戦争工業委員会

プロルス 戦争工業委員会は戦時生産に積極的な役割を果たしたのでしょうか?

別宮 戦争工業委員会は前に述べたゼムゴールの役所版といっていいでしょう。ただ政治活動はやらず、中小企業への政府発注を取り扱ってました。

プロルス 戦争ともなれば、発注は陸軍省だけに止まりませんね。

別宮 大企業の発注代行もやっていて、この辺りは日本では理解しにくいのかもしれませんが、ロシアの民間企業の購買部門は賄賂が行き交い、経営者としても発注価格や支払い条件は公的部門にやってもらった方が安心だという側面があったようです。

プロルス それはまたアナーキーですね。

別宮 ロシアは寒いですから、農業でも夏の間だけ必死に働き、冬の間は何もしないで過ごすというパターンです。ですから、賄賂が入る部門につくと、一攫千金の夢は捨て難いんでしょうね。

これが共産主義や計画経済が好ましいという土壌になったことは否定できません。また大企業でも参加する所も現れました。

プロルス 戦争工業委員会は全部政府の費用で賄われていたんですか?

別宮 開始されたのは1915年春です。人員は最盛期2千人いたといわれますからかなり大きい組織です。手数料は、売買金額の1・5%でした。

プロルス 安くないですね。

別宮 参加した企業は別の目的があったようです。それは工作機械を外国から買うため、外貨割当を得られるのではないかという希望でした。

また原材料、例えば国営石炭企業からの石炭の優先割当も受けられるのではないかと。購買部門が戦争工業委員会に移れば期待しますよね。原因は銀行が弱いことでしょう。

プロルス 期待外れだったんですね。

別宮 既に仕入れ関係があり、反復取引になっている場合は、腐敗防止や金融で有効ですが、割当となると増やすにはどこか減らす必要がありますが、簡単には行きません。

まあ、日本の総合商社に似てますね。

プロルス 日本の場合は腐敗防止はありませんよね。

別宮 戦争工業委員会はモスクワに本部を置き、地方委員会もありました。オデッサやキエフは比較的うまくいったようですが、ペテログラードは不振でした。

これの理由はペテログラードは、鉄道網から北に偏り、物流がうまく回転しなかったためのようです。