ではセパレートタイプが主流だ。高度なインバーター制御にも関わらず、コスト的にもこれ以上安くならないのでは無いか、という所まで煮詰まっている。唯一解決していないのは、ドレイン水の処理である。低能率の米国製エアコンでもドレイン水は僅かながら冷房能力を助けている。一方、細かい制御に関しては間違いなく世界一の日本製のセパレート型エアコンでは、ドレイン水は無駄に捨てられているのである。
以前よりWebmasterの元にはドレイン水に対して何か工夫をやっているのか、というメイルを戴いていた。以前からドレイン水を室外機のラジエーターにかけるシカケはしていたのだが、特にお見せするほどの工夫ではないと考えていた。しかし今年の猛暑はすさまじく、この際、1ppmでも日本のエネルギー節約に貢献するために、恥ずかしながらリクエストに応じることとした。
例によって必要なリソースは最小限である。節約のために新たなリソースを消費するのではWebmaserのポリシーに反するからである。まず隙間ふさぎ用のスポンジテープ(長さ10cm位)を、ラジエーターのなるべく上方の横枠に挟み込む。スポンジは横枠の幅にカットして糊面を枠側に向けて固定する。あとはドレインのホースの先を斜めに切って縦枠に差し込み、適当な針金で固定するだけである。
これでドレン水がフィンに行きわたるようになる。もし使用状況によってドレイン水が底から出てくる場合は、1段下の横枠にもスポンジテープを挟み込むと良い。簡単なシカケだが、これでドレイン水が外に出てこなくなったら完成である。もっと巧妙に工夫されている方もおられると思うが、リソースに関してはこれより簡単な方法はあまり無いと思う。ただしスポンジが劣化するので3年毎位に交換することになる。
さて、しょぼいドレイン水の効果はどれくらいだろうか。水の比熱は1gあたり1cal、気化熱は540calである。従ってドレイン水1Lが熱せられて気化するのに必要な熱量は約600Kcal=約2500000J(ワット秒)に相当する。毎時200mlのドレイン水が気化するのに要する熱量は家庭用エアコンの冷凍機出力(2.5kW)の5%以上にも相当するので、決して無視できる量では無い。
ただエネルギーの事を考えるなら、室外機に屋根を付けて直射日光を遮る方がはるかに効果がある。Webmasterのリビング用の室外機にはプラスティック製段ボールを針金で固定して屋根としている。ちゃんとした屋根でなくても、特に暑い日に室外機の上に段ボールを置いて日光を遮断するだけでもかなりの効果があるハズである。
もし各家庭が1ppmエネルギーを節約すればチリツモで膨大なエネルギー節約になり、炭酸ガスの排出も減るだろう。その意味では、エアコン変造も一種の国家事業なのである。
さて問題のNS-10Mである。前回(つづく)と書いたせいか、掲示板とメイルでいくつかの推理をいただいた。それを総合すると、密閉箱派とバスレフ派にわかれた。
密閉箱派の意見
ウーハーのコーン紙に何らかのコーティングを行って剛性と質量をアップし、エアサスペンションとして適度のロードがかかるようにする。そうすると中高音のレベル低下が懸念されるが、コーン剛性アップによりピストンモーション域が広がり、トータルのバランスが向上するのではないか。
バスレフ派の意見
限られたリソースから音質と能率を稼ぐには、何らかの方法でバスレフに改造するのでは無いか。そうすればfo付近の振幅がさがり、中高音の混変調も減りトータルでバランスが良くなるのでは無いか。
さて、Webmasterが最初に手を着けたのはネットワークである。良質の18cmユニットではフルレンジとウーハーの差は小さく、コーン紙の重量やコンプライアンスが主な違いである。従って機械的なカットオフに期待すればネットワークは不要ではないか。ネットワークをバイパスすれば、確実に能率は改善するハズだ。
ネットワークには実測でも0.3オームほどの直流抵抗があり損失も無視できない。実際にはウーハーのホット側をスピーカー端子のホットを直結し、ネットワークのコンデンサーのコールド側をカットする。ツイーターのネットワークには手をつけなかった。
レベル表示が異なるが、変造後(中段)は変造前(上段)に比べ300Hzから4KHz付近のウーハー出力が上昇している。予想通り聴感上はツイーターが相対的に引っ込んでボーカルのバランスが改善した。
しかし依然として常用モニターとしては低域は痩せている。ウーハーが密閉箱の空気のスティフネスに負けているからである。そこで山本式バスレフ変造を加えることとする。本ページに何度か登場しているバスレフ変造の骨子は、
1.バスレフ穴はウーハーからなるべく遠いところにコーン面積の1/10〜1/20の穴をあける。穴は円形より不整形やスリット状とし、特にポートは作成しない。
2.吸音材は密閉箱よりやや少ない程度入れて、バスレフ穴からの中高音や付帯音の漏れを減らす。バスレフによるピークを作るというよりは、背圧を抜いてfo付近の振幅を減らす事を狙う。
実際には、端子板をキャビネットから浮かし、幅5ミリ、有効長32cmのスリット状のバスレフ穴(16cm□)を作成する。厚み5mmのナット6個を端子板の各固定ボルトに噛ませ、再度ボルトを締めて固定するだけである。写真でもスペーサーのナットが見えている。木材加工はゼロで総工費も5円というところ。もちろん気が変わったら復元も容易である。
バスレフ変造後が下段で、低域がかなり楽になっている。聴感上もフルレンジ的な印象になり、定位も安定して常用モニターに向いた音となった。完全にフラットとは言えないが特性が自然なのでトーンコントロールとも相性が良く、バスを軽くブーストしてやると予想しなかった低音も聞こえてくる。これならスーパーウーハーが無くても耐えられそうである。
ご機嫌になったwebmasterだが、BOSE201/301とつなぎ換えてみるとがっかりである。多分にBOSEの後ろ向きのツイーターが作り出す広い音場に慣れたせいか、広がりに欠けるのである。ただ置物としてはルックスが良いので廃棄は免れそうだ。この方法は他の密閉型スピーカーにも応用可能で、穴の面積はスリットの幅で調節することになる。
工作を厭わない人なら20分もかからない変造だが、工作に慣れていない人には勧めがたい。その場合はNS-10Mを値打ちがあるうちに、星の数ほどあるもっとマトモなスピーカーと物物交換するのが良いと思う。手を入れれば若干マトモにはなるが、このコーン紙のクセからは逃れられない。最近廃番となったばかりなので、うまいディールも可能だろう。
考えてみると、NS-10Mもヘンテコな音のまま10年以上変わらずに販売され続けたという点に最大の値打ちがあるのかも知れない。
ご注意とアドバイス
今回の変造はHiFiを目指したものというよりは、長時間聴いて疲れない、ソースを選ばない、刺激的でない、あるいは趣味としての”煩わしいオーディオ巡礼の旅よ、さようなら”、の見地で行った物です。そもそもスピーカーの音はどれもHiFiとはほど遠いものですから、お好みの音にチューン(パソコンで言えば壁紙を変えるようなものか)されて下さい。
追加(2012.5)
新設の穴はスリット長(一周)30cm、スリット幅5mm、スリット奥行き(端子盤かぶさり長)10mm程度+開口端効果でポート共振が80Hzプラス程度です。端子盤が奥まっているせいか計算よりやや低いようです。スリット幅を細くするとポート共振周波数が低くなりますが低音のレベルも下がり貧相な音になり、中音の山が目立つようになります。スリット幅を広くすると低音の量が増えますが伝達特性が悪化し端切れの悪い不自然な音になります。
ポートがリアに開口していますので、スピーカーを置く環境によって変化します。低音は硬い壁の部屋の隅にスピーカーを置けば強くなり、壁から離せば弱くなります。バスレフ効果の調節は挟むナットの幅を変えるのが基本ですが、ポートの一部を隙間スポンジテープで塞ぐ方が簡単でしょう。
もともと吸音材が多めなので調整はさほどクリティカルではありません。基本的に吸音材は多いほど中高音のレベルが低下しますが周波数特性の凹凸が減り疲れにくい音になります。個人的にはバスレフにもほどほどの吸音材は入れたほうがいいと思っています。いずれにせよ、中低音を少し持ち上げて山谷が減って全体がなだらかな周波数特性になればソースを選ばすに聴き疲れしにくくなりますし、トーンコントロール類の補正も簡単になりサブウーハーとのつながりも良くなります。おそらくその状態なら末永く付き合えるのでは無いでしょうか。
世の中には不思議な製品が定番になっていることがある。スピーカーの世界では何と言ってもその代表はNS-10Mであろう。WebmasterはNS-10Mが世に出たときから不思議な音のスピーカーだと思っていたが、知らないウチにニアフィールドモニターの定番に出世している。我が家ではNS-10Mは不良資産となっており、他のスピーカーの置き台として働いているだけである。
何が不思議な音なのか、さっそく周波数特性を測ってみよう。図は20-20KHzの範囲で縦軸は20dB/divだが、100Hz以下はノイズとソフトの問題のため信用できない。最初に気付くのは周波数特性がフラットからほど遠いことで、1KHz以上が平均して5dB位高い。今まで測定したBOSE101、JBL-Control1、Auratone、BOSE201、BOSE301は少なくとも全体的にフラットな特性であった。
測定が誤っているのだろうか。今回のは古いモデルで箱の裏に特性グラフが貼ってある。通常あまり信用できないメーカーのデータも驚くほど似ているので、耄碌したのでは無くてもともとそう言う音なのである。ユーザーがツイーターにハンカチをかけているのもムリも無い。素性からしてニアフィールドモニターには不向きでPA用だろう。
次にそれぞれのユニットの音を測ってみよう。規格のクロスオーバー周波数は2KHz(-12dB/oct)だが実際にはもう少し高い。ツイーターには0.6mHと5.4uFからなるネットワークが入っている。レンジは広めでかなり下まで鳴っているが、逆に10KHz以上は苦しい。総じてツイーターはコストがかかっていてまずまずだと思う。
問題はウーハーである。軽さとレスポンスが身上の張り合わせコーンだが、最初からコーンの形に漉き上げた物と比べるとペコペコで密閉箱用のユニットとしては圧倒的に剛性が不足している。小口径ウーハーの割に1.8mHと10uFの立派なネットワークが入っているが、機械的な特性に任せて直流抵抗が問題になるインダクタを省きたいところである。ユニットのチョイスからして疑問の多いシステムである。
そもそも18cm級のウーハーでHiFiシステムを成立させる方法は2つある。
1.フルレンジ+スーパーツイーター+バスレフ
基本はフルレンジである。強靱ながら軽いコーンに強力な磁気回路を配し、ボーカルレンジをフラットにカバーすることをめざす。コーン形状は高域を稼ぐためカーブドコーンとなり、分割振動を利用するために同心円状のヒダ(コルゲーション)が入ることもある。分割振動の領域はどうしても山谷が多くなるが、全体的に見てフラットであれば問題ない。
クロスオーバーをボーカルレンジより上方にはずすことが可能になる。必ずしもウーハーにはネットワークは不要で、有害なインダクタをいれずに済む。巷ではダンピングファクターという幻の指数に捕らわれているユーザーも多いが、インダクタ、スピーカーケーブルそしてスピーカーの抵抗値を考えると、電圧帰還がもたらす過大なダンピングファクターの効果は疑問である。
不足する低域は軽めのバスレフとしてレベルを稼ぐと共にコーン紙の振幅を減らして混変調歪みも減らす。箱も密閉箱のように頑丈に作る必要が無いので安く仕上がる。ツイーターは補助として主に高域の指向性の改善を目指す。当然ながら重低音はムリで、これはスーパーウーハーを付加することになる。
この方法の典型的な物はBOSE201だ。バスレフは低音の過渡特性が甘くなりがちだが、低音をあまり欲張らずに多めの吸音材を仕込んで付帯音を減らすのが良い。システムとしては能率もまずまずで楽観的な音になる。現代の小型スピーカーは殆どがこの方式になっている。
2.ウーハー+ツイーター+密閉箱
この場合、コーン紙は密閉箱の圧力に耐えるためとfoを低めに稼ぐために重くなり、それに見合う強力な磁気回路も必要になる。システムとしてはコンプライアンスが大きなユニットにエアサスペンションを効かせて低域を稼ぐことになる。密閉箱ではバスレフより低域でのコーン振幅が大きくなるので、ストロークが大きなユニットが必要になる。
そうするとウーハーの高域が苦しくなり、クロスオーバー周波数も下がってボーカルレンジに入ってくるので、ツイーターもワイドレンジのものが必要になる。ウーハーの能率が低いので、レベル合わせのためにツイーターに低能率のソフトドームを組み合わせるか、あるいは抵抗を入れてバランスを取る事になる。
小口径のウーハーに高音カットのインダクタが必要かどうかは意見が分かれるが、アンプから見ると直列のインダクタは破滅的だ。コストの問題もあって、最近はインダクタを入れない傾向にある。システムとしては低能率で小口径にも関わらず立ち上がりの重い音になる。
パワーを入れて音量を出すとサイズ不相応の低音が出るが、ウーハーのストロークがボトルネックとなり最大出力レベルに限りがある。どうしてもコスト高になるので、この手の製品は減っている。国産で出来の良いシステムと言えばビクターのSX-3だろう。WebmasterはSX-3をPA用途に使ってウーハーを過大振幅で壊した経験がある。
NS-10Mでは2.の方法を選んだように見える。しかしウーハーのコーン紙が弱いため密閉箱の風圧に負けている。箱のサイズからしてもfo=85Hzは高すぎで、エアサスペンションシステムとしてうまく機能していない。さりとて柔らかいストレートコーンのため高域も伸びず、張り合わせのため分割振動のモードも乱れる。その結果、ニアフィールドモニターとしては不向きな周波数特性に仕上がっている。箱の作りが結構良いだけにウーハーのチョイスが惜しまれる。
ところで、どうして密閉箱にこだわったのだろうか。おそらく定位の良いニアフィールドモニターとして定番のauratoneを意識したためと思われる。しかしクロスオーバー周波数が下がってボーカルのレンジに入り定位を悪くしているし、ツイーターとウーハーの距離も開きすぎである。
Auratoneがなぜあのサイズでまともな音なのかには多くの秘密がある。エッジを張り替える時に気付いたのだが、Auratoneのコーンは軽量ながら非常に強靱でコンプライアンスもストロークも不相応に大きい。磁気回路はフェライトが2段重ねで巻線も太く、50W入力にも耐える。またエンクロージャーも頑丈で厚みは2cmもある。一言で言えば16cm級の磁気回路とコイルボビン、エッジに10.5cmのコーンを組み合わせた超低Qoの作りで、エアサスペンションとして理想的に機能しているのである。
人気のBOSEも基本ユニットはAuratoneと同じ口径10.5cmであり、コーン形状をはじめとして非常に似た構成になっている。BOSE101はある意味ではAuratoneをバスレフにして近代的にアレンジした製品と言えなくも無い。
というわけでNS-10MはWebmasterには5分と耐えられないバランスの悪さである。直接音が優勢なニアフィールドでは、何よりもフラットさが重要である。周波数特性はHiFiの一要素に過ぎないが、周波数特性が悪いスピーカーはHiFiになり得ない。このスピーカーでミックスダウンした音がどのようになるかは想像がつくだろう。
しかし箱が上等なので捨てるには惜しいし、ゴミとなると地球環境にもやさしく無い。弱いコーン紙にコーティング材を塗って補強しているユーザーもいるが、エアサスペンションのシステムとしての相性が良くなる反面、大事なボーカルレンジの出力が低下してしまう。また磁気回路が強力で無いのでQoが上昇するだろう。
何とかしてこの弱いコーン紙と磁気回路のままで低域レベルを上げて周波数をフラットにする算段が無いだろうか?(つづく)