プロルス
でもスコムリノフも、ロシアのために頑張ったので、妻の浪費のためならば、何をしてもよいと思ったわけではないでしょう。
別宮
それはそうですが、戦時生産とは役人が統制すると決して伸びることはありません。そして大企業より、中小企業に発注すると生産を伸ばすことはできますが、品質の点で劣るのが一般的です。
そして、大企業の中で最大のものが、国営企業です。そして、ロシアには大企業・国有企業が軍需生産の大半を占めていたんです。ロシアはその点で簡単に社会主義経済=産業国有化がやりやすい社会ともいえるでしょう。
ただ、陸軍省役人の目的は、目先砲弾が前線に回せればいいんです。
一方、資源は確かに制約となりますが、第一次大戦における軍需生産の材料は基本的に石炭と鉄鉱石です。ドネツ炭田を中心として、ロシアには資源が豊富にありました。
プロルス
第二次大戦では、ほとんど自給自足で戦ったんですから、第一次大戦でそれほど条件が異なっていないと思うのですが。
別宮
それが異なっているんです。第一次大戦は官僚合議の体制でした。第二次大戦はスターリン独裁で戦われたんです。
これのどこが違うかといえば、リーダーシップのあるなしです。つまり、第一次大戦のロシアで軍需生産を伸ばそうと思えば、外国から工作機械を購入し、国内企業で生産能力をまず増やせばよいわけです。
スターリンが成功したのは、1930年台前半に飢餓輸出をして外貨を稼ぎ、まず鉄鋼コンビナートと工作機械工場をつくったからです。この技術はほとんどアメリカから来ました。日本の軍部がソ連の「5カ年計画」恐るべしと言っていた時代です。
国営企業や大企業というのは、独裁的国家でなければ、戦時経済では機能しません。
プロルス
すると、ツアー体制がもっと独裁的であればよかったということですか。
別宮
近代国家における独裁者というのは、なかなか大変です。スターリンは睡眠5時間で朝から晩まで書類にサインしまくったといいます。
こういったことはニコライ二世にはできません。内政は皇后アリックスに任せたわけですが裏目に出たと言ってよいでしょう。
プロルス
でもいうことをきかない臣下ばかりで、アレクサンドラ皇后も手のうちようがなかったのでしょう。
別宮
その通りですが、ドイツ出身で人気がなかったことと、ラスプーチンを重用したりしましたから、臣下が唯々諾々と従う環境になかったということでしょう。