ロシア陸軍省への不満

プロルス
確かゴルリッツ・タウノウの突破戦があったときです。プルゼミスルは陥落させたのですが。

別宮
その時分です。ロシアは武器弾薬の不足に見舞われました。進歩派はこれを政府の失敗とみなし攻撃しました。

そして矛先は陸軍省のスコムリノフに向かいました。陸軍省が軍需を所管していたのですが、そこが腐敗しているに違いないという疑いをもたれたのです。

プロルス
スコムリノフと言えば妻が若いため浪費に走った人物ですね。

別宮
当時、ロシア官界では賄賂やコミッションをとることは常識とされていたようです。スコムリノフがとくに多めに賄賂をとった証拠もありません。ただ腐敗の象徴のようになってしまいました。

戦前からスコムリノフを支持していたのは陸軍内部を除けばニコライ二世だけだったのですが、1915年初頭には四面楚歌の状態になってしまいました。

とりわけスコムリノフはロシア製武器を信用せず外国からの輸入に頼ろうしたことが拍車をかけました。当時軍需産業はペトログラードとモスクワ周辺に集中していました。ペトログラードは国営企業中心ですが、モスクワ周辺には民営企業が集中していました。

そして国家会計の問題ですが、国産品を発注すると国は原材料の集荷資金を前渡金として支払わねばなりません。これは発注金額の2割前後と無視できない金額であり、かつ発注するとすぐに支払わねばなりません。ところが外国に注文を出すと、輸入前払い金融がロンドンの銀行で可能であり支払いは翌年にまで繰り延べることができます。

国家会計は現金主義なのです。

このためスコムリノフは国内企業よりも輸入を優先しました。ところがモスクワの民間企業は外国からまず工作機械を購入し、それによって自製すれば格段に生産が増えるはずだと主張したのです。これは理のある主張です。

このようにして民間企業の経営者、労働者がまず陸軍省の腐敗や外国依存の体質を批判し始め、それが1915年の戦局悪化と重なるようになりました。

プロルス
それはロシアだけの問題ですか?

別宮
イタリーでも同様でしたが、現在から見れば不思議ですがイタリーよりロシアの方が国際金融上信用があったのです。資源や人口、外貨準備ということでしょう。

いずれにせよ1915年央に入ると陸軍省への不満は陸軍内の反対派、ドゥーマの進歩派、そしてサゾーノフら官僚にも支持されるようになりました。