しかし、ちょっと待ってほしい。ぜひ知っていていただきたいことがある。 経験として、10年以上前のM下製のピエゾ式、Eプソン輸出用ポータブルピエゾなどから始まって、多くの機械を扱ってきたが、やはりこの手のプリンターの最大の敵はインク詰まりである。各社は大変な努力をしているが、湿度の低いところでしばらく使わないとやっぱり詰まる。そして、期限が迫った大事な仕事の時に限って詰まるのである。
いくつかインクジェット式を持っている人は知っていると思うが、この形式には、インクタンクとヘッドが分離したものと(分離型)、一体化したものがある(一体型)。分離型のいいところは、インクカートリッジのコストが安く大量に印刷する向いていること。一体型は安物に多く、インクカートリッジが高めである。しかし分離型が常に安くつくとは限らない。
分離型は毎日のように印刷していればいいのだが、しばらく使わないとすぐ詰まる。分離型はいったん詰まって通常のクリーニングで直らない場合、修理に出さなければならない。また、インクが無くなってインク経路にエアが入るとこれも工場行きになる。私のところでもCノンのBJ-130の2台が各1回ずつ、BJ-330Jの2台が各1回ずつ修理に出ており、たいへんな出費と不都合があった。昨日は、絶対詰まらないとEプソンが豪語していたMJ-1000がやっぱり詰まった。いま、廃棄しようか修理に出そうか迷っている。
この時に代役となるのはCノンのBJ-10V(初代)かHPのDJシリーズである。これらは、ヘッドが詰まったら新しいカートリッジに変えたら印字品質は新品に戻る。詰まったヘッドもすぐはずせるので掃除して再生できる可能性がある。確かに計算上これらのインクカートリッジは分離型よりやや高価だが、交換毎にヘッドが新品になるので、年間印刷枚数が3000枚以下のユーザーにはこれを勧めたい。しかし、メーカーの消耗品ビジネスにのらないようにする必要がある。そこで。
一番簡単な予防法は、プリンターの電源を入れっぱなしにしておくことである。パソコンを立ち上げるためにプリンターは初期化され、ヘッドをクリーニングするので詰まりににくくなる。初期化の度に若干インクを損するが、詰まると大被害なので目をつぶることにする。
この手のプリンターは、非印刷時にヘッドは格納位置まで動いてゴムの蓋がされる仕掛けになっているが、格納位置に戻る前に電源が切れると蓋が無いままヘッドが空中にさらされるので、確実にヘッドが詰まる。その予防に電気を入れておくのがよい。とくに非熟練者の使う機械はこれが良い。
さて一体型のプリンター(BJ-10Vシリーズ、デスクジェット、デスクライターシリーズ、N本電気のPICTYシリーズ)の場合はどうするか。これはカートリッジの封を切るときヘッドをカバーしている緑色テープ(後述するが、バランスホールにも白色テープが貼ってある)を保存しておく。そして、長く使わない場合は、ヘッドにそのテープを貼ったままプリンターにセットするか、専用格納容器に入れておく。使うときにテープをはずすことを忘れずに。テープを無くした場合は、ビニールの絶縁テープが良い。長期に保存するときには、バランスホールにも貼っておくと長持ちする。
一体型の場合、クリーニングで解決しなければ、カートリッジをはずしてみればヘッドが直視できる。振ってみてみればまだインクは残っているかどうかわかる。インクがあるのに印字できなければヘッドが詰まっている。ヘッド部分はかなり汚れているはず。ヘッドを下向きにた持ったまま、流しでヘッドの部分を水で流しながら指で洗う。きれいになったらセットして何度かクリーニング機能を動作させてプリントしてみる。
これでダメな場合、普通の人ならこれでポイするところだが、まだ捨てるのは早い。ヘッドを下向きにしてヘッドが直接当たらないようにして、カートリッジの下の角を机にかるくコンコンとたたいていみる。あまり強くたたくと中にエアを生じる可能性があるので、あくまでも軽くたたく。これでインクヘッドの穴ににじんで出てくればまだ使える。
え、まだ詰まっている?その場合はインク経路のかなり中まで乾いている可能性がある。ヘッドに絶縁ビニールテープを十文字にはってヘッドの部分を完全に密封し、必ずヘッドを下にして1日間放置する。時々ヘッドが当たらないようにして、下の角をコンコンと机に軽くたたいていみる。これで乾いたところが緩くなってヘッドにインクがにじんでくるようになれば、なんとか使えるようになる。
まだ詰まっている?そのときはバランスホールをチェックする。例えばHPのデスクジェット、デスクライターの白黒カートリッジだと、下面のヘッドの隣に迷路のようなものが見える。この迷路は中のインクが減った分だけカートリッジ内にエアを供給する経路で(通常はカートリッジ内のビニール袋が広がってエア調節するが、これだけでは十分でない)、これが詰まるとインクが降りて来なくなる。迷路になっているのは、インクが温度上昇などで逆流したときに漏れてこないように距離を稼いでるのである。
しかし、逆流したインクが迷路内で固まると、エア経路が詰まってインクが降りて来なくなる。修理するには、迷路のヘッド寄り丸い穴をカバーしている薄い透明なプラスティックに針で穴を何個所かあければよい。そうすると、プシューという音がしてインクが降りてくるようになり、詰まりが解消する。
え、まだ詰まっている?その場合はバランスホールの迷路にあけた穴にストローの先をあてて、軽く吹いてみる。すかさずその穴にセロテープを貼って押さえる。ヘッドのほうからインクがにじんで出てくればまだ使える。ただしこれをやると、指がインクまみれになるので、必ずしもこの方法を勧めない。(笑)
経験によれば、ここまでしてまったく詰まりのとれないインクカートリッジはインク経路が完全に乾いて詰まっているか完全にエアが入っているので心安らかに棄てた方がよい。しかしたいていは上記のどれかでいくつかドットが欠落するかもしれないが、下書きには充分使える程度まで回復するはずである。
また種々の形のインクカートリッジを使うプリンターが覚えきれないほど多く販売されているが、以前の熱転写式のリボンが供給されなくなったのと同じように、はたしてこれらのインクカートリッジがいつまで供給されるか疑問である。BJ-10VやDeskjetなどのたくさん売れたプリンターのカートリッジは当分手に入ると思うが、あまりマイナーな機種を買うと、近い将来にカートリッジが供給されなくなる可能性がある。その場合は市販の非純正補充用インクを注射器でカートリッジに移すしかない。マイナーな機械を買った場合は、空きカートリッジも取っておいたほうがいいかもしれない。
期限の迫った仕事の時に交換するためにある程度買いだめをしているが、箱には使用期限が印刷してある。期限を1年以上すぎたHPのカートリッジを使っているが、こと白黒に関しては特に問題は無いようだ。
もしトナー切れの表示が出たり、印刷が薄くなって、スペアが無くてもあわててはいけない。たいていの印刷物は(とくに文書やプログラムソース)、紙の左側に多く印刷するので、紙の左側にあたる部分のトナーが早く無くなる。そこで、カートリッジを取り出して、右側を高く、左側を低くして上下に軽く振る。説明書には交換の時に静かに数回振る、と書いてあることがあるが、100回以上振ってもどうということは無い。ただ、トナーがばらまかれない程度に振る必要がある。
トナー切れを、トナーに鉄分が含まれていることを利用して、コア入りコイルで検知しているものがある。この場合トナー切れと出てもまだトナーが残っている。コイルをみつけて、コアを少し右に回してトナー容器に近づけてやるとまた印刷できるようになる。
コピーの場合は画像を直接ドラムに投影するが、レーザープリンターでは半導体レーザーをポリゴンという回転鏡で反射させてドラムに投影する。レーザーの明るさを変化させることにより、ドラムに画像を形成する。レーザーの代わりに光源と液晶のシャッターや、発光ダイオードを用いるものもあり、この場合はレーザープリンターといわず、ページプリンター(もしくは液晶プリンターやLEDプリンター)と呼んでいる。
トナーをドラムに振りかけるとドラムの静電気を帯びたところにトナーが付着する。これを紙に転写し、ローラーで加熱するとトナーの樹脂が融けて紙に定着する。ドラムに少量残ったトナーはふき取られて廃トナー入れにたまる。
以前は、トナー入れ、ドラム、廃トナー入れなどは別部品で、それぞれ別の設定寿命で交換されていたが、個人で管理するのは面倒。そこで、Cノンは、これらを一体化したカートリッジで交換することにした。
しかし、ドラムの寿命と廃トナー入れが満杯になるには通常数万枚かかるので、無駄な部分を交換させていて省エネ、省資源に逆行する、という批判がある。Kセラなどはドラムの寿命を延ばして、トナーのみをかえる設計にしている。つまり、通常のカートリッジが寿命を迎えても、感光ドラムはまだ寿命が残っている。Cノンもこの批判に答えて、カートリッジ再生工場を中国に建設しているが、いまひとつ腰が引けた印象がある。本日の日経の衛星放送によると、Cノンの利益のかなりが消耗品ビジネスで上がっているとか。
そこで、米国では古いカートリッジを引き取って清掃し、新しいトナーを充填するビジネスが盛んである。古いカートリッジを宅急便で送ると、再生したものを変わりに50ドル程度で送り返してくれる。
私自身小型コピーの機械だが、カートリッジの再生をしたことがある。トナー入れのふた(紙製)を少しあけて、廃トナーを補充したことがある。どうしてもその機械が必要だったのでやったが、手と顔と、鼻の穴と、まわりが真っ黒になるので、2度としたくは無いと思ったし、環境にも優しくないし、おすすめしない。
が、方法自体は簡単だ。トナー容器に穴をあけてトナーを追加する。廃トナー容器に穴をあけて掃除機で吸い出す。ドラムを清掃する。それだけである。トナーには1成分型、2成分型などいろいろあって注意が必要だし、廃トナーを使うのは本当はいけないが少なくとも違う種類のトナーを使うよりは良い。バーホールとトナーとアルコールが少々あればだれにでもできるビジネスである。
なぜかそういったビジネスが日本で成立しないのが不思議だが、おそらくインフラのコスト(輸送、電気など)が高いからか。阪神大震災の時、米国から物資を送ったら、米国から日本までより東京から神戸までの輸送コストの方が高かったという。資源が少ない日本でなぜこういったことが軽視されるのかが不思議。まだまだ欧米に社会資本の劣る日本で、カートリッジのみポイポイすてられるのが不思議。
と書いていたら、ついに日本にもリサイクル業者があらわれた。詳細は書かないが会員制(一部先払い)である。ドラムの長持ちする機種ではトナーの補充でカートリッジが3ないし5回リサイクルできるようだ。また、ドラムの長持ちしない機種では、最初のリサイクル時に長持ちするドラムに交換するためやや高価になるが、その後は主にトナーの補充をするようである。なお、この件で私問い合わせのメイルを書かないで欲しい。というのは、その広告のチラシをなくしたからである。個人的にはぜったいレーザープリンターを買わない主義(消耗品でもうけるビジネス方法に乗るのを好まない。一度裏を印刷した紙は詰まりやすいので省資源に逆行する)なもんで。仕事では使っていますが。
経験によればドラムに傷が付くのは汚れたり曲がった紙を入れたり、給紙部位やカセットがホコリだらけの場合である。良好な管理下のドラムには殆ど傷は付かないようだ。値段はやや高いかと思ったが、これが誘い水になって競合(メーカーを含めて)になると良いと思う。日本は規制社会、と言われているが、反面ぜいたくに再利用できるものを棄てるという、一昔前の米国(今は変わったが)みたいなところがあり、商売のタネの多いと思う。
カートリッジについてはもうひとつ動きがある。資源や環境、リサイクルに熱心な国には、このような使い捨てカートリッジにペナルティーをかけよう、という動きがある。もしカートリッジが使い捨てと認定されると、メーカーは大変な出費になる。そこでカートリッジの材質もリサイクルしやすい材質にし、またカートリッジ自体もメーカーがリサイクルすることによりペナルティーを回避しようとする動きがある。もはや高いカートリッジを使い捨てすることは社会的に許されなくなるようだ。しかし、国内は平和である。一部の会社(Kセラ、この会社は先を見ている)などは、ドラムを変えずにトナーだけの交換ですむ形式に動きつつある。
もちろんほこりを掃除すると少しよくなるが、まだ調子が悪い、という場合はたいていはゴム部品の劣化が原因のことが多い。ゴムが劣化して表面が硬くて滑りやすくなってうまく紙と摩擦を生じないのである。
この場合は、ゴムローラーの表面を目の細かい紙やすりで軽く荒らしてやると回復する。砂入り消しゴムでもいいが、カスが出るので注意。時間が無い場合はアルコールを含んだ布で強くこするのも効果がある。ウソのようにうまく動くようになるものだ。
もちろんこの手は、給紙経路が複雑なレーザープリンターやインクジェットプリンターでも使える。